麻天狼関連 短編
こんな夕暮れ時の公園で…私ってば何をやってんだか。ぼろぼろと止まらない涙をなんども拭う。こんなの公共の場でやることじゃない…誰もいなくてよかったってものだ。
三年間の想いを伝えて、その気持ちが叶わないものとなってからもう30分。彼には当然先に帰ってもらった。だって好きな人にこんなひどい顔見せられないじゃん。
もう高校も卒業するんだからと、悔いなく終わりたい為に言った言葉は思っていたよりすっきりしてくれない。やっぱ言わなきゃよかった。本当は言わないつもりだった、でも兄が未練は残さないほうがいいんじゃね?とか言ってきたから…
兄は私が帰ればこの顔をみてすぐに察してくれるだろう…でも私は心配とか罪悪感とか持たせたくなかった。もう少ししたら兄は仕事で出かける、それを待ってから帰ろう。
兄はいつも軽い口調で言ってくるが、その中にはちゃんと私を思ってくれていることが分かるから。だから、私は責めたりできない。
振られたことは黙って自分の中で無理にでも消そうと目を閉じる。
ふと、足音が聞こえる。公園だもんね、誰も来ない保証はなかった…その足音が通りすぎるのを待つ。しかし、その音は目の前で止まった。
「…ここに、いたのか」
いつの間にか聞きなれた声に目を開く。私が知ってたころの学生服じゃない…スーツを着て私の目の前に立っていた。
「一二三が探しといてってメールしてきたから…なにかと思ったら、泣いてるし…」
「お兄ちゃんには言わないで」
兄、一二三の幼なじみの観音坂独歩。独歩君はどうしてか私の事を兄以上に心配してくれている。正直、兄よりも相談とかはしやすい存在ではあった。なんでも私以上に考えてくれるからいい人だなって思ってた。そのお人好しで損しないといいけど…
彼の弟は私の幼なじみなのだが、受験失敗からもうずっと会っていない。昔は四人でよく遊んだものだが、今はどうしているのだろうか…
「いいけど…事情くらい、説明してくれるよな?」
「別に、そんな心配することでもないし」
最早ほとんど兄のような存在でもあった。ワガママが許される家族のような…
ふいっとそっぽを向く。
「お前は…ほんと……」
呆れたような溜息をつく。そうそう、そのまま回れ右してどっか行っちゃいなさいよ。
そう思っているのに、独歩君はむしろ近寄って私と目を合わせるようにしゃがんだ。
「…なんなの」
「…こうして顔合わせるの、何気に久しぶりだろ?」
だからなにと睨み付ければ、怯む様子も見せずに口の端で笑う。
「…一二三の妹なんだ、俺だって心配くらいする…そんなに俺に話すの嫌?」
だって独歩君に話したらお兄ちゃんにもいくじゃない。私がお兄ちゃんには心配させないようにしてるってのに…まぁ、お兄ちゃんが独歩君に連絡入れたってことは、バレちゃってるんだろうけど……
「……知ってるでしょ」
そうだ、いっつも私の先を行く二人だ。忘れていた。
独歩君は目を伏せた。肯定だろう。私はいつの間にか止まった涙の跡を拭ってその場を立つ。隠しても仕方ない。
「振られたんだよ、ついさっきね」
独歩君はしゃがんだまま私を見上げる。
「…未練残さないつもりだったけど、駄目ね、もっと話したらとか、もっと仲良ければって考えちゃう」
未練を口に出して再び涙が込み上げる。あぁ…こんなに好きだったのに…
その先の言葉は涙に吸われて音になることはなかった。
涙を拭って拭って、目が腫れそうだ。そうしているとふいに独歩君は立ち、私を抱き寄せる。これじゃ、スーツがぬれちゃうよ?それでも私の頭を優しく引き寄せる独歩君は小さく、耳元で言う。
「すっきりするまで…泣いていいから…」
その代わり少しだけ、俺の話も聞いてくれる?と囁くように言う。
下からそっと独歩君の顔を覗き見る。そっと微笑んで話始めた。
「俺は、今までお前みたいに恋愛…とかしてこなかった。だから、その…彼女とか出来たこともない。色んな人に恋して…付き合って、振られて…お前もだけど、皆凄いと思う。だって、自分が傷付くくらいなら…俺は言えないから。そんなんだから…自分の恋に気付けなかった。ある時、ある女の子に好きな人がいるらしいって聞かされたんだ。正直、驚いた。その子は小さい時からずっと見てきてたから…いつの間に恋をするほど、大きくなって…その驚きと同時に、俺は傷付いた。ショックだった。その時気づかされたんだ…自分の恋に。」
独歩君はははっと笑った。そしてあっさりと告げた。
「俺は、その…お前が好きみたいなんだ…」
その告白には流石に驚かざるを得なくて、目を丸くして独歩君をまじまじとみた。
ただでさえ、久しぶりに会ったのに…それに私自身振られたばかりなのに…あまりにも思いがけない告白に動揺していると、独歩君は私を離して目を反らす。
「…いくらなんでも…唐突すぎるよな、ごめん」
それでも少しでもそういう目で見てくれると嬉しい…そう言って私と距離をとった。
「…泣き止んだな」
その後家まで送ってくれる独歩君は、それはもういつもどうりの独歩君で、送ってくれたあとは、明日も仕事だからと帰っていく。
その帰ってく姿を眺めて、まだ抜けない動揺と戦い続けた。
三年間の想いを伝えて、その気持ちが叶わないものとなってからもう30分。彼には当然先に帰ってもらった。だって好きな人にこんなひどい顔見せられないじゃん。
もう高校も卒業するんだからと、悔いなく終わりたい為に言った言葉は思っていたよりすっきりしてくれない。やっぱ言わなきゃよかった。本当は言わないつもりだった、でも兄が未練は残さないほうがいいんじゃね?とか言ってきたから…
兄は私が帰ればこの顔をみてすぐに察してくれるだろう…でも私は心配とか罪悪感とか持たせたくなかった。もう少ししたら兄は仕事で出かける、それを待ってから帰ろう。
兄はいつも軽い口調で言ってくるが、その中にはちゃんと私を思ってくれていることが分かるから。だから、私は責めたりできない。
振られたことは黙って自分の中で無理にでも消そうと目を閉じる。
ふと、足音が聞こえる。公園だもんね、誰も来ない保証はなかった…その足音が通りすぎるのを待つ。しかし、その音は目の前で止まった。
「…ここに、いたのか」
いつの間にか聞きなれた声に目を開く。私が知ってたころの学生服じゃない…スーツを着て私の目の前に立っていた。
「一二三が探しといてってメールしてきたから…なにかと思ったら、泣いてるし…」
「お兄ちゃんには言わないで」
兄、一二三の幼なじみの観音坂独歩。独歩君はどうしてか私の事を兄以上に心配してくれている。正直、兄よりも相談とかはしやすい存在ではあった。なんでも私以上に考えてくれるからいい人だなって思ってた。そのお人好しで損しないといいけど…
彼の弟は私の幼なじみなのだが、受験失敗からもうずっと会っていない。昔は四人でよく遊んだものだが、今はどうしているのだろうか…
「いいけど…事情くらい、説明してくれるよな?」
「別に、そんな心配することでもないし」
最早ほとんど兄のような存在でもあった。ワガママが許される家族のような…
ふいっとそっぽを向く。
「お前は…ほんと……」
呆れたような溜息をつく。そうそう、そのまま回れ右してどっか行っちゃいなさいよ。
そう思っているのに、独歩君はむしろ近寄って私と目を合わせるようにしゃがんだ。
「…なんなの」
「…こうして顔合わせるの、何気に久しぶりだろ?」
だからなにと睨み付ければ、怯む様子も見せずに口の端で笑う。
「…一二三の妹なんだ、俺だって心配くらいする…そんなに俺に話すの嫌?」
だって独歩君に話したらお兄ちゃんにもいくじゃない。私がお兄ちゃんには心配させないようにしてるってのに…まぁ、お兄ちゃんが独歩君に連絡入れたってことは、バレちゃってるんだろうけど……
「……知ってるでしょ」
そうだ、いっつも私の先を行く二人だ。忘れていた。
独歩君は目を伏せた。肯定だろう。私はいつの間にか止まった涙の跡を拭ってその場を立つ。隠しても仕方ない。
「振られたんだよ、ついさっきね」
独歩君はしゃがんだまま私を見上げる。
「…未練残さないつもりだったけど、駄目ね、もっと話したらとか、もっと仲良ければって考えちゃう」
未練を口に出して再び涙が込み上げる。あぁ…こんなに好きだったのに…
その先の言葉は涙に吸われて音になることはなかった。
涙を拭って拭って、目が腫れそうだ。そうしているとふいに独歩君は立ち、私を抱き寄せる。これじゃ、スーツがぬれちゃうよ?それでも私の頭を優しく引き寄せる独歩君は小さく、耳元で言う。
「すっきりするまで…泣いていいから…」
その代わり少しだけ、俺の話も聞いてくれる?と囁くように言う。
下からそっと独歩君の顔を覗き見る。そっと微笑んで話始めた。
「俺は、今までお前みたいに恋愛…とかしてこなかった。だから、その…彼女とか出来たこともない。色んな人に恋して…付き合って、振られて…お前もだけど、皆凄いと思う。だって、自分が傷付くくらいなら…俺は言えないから。そんなんだから…自分の恋に気付けなかった。ある時、ある女の子に好きな人がいるらしいって聞かされたんだ。正直、驚いた。その子は小さい時からずっと見てきてたから…いつの間に恋をするほど、大きくなって…その驚きと同時に、俺は傷付いた。ショックだった。その時気づかされたんだ…自分の恋に。」
独歩君はははっと笑った。そしてあっさりと告げた。
「俺は、その…お前が好きみたいなんだ…」
その告白には流石に驚かざるを得なくて、目を丸くして独歩君をまじまじとみた。
ただでさえ、久しぶりに会ったのに…それに私自身振られたばかりなのに…あまりにも思いがけない告白に動揺していると、独歩君は私を離して目を反らす。
「…いくらなんでも…唐突すぎるよな、ごめん」
それでも少しでもそういう目で見てくれると嬉しい…そう言って私と距離をとった。
「…泣き止んだな」
その後家まで送ってくれる独歩君は、それはもういつもどうりの独歩君で、送ってくれたあとは、明日も仕事だからと帰っていく。
その帰ってく姿を眺めて、まだ抜けない動揺と戦い続けた。