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放課後

「越智の奴、あまり身に力が入っていないな」

「仁王不足なのかもしれない」

「どういう意味だ」

「彼女は今日1日」
「仁王の机から離れなかったんだぜぃ?」

「は?」
「マジっすか!?」

「たるんどる!」

「マジマジ。なぁ、柳」

「あぁ。無意識に席に行っていたみたいだが
それでも、俺達もそうだったように
仁王も同じだけ試合に出ているし、そうなれば
必然的に2人の時間も減るわけだ。
それで寂しくないわけがないだろう」

「そうだな」

「だが、あれでは話にならんぞ」

「そのようだね。乃愛」

「せい、いちくん・・・?」

「今日はそれをやったら上がって良いよ」

え?でも・・・

「仁王の所に行っておいで」

「!?」

だって朝は部活が終わってからだって言ってたのに

「そんなんじゃ、怪我をするだけだからね。
仁王の面倒を見て来てくれないか?」

「いいの?」

「あぁ」

「ありがとう」

制服に着替えて、コートを後にすると

「あんな嬉しそうな顔をしちゃってさ
仁王が羨ましいよ」

「精市でもそんな風に思うんだな」

「まぁね」

私服に着替えてからまーくんの家に行くと

「誰じゃ」

「あ、あたし」

「なんじゃ。乃愛か」

そう言って玄関を開けてくれたまーくん

「散らかっとるが、入りんしゃい」

そう言ってくれたまーくんは疲れたような顔をしていて

「お、お邪魔します」

兄妹が熱を出しているからなのだろうか
家の中はとても静かで

「何か食べた?」

「いや。なんも。あいつ等も寝とるしの」

寝てるのか・・・

キッチンもリビングも散らかっていて

「まーくんも何か食べた・・・?」

「俺は元々小食じゃ。昼間1食抜いたくらい
何とも思わん」

だから細いんだよ。そんな風に思っていると

「にーちゃ・・・」

「起きたんか」

フラフラになりながらも起きて来た弟君、

「のど・・・かわいた」

冷蔵庫をみているまーくんは
すぐに閉めて水をコップに入れていたけど

「おいしくない」

そりゃ、水だしね?

「ほうか。後で何か買って来ちゃるけぇ
まだ寝ときんしゃい」

「ん・・・」

そう言ってまーくんにしがみ付いて寝ているのであろう弟君

「またか」
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