走れバイト戦士よ
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『………あぁ…つま先が痛くなってきた…』
冷蔵庫に閉じ込められてからどのくらい時間が経っただろうか
冷風のあまり当たらない部屋の角にある野菜の入った段ボールの山の中でうずくまる
閉じ込められて直ぐに扉を開けようと叩いてみたり、叫んでみたりしたけど冷気を逃さない為の分厚い扉は私の声を外には漏らしてくれないみたいだ
諦めて段ボールの山の中で体育座りをしているが、寒さは体を蝕んでいく
耳と鼻は冷たいを通り越して痛くなり、コートを頭ごとかぶり暖をとるが靴を履いているつま先は、はみ出ていて指の感覚がなくなってきた
『……はぁー…いつ出れるかな…?誰か気づいてくれるよね…』
吐く息を手に当てて暖をとる
幸いな事に棚卸し作業の日だから、この冷蔵庫のカウントが無いと気付いて誰かがここを開けてくれるだろう…
『……あぁ〜…お風呂に入って温かいクラムチャウダーが食べたい〜…ジェイドさんのいれた紅茶も飲みたい…』
とにかく暖が取れる物が今すぐ欲しくて色々な食べ物の名前がこぼれる
ガチャガチャ…カチャ…
『……ん?』
扉の方からまたガチャガチャと音する
バタァンッ!
「ユウさん!何処に居るんですか!」
勢いよく扉が開けられて、外の光が差し込む
少し眩しそうに見ると肩で息をしたジェイドさんが見えた
『ジェ…ジェイドさぁん…」
「ユウさん!」
寒さで手足が冷え固まって動かなくなってしまい、段ボールの山から顔を出して情けない声を上げる
すぐにジェイドさんは気づいて駆けつけてくれて、何も言わずに私を抱きかかえて冷蔵庫から出てる
外には大量のブランケットを持ってフロイドさんが待っていてくれて、床に下ろされてブランケットでぐるぐる巻きにされる
「小エビちゃん、大丈夫?指とか取れてない?」
『……さ…寒かった…です。指は取れてません…』
フロイドさんはオロオロとしながら心配をしてくれて凍傷で体の一部が取れたりしてないか心配をしてくれた
抱えて外に出してくれたジェイドさんはぐるぐる巻きになった私を無言で抱き締めてくる
『ジェイドさん……大丈夫ですよ…?』
「僕が…僕が一緒にいれば…』
抱きしめる力が強くなる。ジェイドさんの顔は私の肩に押し付けていて見えない
温められて動くようになったブランケットを被ったままの腕で抱きしめ返す
驚いたのか、ピクリと反応をしめす
『ちゃんと見つけてくれたじゃ無いですか…』
「……ですが…」
『最初にジェイドさんの顔を見て凄く安心しましたよ…迎えにきてくれたって…』
肩に埋めていた顔を上げて、私の顔を見るジェイドさんは少し涙目になっていた
金色とオリーブ色のオッドアイが涙で潤んでいて失礼だけど綺麗だと感じた
『……じゃあ…お詫びと言っては何ですが…美味しいクラムチャウダーと紅茶が飲みたいです』
「………。」
『用意してくれますか…?』
「……毎日用意します…」
毎日は要らないなって言って笑いながらジェイドさんに抱きついて背中を撫でてあげる
それを返すように抱きしめられて、また肩に顔を埋めてグリグリと擦り付けられる
「俺のこと忘れてね?」
『い、いや…忘れてないですよ!フロイドさんもブランケットありがとうございます』
「まぁ、ジェイドが泣きそうになってんの面白れぇから良いけどさ。俺も混ぜて〜」
そう言ってフロイドさんは私の後ろから抱きしめてきて、頬擦りしてくる
二人にサンドイッチにされる
「………お取り込み中の所申し訳ないのですが、これでは棚卸しが終わらないのですが…」
「「『あ…』」」
「はぁ……。ジェイド、そのままユウさんをお風呂に連れて行ってあげなさい。フロイドは彼らの後始末をお願いしますよ」
「…はぁい♡」
部屋の前で頭を抱えたアズールさんが溜息をつきながら一部始終を見ていたようだ
私から離れないジェイドさんを見て、お風呂へと連れて行けと言われる
フロイドさんは何かの後始末を任された
ジェイドさんは無言で私をまたお姫様抱っこでお風呂場まで連行する
フロイドさんは返答は楽しそうだが、据わった目つきをしてラウンジの方へと向かって行った
『ジェイドさん、後始末って何ですか?』
「………棚卸しで出たゴミを片付ける事です。海に沈めるか、枯れた土地に埋めるか…」
『え、それって怒られませんか?』
答えは返ってこないで足を進めている
ジェイドさんの顔を見上げると笑顔だけど、何処か怒りを含んだ顔をしていてそれ以上聞けなかった
………
……
…
ジェイドさんの部屋に付いているお風呂に連れてきて貰い、倉庫にあった制服を取ってきて貰いバスタオルまで貸してもらえた
沸かして貰ったお風呂のお湯は丁度よく、冷たくなった身体を溶かすように温める
ゆっくりとお風呂に入って、お風呂から出たらジェイドさんは紅茶を入れて待っていてくれた
至れり尽せりだ
『お風呂ありがとうございます』
「いいえ、クラムチャウダーはお出しできませんが」
『ふふっ…また今度で大丈夫ですよ』
ベットに腰掛けて紅茶を頂く
ジンジャーの香りが鼻の奥を抜けていき、身体を内側からも温める
ジンジャーティーのようだ
「……本当に…どうなるかと思いました…」
『私は絶対誰かが見つけてくれるって思ってましたよ』
「いえ……貴方に何かあったと思ったら居ても経っても居られなくて…」
そう言って紅茶の入ったティーカップを持つ手にジェイドさんの白い手が添えられる
紅茶を見ていた視線をジェイドさんに移すと、射抜くかのような真剣な眼差しをして見つめてくる
「ユウさん……貴方のことを考えると居ても経っても居られなくなるんです…」
『ジェイド…さん…?』
見つめていた瞳は近づいてきて、拳一個分程の距離まで近づく
反射的に目をギュッと瞑る…
しかし添えられた手は離れていった
目を開けると、大きな溜息をつきながら顔を手で覆って隠すジェイドさん
「わ、忘れてください…ア、アズールが待っていると思うので僕は行きますね…」
ゴンッ…
そう言ってベットから立ち上がり出て行こうとしたが、ドアの上枠に頭をぶつけてふらつきながら部屋を出て行ってしまった
『………へ…?』
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