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「悪いな夢姫。負けてもうた」
首を横に振ると
「泣き止みや」
「だって…だってっ」
「明日デートするんやろ」
「する…」
「泣き止まんかったらデートも行かれへんやん」
泣きじゃくったまま顔を上げると
「ったく。お前にとってはどっちも勝ちだったって訳か」
「?」
「と申しますと?」
「大曲と大人同士で組む選択肢もあったが勝ち上がった高校生の人数によっては最悪どちらも決勝に出られない。中高生と組むことで勝てば自分と育てた白石の。もし負けても相棒の晴れ姿が見られる。そしてなにより」
なにより?
「お前に引っ付いているその泣き虫の隣にいてやれる」
「!?」
「なんや気づいてたんかいな」
「気づくだろ」
「やっと涙は引っ込んだようやな」
「ほ…ほー君が変な事言うからっ」
「本当の事だ」
「そんじゃ俺は夢姫と歩きながら帰るわ」
「そうしてやれ。越知には俺から伝えておいてやる」
「頼んだ」
修ちゃんと一緒に歩きながら帰っていると
「泣き虫は卒業したと思うてたけどな。ここに来て更に涙もろくなったなぁ夢姫?」
「そうさせてんのは皆じゃん…」
歩きながら宿舎に戻って来てすぐだ
「スペイン代表の監督が日本人?」
「あ、あぁ」
「やぁ夢姫。お帰り」
「随分と目が腫れているようだけど」
「勘弁してやり」
修ちゃんから離れないでいると
「俺が負けたもんやから余計に離れんのや」
「ほう」
「で?」
「ん?大石どないしたん?」
「ずっとリョーマ君の方を見てるけど」
「そ、それが…実は越前の…」
「ああ
平然と行って来るリョーマ君に驚きの声が出ている宿舎で
「越前の父親ってあの伝説のテニス選手サムライ南次郎だろ!?」
「何でスペイン代表の監督に!?」
「さぁ?兄貴の生まれ故郷みたいっすけど…」
あのお兄さんの生まれ故郷…
「ちょっとプールで泳いで来まーす!」
「ビックリだろぃ」
「越前君そー言う事はもっと早く言いなさいよ」
「アイツもしかしてスパイなんじゃ…!?」
「心配ないと思うで切原君」
「そうだね。越前は、ネットの向こう側に立った相手は誰だろうと倒すだけだよ。それが父親だろうと兄だろうと」
「だろうね」
「そんじゃ夢姫は早めに寝かせなアカンから戻るで」
「え?」
「どういう」
「明日の休みは自由にしいや。幸村たちも」
「え?」
「俺と夢姫はデートやからな」
立海の皆だけじゃない。青学や他の中高生達も固まってしまっている状態になってしまって
「それじゃあ夢姫」
「うん?」
「立海に戻ったら俺達ともデートしようか」
「絶対にイヤ」
「酷いなぁ」
デートは修ちゃんとだから行けるんだもん
「それにそもそも決勝戦が終わって戻る時は修ちゃんと帰ってもいいって言われてるから、あたしは飛行機じゃなくて船旅だよ」
「は?」
「何言ってんだよ」
「そういう条件で行きは飛行機で来たんやもんなぁ?夢姫は」
「うん」
「あ、夢姫ちゃん」
「「コーチ?」」
「珍しいですね。こんな所にまで来るなんて」
「まぁちょっとね。それよりも越知兄妹には大事な話が来ていてね」
「ツッキーだけやないんか」
「えぇ。本来の話は越知君だけなんですが、夢姫ちゃんも一緒に聞いておいた方が良いでしょう」
「あたしも?」
修ちゃんと顔を見合わせていると
「そんなに時間を取らせるわけではありません。種ヶ島君とのデートには問題なく行けますよ」
修ちゃんとのデートには問題なく行けるような大事な話って一体なんだろう
「肝心のお兄ちゃんは」
「すでに来ていますよ」
すでに待機している。という事はあたし待ちか
「取り合えず行って来ぃ」
「そうする」
コーチと一緒に応接室に入るとすでに来ていたお兄ちゃんの傍に駆け寄ると
「来たか」
「うん。だってあたし達に話があるなんて言うから」
「では、話をしましょう」
コーチ達2人も揃っているとなると凄い緊張感だ
「越知君。まだ正式に決まった訳ではありませんが、アマチュアではなくプロへのスカウトの話が来ています」
「!?」
「今回話を貰ったスポンサーの意向だと品行方正で普段の生活態度にも問題がなく、チームとして活動する責任感がある条件に1番当てはまるのがキミのようです」
そ、んな…
「命を懸けたり、地獄に道連れにしたり…ちょっとプロ向きではない子たちもいますからねぇ。あ、海外の試合もあるから飛行機にも乗れないとね」
「お兄ちゃん?」
何かを考えるそぶりをしているお兄ちゃんを見ていると
「越知君の場合既にアマチュアになっているので次のアマチュアの大会からバックアップしてくれるそうです」
「え?」
「…」
「キミがプロ入りに即答できないのは矢張り毛利の事が?それとも夢姫の事ですか」
「夢姫は憶えているな。昨年の関東大会」
「うん」
「昨年の関東大会ですか」
「あぁ。昨年の関東大会で俺は…アイツからテニスを奪う所だった」
「そう言った選手は5万といますよ」
「でもそれを勝つ為に態と関節を外しているとしたら…」
「え?」
「サブちゃんがこの合宿所に来てお兄ちゃんとダブルスを組み始めた時、お兄ちゃんはサブちゃんにある条件を出しています」
「「ある条件?」」
「必要以上に関節を外させないという事。関東大会でお兄ちゃんに勝とうと態と外しているのをお兄ちゃんが気付かないはずがない」
「まぁ、そうなるよね。。キミが強ければ尚更。ねぇ太郎ちゃん?」
「太郎ちゃん?」
太郎なんて…いたっけ?なんて思っていると
「榊先生…」
「久しいな越知兄妹。相変わらず2人で1セットか」
「別にずっと一緒にいるわけでは無いですよ榊先生」
「そうか」
「越知月光。お前は昨年までの氷帝学園テニス部で何を成し遂げて来た。部員もお前を慕い、我が氷帝を全国区へ導いた」
「「…」」
「どうした?言いたい事があるならハッキリと言え」
お兄ちゃんが榊先生に伝えたのはサブちゃんとのダブルスの事だ。
「彼はいずれ自分を超える逸材です。明日の決勝を見てそれでも自分と契約したいと言ってもらえるのならぜひお願いします」
「その結果、お前が選ばれなくても…か越知?」
「無論です」
お兄ちゃんはあたしの方を見ていて
「お前はまた妹か」
「あの時から夢姫も色々と経験をしてきています。だからこその資格も取り今後の事も考えているのでしょうから」
気付いてたんだ…お兄ちゃんは
「今後?」
「そりゃ考えていますよ。この間篤君には突拍子もなく聞かれましたけど。あたしはお兄ちゃんがプロに上がった段階でマネージャー業務に専念したいと思っているので。ただそれを知ってるのはごく僅かですけど」
「それはまた」
「お前のその覚悟と甘さはスポンサーに伝えざるを得ないな。それと妹の方だが」
「あたし?」
「お前の実母の所在が分かった」
!?
「今更分かっても、あたしに会うつもりがないのは、榊先生がよくご存じでしょう?」
「そうだな。お前はそういう奴だという事も知っている。だがお前の母親が、今はオーストラリアにいると言ってもか」
ドイツにいる?
「会うかどうかは次の試合までに決めておけ」
「え…」
「会う、会わないはお前が決める事だ。越知と一緒に氷帝に来ていたお前もまた同じ氷帝の生徒にあることには変わりはない」
先生はそんな風に思ってくれていたんだ
「先生」
「なんだ」
「それは一体いつまでに」
「早い方が良いだろう。このW杯が終わるまでには決めておくと良い」
W杯が終わるまでには…
「焦らなくていい」
「お兄ちゃん」
「決めるのはお前だ」
「うん」
「話は以上だ。お前達、行ってよし!」
お兄ちゃんと一緒に部屋を出ると
「夢姫?」
みんな?
「行ってこい」
「え?」
「ここに居る間はあいつ等だってチームメイトだ」
「行って来る」
皆の所に行くと
「あの部屋って応接室?」
「でも何だって夢姫があの部屋から出て来るんだい?」
後ろを見るとお兄ちゃんは既にどこかに行ってしまっているのだろう
「あたしとお兄ちゃんに話があるって言うから行ってただけだよ」
「「話?」」
「うん」
「それは俺たちにも言えない話なのかい?」
「今はまだ…ただ」
「「ただ?」」
「せーちゃんに言ってた話に現実味が帯びて来ちゃったってだけの話で」
「!?」
「じゃあ夢姫は」
「まだ確定はしてない。けどそうなった時にきっと立海には通えるかってなったら無理だと思う」
「そっか」