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麻天狼関連 短編

はぁ、可愛い。
仕事の合間にそっと覗き見るのは、いつも上司に連れられて来る女の子。
三度目の来店でも初々しくキョロキョロとして、誰かに話しかけられる度顔を赤らめて俯く。可愛い……
本当なら彼女に近づきたいが、僕が付いているのはその上司。No.1はこういう時不便である。
女の子に興味を持ったのは彼女が初めてだった。実際女性恐怖症をもつ僕には女の子を好きになることなんてないはずだったのだ。
しかし、彼女だけは、僕の女の子への興味を引っ張り出した彼女だけは違った。

ふと珍しく目が合った。

彼女の無垢で純粋な瞳が僕の目をじっと見つめる。息を止めて彼女を見つめ返す。すると彼女がふにゃりと笑う。
釣られて微笑み返すと彼女は声を発っさず口だけを動かす。

ー目が合ったー

嬉しそうにそう言って上司の方に向き直る。むさ苦しい男ばかりの店内が春風を通したようだった。
仕事に戻っても頭のなかは彼女の笑顔がこびりついて離れない。その可愛さにスーツを脱いだとき悶絶した。





上司に連れられていつものホストクラブへと行く。何度来ても慣れないきらびやかと大金の出回り。自分が場違いなのは分かっていても連れられて来るのだから仕方ない。
それでも最近になって楽しみが出来た。上司がお気に入りのホスト達を側に付けて喋っている間に彼を探す。
私の楽しみ、それはこの歌舞伎町No.1ホストを拝謁することだった。
とても遠くから仕事中の彼を覗き見て、はぁイケメンだなぁとか思いながら過ごす。
上司を駆使したって絶対手の届かない彼をタダで見れるのだ。
そりゃあ見ておいた方が良いに決まってる。

「ね、聞いてた??」

ふいに上司に声かけられる。もちろん聞いてるはずなんかないが、この上司は適当に言ってもなんとかなる。

「もちろんです」

そう一言言えば彼女は満足そうに他のホスト達と話を広げる。
溜め息をついて、再び彼の方を見る。彼もまた女性と喋って笑っていた。
どんな話をしているのだろう……どういう風に喋るのだろう……
ふいに彼がこちらをみた。
目が合った驚きに固まるが嬉しくなってにやにやを押さえられなくなる。すると彼も笑い返してくれた。
そっと目が合ったと喜びを伝える。

「君もお酒いる?」

上司についていたホストにグラスを差し出され、彼から目をそらす。
グラスを受け取り彼を見ると既に話に戻っていた。
少し寂しいが、今日はラッキーだったなと貰ったお酒を飲み干した。
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