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「入院?」

「あぁ。親父のいる病院でな」

「忍足の親父って医者だしな」

「で。学校に復学をするまでに、約1か月半。
その間に氷帝では秋月が嘘で塗り固めた
信頼を得てしまっててな。
乃愛がいない事、分かってたはずだし
乃愛の兄貴が高等部にいるのも知ってたし
乃愛が越智の家に養女として入ってたのも
乃愛にも乃愛の兄貴にも言われてたのに
俺達が嘘を信じて、そのことを忘れちまった
ただそれだけだったのが、乃愛には
俺達も秋月の方も恐怖の対象にされてた」


「そうだろうね」


「それからすぐだ。乃愛が氷帝に在学しているが
中等部に来なくなったのは。
来るのは進路相談の時だけ。ただ、その日だけだ。
俺達とすれ違っても目すら合わせなくて
終わればすぐに帰っていく。もしくは高等部にいる兄貴の所にいるのが当たり前だったのかもしれない」

「そこまで、気づいていたんだ」

「琉唯から聞いてた」

琉唯ちゃんから?

「だが、あんな合宿所にいるとまでは
私も、他のテニス部員も知らなかった」

「嘘だろ?」

「本当よ?」
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