走れバイト戦士よ
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「ユウ!お前、バイト始めて二日経ったけど、変な契約書とか書かされてないか!?」
『……は?』
「仕事だからって名目で雑用ばかり押し付けられたりされてるんじゃないか!?」
『……いや、いたって普通に…』
「あんな奴らがいて普通な訳あるか!」
『いや、アズールさんもフロイドさんも親切だし…』
「俺たちは心配なんだ!バイトを始めて何も言ってこなくて口止めでもされてるんじゃないかって!」
大食堂で朝食を食べていたら、唐突にエースとデュースに質問攻めにされる
どの質問も彼らが想像しているような事は一切無いのに、答えれば尚心配される始末
大声で話されると、誰が聞いてるか分からないというのに「あんな奴ら」呼ばわりしている方が心配だ
「ユウがバイトを始めて、晩ご飯のツナ缶が遅くなってるんだゾ!」
『グリムのツナ缶をグレードアップさせる為に働いていると言っても過言じゃないんだからね』
「まさかっ!夜遅くまで残業代も付かずに働かされてるのか!」
「うぉぉぉ!許せねぇ!人間のする事じゃねえよ!」
今の所、残業をするほどバイトはしてないし、例えしても残業代はちゃんとつけるってアズールさんが契約書にちゃんと書いていたのに、エスカレートしていく妄想
このまま話していても彼らには過大な妄想がついてきて誤解を解いてもらうのは難しい気がする
『そんなに心配なら、お店に来れば良いじゃん』
「「「えっ…」」」
『バイト始めて直ぐに言ってたじゃん!暇な日は毎日行くって」
「……いや〜…」
「……その…だな…」
そう言って二人は鞄から財布を出して中身を確認する
こちらから見た感じだと、財布の中身はそこまで無いようだ
あんだけ暇な日は行くって言っておきながら、いざとなるとお金がなくて行けませんなんて…情けない…
だからと言って、心配をさせて妄想を膨らまさせるわけにもいかない
『……はぁ…二人が来たら一番安いやつをオーダーに入れるし、多少は私が奢るよ。グリムの分は私がちゃんと払うし』
「えっマジで!?いいのか!?」
『このまま大声で質問攻めされるのは恥ずかしいもん』
「…… ユウっ!」
二人に片手づつ掴まれて、半泣きの状態で見つめられる。
いざバイトを始めた人間に奢って貰うなんて恥ずかしくないのだろうか…はぁ…と大きなため息を漏らす
………
……
…
授業が終わり、バイトに行くために準備を進める。鞄に荷物を入れたら、肩にかけて教室を後にした
他の人は各寮へと向かっていったり、部室に走っていったりとしていて廊下が騒がしい
そんな中、前を歩いていると見知った銀髪の頭を見た
『あっ…ジャックじゃん!なにしてるの?』
「ユウじゃねぇか。俺は今日は予定が無いから寮に戻ろうとしたんだ」
私の前で立ち止まった192cmの狼の耳をした、同級生のジャック
今日は陸上部の活動がないらしく、寮に戻って筋トレでもするのだろうか
「オクタヴィネル寮の店でバイトを始めたらしいな…」
『そうそう!エースとデュースに凄い心配されてるけど、普通のバイトだよ!』
「あんな事があれば警戒するのは無理もないが、ユウがこき使われているんじゃないかって俺も少し心配だ」
「俺様も子分がいつか家に帰って来ないんじゃないかって心配なんだゾ」
『……はぁ…そんな事する人達じゃないのに…心配なら見に来れば?エースとデュースは今日来るよ?』
そう話すと、少し考えた後に「悪魔であいつらの付き添いで行くんだからな」と言われてしまった。素直じゃないんだから…
エースとデュースはオープン前は中庭に居るって話をしていたよって言ってあげると、素直に中庭の方に向かいながら「後でな」と片手を上げながら言われたので、手を振って見送った。
モストロ・ラウンジについて、倉庫で仕事着に着替えていざ開店準備を始める
閉店時に集めた塩などのカスターセットに補充をして、紙ナプキンも補充をしていく
「仕事は順調ですか?ユウさん」
『アズールさん。おかげさまで楽しくやってますよ』
「それは良かった。何かありましたら直ぐに僕やジェイド達に言ってください」
『ありがとうございます。あっ…今日なんですけど…エース達がお店に来るのですが…』
「お客様としての来店なら何も文句は言いませんよ。ユウさんに関して物申しに来ると言うのなら別ですけど」
「では、僕はレジの準備がありますので」そう言ってキャッシャーへと向かっていった
私も手を止めていたから、このままではオープンまでに間に合わないと思い急いで準備をした
………
……
…
オープンをして何組か席に案内をした後、お店の入り口を覗く頭が四つ見えた
普通に入ってくればいいのに、偵察をするかのようにこちらを見ていて私の視線に気づいた瞬間に雪崩が起きて、入り口で山を作っていた
なにしてるんだ
「……いってて…よ、よぉ!」
『よお、じゃないでしょ。普通に入ってきなよ』
「俺たちが見ていないところでカツアゲでもされてたら締めに行こうと…」
『ここ、レストランなんですけど。ヤンキーの溜まり場とは違うんですけど」
はぁ…と1つため息をしてテーブル席へと案内をする
エースとデュースには一番安いドリンクにしてもらい、グリムにはここで夕飯を食べて貰うことにしてハンバーグセット、ジャックには洋梨のタルトがあったからケーキセットをオススメした
『……はぁ…以上でよろしいですか?』
「ユウがちゃんと仕事してて、俺様感心してるんだゾ!」
『普段もちゃんとしてるでしょうが…少々お待ちくださいね』
そう言って席を離れて、オーダー伝票を厨房に渡しに行く
エースとデュースのドリンク位なら私も作れるから準備をしようとしたら…
「おいっ!そこのオンボロ寮生!メニュー決まったんだから、早く来てくれね?」
「ノロマな雑用なんだから、ちゃんと仕事しろよ!シシシシッ!」
四人位で来ていた、またサバナクロー生が絡んできた
サバナクローの生徒はどうしてこうもガラが悪いんだ…今度ラギーさんとレオナさんに文句言ってやらないと…
そう思いながら伝票を持って、仕方ないから席へと向かった
『……ご注文は何ですか…?』
「あぁ?なんだそのやる気の無い態度は?こちとら客だぞ?」
「客に対してそんな態度は無ぇんじゃねぇの?おいっ!」
………
……
…
「おい!ユウがサバナクロー生に絡まれてるぞ!」
「やっぱ、バイトなんて危ねぇじゃねえか!絡んでくるサバナクロー生もどうかしてんな(チラッ」
「……っ…あれは先輩達だ…同じ寮生で悪いとは思ってるが、そんな目で見るんじゃねぇ…」
「そんなこと言ってないでユウを助けてやるんだゾ!」
斜め後ろの席でユウが絡まれているのを見て、席から立ち上がりその光景を見ていたグリム達
同じ寮生のジャックは頭を手で押さえて頭痛を抑えるよな素振りをする
ガタッ!
そんな音をして見てみると、ユウが肩を押されて後ろに倒れそうになってテーブルに当たっていた
「……見てられねぇ!お「お客様…」」
声がした方を見ると、アズールとジェイド、フロイドが裏方からゾロゾロと出てきた
アズールとフロイドがユウの前に立ち、ジェイドは倒れそうになっていたユウの肩を支えて、怪我などないか見ていた
「なにやら騒がしいようですが、うちのスタッフに何かございましたか?」
「こいつっ!客である俺らに適当な態度を取りやがって、店員として躾がなって無ぇんじゃねぇの?」
「おや…それは失礼しました」
「だからよぉ、勘定はタダに「ですがお客様」」
「あぁ?」
そう言った瞬間にフロイドがユウの肩を押した生徒の襟を掴んで宙に浮かせて、持ち上げていた
「いくら態度が悪かったとは言え、手を出すなんて見過ごせませんね…」
「小エビちゃんが怪我でもしたらどうしてくれる訳?絞めるよ?」
「……ぐふっ……く、くるし…い……」
ユウを押した生徒がフロイドの片手一本で宙に浮いているのを見て、他の仲間は怯えた顔をして後ずさった
アズールもフロイドもこのままタダでは返してくれない雰囲気を醸し出していて、軽く半泣き状態の生徒もいた
「二度とユウさんに近づいて来ない事を約束できて、今すぐ店から立ち去ると言うなら逃してあげなくも無いですよ」
「もし、小エビちゃんに何かあったら沈めるから」
ドサッ…
ひっ…ひぃぃぃ…!
宙に浮いていた生徒が乱暴に落とされて、そんなテンプレートな悲鳴を上げてサバナクロー生達は一目散に店を出ていった
「まぁ、後で乱暴はしないなんて一言も言ってないのですが…」
「小エビちゃん怪我はない?」
『大丈夫ですよ。ただ押されただけなので!』
「それは良かったです…では、仕事に戻りましょうか」
そう言って、静かになっていた客席はまた賑やかになっていった
ユウはジェイドに肩を支えられて、一度裏方に戻っていってしまった
一部始終を見ていたエース達はポカーンと口を開けて見ており、ハッと気づいた時にしてやられたと思った
俺達が助けてやれ無かったと、だが…
「ユウの奴…バイト大丈夫そうだな…」
「みたいだな…はぁ〜…ひやっとした…このままこの場で殺人が起きるんじゃないかって位フロイド先輩怒ってたしよぉ!」
ソファに深く腰掛けながら、緊張の糸が途切れて深く呼吸をして先程の騒ぎを話していた。
確かにアズールも胸ぐらを掴んでいたフロイドも怖かったが…
「……いや…あの中で一番殺気を出してヤバイ雰囲気を出していたのは……」
「お待たせしました。洋梨のタルトです」
「!?」
突然、声がしてガタッと机に足がぶつけながら椅子に座り直すと満面の笑顔で洋梨のタルトとセットのコーヒーをトレーに乗せたジェイドがいた
「コーヒーはお熱いので、気をつけてくださいね」
そう言ってジャックの前にタルトとコーヒを置いて、こちらを見てきたが笑顔なんだが、目は笑っていなくて未だに殺気立っていて、落ち着いていない様子だった