35


「じゃあ、そろそろ乃愛の泳ぐ練習を始めようか」

そう言った精市君の言葉に固まったあたし

「ヤリタクナイ」

「何か言ったかい?」

「無駄だぞ。乃愛。諦めろ」

そんなことを言って来た精市君と蓮二君の言葉を合図に
再び、浮き輪を持っているまーくんにプールの中に引きづりこまれてしまった

「ちょっやだ、やだ!」

まーくんにすかさず浮き輪をはめ込まれたあたしは
さっきと同じようにプカプカと浮いているだけ

「こないしてるんも、随分と可愛いもんやなぁ」

「そうだな」

「だが、学校のプールには浮き輪なんてないからな」

「確かに」

「絶対にしたくない」

そう言ったあたしに

「俺が教えちゃるけぇ。安心しんしゃい」

「無理!」

「無理じゃなか」

プールの中で、まーくんに手を引かれながら
ただ、ただ浮いているだけのあたし

「お前さん、泳ぐ気ないじゃろ」

「うん。ない」

そう言われたあたしは、ないとはっきりと答えたら
ブンちゃんに浮き輪を取られそうになって

「ちょっ」

「丸井先輩、それ外した瞬間
におー先輩に抱き着くだけっすよ?」

「それもそうだな。でもよー
俺達が教えてたら、誰にでも同じことするんじゃね?
コイツの場合」

そう言って来たブンちゃん

「多分ね?」

「多分はないやろ」

だって、泳がなくても生きていけるもん

「だって、こんなことしてるの
まーくんだけだもん」

「何言ってるの。立海に戻ったら
真田以外は皆やらせるよ」

そんな悪魔みたいなことを言って来た精市君

「絶対にヤダ。無理。ヤリタクナイ」

「全部却下」

「諦めろぃ。乃愛」

「幸村がやると言ったら、やる男なのは知ってるじゃろうが」

うぅ

ある程度、進んだところで
館内放送が入り、お昼の休憩時間になってしまったらしい
14/23ページ
スキ