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「乃愛は、ツキ以外は大体こう呼んでいる。
真田君にとらわれず、ね」
「そうですか」
「じゃあ、乃愛のクラスに何人いる?
テニス部の人間」
そう言われたとき
「5人ですね」
「5人か」
「その中にいるかもね。名前で呼べる人間」
!?
「乃愛」
お兄ちゃんの服に顔をうずめながら
「せい、いち、君」
そう言った言葉はお兄ちゃんたちには聞こえていたようで
「1人は言えているな」
「「え?」」
「聞こえたんですか?」
「あぁ。この距離で聞こえない方が可笑しいだろう」
「誰を言ったんですか?」
誰もが気になるであろう、答えを
「もう1度言ってやったらどうだ?乃愛」
「え・・・?」
「彼らには聞こえていないぞ」
「うー・・・」
「では、乃愛。こうしましょうか」