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「乃愛」
「精市君・・・?」
「橘が、言ってはいけないことを言ったのは事実だろう?
それに対しての処置をしたのは、同じ学校の人間だ。
乃愛が気に病むのは少し違うんじゃないかい?」
そう、かもしれない
けど・・・
「試合、続けるよー」
そう言って来たサブちゃんの言葉に
再び目線を合わせると
こっちを見ているまーくんの姿
「におーさんって、あのマネと付き合ってるんっすか?」
「そうじゃ」
!?
そんなことを言いながらサーブを打ったまーくん
「そんな顔をしてたら、仁王も負けてはいられないな」
そんな、顔って、どんな顔・・・?
「不安で仕方がないって顔だな」
はい?
「コート上のペテン師なだけあって
アイツの得意プレーはトリックだよ」
うん。
そうだね?
なんて思っていたら
「零式・・・」
「ドロップ」
「ショット」
「それまで打てるようになっていたのか。仁王は」
「まぁ、不思議ではないよね。
中学でも見て来ていることだし
高校の試合でも散々見ていることだし」
「しかし、ラケットが0.1ミリずれているな」
そう言って来た乾君
「そんな僅かなずれがあるんだ」
「あぁ」