Ⅱ 目覚め
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湖を離れてから、何日が経ったのか分からない。
私はただ、歩いていた。
どこへ向かっているのかも分からない。
帰る場所もない。
会いたい人も──思い出せない。
ただ立ち止まってはいけないような気がして、森を抜け、草原を越え、知らない道を歩き続けた。
首には、あの湖で生まれた赤黒いチョーカー。
指で触れると、冷たい。
けれど、ときどき。
ほんの微かに、温かいような気もした。
あの湖にいた水の精が、まだここにいる。
そんな気がした。
「……あなたは、私のこと……知ってるのかな」
問いかけても、返事はない。
私は自分の名前すら知らなかった。
頭の中に残っているのは、時折聞こえる声だけ。
──024。
けれど、それが何なのかは分からない。
自分の名前なのか。
誰かの名前なのか。
それとも、まったく別の何かなのか。
考えようとすると、決まって頭が痛くなった。
だから私は、考えるのをやめた。
歩いた。
ひたすら歩いた。
───
やがて食べる物もなくなった。
そもそも最初から、ほとんど何も持っていなかった。
森で見つけた木の実を食べた。
川の水を飲んだ。
夜になれば、大きな木の根元で身体を丸めた。
寒かった。
怖かった。
遠くで獣の鳴き声が聞こえるたび、眠れなくなった。
それでも朝は来る。
そして朝になれば、また歩いた。
何日目だったのか。
もう分からない。
ようやく森を抜けた先に、一本の街道を見つけた。
「……道……」
初めて、人が作ったものを見つけた。
この先に行けば、誰かがいる。
そう思った。
なのに。
身体が動かなかった。
「あと……少し……」
一歩。
二歩。
視界が揺れる。
三歩目を踏み出そうとしたところで、脚から力が抜けた。
「……あ……」
地面が近づいてくる。
倒れる。
そう思った。
けれど、もう身体を庇う力さえ残っていなかった。
そのまま私は街道の端へ倒れ込んだ。
最後に見えたのは、遠くからこちらへ近づいてくる馬車だった。
私はただ、歩いていた。
どこへ向かっているのかも分からない。
帰る場所もない。
会いたい人も──思い出せない。
ただ立ち止まってはいけないような気がして、森を抜け、草原を越え、知らない道を歩き続けた。
首には、あの湖で生まれた赤黒いチョーカー。
指で触れると、冷たい。
けれど、ときどき。
ほんの微かに、温かいような気もした。
あの湖にいた水の精が、まだここにいる。
そんな気がした。
「……あなたは、私のこと……知ってるのかな」
問いかけても、返事はない。
私は自分の名前すら知らなかった。
頭の中に残っているのは、時折聞こえる声だけ。
──024。
けれど、それが何なのかは分からない。
自分の名前なのか。
誰かの名前なのか。
それとも、まったく別の何かなのか。
考えようとすると、決まって頭が痛くなった。
だから私は、考えるのをやめた。
歩いた。
ひたすら歩いた。
───
やがて食べる物もなくなった。
そもそも最初から、ほとんど何も持っていなかった。
森で見つけた木の実を食べた。
川の水を飲んだ。
夜になれば、大きな木の根元で身体を丸めた。
寒かった。
怖かった。
遠くで獣の鳴き声が聞こえるたび、眠れなくなった。
それでも朝は来る。
そして朝になれば、また歩いた。
何日目だったのか。
もう分からない。
ようやく森を抜けた先に、一本の街道を見つけた。
「……道……」
初めて、人が作ったものを見つけた。
この先に行けば、誰かがいる。
そう思った。
なのに。
身体が動かなかった。
「あと……少し……」
一歩。
二歩。
視界が揺れる。
三歩目を踏み出そうとしたところで、脚から力が抜けた。
「……あ……」
地面が近づいてくる。
倒れる。
そう思った。
けれど、もう身体を庇う力さえ残っていなかった。
そのまま私は街道の端へ倒れ込んだ。
最後に見えたのは、遠くからこちらへ近づいてくる馬車だった。