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「ここ?」
「あぁ。今日からここで生活をする」
そう言ったお兄ちゃんはいつもと変わらない。きっと怖いと思っているのもあたしだけ
「夢姫」
「お兄ちゃん?」
「入ってみなければわからないが無理はするなよ」
「あ、うん」
お兄ちゃんと一緒に中に入ると、男の人たちばかりが揃っていて、あたしがお兄ちゃんの後ろに隠れてしまうと
「おいおい」
「なんで女がこんなとこに入れんだし」
「まぁ何か理由があるんだろ。来て早々に俺達を見てアイツの後ろに隠れちまうくらいだ」
「悪いな。コイツは俺の妹なんだ」
「「妹ぉ!?」」
ビクッとすると
「コーチ達には事情を話してはいるんだが学校に通えなくてな。4月で中学1年になる」
「つーことはまだ小学生か」
「あぁ」
「いい加減出て来い。ちびっこ」
「い、いやっ」
「随分なご挨拶だな」
「そうですねぇ」
「氷帝学園の幼稚舎で俺の見ていない所でラケットやらボールやらを凶器にされていたんだ。実際にやった奴が男だという事もカメラで判明している」
「な!?」
「おそらく夢姫はここでも俺以外のテニス選手はそう言うことをするかもしれないと思っている状態なんだ」
「なるほどなぁ」
「だが」
そう言った声に聞き覚えがあって少しだけお兄ちゃんの後ろから顔を出すと
「お、顔を出したな」
「そうだな」
「大丈夫だよ。お嬢さん」
お嬢さん?
「そう言えばコイツの名前は」
「夢姫だ。越知夢姫」
「そうか夢姫っつーのか」
「あ、はい」
「ねぇ夢姫ちゃん」
ちゃん!?
「今言われたような事は僕たちはしないよ」
「え?」
「確かにラケットもボールも時には凶器になんだろうがよ。俺達はラケットやボールを凶器にするつもりはねぇよ」
「あ…」
「先に荷物を片付けてくる」
「その前に」
その前に?
「彼女は一体どこに寝かせるおつもりですか」
「お兄ちゃんと一緒に寝る」
その言葉は衝撃だっただろう
「まだ中学生になっていないとはいえ、危機感がないと言うのか」
「ではコーチには話をしておきましょう。貴方は個室に入るべきです」
個室?お兄ちゃんと離れて生活をするっていう事?
小さく首を横に振って拒否を示すと
「随分と」
「なんか訳アリっていう所かな」
「そうだな」
「修さんならどう対処するか」
きっと誰が来ても変わらないもん。なんて思いながら宿舎の中に入ると
「待って居たよ夢姫ちゃん」
「お、おせわになります…っ」
「固くならなくていいよ。今日からここで自由に生活をしていいからね」
自由…
「テニスを見ているのも、氷帝から出されている課題をするのも、
夢姫ちゃんの好きな事をして過ごしていいんだよ」
あたしの好きな事…
「例えば、散歩とか読書とか。夢姫ちゃんにまで行動制限を懸けるつもりは無いからさ」
あ、そうなんだ
「それと部屋なんだけど、一応個室に夢姫ちゃん専用に部屋を空けてはあるよ」
空けてあるんだ?でも
「しばらく様子を見てもかまいませんか?」
「えぇ。構いませんよ。連絡を聞いていた時点でどうするかを決めるのも貴方方でしょうし」
そっか
お兄ちゃんと一緒に荷物を置いて外に出ると、すでに皆練習を始めていて
「見たことのあるジャージが沢山…」
「だろうな」
だろうな?
「へぇ奏多が言うてたことはホンマやったんやな」
!?
「何もそない驚かんでもええやろ」
「悪いな。あまり男に面識がないんだ」
「さよか。なぁなぁ」
「なんだ」
「越知じゃあらへん。こっちのちびっこいのに言うてんのや」
「あたし…?」
「せや。名前なんて言うん?」
「え?」
「俺らが中学の時見に来とったやろ。氷帝の奴等と」
気付いてたの?
「そうなんだ」
「あぁ」
「越知です。越知夢姫と」
「夢姫な。種ヶ島修二や」
「え…っと」
「なるほど。そう言えば彼女に我々の名前を教えていませんでしたね」
「確かにな」
なんて皆がそろって教えてくれたけど、どうしていいのか分からず
「夢姫」
「お兄ちゃん…」
「せやな。兄貴と同じ年なら俺達の事も兄貴と思えばいいじゃねぇか」
皆が、お兄ちゃん?
「そうだな。それがいいんじゃね」
==
そんな事を言われて早半年、未だにお兄ちゃん以外の皆と距離感がつかめないままお兄ちゃんを含めた20人近くの選手たちが遠征に行くという事になり
まだ中学生のあたしは連れて行けないとお兄ちゃんとコーチ達から言われてしまったのでお留守番
「え?」
「なんや、俺がいることが驚きなん?」
「あ、はい」
「随分と硬いなぁ自分」
「そ、んなことは」
「あるやろ。まぁツッキーもおらへんし仕方のない事やろうけど」
なんて言われていたその日の夜が最悪だったのだ
雷で停電してしまった宿舎で震えていると、おもいっきり開けられたドアに余計にびっくりして固まってしまったあたしに
「大丈夫かいな」
「あ…」
あたしを見てくれたのが修二君で
「大丈夫や。俺が一緒にいてやるさかい」
「しゅーちゃ…」
「かまへん。呼びやすいように呼んだらええよ夢姫」
「ありがとう…」
==
翌朝
「おはようさん」
「お、おはよう…ございます…」
「まだ眠そうやね」
「少しだけ」
それでも朝の空気を吸いたくて外に出ると一緒に来てくれた修二君
「夢姫」
「え…と」
「昨日みたく呼びやすいように呼べばええよ」
呼びやすいように?
なんて思っていた時に帰って来たお兄ちゃん達
「お帰りなさい」
「あぁ」
「でもなんで種ヶ島とこんなに距離が近いんだよ?」
「そ、そんな事は」
って言ってもズイッと来た遠野君にびっくりして修ちゃんの後ろに隠れると
「ほう」
「意外だな」
「?」
「お前の事だから何が何でも越知の所に来ると思っていたが」
「あ…」
「問題ない。其れだけ夢姫が安心できる何かがあったんだろう」
そうなのかなぁ?
「まぁ練習は午後からだ。ゆっくり休んでおけ」
「あぁ」
あたしも少しだけ休んでから室内でお兄ちゃんがテニスをしている場所が見れる場所で氷帝から出されている課題をしているときだった
「ほらな、ここにおったやろ」
「その様ですね」
「!?」
「あからさまに驚かれるとは思いませんでしたが」
あたしの出している課題を見ている君島君は
「そうですね。では夢姫さん」
「?はい」
「こうしましょう。夢姫さんの出来ない課題を我々が見られる限り見ましょう」
「え?」
「その代わり、貴方と我々にあるその壁を自分で壊しなさい」
壁?
「そうすれば自分で出来る範囲の事が増えて来るでしょうし、これからの事も見えてくるかと思いますよ」
「あ、はい」
「せやかてあの雷で停電になった言うたやろ」
「えぇ」
「あん時、夢姫俺の事修ちゃんって言うたんよ」
「ほう。では夢姫」
「へ?」
「時間がかかっても構いません。自分の呼びやすいように我々の事を呼ぶといいですよ」
「でも」
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