お菓子の魔法
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ガチャガチャ…トントントントン…
学園内の厨房にて、バニラの香りやクッキーの焼けるような香りが広がっていた
それと共に泡立て器がボウルを擦り立てる音、キウイや苺などを切る音が聞こえてきた
ユウはトレイ先輩直伝のフルーツタルトを作っていた
普段お菓子作りなどをしないからか、オロオロとしながら教わったレシピを何度も見て不器用ながらも作っていた
『う〜ん…レシピを教えてもらった時は簡単そうだな!なんて思ってたけど、実際に1人でやるとなると難しいし分からない事も出てくるな…』
生クリームはどれ位立てればいいのか、タルトは言われた通り焼いているはずだが、まだ焼き色が薄い気がして追加で焼いたら軽く焦げてる気がするし…わからない事だらけだ…
トレイさんに連絡をして分からないことを聞きたいが、聞き出したらキリがないし自分1人でやるんだと決めたので、なんとかしてみようと思った
何故フルーツタルトを作ろうと思ったかというと、ついこの間まで私が片思いをしていたジェイドさんが実は両思いで、付き合って下さいと言ってくれて舞い上がって喜んでいた。
そのジェイドさんに、差し入れというか…彼女っぽい事をしてみたいと思って今に至るのだ
『はぁ〜〜〜難しいよ〜〜…そもそもジェイドさんって甘いもの好きなのかな〜〜…』
「甘いもの、嫌いではないですよ」
『そうかな〜〜あんなに大人っぽい雰囲気なのに甘いもの好きだったらギャップすぎて可愛すぎる〜……ん?』
私1人しかいない厨房で呟いた独り言のはずなのに、何処からか返答が聞こえたぞ?
あたりを見回したら厨房の入り口の扉に寄りかかっているジェイドさんがいた
な、何故ここに!?
「トレイさんから聞いたんですよ、ユウさんがタルトのレシピを聞いてきてルンルンとしながら厨房の方に向かったって」
『…ひぃん……全て筒抜けになってる』
「僕のためにお菓子作りをしてくれるなんて、とても嬉しいですよ?」
そう言いながら、厨房の扉から離れて私の隣にきて、切っていた苺を一欠片取り口に入れる
苺を食べているだけなのに、どうしてこんなに色気が出るんだ、この人は
「甘いだけじゃなくてフルーツタルトだからさっぱりしていて美味しそうですね」
『ん〜…そうなんですけど、まだ出来てないし…というか上手くいっていないし…』
そう言いながら焼けて網の上で冷ましていたタルトを見た
焼き色がつきすぎたタルトからは少し香ばしい臭いがする
他にも、生クリームは少しボソボソになってしまったし、フルーツは切った大きさがバラバラで、ちゃんと最後まで作ったとしても渡せるような物になるとは思えない
そんな事を思っていたら、深いため息が溢れてしまった
「ユウさんが良ければですが、僕も一緒に作ってみてもいいですか」
『…え?』
「上手くいっていないなら、2人で知恵を出して作って2人で美味しく食べましょうよ。僕が紅茶も出しますので」
『……うわぁ〜ん…』
ゆっくりと私の後ろに回ってきて、後ろから抱きしめられてた
タルトの乗った網を掴んでいた手の上にジェイドさんの手が重なり優しい言葉をかけてくれる
なんて、優しいのだろうか…
少し涙目になりながらも、何度も頷いたらふふっと微笑まれて頬にキスをされた
あなたと一緒にタルトも作って、一緒に食べて、あなたが入れた紅茶を飲む
これ以上ない幸せだ
今度はプレゼントできるように頑張ろう