embrace
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その日の夜更け。襖の開く音、忍び寄る足音には布団の中硬く身を屈めた。昨晩と同じ、ああ今夜もまた苦しい夜が始まる。
布団に浸入し、横向けに丸まるルイを背後から抱きすくめる腕、耳元で囁く低い声。
「起きてるんだろ。仕事から帰って来た夫に挨拶も無いの?」
風呂上がりだろう、ふわりと石鹸の香が漂う。
夫だなんて。
清潔な匂いとは裏腹な薄暗い感情が這い上がって来るけれど、心中を渦巻く昼間の件により無闇に挑発するような真似は憚られた。僅かな葛藤の末漏れ出たのは温度の無い声音で。
「お帰りなさい。お疲れ様でした」
するり、唐突に衿から入り込んだ手が乳房を撫で上げ全身に鳥肌が立つ。我慢、我慢、少しの間だけ辛抱だと自分に言い聞かせるけれど、生理的な嫌悪感には抗いようが無く、握り締めた拳は爪が掌に食い込んでギリギリと痛んだ。
「ねぇ、こっち向いて」
御断りとは言えず、緩慢に寝返りを打つと間近の雲雀の胸元をじっと見つめる。洋燈の仄かな灯りに照らされ上の方から視線を感じるけれど決して振り向きはしない。せめてもの反抗。
「あの後はちゃんと起きられたかい?」
「…はい」
「そう。一日過ごして何か困った事は?」
「特には」
食事は摂ったのか、とか暇では無かったか、とか、雲雀は幾つかの質問をして来てルイはそれに答えた。非常に端的に。しかしやがて。
「いつまでそうやってツンツンしてる気?」
微妙に変わる空気感。静かな空間に僅かな緊張が走る。
「これからはもう此処で生活して行くんだよ。僕と夫婦になった事実は今更変えられないし、そんな事したって何にもならないだろ?」
「……」
「君は何がそんなに気に食わないの」
クイと顎を上げさせられ視線が合わさった。橙の光が灯す表情に昼間のような怒気は感じられない。
「女医として生きて行きたかった?結婚は惚れた相手としたかった?意志を無視して連れて来られたのが癪に障った?全部かな」
「……」
「じゃあ逆に、どんな風に生きていけたら満足だった?」
「………」
「答えられない?」
あのね、言いながら節くれ立った男の手がルイの頬を滑り顔に掛かる髪を払う。決して乱暴では無い優しい手付き。
雲雀はこう続けた。君は女だよ、と。
特別な権力でも持たぬ限り女がたった一人この男社会で身を立てるなど不可能、父の存在無くして医師としての先は無く、又好いた者と結婚しようにもこのような女を望む男も居ない。女が求められるのはあくまで世継ぎを産み家を守る事であって、男並みに労働に励んでいてはそれは成せぬし何より医師という地位や技量を持つ女は可愛気が無い。
そして結局は生活に困窮した末に納得の行かぬ結婚をする羽目になり女の役割のみを負荷される未来が目に見えているではないかと。
「このくらい君だって本当は分かっている筈だよ。だから答えられない」
目を閉じきゅうと唇を噛むルイを宥めるように諭すように。
「この婚姻を感謝しろなんて言わないよ。ただ少し考えてみて欲しい。少なくとも君は守りたいものを守れた。もしかしたら君が医師として生涯かけて救える以上の人数をね。それで良しとは出来ないかな」
「……」
彼は正しい。言われなくとも理解している。
けれど、けれども。
実は結婚前のルイにはある算段があった。全てを覆せる夢のような切り札が。だからじっと機が熟すのを待っていた。
後一歩の所だったからこそ、口惜しい、口惜しくて堪らない。後僅か数ヶ月さえ持ち堪えられれば全ての状況は変わっていた筈だ。
黒曜はもはやその数ヶ月が待てなかったのは事実で、雲雀の援助は絶対的に必要だった。そしてその算段とは彼には決して知られてはならぬ性質のものだったから、それを伏せたままでほんの少しの援助をして貰えればそれで良かったのだ。だと言うのにその結果がまさか嫁入りとなってしまうとは。
口惜しい…気が違いそうだ。
日々飢餓や疫病で死に行く人々、確かに黒曜にとってこの婚姻は素晴らしい価値があったけれど、たった数ヶ月の為に自分は…どうしてもそんな風に考えてしまう。当人になると、心の折り合いは中々付けられない。
憎い、憎い。この男が。幾ら救われたと言えど、彼は権力を盾にルイの全てを奪った。“女”の義務など押し付けられたくはないのに、女という理由で服従を要求する男との婚姻など反吐が出ると言うのに。
正論で諭された所で感情は激しく牙を剥く。だからルイは一言で切り捨ててしまった。
「あなたなんか大嫌い」
空気が凍るのが分かる。ふぅん、低い相槌が聞こえるなり肩口を強く押され仰向けに固定される。見下ろす鋭い双眸。
「昼間の事、反省してたんだ」
「…は…?」
「怖がらせてしまったから」
何なのだ。突然何を言い出すのだ。そんなに冷酷な顔をして。氷の刃の如き眼光に射竦められ、ルイは身動きも出来ない。
「ここは悪いとは思っていないけど、君を強引に嫁がせたのは事実だし…僕なりに君を大事にしようと思ってた。だけど」
甦る昼間の感覚。絶対的支配者の威圧感。
「そんな必要無いみたいだね」
言うなり長襦袢の裾がはだけられ、脚を大きく広げられる。腰布を払った雲雀の顔が秘部に近付きルイは驚愕に目を見開いた。
「やっ…、」
ルイの抵抗なぞ歯牙にも掛けず淫靡な水温が薄暗い室内に響き出す。
くちゅくちゅ、ぴちゅ…
花裂を大きく舐め上げては陰核を舌先で擽り時折吸い付いたり舐ったり。
「いやっ、いや…やめて!やめて下さい…っ」
もがけども強い力で脚の付け根を拘束されてはどうしようもなく、突然の蛮行から逃げる事は許されない。
「やめないよ。どうせ君何しても反応しないんだろ。濡らさないと挿れるのも一手間だ」
カッと頭に血が昇る。最低だ。舌の生温かく滑った独特の感触にぞわりと悪寒が走り抜け怖くて気持ち悪くて堪らない。
やめて、やめて!
男の顔が己の股に埋まるとんでもない光景に精神の動揺は普通では無い。無駄だと知りつつも必死にもがき髪を引っ張りあらん限りの悲鳴を張り上げ。
ルイの声が酷く掠れて来た頃漸く雲雀が顔を上げた。が、安堵したのも束の間、彼は腕を引きルイの上体を起こさせると己の浴衣の裾を肌蹴て見せた。そして、
「舐めて」
「…は?」
「舐めな。君がそんなならいつまで経っても勃たないから」
恐ろしく冷淡な響きを伴い発せられた低い声。ガタガタ、震え出すルイの体なぞ知らん顔で後頭部に手をやると未だ柔らかい自身へと導こうとする。
「…いや、むり、無理です…、」
出来ない、いや、掠れきり上擦った声を漏らすルイを見下ろす瞳には温度の欠片も無い。
「女は受動、男は能動。間違ってはいないだろうが人間のまぐわいは動物の交尾じゃない。それだけとは言えないよ」
俯くルイの顔をぐいと上げさせると淡々と。
「これはあくまで夫婦の共同作業であって君にも協力する義務がある。それは忘れないように」
「……っ」
言葉が返せず恐怖と屈辱に表情を歪ませるルイの頭を押え付けその唇を指先でこじ開けると、無理矢理に亀頭を口に含ませる。激しく頭を振り乱し拒否をしようが嘔吐こうが御構い無しに。
「ほら、ちゃんとして。君がどんな態度でも今日は最後までするからね」
う、ぐ、苦しい呻きが静かな寝室を満たす。
この日を機に、これ以上下は無いと誰もが思っていた二人の関係は、更に最悪のものへと加速して行った。
布団に浸入し、横向けに丸まるルイを背後から抱きすくめる腕、耳元で囁く低い声。
「起きてるんだろ。仕事から帰って来た夫に挨拶も無いの?」
風呂上がりだろう、ふわりと石鹸の香が漂う。
夫だなんて。
清潔な匂いとは裏腹な薄暗い感情が這い上がって来るけれど、心中を渦巻く昼間の件により無闇に挑発するような真似は憚られた。僅かな葛藤の末漏れ出たのは温度の無い声音で。
「お帰りなさい。お疲れ様でした」
するり、唐突に衿から入り込んだ手が乳房を撫で上げ全身に鳥肌が立つ。我慢、我慢、少しの間だけ辛抱だと自分に言い聞かせるけれど、生理的な嫌悪感には抗いようが無く、握り締めた拳は爪が掌に食い込んでギリギリと痛んだ。
「ねぇ、こっち向いて」
御断りとは言えず、緩慢に寝返りを打つと間近の雲雀の胸元をじっと見つめる。洋燈の仄かな灯りに照らされ上の方から視線を感じるけれど決して振り向きはしない。せめてもの反抗。
「あの後はちゃんと起きられたかい?」
「…はい」
「そう。一日過ごして何か困った事は?」
「特には」
食事は摂ったのか、とか暇では無かったか、とか、雲雀は幾つかの質問をして来てルイはそれに答えた。非常に端的に。しかしやがて。
「いつまでそうやってツンツンしてる気?」
微妙に変わる空気感。静かな空間に僅かな緊張が走る。
「これからはもう此処で生活して行くんだよ。僕と夫婦になった事実は今更変えられないし、そんな事したって何にもならないだろ?」
「……」
「君は何がそんなに気に食わないの」
クイと顎を上げさせられ視線が合わさった。橙の光が灯す表情に昼間のような怒気は感じられない。
「女医として生きて行きたかった?結婚は惚れた相手としたかった?意志を無視して連れて来られたのが癪に障った?全部かな」
「……」
「じゃあ逆に、どんな風に生きていけたら満足だった?」
「………」
「答えられない?」
あのね、言いながら節くれ立った男の手がルイの頬を滑り顔に掛かる髪を払う。決して乱暴では無い優しい手付き。
雲雀はこう続けた。君は女だよ、と。
特別な権力でも持たぬ限り女がたった一人この男社会で身を立てるなど不可能、父の存在無くして医師としての先は無く、又好いた者と結婚しようにもこのような女を望む男も居ない。女が求められるのはあくまで世継ぎを産み家を守る事であって、男並みに労働に励んでいてはそれは成せぬし何より医師という地位や技量を持つ女は可愛気が無い。
そして結局は生活に困窮した末に納得の行かぬ結婚をする羽目になり女の役割のみを負荷される未来が目に見えているではないかと。
「このくらい君だって本当は分かっている筈だよ。だから答えられない」
目を閉じきゅうと唇を噛むルイを宥めるように諭すように。
「この婚姻を感謝しろなんて言わないよ。ただ少し考えてみて欲しい。少なくとも君は守りたいものを守れた。もしかしたら君が医師として生涯かけて救える以上の人数をね。それで良しとは出来ないかな」
「……」
彼は正しい。言われなくとも理解している。
けれど、けれども。
実は結婚前のルイにはある算段があった。全てを覆せる夢のような切り札が。だからじっと機が熟すのを待っていた。
後一歩の所だったからこそ、口惜しい、口惜しくて堪らない。後僅か数ヶ月さえ持ち堪えられれば全ての状況は変わっていた筈だ。
黒曜はもはやその数ヶ月が待てなかったのは事実で、雲雀の援助は絶対的に必要だった。そしてその算段とは彼には決して知られてはならぬ性質のものだったから、それを伏せたままでほんの少しの援助をして貰えればそれで良かったのだ。だと言うのにその結果がまさか嫁入りとなってしまうとは。
口惜しい…気が違いそうだ。
日々飢餓や疫病で死に行く人々、確かに黒曜にとってこの婚姻は素晴らしい価値があったけれど、たった数ヶ月の為に自分は…どうしてもそんな風に考えてしまう。当人になると、心の折り合いは中々付けられない。
憎い、憎い。この男が。幾ら救われたと言えど、彼は権力を盾にルイの全てを奪った。“女”の義務など押し付けられたくはないのに、女という理由で服従を要求する男との婚姻など反吐が出ると言うのに。
正論で諭された所で感情は激しく牙を剥く。だからルイは一言で切り捨ててしまった。
「あなたなんか大嫌い」
空気が凍るのが分かる。ふぅん、低い相槌が聞こえるなり肩口を強く押され仰向けに固定される。見下ろす鋭い双眸。
「昼間の事、反省してたんだ」
「…は…?」
「怖がらせてしまったから」
何なのだ。突然何を言い出すのだ。そんなに冷酷な顔をして。氷の刃の如き眼光に射竦められ、ルイは身動きも出来ない。
「ここは悪いとは思っていないけど、君を強引に嫁がせたのは事実だし…僕なりに君を大事にしようと思ってた。だけど」
甦る昼間の感覚。絶対的支配者の威圧感。
「そんな必要無いみたいだね」
言うなり長襦袢の裾がはだけられ、脚を大きく広げられる。腰布を払った雲雀の顔が秘部に近付きルイは驚愕に目を見開いた。
「やっ…、」
ルイの抵抗なぞ歯牙にも掛けず淫靡な水温が薄暗い室内に響き出す。
くちゅくちゅ、ぴちゅ…
花裂を大きく舐め上げては陰核を舌先で擽り時折吸い付いたり舐ったり。
「いやっ、いや…やめて!やめて下さい…っ」
もがけども強い力で脚の付け根を拘束されてはどうしようもなく、突然の蛮行から逃げる事は許されない。
「やめないよ。どうせ君何しても反応しないんだろ。濡らさないと挿れるのも一手間だ」
カッと頭に血が昇る。最低だ。舌の生温かく滑った独特の感触にぞわりと悪寒が走り抜け怖くて気持ち悪くて堪らない。
やめて、やめて!
男の顔が己の股に埋まるとんでもない光景に精神の動揺は普通では無い。無駄だと知りつつも必死にもがき髪を引っ張りあらん限りの悲鳴を張り上げ。
ルイの声が酷く掠れて来た頃漸く雲雀が顔を上げた。が、安堵したのも束の間、彼は腕を引きルイの上体を起こさせると己の浴衣の裾を肌蹴て見せた。そして、
「舐めて」
「…は?」
「舐めな。君がそんなならいつまで経っても勃たないから」
恐ろしく冷淡な響きを伴い発せられた低い声。ガタガタ、震え出すルイの体なぞ知らん顔で後頭部に手をやると未だ柔らかい自身へと導こうとする。
「…いや、むり、無理です…、」
出来ない、いや、掠れきり上擦った声を漏らすルイを見下ろす瞳には温度の欠片も無い。
「女は受動、男は能動。間違ってはいないだろうが人間のまぐわいは動物の交尾じゃない。それだけとは言えないよ」
俯くルイの顔をぐいと上げさせると淡々と。
「これはあくまで夫婦の共同作業であって君にも協力する義務がある。それは忘れないように」
「……っ」
言葉が返せず恐怖と屈辱に表情を歪ませるルイの頭を押え付けその唇を指先でこじ開けると、無理矢理に亀頭を口に含ませる。激しく頭を振り乱し拒否をしようが嘔吐こうが御構い無しに。
「ほら、ちゃんとして。君がどんな態度でも今日は最後までするからね」
う、ぐ、苦しい呻きが静かな寝室を満たす。
この日を機に、これ以上下は無いと誰もが思っていた二人の関係は、更に最悪のものへと加速して行った。