夢想的乙女無双
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
不意に死のうと思った。
何となくとか気を病んでいたとかいうわけじゃない。
まるで自分を操っていた糸がぷつりと切れてしまったように、そう思ったのだ。
もう自分には住む場所もお金も家族も何もかもなくなってしまったから、生きていても仕方がないから、
おぼつかない足取りで、名前も知らない山に足を向けた。
適当に動いていれば死ねるだろうという安直な考えしか浮かばなくて、山麓でのらりくらりしていると、ふと何かの気配を感じた。
滅多に人も立ち寄らないであろうこんな山に住んでいる“何か”なんて、鬼以外に居るわけないことくらい馬鹿な自分でも理解できた。
お母さんもお父さんもお姉ちゃんも皆、へんてこな鬼に食べられたから。臓物は喰いちぎられてぐちゃぐちゃになって、顔も誰だかわからないくらいにぐちゃぐちゃになって、私もきっと同じように死ぬんだろうな、なんて他人事みたいな考えが頭の片隅で走馬灯と併せて駆け巡っている。
「此奴は上玉だ」
気持ち悪い
「美味い飯が自分から喰われに来るとはなあ」
気持ち悪い
「先ずは脚から喰ってやる」
耳障りで不快な音を発しながら掴みかかって来る鬼に、意を決した私は目を瞑った。
なのに、ちくりとも痛みはない。
「もしもし、お嬢さん」
「ひっ、」
「あら、怖がらせてしまいましたね」
目を開くとあの汚らしい鬼はどこにもおらず、代わりにとても可憐で可愛らしい女の人が一人。
ふわりと漂う藤の花の香りに、くらくらと目眩がした。
「あの、貴方があの鬼を殺したんですか?」
「ええ、私は鬼殺隊ですから」
鬼殺隊、そういえばそんな人達もいたような気がする。噂に聞いただけでよくわからないけれど。
淡々と私の質問に答える彼女は、問いかけを静止するように真っ直ぐと私を見据えた。
「お嬢さん、あなたに聞きたいことがあります」
「はい」
「どうしてこんな時間に、こんな人気のない場所にいるんですか?鬼が出るという話、知らなかったというわけではないでしょう?」
「ええと、」
「私がいない間に家族が鬼に殺されていて、家も住める状態ではなくなっていました。無一文になって、食べ物も尽きてしまい、特段仲の良い人がいたわけでもないから誰にも頼れないし、自分だけ生きているのもなんだか悪いなって思って」
「まあ、」
「だから死のうかなって思ったんです」
「…てっきりご家族とご喧嘩でもなさった家出少女だと思って助けてしまいましたが、逆に申し訳ないことをしてしまいましたね」
「あ、いえ… 絶対に死ぬべきだって思ってたんです。でもいざ鬼に食べられそうになったら死にたくない、なんて思ってしまっていて。馬鹿みたいですよね」
「いいえ、善良な人間が一人とて死んで良い筈がありません。貴方の命を救うことができて本当に良かったです」
そんな言葉をかけられたのはいつぶりだろう、視界がぼんやりと歪んできた。
「…もし、貴方さえ良ければ 私と一緒に来ませんか?」
「自分で言うのは少し気が引けますが、割と大きな屋敷に住んでいるんです。ここで野垂れ死ぬよりは随分とマシだと思いますが」
「とっても有難いのですが私たち初対面なのにそんなご厚意を受けるのは少し…いやとても申し訳ないです」
「ああ、貴方は対価を気にする方ですね?だったら、」
ふわり、藤の花の香りがより一層深くなる
彼女のやわらかい唇が私の頬元に近付いて、そのまま触れてしまった。
「え?…えっ?!」
「毎日お願いします。これなら、あなたの良心も痛まないでしょう?」
「私にはハードルが高すぎるのでやはりここで勝手に死んでおきます!先程はありがとうございました!」
「さあ!我が家へ帰りましょう」
「」
1/1ページ