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「夢姫」
「うん?」
「昨日の夜言っていたのは」
「そうだよ。カズ君と練習をしていたのは左利き対策として手塚君を倒すつもりで練習をしていたんだよ」
「U-25W杯準決勝S2幸村精市VS手塚国光の試合を始めます!!」
「夢姫」
「うん?」
「持っていて欲しい」
「「!!」」
「いいよ」
せーちゃんからジャージを預かるとコートに入ったせーちゃんと手塚君からはただならぬ雰囲気が漂っていて
「これ、高校生同士の試合だよなコレ…」
「…なんだこの張り詰めた空気」
観客の声が聞こえるくらいに研ぎ澄まされていて
それはきっとドイツの選手たちにも中学生や高校生たちにも聞こえているだろう
「神の子の兄ちゃん…なんや雰囲気違わへん?」
「この試合、僕らは一瞬の瞬きすら許されない」
それだけの空気と緊張感が日本代表にも流れていて
「夢姫」
「育人君」
「そろそろ潮時です。彼らに検査の結果を伝えてもいいでしょう。本人は既に知っている事ですし」
「そう、だね」
持っているジャージを掴む手にも力が入ってしまう
「夢姫がそうやって越知や種ヶ島のジャージ以外を持つのは初めてですね」
「そうかも知れない。でも今は同じ学校で同じ場所で生活をしている人間同士だもの」
「そうですね」
試合が始まったと同時に
「巧い!手塚さんの逆を突いた!!」
激しい打ち合いをしているせーちゃんと手塚君
「日本でも見られなかった試合をこんな所で見ることになるとは思いもしなかったけど」
「ああ」
「かろうじて返したっチャンスボールだ!」
「いやまだだ!手塚はラケットに当てさえすれば自在に回転を操れる!」
「せーちゃん…」
楽しそうだなぁ
「今までの幸村さんと何か違う!?」
「見てみいコシマエ!」
皆手塚君とせーちゃんのこの試合を食い入るように見ていて
「のっけから手塚を圧倒してる!?」
「いける!!」
「いけるでぇー!!」
「ゲーム日本1-0!」
「日本が完璧なゲームメイクで先制した!?」
「相手のウィークポイントを効果的に攻めている!」
「それに『左利き対策』も万全の様だな…徳川!」
「夢姫のお陰もあるのでしょうけど」
「あたしは何も。皆の健康管理くらいしかしてないよ」
「暗いじゃないだろう。テニスに関わらず選手の健康面を大切にすると言うのは大事な事だ」
「お前にその大事なことを任せているんだ。お前のお陰もある」
「俺と幸村君が練習終わりに飲めるようにとドリンクを置いてくれていたのも夢姫だろう」
「そうだよ?」
「助かったのも事実だ」
そっか
「それなら良かった」
「すかさず手塚もエース!?」
「0-15!」
「おおおおーー!!」
「手塚からリターンエースだ!」
なのに、次の瞬間から
「今度は激しいラリーの応酬だ!!」
「手塚は何故、『手塚ゾーン』を使わないんだ?」
「確かに」
「
「え?」
「『手塚ゾーン封じ』によって使えないんだ」
使えない?そんな事ってあるの?
「幸村をよく見てごらん」
「せーちゃんを?」
せーちゃんを見ていても普段のテニスと何ら変わりはないと思っていたのに
「そうか。左右の手でランダムに打ち回転を予測させない事で『手塚ゾーン』を封じているのか?」
「0-40!」
「そんな事簡単にできるか?」
「確かに…利き手じゃない時を手塚は見逃しませんね」
「去年の高校生のテニスの試合で氷帝と立海がぶつかった時、サブちゃんが関節を外した話をしたでしょう」
「そう言えばそんな話をしたな」
「あの話井には続きがあってね」
「「続き?」」
「うん。サブちゃんが関節を外して受診した病院にせーちゃんが入院してた。あの時あたしは誰か分からなかったけど、サブちゃんは気づいてた。せーちゃんがリハビリしている所もよく見ていたから」
「な…」
「幸村は筋肉や身体んバランスが偏らんよう毎日毎日リハビリで右手だけやなく左手でもトレーニングしやった事で無意識に新たな武器を完成させてたんが」
せーちゃんはコートの上で舞うように試合をしていて
「あれが左右で寸分たがわぬショットを打ちやる『
「ゲーム日本2-0!!」
「おおーっ手塚さんのサーブをブレークした!?」
全く…今の中高生達は
「恐ろしいね」
「え?」
「なんでもない。あたしは修ちゃん達の所に行くね?」
「あ、うん」
修ちゃんの所に行くと
「戻ってきたんか」
「戻って来ちゃった」
せーちゃんの試合を見ていると
「今の所はまだ様子見だね」
「あぁ。順調の様やけどな。アイツはまだ実力の半分も出しとらんやろうな」
「「!!」」
「それを言ったらせーちゃんだって」
「さよか」
「それにきっとあたしよりも皆の方が手塚君の事をよく知っているでしょう?」
「む?」
「あたしは去年の全国大会でしか見ていないけど実力は折り紙付きかな」
「だな」
「ハァーッハッハッ面白ぇ!!」
「ホンマ行けるでぇ幸村君…」
「幸村ぁ!手塚の強さは揺るぎない心の強さだ!決して乱れたり弱気になったりはせん!試合中に五感を奪われることなど無いと肝に銘じておけ!!」
「ふふ」
「夢姫?」
「今の高校生の強みはきっとこういう事なんだろうね」
「そうだな」
せーちゃんの打ったボールが呆気なく返されたと思ったら
「いよいよだね」
「せやな」
「『天衣無縫』」
「油断せずに行こう」
油断…か
「ねえ…テニス楽しんでる?」
「せーちゃん…」
「全く」
「お兄ちゃん?」
「お前は忙しいな。合宿所じゃ皆の心配をして、ここじゃ今は幸村の心配をする。その前には仁王の心配もしているようだしな」
「だって」
「そのうちお前は今度は立海の奴等を心配するんだろうな」
「そうやろうな。今までが俺達名だけでそれが今の高校生になっただけの話や」
心配は心配なだけど
「それでもおお兄ちゃん達も心配は心配だよ、あたしは」
「そういう奴やな夢姫は」
「今ここにいる中学生はさ、選ばれなかった中学生もだけど今の高校生に絶対的な信頼を置いてると思うんだよね」
「ん?」
「お兄ちゃんが氷帝の部長をしてた時も王だったように。青学は越前君が手塚君を含めた青学の高校生や青学にはいかなかったけど大石君にだってきっと信頼をしてるんだろうし、遠山君だって赤也君だって同じでしょう?」
「そうだといいけどな」
「そういう想いもせーちゃんは背負ってあのコートにいるんだと思うよ。特に赤也君には自分の後輩だから余計かも知れないけど」
「え…」
「昨年、越前と全国で戦ってから色々と会ったようだな」
「ふふ…お互い様だろ手塚?」
「だが、マネージャーとは言え女である彼女が此処に居る理由も分からないが」
「彼女は立海だけじゃないよ。あの日本代表合宿所のマネージャーであり、コーチだ。居ても何の問題もない」
せーちゃん…