ヒレの誘惑
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パチャ…パチャ…
オクタヴィネル寮の中にある大水槽の上で足を水につけながらバタ足をしてみる
静かだった水面がバタ足によって揺らぎ、パチャパチャと水音を立てている
………
……
…
大食堂でグリムとエース達とお昼を一緒にし、トマトソースのパスタをクルクルと巻いて口に入れて、トマト独特の酸味を味わっていた時だった。
突如190cm超えのターコイズブルーの髪色をした双子の兄弟、リーチ兄弟に声をかけられ流れでご飯を一緒にすることになった。
私の前に座っていたエースとデュース、そしてグリムは両隣にいるリーチ兄弟を恐れながら昼食を口に運んでいた。
「あぁ〜あ…次の授業飛行術じゃん…やる気でねぇー」
頬杖をつきながら、シーフードドリアを食べるフロイド先輩の口から出た、ため息と愚痴
それを見てふふっと笑ってフロイド先輩を見るジェイド先輩。
そういえば、2人は別のクラスだと聞いたな
自分の次の授業は飛行術じゃないから他人事のようなのだろう。
「僕は次の授業、魔法史ですね〜お昼ご飯の後に魔法史があると、つい寝てしまうんですよね」
「へぇー小エビちゃんも次の授業嫌なのー?じゃあさーサボって俺と良い所行かね?」
嫌だとは言ってはいないが、確かに魔法史は寝てしまうし魔法の事はからっきし分からないので正直な所、1日くらいならと甘い考えが出てくる。
それに、フロイド先輩の言う良い所とはどんな所なのだろうと気になってしまう。
「んー…今日だけならー…」
「おいおい、後で怒られても知らねぇんだゾ?」
「1日くらい大丈夫でしょ。それに後でそこの2人からノート見せて貰えば良いじゃん?」
急に話を振られたエースとデュースはドキッとした顔をした後に何かに怯えるような顔になって頭を何度も下げて了承した。
一体何を見たんだ……
「じゃ決まり〜小エビちゃん早く行こう」
その気になったフロイド先輩に肩を揺すられて、頭が揺れる
おやおや…と隣のジェイド先輩には軽く呆れられながらもお昼ご飯を食べてフロイド先輩の言う良い所に向かった
…
……
………
そして、手を引かれて着いた場所がモストロ・ラウンジの大水槽の上だった
今は営業時間外だから、今は私とフロイド先輩しかいないから、静かなお店の中で聞こえるのは私のバタ足をした水音だけだ
フロイド先輩はついて早々人魚の姿に戻り大水槽の中に飛び込んでいった
元々、人魚のフロイド先輩からしてみれば冷たくて気持ちの良い水槽の中は良い所だろう
よくは見えないが深くにフロイド先輩が泳ぎ回っているのがうっすらと見える
私は人魚でもないし、泳げはするけどこんな深い水槽の中に入れば足がつかなくて間違いなく溺れる
それに男子校の中で過ごすために、女という事を隠しているので、そんな簡単に服を脱いで泳ぐことなど出来ない
「小エビちゃ〜ん!小エビちゃんも一緒に泳ごうよ!」
「僕じゃこの水槽に入ったら溺れちゃいますよー!泳ぐならヒレをくださーい!」
遠くの方で水面から顔を出したフロイド先輩にそう告げれば、こちらに戻ってきた。
遠くからでも分かる、フロイド先輩の大きなヒレはまるで水の中で揺れるシルクの布のようにゆらゆらと揺らぎ輝いていた。
こちらにきたフロイド先輩は水槽の淵に腕を組むように置いてこちらを見てきた
「フロイド先輩のヒレはとても綺麗ですね。キラキラとしていて」
「小エビちゃんに褒めて貰えるの嬉しい。もっと近くで見てよ」
ドボンッ…!
そう言うと水槽の淵につかまっていた手を引っ張られて水槽に引き摺り込まれた
焦って口から空気がゴボゴボと出ていく中、パッと目を開けると水と光で屈折をして光り輝く鱗が揺らめくのが見えた。
すごく幻想的で見惚れてしまう。
だが、見ていたいがこのままでは息がもたなくて溺れてしまう。
「ごほっ…けほっ…」
「もぉー小エビちゃん戻るの早いよ」
「無茶…言わないでください…ごほっ…」
水面に顔を出したが、ここは足のつかない場所だ。必死に水中でバタ足をして空気を確保しようとしたが、それでも限界がある
また沈みそうになった時に後ろから腰に巻かれた腕によって沈む事は無かった
私の二本の足の横を揺らめく大きなヒレ
お伽噺に出てきた、人魚に助けられた王子はこの光景を見る事はできなかったのかと思うと少し残念だ。だって、こんなにも綺麗なのだから
「小エビちゃん口パクパクさせて餌を待つコイみたいだった」
「笑い事じゃないですよ!死ぬかと思いましたよ!」
「えー死ぬわけないじゃん…」
そう言うと、体をくるっと回されてフロイド先輩に向き合い見つめ合う形となった
綺麗な金色の目のオッドアイ、ギザギザの鋭い牙から見える赤い舌、濡れて顔に張り付いているさらさらな髪
全てが整っている顔に見つめられて、照れて顔を逸らすと頬に手を添えられて、また向き合った
「人魚のお姫様は人間の王子に恋をして、もし他の女と結婚したら泡になって消える契約をしたんだよねー」
「そういうお伽噺ですね…」
「小エビちゃんは俺が泡になって消えるって言ったら、番になってくれる?」
さらにぐっと引き寄せられておでこをくっつける位の距離になった…ち、ちかい…!
「そ、そもそも!僕は男なんですから番にはなれませんよ!」
「えー、小エビちゃん俺が気付いてないと思ってるの?」
「!?」
抱きしめられるように、近づき耳元の横に口が近くなり吐息がかかる
「俺、最初っから気付いてるよ。小エビちゃんが女の子だって…
だから、俺の番になれるでしょ?」
キラキラと輝くヒレが私の足に巻きついて離れない