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「テニス部の試合がある時は全部お兄ちゃんと一緒に同行もしていた。関東大会も全国大会も練習試合も全部見に行っていた」
「へぇ」
「それは俺達の時も見に来ていたからあまり驚かないけど」
「そうだろうね。でもあたしにとっては其れが新鮮だった。今まで氷帝でしか見てなかった景色をお兄ちゃんが広めてくれたのも事実で地区大会も都大会も見慣れた顔ぶれだったって言うのも会ってあまり興味なかったんだけど関東大会と全国大会は違う。此処に居る選手の大半を関東大会と全国大会で観てたの」
「は!?」
「お兄ちゃんと対戦した選手だってこの中には沢山いる。ジュウ君もそうだし、修ちゃんだってそう」
「は?」
「ジュウ君は確実にお兄ちゃんよりも強いよ。実践で負けちゃってるのも事実だし。お兄ちゃんが中1の時に岡山が、中2、中3と氷帝が全国で優勝をしているの」
「な!?」
「でも対戦経験は圧倒的に凄かったと思うよ。ジュウ君だけじゃない。修ちゃんやカナ君ともお兄ちゃんは試合経験があるし。ない人物の方が少ないかもしれない」
「ほう」
「じゃあ氷帝を全国区にまで押し上げた実績は確かにあるって言う事だな」
「そういうこと。というよりも信じていなかったでしょう?」
「あぁ」
「高校生に上がった時にそのままあたしは中等部にいようとも考えたの」
「それはまた」
「だけど頭によぎったのは例の人たちがまだ氷帝にいるんじゃないかって言う恐怖と同じことをされると思ってしまった恐怖があって、如何してもいけなかった」
「なぁ、そのやってきた奴等は」
「もみ消すことさえさせて貰えなかったって言うのは聞いているけど」
「どういう」
「生徒がやったことだろうとお金でもみ消そうとしたけど見つけて来たのが榊先生。お兄ちゃんからも両親や祖父母に話をしてくれたみたいで、もみ消しをさせないようにしてくれていた。だからこそ公にはしない。けど氷帝に居づらくなったのかもしれない。氷帝を辞めざるを得なかったんだと思う。すでにいないという事も亮君達からは聞いているし」
「そうなんだ」
「で、お兄ちゃんが高校にあがるタイミング…中等部の卒業と同時にこの合宿所からお兄ちゃんに声が掛かったの」
「そんなはえーのかよ」
「早いよ。お兄ちゃんが行くときにコーチに話を付けてくれて特例としてマネージャー業務と資格を取るための勉強だとここに入れさせて貰えたの。だけど入った初日で竜君とかからもいろいろ言われてお兄ちゃんの後ろに隠れているのが安全だと思ったの」
「へぇ」
「それこそ最初の皆の反応も怖かったし。ただ無理矢理出そうとして来たジュウ君にも拒否を示したけど、お兄ちゃんが氷帝での出来事を話してくれたの。その返答に『なるほどなぁ』って返してくれたのが修ちゃん。修ちゃんとお兄ちゃんが試合をしていたのも、氷帝と舞子坂との練習試合をしていたのもあって聞き馴染んだ声だったのかもしれない。でもね出会った初日で
確かにラケットもボールも時には凶器になる。だけどラケットもボールも凶器にするつもりはないってそう言ってくれたの。で、最初マネージャー業務をするていう条件だったのに、きっと見てくれていたんだろうね斎藤コーチに『自由に生活をしていい』って言われたの」
「「自由に生活…」」
「難しいよね?散歩とか読書とか自分の好きなように時間を使っていいって教えてくれたの。テニスを見ているのも氷帝から出されている課題をするのもあたしの自由にしていいって。あたしにまで行動制限を懸けるつもりは無いって教えてくれた」
「すっげぇな」
「あの時個室も用意してくれていたのに、1人だと寝るのも怖かったあたしにとってはどうしていいのか分からなかった。室内から外に出れば見慣れたジャージが沢山あって、その中に修ちゃんがいてくれたの。修ちゃん見てないようでちゃんと見てくれてたの」
「じゃあ夢姫が種ヶ島先輩にずっとくっついてるのは」
「いや確かに我々よりも先に夢姫は種ヶ島に懐いてはいたけれど」
「来た当初は種ヶ島にも距離を置いていたな」
それこそ驚きだったんだろう
「夢姫には私たちを兄だと思えばいいと言ったのも種ヶ島だ」
「へ?」
「でもお兄ちゃん以外の人との距離感が掴めないまま半年ぐらいが経った頃、お兄ちゃん達も遠征に行くことになったの。そこにあたしは中学生だからと連れて行っては貰えなかったの。だけど全員遠征に行ったと思ってたあたしにとってはそこに修ちゃんがいることが驚きだった」
「へぇ」
「でもその日の夜が最悪だったの」
「「どういう」」
「雨も酷く振ってて雷もなってて。でもそれだけだったら良かったんだけど」
「それだけなら?」
「雷が合宿所に落ちたの」
「雷が落ちたくらいで」
「でもそれが昼間だったらの話。実際に事が起きたのは夜。雷が落ちて、停電になった時、中等部で手足を縛られて、真っ暗闇の部室に閉じ込められた恐怖がフラッシュバックしたの」
「「!!」」
「その時に部屋に来てくれたのが修ちゃん」
「え?」
「コーチ達じゃなくて?」
「うん。修ちゃんが来てくれたの。そんなワケも話していないのに来てくれるなんて思わなかったのもあるけど、『大丈夫か』って『一緒にいてやる』ってそう言ってくれたのは修ちゃんだけだった」
「それはまた」
「あたしも無意識に修ちゃんって呼んでたけど、それでも修ちゃんは『呼びやすいように呼んだらいい』ってそう言ってくれたの。そこからは良く修ちゃんと一緒にいることも増えてて」
「今に至るわけだ」
「そういう事」