Chocolate
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山の前まで皆を送り届けたバスは、あたしだけを残していて
「あーん?なんでてめぇは」
「跡部。彼女は別の場所で待機のようなんだ」
「そうかよ」
「でも、夢姫の事だから何か言われて此処に居るんだろうね」
うぅ
「やっぱり」
「帰りたい。なんて事は許しませんよ?」
「育人君まで意地悪だ」
「おやおや。昨日あれだけ交渉したではありませんか」
「だってぇ…」
「では、外泊の件はなくなっても?」
「だ、駄目!」
「では諦めてください」
うぅ…
バスの人に出て貰って構わない。そう言った育人君はきっと最後に降りた理由は誰も乗っていないことを確認してから来てくれたのだろう。これだけデカイバスだ、あたし1人だけ乗っているとさすがに広すぎるのとバスの運転手と2人という事もすごく恐怖でしかなくて
「夢姫さん」
「は、はい」
「お着きになりましたよ?君島さんの言う場所に」
…ここ?
「ハウスですよね?」
「はい。でも間違いはないかと。それと帰りは皆さんと一緒に帰るからと皆さんを降ろした場所で待機との事なので、私はそちらで待って居ますね」
「あ、はい」
バスを降りて温室の中に入るとカカオが一面に広がっていて
「すご」
監督の字で『カカオの実を有るだけ収穫』と書かれている
「わお。こりゃ…」
なんて1人で呟いていると
「お、夢姫じゃん」
「がっ君…」
「俺様たちより後に降りたよな?つーことはバスでここまで来たのかよ」
「そう、なんだけど」
あたしの目の前にある看板に気づいたみんなは
「なになに、…スペシャル『カカオ』ミッション?」
「監督からの指示みたいですよ?『カカオの実をあるだけ収穫し、合宿所に持ち帰れ!』だ、そうですけど」
「ということは」
「カカオの実を抱えて、今来た道を戻れって事?」
「あるだけっちゅーことは、何往復かせなアカンみたいやで」
「マジか。あの崖と山と谷をかよ?でも夢姫も早めに降りてーよな」
「出来る事なら、暗くならないうちに降りたいなぁ。帰りは皆を降ろした場所だってあたしも言われちゃったから」
「だよな」
「面白い。この勝負受けて立とうじゃねーの」
「跡部は誰と戦うつもりなんだよ…宍戸と仁王じゃあるまいし」
なんで亮君と雅君…?
「それと先輩か」
「岳人この姫さんは分かってあらへんで」
「お前を掛けてるに決まってるに決まってんだろ」
「あたし!?」
「なんや、ホンマに気づいとらんかったんかいな」
「全く」
「でも、任務と言うからにはやり遂げなくちゃな!」
「お~!」
やる気を出している大石君と菊丸君。本当に別々の学校なんだろうかと思うくらいに息が合っていると思ってしまっている
「カカオと言えばチョコレート。チョコレートと言えばバレンタインだと思うんだけどここには女の子、夢姫チャンしかいないね」
「切ないこと言うなや」
「あーん?いつまでもごちゃごちゃ言ってんじゃねー。スペシャル『カカオ』ミッション、とっとと始めようぜ。岳人の言う通りこいつを降ろすなら最初は少ない方が良いだろ」
やぁと入って来たのはせーちゃん達で
「夢姫もいたんだね」
「そうなんだけど」
「わりぃな夢姫は早めに降ろさねーと」
「どういう意味じゃ」
「先輩から、暗い所が駄目な話は聞いてんだろ。俺達が崖の上で練習してた時も夢姫は早めに降ろされてた」
「山は暗くなるのが早いっちゅーのも関係しとるんやろうな」
「なるほどのう」
雅君はあたしの方を見ていて
次々と集まってくる人数に
「夢姫」
「お兄ちゃん」
「カカオが意外とデカい。だからお前は1コもて」
「な!?」
「1コでもいい?」
「構わない。あの崖になれている人間がこちらにはいるからな。早めに降りてバスの前で待機していろ」
「はぁい」
そんな中
「カカオってチョコだばぁ?」
「カカオはチョコの原料や。加工せなチョコにはならんのよ」
「あ、そうなんか。教えてくれてありがとーやぁ」
なんて話も聞こえてきている中
「何撮ってるばぁ?」
「気にせんといてや。ただのテストや」
「ふーん?」
「チョコなぁ。そういや、そろそろやな…」
「バレンタイン?」
「せや。きっと今頃妹がソワソワしとるわ」
「へぇ」
「お兄ちゃんにあげようって?」
「いや、友チョコいうてクラスの子と交換するみたいやで。ついでに俺にもくれるんやけど」
「俺の妹も似たようなものかな」
「へぇ。白石君もせーちゃんって妹さんがいるんだ?」
「あぁ」
「ほう、兄思いじゃのう」
「そういう仁王には、お姉さんがいたよね」
「いや、それ以上の詮索はナシじゃ。世の中には知らんでええこともあるき」
「初めて知った」
「夢姫の知らないことがまだまだあるみたいだね」
「うん。きっともっとたくさんあるよね」
「だろうね」
「せやけど、バレンタインに何が起こっとるんや」
「くだらんことを喋ってないでさっさと任務を遂行せんか!」
「のう、真田は母親にチョコ貰っとるんか」
「その様な事、今は関係ないだろう」
「関係なくはないとおもうけどなぁ」
「プリ」
「く…っ」
さすがせーちゃんに雅君。弦君の扱いになれていると言うか、中学も一緒にいただけあって扱い上手だなぁ
