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「ところで毛利さんに安室さん」
「はい?」
「クイズをひとつ出しても構いませんか?」
「クイズ…ですか」
「あたしは兄程の頭脳が有るわけではないですが」
「寧ろいまだに勉強見て貰ってるもんな」
「ケンちゃんそれは言わない約束」
そして
「3人の男が経営する会社のパソコンのキーワードを推理するもので、名探偵の毛利小五郎さんならすぐにお分かりになると思うのですが」
ガヤガヤとし始めた庭ではあたしとケンちゃんはあまりその話題には興味がなく
携帯を見たケンちゃんが「マジかぁ」とぼやいていたので覗くと陣平君からの鬼電の嵐
「きっと楓の携帯も凄い事になってる」なんて縁起でもない事を言って来たけど、いざ覗けば電話やらメッセージやら全部陣平君で埋め尽くされていて
「うっわぁ」
「つーかなんで俺にまで」
「あー…陣平君にはこの間…」
お兄ちゃんたちも聞いていたことをケンちゃんにも話すと
「あちゃー、そういう事…道理でじんぺーちゃんの俺を見る顔が怖かったわけだ」
「どういう事?」
「そのままの意味」
森谷さんが毛利さんのお父さんに何かを渡していて
「それでは、これが3人のデータです。パスワードは3人に共通する言葉でひらがな5文字」
3人共通、ひらがな5文字
「楓さんもいかがです?」
「制限時間は3分」
そう渡された紙には
小山田力、昭和31年10月生まれ
空飛佐助、昭和32年6月生まれ
此掘二、昭和33年1月生まれ
と書かれている
「さぁ皆さんも一緒にお考え下さい」
砂時計を引っ繰り返した森谷さんは「それではスタートです」と言っていて
ケンちゃんと一緒に紙を見ているけど、いまいちよく分からなくて「んー」と考えていると
「流石に分かんないなぁ」
「あたしも」
お兄ちゃんやヒロ君はすぐにこの問題を解いちゃいそうだけど
「でも元号だけだよね、1年ずつ違うのって」
「あぁ」
降参していく人たちも多い中
「あぁ、そういう事ね」
「ケンちゃん分かったの?」
「あぁ」
「「桃太郎だろ/だ!」」
とケンちゃんと一緒に答えたのは毛利さんと一緒にいた少年で
「え?」
「桃太郎?」
「毛利さんでもわからなかったんですね」
「えぇ、降谷さんも?」
「はい。ケンちゃんが答えてくれたから分かったんですけどね」
「どういう」
「干支だよおじさん」
「上から申年、酉年、戌年」
「ほんとだ。猿に、鳥、犬だ」
「全部桃太郎に出てくる動物だったろ?」
「確かに」
「正解だよ。萩原さんに坊や。いや大したものだ」
拍手が上がったと思ったら少年は照れ臭そうに笑っていて
「それじゃ正解したご褒美に、コナン君と萩原さんには特別に私のギャラリーをご案内しよう。蘭さんと楓さんもご一緒にどうぞ」
「「はい」」
一緒に案内された場所には色々と飾られていて
「さあ自由にご覧下さい」
飾られている写真はどれも芸術的だ
「すげぇな」
「だねー」
「楓の場合あいつ等の方が関心持ちそうだな」
「「あいつ等?」」
一緒に来ていた毛利さんたちが疑問に思ったんだろう
「お兄ちゃんたちだよ」
「へぇ」
「でもこんな風にマジマジと観る機会ないし新鮮」
「だろうな。楓にとっちゃ新しいものは何もかも新鮮なんだろーけど」
「そうだけど」
なんて思いながら見ていると
「あれ?ケンちゃんこれって」
「あぁ、陣平ちゃんも関わってた事件のあった家だね。たしか黒川さんだったような」
ケンちゃん自分に関係のない事件覚える気ないな
「そう言えば黒川さん、殺されたんでしたね」
!?
「この家は、私が独立して間もない頃の作品でしてね。この先のものはみんな30代の頃のものですよ」
「30代で…」
「楓は既にアイツの嫁に行ってそうだな」
陣平君のお嫁さんになる。それは今も変わらないし変わることはこの先もない
刑事だっていう職業柄忙しいって言うことも分かってる。だけどやっぱり少しくらいはあたしの事も見て欲しいなって思っちゃうんだよ…
「「アイツ?」」
「坊主や蘭ちゃんは知ってんだろ、松田陣平」
「あぁ」
「あのサングラス掛けてるいかにも怖そうな」
「そう、そいつ。楓はソイツの好きな相手で楓の婚約者」
「(まじ!?)」
「じゃあなんで今日は一緒じゃないの?」
「知らないっ陣平君にでも聞けば分かるんじゃない?」
プイッとそっぽを向いたあたしに苦笑いをしたケンちゃん
「(これ続いたら松田刑事の機嫌悪いままなんだろーな…つーか続かなくても悪い気がすっけど)」
「若い頃は未だ未熟でねぇ。あまり見ないでくれたまえ。所で蘭さんは工藤君とは親しいのですか?」
「え?えぇまぁ」
「では楓さんは安室さんとは兄妹だと聞いていますが」
「えぇ。安室は母方の姓なんです。兄の職業柄今は母方の姓を名乗っていますが」
「そうなんですね」
「隣にいる彼は」
「兄の友人なんです」
本当は陣平君だったら良かったんだけど
毛利さんに話が再びフラれると、彼とは暫く会っていないと言っていて
「あ、でも今度の日曜日新一が…いえ彼の誕生日で一緒に映画を見る約束をしているんです」
「ほう、それは楽しみですね。楓さんにはないんですか?」
「ないですよ。会いたい彼は『仕事、仕事』で会ってもくれないので」
「(おいおい)」
「本当は今日も会う約束してたのに、仕事で会えなくなって」
「だから楓おねーさんこのお兄さんと一緒なんだね」
たまには陣平君がお預けを喰らえばいいんだ
「でも毛利さんは楽しみがあっていいね。誕生日プレゼントも決めてあるんですね」
「ううん、それは土曜日…彼、私と同じで赤い色が好きなんです」
こんな風に思ってくれる彼女がいる工藤新一君も羨ましいけど
「それに5月は2人とも赤がラッキーカラーで。だから赤いポロシャツプレゼントしようかなって」
「それは素敵なプレゼントですな。工藤君もきっと喜ぶことでしょう」
なんて思いながらも彼女たちはまた別の作品も見ていて
「あら?これ、米花シティービルじゃないですか?」
「そうですが?」
「私たち、ここの米花シネマ1で映画を見るんです。3日の夜10時にロビーで待ち合わせて」
「そうですか」
なんて言っている毛利さんは嬉しそうで
「楓も会いたくなったんじゃないの?じんぺーちゃんに」
「まさか」
「(ん?)」
「ずっと事件と付き合ってればいいじゃん」
「あらら」
「このビルは私の自信作でしてね。若いカップルがバースデーを迎えるには、これ以上の所はありませんよ」
==
邸宅を出て家に戻って来たけど陣平君がいるわけでもなくただ電話もメッセージもそれっきり途絶えていて
「陣平君のバカ」
5月は陣平君だけじゃない、お兄ちゃんやヒロ君の同期の人たちと初めて会った季節だ。そして陣平君に片思いをした季節でもある
今日はどうせ家に帰ってきても1人でいつもならお兄ちゃんやヒロ君がいない時には誰かいるんだけど、今日に限ってケンちゃんは合コン、陣平君は
「なにも食べる気しないな…お風呂入って寝よ…」
翌朝、携帯を見ても何も変わっていない所を見るともうなんかどうでもよくなっているのも事実で
ゴールデンウィークという事もあり、学校もお休みで
「暇になっちゃったな」
テレビを付けて、ココアを入れてロールパン1コだけかじっていると
「一昨日東洋火薬の火薬庫からオクトーゲンを含む大量の火薬が盗まれた事件で警視庁は100人を超す警察官を動員して捜査に当たっていますが依然として犯人の手がかりはつかめていません」
なんて物騒なニュースが入って来ていて
「気が滅入っちゃうから米花シティービルにでも行こっかな」
たまには1人で出かけて映画を見るのもいいかなんて思いながらいつか陣平君の隣で着たかったワンピースに袖を通して自分の身支度を整えてから米花シティービルに行くと
丁度よくすぐ見られそうな映画があってそれを買ってみた後
「あら?」
「え?」
ちょうど毛利さんも来ていて
「珍しいですね1人なんですか?」
「え、えぇ」
「萩原さんは?」
「ケンちゃんは今日は仕事」
「松田刑事もですか?」
「そうじゃない?」
「なんかこの間から松田刑事にすごく棘があるような」
「まぁちょっとね」
「?」
あたしの手には陣平君の好きな煙草のカートンと香水が入っている
「それって」
「一応ね。必要ないかも知れないけど」
「え?」
「彼は仕事が恋人みたいなもんだから。それを分かってはいるんだけど、やっぱりどうしても寂しくて、意地悪してる最中なの」
「意地悪って…」
なんて言って居る中外からはサイレンの音が鳴り響いていて
「やけにサイレンが鳴ってる」
「そうですね」
きっと何かあったんだろう。そう思っていても
「逃げ出さないんですか?」
「陣平君にあったらこう伝えてくれる?」
「え?」
「_____。_____って」
毛利さんを外に出すことに成功したあたしはもうこのまま動ける状態じゃなくて
==
「蘭!」
「お父さん!」
「無事か!」
「私は大丈夫。でも…」
まだ安室さんが。そう言った私の言葉に
「夢姫がどうした!?」
「松田刑事?」
「夢姫は!?」
「夢姫?」
「お前らにはこう言った方が速いな。安室楓」
「まだ…まだあの中に…」
「なんだと!?」
「それと伝言が」
「伝言?」
「好きでした。さようならって。映画館の方に上から瓦礫も落ちて来てて多分まだ」
「あ?何言って」
「それと、松田刑事に渡すプレゼントも持ってて」
「松田!」
「わりぃな伊達、ハギ」
「ん?」
「あのバカ迎えに行って来る」
「何言って」
「夢姫からの想いを過去形にするつもりも、さよならを言わせるつもりも俺にはねぇよ」
「お前…」
「それ夢姫に言ってやれよ」
「夢姫に寂しい思いさせてたのは知ってからさ。ちょっくら迎えに行って来る」
「はぁ!?」
「爆処の奴ら待機させておけよハギ」
「あぁ」
==
色んなものが崩れてくる中、遠くから聞こえてくる好きな人の声。
「もう末期かな…」
会えなかった時間の分だけ聞こえてくるような気がしていて、映画館のフロントの方に体を預けて座っているあたしにはそれすらも幸せな事で。でも瓦礫が落ちてくる寸前で滑りこんで入って来た人影
「夢姫!!」
「じ…ん…ぺい…君?」
「ったくお前はいつも無茶をしやがる。誰に似たんだか」
「しらない」
フロントの後ろの方に一緒に向かう時に、手を掴んでくれた陣平君
「見つけた」
「これって」
「あぁ。爆弾だな」
一緒に残っていた人たちは離れて行ったけど
「犯人は捕まえたの?」
「あぁ森谷帝二。彼奴が犯人だ」
森谷教授が?
爆弾のケースを慎重に動かしていく陣平君は機動隊のエースそのものだ
「で?」
で?
パチンパチンと銅線を切りながら
「ハギとのデートはどうだったんだよ」
そう聞いてきた陣平君に
「楽しかったよ」
「そうかよ」
「その森谷教授のガーデンパーティーだもん」
「そうかよ」
黄色の配線を切った陣平君
「電話も出ねぇ、メッセージの返答も来ねぇわで、ハギに連絡しても出やしねぇ。なんならアイツ俺の携帯にお前のパーティーに参加してる写真送りつけて来やがった」
あぁ…
パチン、パチンと次々に銅線を切っていく陣平君は
「ハギにあの日の夜言われたんだよ」
「言われた?」
「『あまりにも俺が夢姫を手放しにするなら俺が貰うってな。そしたらあの時夢姫が言ったように、今なら夢姫にも本当に姉ちゃんも出来るしな』ってな」
「そうなんだ」
「柄にもなく焦った」と話している陣平君はそんな素振り見せて来なくて
「夢姫」
「うん?」
「お前の持ってるそれは」
「陣平君の必需品」
その袋を持った陣平君は、煙草を咥えて、香水はあたしに吹きかけていて
「え?」
「俺はお前の想いを過去形にするつもりもねぇし、『さよなら』なんてぜってぇに聞かねぇぞ。その香水で少しは男除けにしてろ」
コードは全部切ったつもりでいたけど
「ちっまだ残ってやがったのか」
「え?」
「赤と青。お前ならどっち選ぶ夢姫」
赤と青?
「お前の好きな方を言えよ」
「え?」
「お前の好きな方の色を切ってやるから。それでドカンとなっても俺はお前と一緒だ」
陣平君…
「青…かな」
そう言ったあたしの言葉に青色の銅線を切ってくれた陣平君。爆弾のタイマーは止まっていて
陣平君は内線で「爆弾の解体は終了。残っている民間人の救助を頼む」そう言っていて
静かなこの空間ではきっと陣平君が言った言葉ですら聞こえてきちゃうかもしれない
