なびく髪
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風が吹いて、髪の毛のなくなった首の後ろに風が通る
エースとグリムが昼休みに中庭で喧嘩して追いかけっこをしているのを、大きな木の下の木陰のベンチで見守る
デュースは先生に呼ばれたらしくて、ベンチにいるのは私だけ
そよ風が吹いて木々もざわついて、涼しい
今日は春のようにポカポカと暖かくて絶好のお昼寝日和だ。大きなあくびをした
あくびをした口を抑えた手をそのまま癖で無くなった髪の毛を触る仕草をして、から回る
「ベンチに座って大きなあくびをしてるのは誰かと思ったら…ユウさんじゃないですか」
『あ、アズール先輩だ。恥ずかしい所見られちゃいましたね』
校舎側から歩いてきたアズール先輩。
手には教科書や辞書、筆箱などを持っていて次の授業は移動教室なんだと分かった
私が座っているベンチに少し間を開けて隣に座る
「まったく…追いかけっこなんてして、彼らは元気ですね」
『ふふっ…割といつもの事なので何も感じません』
未だに喧嘩をしていて、魔法を使い出すのではないかと言う位に揉み合いになっている、エースとグリムを見ていたアズール先輩は視線を移して私の方を見た
「髪の毛、戻したいんですか?」
『え?』
「こちらに来た時の式典の時は髪の毛が長かったじゃないですか」
頭の後ろに視線を写されて、襟足を触る
『あー…髪の毛を切ったのは覚悟なんですよね…』
「……覚悟」
この世界に来てすぐ、あの鏡の間で沢山の人がいる時に直ぐに気づいた。この学校は男子校なのだと
オンボロ寮について直ぐに、胸にかかるほどの髪は襟足まで切った
この世界で生きる為に、髪を切ったのだ
女性だと浮くというのもあるが、どんな世界に飛ばされてでも生きてやるという覚悟と共に髪を切ったのだ
直ぐに女性だと気づかれるのは分かっていたが、この髪が伸びるまでに世界に帰るという願掛けでもあったのだ
「……そんな意味が…」
『ご、ごめんなさい!話が重かったですよね!』
「……もし…髪を伸ばせたら?」
『……。』
「もし、元の世界に戻る方法が分かったら今すぐにでも…戻りたいですか?」
強い風が吹いて、木々が揺れて葉っぱが落ちる
この世界全体が帰りたいのか?と聞いてきているような気がした。
アズール先輩の方を見ると、私の方を向いていて少し泣きそうな、悲しそうな顔をしていた
『……ふふっ…まだ、帰りませんよ』
「……え?」
『折角、違う世界に来るという貴重な体験を今してるのに、直ぐに帰りませんよ!それに…』
沈黙を破るかのように立ち上がって、木の木陰にあったベンチから立ち上がる
日のあたる、芝生の方へと出て振り返りアズール先輩の方を見る
『こんなにも、大切な人が沢山できちゃって帰ろうにも帰れませんよ!』
「………。」
『だって、髪の毛は魔法で元に戻るかもしれないですけど、元の世界に戻ってもみんなと会える魔法はあるとは限らないじゃないですか!』
「……はぁ…あなたって人は…」
そう言って、私にも聞こえるほどの大きなため息をついて呆れるような顔をした
「もし、元に戻る方法が見つかったとしても、絶対にこちらに来る方法を僕が見つけ出してから帰しますからね!」
『それでお願いします!だから、髪の毛もまだ良いです!』
『戻る時にアズール先輩の魔法で髪の毛を戻したら、一生忘れないじゃないですか!』
そんな話をしていたら、エースに噛み付いて離れないグリムを振り払おうとしながらユウを呼ぶ声がして、校舎側からデュースが歩いてきた
また、大きな風が吹いて短い髪をなびかせた