キラキラ
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何故彼がこんな所に居るのだとか、また会えただとか、何て男前になっているんだろうだとか。
脳は瞬く間に様々な思考でごった返すけれど、ふとルイは自分の咄嗟の呟きを思い出しパッと顔を伏せた。
呼んでしまった。雲雀先輩、と。
馬鹿だと思う。彼との関わりはあの一回こっきりなのに。
一般市民ならば中々ハードな事件として何年経とうと記憶に刻まれているだろうが、何せ彼は並盛の治安を守っていた秩序そのもの。取るに足らない事象だったに違いないし、そもそも自己紹介もせずに逃亡したルイの事など幾ら並盛中学の生徒だったと言えどもう覚えている筈が無いではないか。
けれど。
「朝霧ルイ…君はよく被害に遭うね」
不意に掛けられた声に弾かれたように顔が上がる。薄闇に浮かぶ雲雀の表情は、軽く眉が顰められ、何処か怒っている風に見えた。
「え、…どうして、」
「どうもこうも無いよ。僕の知る限りでは二度目だ。普通は繰り返さない」
驚いた。如何やら雲雀ははっきりと記憶しているらしい。事件の事も、二つ下の学年の自分の事も。
「一度目のは締め上げた奴らの証言から単に運が悪かっただけだと判断した。けど今回はどう見ても違うね」
不機嫌な顔はそのままに突き付けられる言葉。
雲行きが怪しくなって来たと思う。十年ぶりに会った相手に何故か責められているような気分だ。
「中学卒業後はイタリアの名門医大に飛び級入学した並盛始まって以来の天才児が、一体こんな所で何してたんだい?」
何故そこまで知っている。返事に窮し黙り込んでいると、やがて雲雀の薄く形の良い唇からふ、と小さく息が零れる。
「…まぁいいよ。送るから立ちな」
「あ、え、?」
「家まで送るって言ってる。何?何処か行く気?」
女が一人でこんな時間にこんな所通ってあんな目に遭ったのに?詰られていると言っても可笑しくない雰囲気で詰め寄られれば従うしか無い。
先程の婦女暴行罪と言う言葉を思い出す。まさか彼は現在はこの辺りの風紀を取り締まっているのだろうか。妙にしっくりくる推測を立てながら、のろのろ立ち上がると小さく「ありがとうございます」と呟いた。
自宅のおんぼろ幽霊アパートメントまでは徒歩三十分、車では五分もかからない程の距離。車を停めてあると言う近くの路肩まで雲雀の後ろ無言で付き歩きながら、ルイの胸は複雑だった。
雲雀に、現状を知られたくは無い──
かつてのルイは、彼の言葉通りの天才児。正確に言うならば決して天賦の頭脳を授かったわけでは無い努力の天才。どう解釈されているのかは知らないけれど、少なくとも周囲から賞賛され得る存在であった事は事実だ。
しかし今は。
転落人生を知られる程惨めな事も無い。あんな浮浪者まがいのアパートメントを住居としている姿など当時を僅かでも知る人間には決して見られたくは無いと言うのに。
モヤモヤと考えている内に、ああもう着いてしまった。そこで主を待っていたのは、黒光りする大きなボディにトライデントエンブレム、マセラティ・グラントゥーリズモ。
ぐらり、眩暈がする。突き付けられる隔たり。やはり雲雀恭弥は現在でも只者では無かったのだ。
脳は瞬く間に様々な思考でごった返すけれど、ふとルイは自分の咄嗟の呟きを思い出しパッと顔を伏せた。
呼んでしまった。雲雀先輩、と。
馬鹿だと思う。彼との関わりはあの一回こっきりなのに。
一般市民ならば中々ハードな事件として何年経とうと記憶に刻まれているだろうが、何せ彼は並盛の治安を守っていた秩序そのもの。取るに足らない事象だったに違いないし、そもそも自己紹介もせずに逃亡したルイの事など幾ら並盛中学の生徒だったと言えどもう覚えている筈が無いではないか。
けれど。
「朝霧ルイ…君はよく被害に遭うね」
不意に掛けられた声に弾かれたように顔が上がる。薄闇に浮かぶ雲雀の表情は、軽く眉が顰められ、何処か怒っている風に見えた。
「え、…どうして、」
「どうもこうも無いよ。僕の知る限りでは二度目だ。普通は繰り返さない」
驚いた。如何やら雲雀ははっきりと記憶しているらしい。事件の事も、二つ下の学年の自分の事も。
「一度目のは締め上げた奴らの証言から単に運が悪かっただけだと判断した。けど今回はどう見ても違うね」
不機嫌な顔はそのままに突き付けられる言葉。
雲行きが怪しくなって来たと思う。十年ぶりに会った相手に何故か責められているような気分だ。
「中学卒業後はイタリアの名門医大に飛び級入学した並盛始まって以来の天才児が、一体こんな所で何してたんだい?」
何故そこまで知っている。返事に窮し黙り込んでいると、やがて雲雀の薄く形の良い唇からふ、と小さく息が零れる。
「…まぁいいよ。送るから立ちな」
「あ、え、?」
「家まで送るって言ってる。何?何処か行く気?」
女が一人でこんな時間にこんな所通ってあんな目に遭ったのに?詰られていると言っても可笑しくない雰囲気で詰め寄られれば従うしか無い。
先程の婦女暴行罪と言う言葉を思い出す。まさか彼は現在はこの辺りの風紀を取り締まっているのだろうか。妙にしっくりくる推測を立てながら、のろのろ立ち上がると小さく「ありがとうございます」と呟いた。
自宅のおんぼろ幽霊アパートメントまでは徒歩三十分、車では五分もかからない程の距離。車を停めてあると言う近くの路肩まで雲雀の後ろ無言で付き歩きながら、ルイの胸は複雑だった。
雲雀に、現状を知られたくは無い──
かつてのルイは、彼の言葉通りの天才児。正確に言うならば決して天賦の頭脳を授かったわけでは無い努力の天才。どう解釈されているのかは知らないけれど、少なくとも周囲から賞賛され得る存在であった事は事実だ。
しかし今は。
転落人生を知られる程惨めな事も無い。あんな浮浪者まがいのアパートメントを住居としている姿など当時を僅かでも知る人間には決して見られたくは無いと言うのに。
モヤモヤと考えている内に、ああもう着いてしまった。そこで主を待っていたのは、黒光りする大きなボディにトライデントエンブレム、マセラティ・グラントゥーリズモ。
ぐらり、眩暈がする。突き付けられる隔たり。やはり雲雀恭弥は現在でも只者では無かったのだ。