追走 Back streat!
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翌日、お兄ちゃんに気を付けて行ってこいと言われたあたしは
合宿所の入り口で修ちゃん達と一緒に合流した後、いつもの商店街に来ていた
「いつもと同じ商店街でも今日は見とるだけでも楽しいわ」
「秘密の場所に入って行くみたいでワクワクするね!」
「まるで宝探しをする子供だな」
「仕方がありません。夢姫はここ最近外出を許可されていませんでしたからね」
「仕方がねぇだろ?高熱出して部屋に閉じ込められてたんだからよ」
「そうですね。きっと今日はその反動なのでしょう。久々に合宿所の外に出るという」
「そんなん言うても夢姫も楽しみなもんは仕方ないやん」
「ねぇ修ちゃん!見て!」
「おー。かわええなぁ」
「ね!」
「子供と保護者の感覚でしかありませんね」
「夢姫は完全に子供だな」
「ご名答です。でも気持ちはわかりますよ」
「そうですね。身近にあるのに、入ったことのない場所。なんだか特別な感じがしますからね」
「えぇ」
「表通りは何度も来た事がありますが裏通りに入るのは俺も初めてです」
「何があるか楽しみやなぁ」
「うん!」
修ちゃんと一緒に路地裏に入ると
「表側と大分雰囲気が変わるんだね」
「せやなぁ。雰囲気あるなぁ」
「路地裏に入ってからまだそんなに歩いていないのに、まるで別の街に来たみたいですね」
「せやなぁ。駄菓子屋とか八百屋とかが並んどったとこの近くとは思えへんわ」
「そうだね」
「おい、見てみろよ。すげぇのがあるぜ」
凄いもの?
篤君の言葉の通り
「これは、見事なグラフィティですね」
「まさに路地裏って感じのアートやな」
「やっぱり写真よりも実物で見た方が刺激を貰えるな。クックック…新しいファッションの抗争が次から次へと浮かんで来るぜ」
「そんなすぐに浮かぶ篤君もすごいよね」
「せやな。芸術の事はよう分からへんけど、カッコええのは俺も同感やな」
「ですが、あまり手放しで褒められるものでもありませんね」
「えぇ、いくら芸術性があるとはいえ、許可なく壁に絵を描く行為は犯罪ですから。少なくとも自分でやってみようなんて考えないでくださいね、遠野君」
「言われなくても分かってるっての。そもそも俺は見る専門だからな」
「でもこれで入り口なんでしょ?見る場所が多そうだなぁ」
「これは、この先も期待が…ん?」
「どうかしたの?修ちゃん」
「あれ、今のって」
今の?
修ちゃんの目線の先には誰もいなくて
「誰かいたの?」
「似たような奴がおっただけや」
「そっか」
「おーい、仁王ちゃ~ん!」
「…!」
驚いた顔をした雅君は走ってどこかに行ってしまったけど
「あれ、行ってもうた。人違いやったんかな」
「いや、間違いなく仁王だったと思うぜ」
「あたしも雅君にしか見えなかったけど」
「こちらの事は見えていたはずですが、何も言わずに立ち去るのは不自然ですね」
「挨拶も返せない程急いでたってだけじゃねぇのか?」
「そう言えば昨日修ちゃんが路地裏巡りに誘ってた時に用事があるって言ってなかったっけ」
「ほう…用事ですか。ですが、今この場所にいるという事は、つまり彼も路地裏に用があったのでしょうか。…どうしても1人で来たい理由が」
1人で来たい理由?
「なにか知られたくない事でもあるんじゃないのか?」
「確かに、それなら辻褄は合いますね」
「しかし、アイツが知られたくない事か…全然想像できねぇな」
「篤君に同感」
「普段から彼はあまり素を見せたがりませんからね。夢姫には執着しているように見えていますが」
「そうなの?」
「「…」」
「気づいてねぇのは夢姫くらいじゃねぇ?」
「でしょうね」
「どんな隠し事をしているのか、正直、個人的には興味はあります」
あ、興味あるんだ?
「それなら、仁王ちゃんのあとを追いかけてみんか?」
「いや、流石にそれは」
「待て。人のプライベートを詮索するのはどうかと思うぜ」
雅君のプライベート…かぁ
「立海ではどうなんだよ」
「よく分からない…急に消えてふらっと戻って来るから」
「それじゃ分からないな」
「ほんなら、もし深い事情がありそうやったらすぐ引き返すってことで、どうや?それだったら仁王ちゃんも傷つけんやろ」
「だが、しかし」
「もしかしたら困りごとを1人で抱え込んでる可能性もあるやろ?誰にも言えずに悩んでるんやったら先輩として助けるべきやと思わへん?」
「それは…」
雅君が悩み事かぁ…その前にレン君が気付いちゃいそうな気もするけどね
「仕方ない、とりあえず追ってみるか。だが、引き際は見極めろよ」
「それじゃ早速仁王ちゃんの尾行スタートや」
「全く…」
「修ちゃん、楽しんでるでしょ」
「そないなことあらへんよ」
雅君を追いかけて数分
「さっきから行ったり来たりしてさっぱり行き先が分からねぇぜ」
「そうだね。何度も同じ場所を歩いて…ん?」
「どうかしたのか?」
「もしかして、仁王君は既に僕らの尾行に気づいているんじゃないかな」
「でも、こっちを見たりはしてへんかったで」
「ありえなくはないか」
「夢姫もそう思うんだね?仁王君ほど
「確かに、それならここまでの行動も納得がいく」
「ったく、俺らを騙すなんてとんでもねぇ高校生だぜ」
「ばれてるんやったら話は早いわ。いっそ本人に直接本人に聞いて…」
なんて言った直後に雅君は走ってどこかに行ってしまって
「あー…」
「どうやらこちらの動きが彼にも伝わってしまったようだね」
「これは早いとこ追いかけんと見失ってまうな」
雅君もテニス部なだけあって走るのは早いだろう。暑いのは苦手だと言っているけど
「あーん?そんなとこで何してんだ?」
「跡部君?」
「跡部君やないか。ちょっと仁王ちゃんを探しててな。どっちに行ったか知らへん?」
「あぁ、仁王か。それなら向こうの道を走って行ったぞ」
「おーきに」
お礼を言った修ちゃんが行こうとした途端
「ちょっと待って。なんだかおかしくないかい?急に跡部君が現れるなんて、少し都合がよすぎると思うんだよね」
「へ?」
「どういうことだ」
「つまり、今のは跡部君じゃなくて」
跡部君が仁王君に急に変わって
「流石は入江さん。まさかイリュージョンを見破るとはのう。じゃが少し気づくのが遅かったみたいぜよ」
走ってどこかに行ってしまった雅君に
「さすがは仁王だな。入江の指摘がなきゃ、気づかなかったぜ」
「とにかく今は、彼を追いかけよう」
