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「赤也」
「部長?」
「立海テニス部部長として中学生の赤也に最後の助言だ。最後の1球までその瞳に焼き付けろ」
天衣無縫になっている手塚君はせーちゃんの打っているボールを難なく返していて
「やっぱり強い。まさか手塚部長が日本代表の前に立ち塞がるなんて…」
「手塚君が日本戦に出るっていう情報だけだったけど」
「誰だよ…手塚さんが二重スパイなんて言ったの。完全にドイツの手下じゃんよう」
「手下じゃないよ」
「でも!」
「日本代表合宿に来た時にはすでにドイツから手紙が来てた。手塚君がプロになる為の」
「な!?」
「確かに日本代表合宿には残っていて欲しかったのは事実。其れだけの実力も手塚君にはあって、でもそれは此処に居る皆も同じこと。でもそれでもドイツに送り出したのはあたしたち。もし逆に越前君がアメリカに渡っていたように、此処に居る誰もが海外からスカウトが来れば確かにあたし達も躊躇はする。でも手塚君と同じように送り出してあげるよ」
「夢姫さん…」
「あたしたちが手塚君にしたのと同じように。赤也君にドイツから来ていたとしても、アメリカから来ていたとしても。スイスやオーストラリアから来ていても送り出す。きっとそれは立海の皆だって同じだよ」
「え…」
「だからドイツの手下なんかじゃないの」
「確かに違ーよ。日本の為でもドイツの為でもねぇ。奴は自分の為に戦ってんだよ」
「そして、手塚君は今の自分のテニスを越前君に見せるため。自分の背中で戦っている姿をね」
「ゲームドイツ2-2!」
あっと言う間に手塚君に2ゲームを取られてしまったせーちゃん
「今の手塚には、僕達が束になっても適わないかもしれない」
「何でや。眼鏡の兄ちゃんの五感奪ったらええやん?」
「無理だよ遠山君。奪える確率0.3%…たとえ奪えたとしても『天衣無縫』で元に戻れてしまう」
あの時、お兄ちゃん達の…高校生たちの関東や全国大会の試合を今の高校生たちに見せてあげればよかった
「夢姫」
「修ちゃん」
「考えとることはよぉ分かるけどな。其れは敵わない話やろ」
「そうだけど…」
そんな中試合が手塚君が有利になって来ていて
「…何だよ。…してくれんじゃねーのかよ?」
「赤也君?」
「証明してくれんじゃねーのかよ幸村部長ーー!!」
クソッといった赤也君に
「赤也君」
「夢姫先輩?」
「今のせーちゃんを見てはあげないの?」
「今の…幸村部長?」
「そう。赤也君にしっかりと今のせーちゃんのテニスを見て欲しくて証明をしてくれているじゃない」
「え?」
「あれがきっと立海テニス部の部長の背中なんだよ」
「夢姫先輩」
「そしてこれからもっと目標にする人でしょう?」
せーちゃんと手塚君の試合に
「何とか食らいつき始めた!?」
食らいつき始めたせーちゃんに
「いつの間にか互角に打ち合ってやがる『天衣無縫』な手塚相手に」
「幸村君は今、自陣に来たボールを返すことしか頭にない。何故なら彼は自分自身の五感を奪ったから」
「自分の五感を奪っちゃうだなんて」
「自ら五感を放棄することでテニスに必要な感覚のみを極限まで高めているって訳か…とんでもねぇ奴だな」
「そう…あれが幸村君の『天衣無縫』対策『零感のテニス』」
零感のテニス…
「幸村君は『天衣無縫の極み』にどうやらトラウマを抱えていた様だ」
トラウマ…
「確かに…」
「ゲーム日本3-2!」
「やっぱ凄ぇぜい幸村君!」
「再び盛り返し始めた!?」
再び撃ち始めたせーちゃん達
「幸村は今…過去の己を清算しているのだ」
「ゲーム日本6-5!」
「俺に越前を重ねてた様だな」
「あーーーっスッキリした」
「あんなせーちゃん、あたし初めて見た」
「いや」
「あんな清々しい幸村君…久々に見るだろい」
久々に見る?
「天衣無縫の手塚と越前を重ね合わせ…」
「あの時のトラウマを己の手で滅却する」
弦君とレン君で話をしていて
「幸村よ、待って居たぞ。この瞬間を」
1セット目がこんなに長いだなんて久々かも知れない
お互いに譲らない試合で
「幸村が先に仕掛けた!?」
「流石手塚だ!動じず足元へパッシクングを沈めた」
左手に持ち替えているせーちゃんの行動も
「手塚には読まれている!?」
打ち返されたと思っていたボールは
「左手で打つと見せかけて」
「side右手に持ち直し角度を付けて手塚を欺いた!?」
「ゲーム日本7-5!」
戻ってきたせーちゃんに
「1セット目お疲れ様」
「あぁ」
ドリンクを渡すと
「夢姫」
「うん?」
「このドリンク補充しておいてくれるかい?」
「こんなのでいいのなら」
「頼むよ」
「分かった」
コートに戻って行ったせーちゃんは2セット目も早々に
「ゲーム日本2-0!!」
2ゲームを連取していて
「『
「ゲーム日本3-0!」
「ねぇ修ちゃん」
「ん?」
「きっとせーちゃんが神の子って言われる所以はこういう事なのかもしれないね」
「さよか」
「これが神の子幸村精市!!」
「この試合行けるっすよ!」
「如何なる状況でも相手は手塚だ。油断は敗北に繋がるぞ赤也!」
「立海が、皆がせーちゃんを見ているように。青学が、此処に居る皆が手塚君を見ている」
「去年中学生の全国大会を見せに行ったのは正解だったようやな」
「え?」
「此奴等を入れるためだけに行かせるんやったら別にコーチだけでもええやろ。そこをあえて夢姫にしたんは気休めやないで。夢姫に此奴等のテニスを見せたかったっちゅー話や」
そうだったんだ
「あ、あれは!?」
「『手塚ファントム』!!」
せーちゃんの返したボールが
「コートの外に行かない!?」
「『手塚ファントム』を打ち破ったぁ!!」
「幸村君が勝つだろぃ!」
「いや見てみろ…」
手塚君の方を見ると
「手塚はあの位置から
「ゲームドイツ6-3!!」
「取られちゃったね」
これでファイナルセットにまで持ち込んでしまった。こうなるとはある程度予想はしていたけど
「『
「俺が以前戦った時のように回転を和らげ打球を繋ぎ奴の腕の負担の隙を突くプレーは」
「ドイツでトレーニングを積んだ手塚には最早通用しないと考えていい」
「もう…腕への負担はないようだね」
「1-1ファイナルセットプレイ!!」