本編
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「式は来年の夏にしよう」
結婚の話が着々と進む。結局私は彼氏のプロポーズを受け、安定の道を選んだ。
観音坂さんを好きでいられるタイムリミットが出来てしまった。
もともと叶わない恋であり、さらに言えなくなったのだ。諦めも肝心だろう。
せめて澤田でいられる今だけは…
籍を入れるのは一ヶ月後と決め、いろいろな準備が始まっていた。
彼氏とそんな将来の話をしていても、私は観音坂さんのことを考えてしまう。
彼氏には申し訳ないけれど、それほど観音坂さんが好きになってしまったのだ。
それを、そんな苦しい気持ちをぶつける場所はどこにもない。
最近そのせいもあってか仕事効率が悪く、残業まみれになった。
放心したり考えていたりと仕事が手につかず、そのぶん残業時間が伸びての繰り返し。
観音坂さんはあれからも声をかけたりかけられたりしてはいたが、恋愛関係の話は出来なくなった。もともとしなかったが、あの日の話題には触れないようにしていた。
それ以外は世間話もしている。
「今日も…残業する?」
観音坂さんに聞かれて、多分することになりそうですと応えると
「なら…」
また夕飯を一緒に食べないか?勿論食べますと応える。残業する日は観音坂さんと夕飯を一緒することが増えた。残業仲間のようになってしまっているが、タイムリミットのある私はそれをわざと使っているのもあった。
彼氏も仕事で夕飯を作りに来なくなったため、どちらにせよどこかで外食しなければならない。
言うことは出来ないが側で好きと思うことくらいは許して欲しいのだ。
「そういえば、明日出張一緒だろ?…その打ち合わせも、兼ねて…」
そういえばと思い出す。珍しく、遠くの外回りが被って奇跡だと思ったのだ。
結婚話が進む一方でこんなに観音坂さんと一緒にいていいのかと思う。
「そうですね。」
観音坂さんの側だけでは他の何もかもを忘れて、ただ貴方を好きでいたい。
その切なさに一人苦しみながらも、タイムリミットまでは伝えられない恋をする。
「それじゃあ明日は駅前ですね。」
待ち合わせを確認して、その時の新幹線を予約する。また新幹線で遠くへ売り込みに行くのだ。
本来なら面倒臭いが、今回は観音坂さんも一緒ということもあって少し嬉しかった。
と、頼んでいた定食がくる。
今回は前のようなお高いところでなく、普通の和食屋にした。
和食というのも、別になんでもよかったのだが打ち合わせなら落ち着いた和食屋がいいかとおもっただけだ。特にこだわりはないが、とにかく値段だけは払える所がよかった。
「なんか、グルメ雑誌作れそうなくらい、いろんなお店行ってるな…」
そう言って笑いをこぼす観音坂さんに私は
「いっそ作っちゃいます?私達だけのグルメ雑誌…美味しかった所だけまとめるんです」
と冗談で返す。それでも本当に残業のお陰もあっていろんなお店に行っている。
美味しい所も、微妙な所もこの短期間に結構行った。二人とも物足りなくてもう一軒行ったりもしている。
「美味しかった所だけ…いいなそれ」
そう言って笑みをこぼす観音坂さんは定食の蓋を開ける。そこには蕎麦が入っていた。どうやら観音坂さんはざるそばを頼んだらしい。私はというとあの時と同じ、天ぷらにした。
一口かじる。あの時のとはどうしたって比べられないが、庶民の私としてはこちらも美味しい。今回のお店はあたりみたいだ。
明日に備えて今日はもう一軒行かずに帰ることになった。出張だというのにこんなワクワクしてしまうのは観音坂さんと一緒だからだろう。
明日の準備がはかどって、なかなか寝られなかった。
翌日、待ち合わせより30分も早くついてしまいまたいつものように駅弁を選んでいた。
あの牛タン弁当がまた置かれている。私は迷うことなくそれにした。
牛タン好きを唸らせる美味しさだったのだ。まさか、紐を引くと温かくなるとは…
それを買って待ち合わせの場所に戻ると、観音坂さんがいた。
「おはようございます!」
と元気よく言うと観音坂さんは
「おはよう」
元気だなぁと笑って返してくれた。
その笑顔にまたきゅんとしつつ、私は観音坂さんの荷物をみた。
「あれ、牛タン弁当…」
まさかここでも被るとは…牛タン恐るべし
新幹線ではお弁当食べるとき以外は寝ていた。二人とも残業続きで寝不足なのだ。
正直少しお喋りできるかなと期待したが、気がつけば爆睡。こんな時、あの彼女だったらずっと喋り通すのだろうけど…色気の無い自分には悲しくなる。
着いてからはのんびりする暇もお店を見る暇もなくすぐ営業先に向かわなくてはならなかった。
今回は送迎の車もないため、自分たちで行かなくてはならない。私達は事前に調べた交通経路で向かう。
その後営業先では何故か観音坂さんが謝りまくった。
というのも、相手の人がなかなか怖い人だったのだ。言葉遣いも悪く大声で不機嫌に聞くのだからそりゃあ怖いものだ。
私がビビって黙っているとその人に、なぜ喋らないんだと怒られてしまった。その時に声が出せなかった私をフォローしようと観音坂さんが割り込んで、怒りの矛先が変わったのだった。
そして、流れるままに観音坂さんがめちゃくちゃ謝るという…
大分疲れが溜まってしまい、営業先を出て二人とも自分の世界に入ってしまった。
もとはといえば、私が悪いのだ…私があの時声を出せていたら…
とか
あの人の態度がそもそも悪いんじゃないか
とか
観音坂さんを謝らせてしまった
とか、反省しまくる。その世界を先に抜けたらしい観音坂さんが沈黙を破った。
「…疲れたな」
それを聞いてようやく私も抜け出すことができた。
「…迷惑おかけして…すみません」
私が、もっと強ければ…
結局、私が弱かったせいで観音坂さんを怒りの渦に巻き込んだのだ。そう思うととても申し訳なくなってしまう。
「…いや、俺が…俺が上手く話せてたら…あんな怒らせたりしなかった…いつもそうだ…すぐに人を怒らせて…何もかも全部俺が悪い…」
「観音坂さん!」
危うくまた自分の世界に入ってしまいそうになった観音坂さんを呼び止め、気分転換にと私は続けた。
「夕飯探しがてら、お散歩でもしませんか?」
観音坂さんはそうだな、と頷く。そして私達はプラプラと歩く。
商店街を見つけ、商店街を歩いていると美味しそうなコロッケやら大判焼きやら唐揚げが売っていた。
「大判焼き…」
好物の甘いものについついめをひかれてしまう。
「…食べ歩きでもする?…その方が色々食べれるかもだし…嫌ならいいけど…」
気を効かせて観音坂さんがそう言ってくれる。ちゃんとしたお店に入らないのもありか、と私は頷く。
「丁度食べたいものがあった所です。…観音坂さんも大判焼き…食べますか?」
私が聞くと、観音坂さんは
「…クリームがいい」
と言った。私は分かりました待ってて下さいとそこに待たせる。
チョコレートとクリームを買って戻る。
どうぞと言ってクリームの方を手渡す。
「あの…お金」
「前にてんぷら奢ってもらったので、安いですけど奢らせて下さい。」
観音坂さんがでもという前に、熱々の大判焼きをほおばり美味しいですよと言う。
すると観音坂さんも、クリームの大判焼きをかじった。
「…美味しい…」
そう呟いて大判焼きを眺めているその姿にはまたきゅんとしてしまった。
もうここまでくると何をしていてもきゅんキュンしてしまう。いつの間にそんなに好きになっていたのだろうか。
ふと、現実を思い出してしまった。
タイムリミットは来月1日。それまでが好きでいられる期間。だからといってなにをする訳でもないが、この気持ちは大事にしたかった。
大判焼きをほおばる観音坂さんが可愛いくて、好きだなぁと思う。
こうして好きを自覚する度に、切なさが募っていくのだ。
どれだけ好きになろうと、絶対言えない。
そのことが私の胸をぎゅうっと締め付ける。
紛らわせるように私は大判焼きをかじった。熱々のチョコレートクリームがとても甘い。
「ご馳走さま…」
先に食べ終わった観音坂さんが嬉しそうに言
う。いえいえ、と返して私も自分の大判焼きを食べきった。
すると、ピコンとスマホが光る。画面を見ると彼氏からだった。
今日早く帰れる?
そんなラインに私は後回しでいいかと画面を消した。
「…いいの?」
観音坂さんが心配そうにこちらを見てくる。内容見られていたようだった。
「後で返します。」
すると、暫く黙りこんで俯いた後観音坂さんはおそるおそる私に問いかけた。
「…結婚…するの?」
あれ以来こう言った話をお互いにしていなかったため、少し話しずらさがある。
そして、好きな人に結婚する報告をするというのはなかなか辛いものがあった。
「…来月に…入籍することになったんです。」
声が震えた。バレてないといいけど…そう思って観音坂さんを除き見ると、観音坂さんと目が合った。さっと目をそらす。
「やっぱり…確実な方を取っちゃうんです。だから私は…叶わないのなら言いません。」
言ったら玉砕。それは良い、でもこの関係が崩れるのは嫌だ。なにより、観音坂さんに今の彼女よりも好きな人がいるって聞いてしまったのだ。叶わなすぎる恋だった。
思い出してしまって泣きそうになるのを堪える。
だからこの話題になるのは嫌だったのだ。気まずさと切なさでとても苦しくなる。
「……好きな人より…安定……そうか…」
観音坂さんは何か考え込むように俯いた。そして、ふいに近寄って来たかとおもえば突然強引に唇を奪われた。
何が起きたのか理解できずに、私は目を見開いた。そして解放されると、観音坂さんは照れるでも謝るでもなく言う。
「今や好きでもない相手と結婚するって…?そんなものなら強引でも俺がお前を奪い取るよ…」
静かに饒舌になる観音坂さんは再び私に近寄る。驚きすぎて私は一歩後ずさってしまうが、そんなのも構わず観音坂さんは言った。
「…好きな人が誰とか知らないけど、そいつを選ばないなら…俺が欲しい。」
そして私は腰を抜かしてしまった。それを見て我に返った観音坂さんが慌てて私を支える。
「…ごめん、驚かすつもりは……でも冗談とかじゃ、ないから…考えてみて。」
ちょっとあれだから先に帰ると言って観音坂さんは先に行ってしまった。
私はまだ頭の整理がつかず混乱していた。
観音坂さんが好きな人って…まさか…
そして彼氏への返信は忘れ去られた。
結婚の話が着々と進む。結局私は彼氏のプロポーズを受け、安定の道を選んだ。
観音坂さんを好きでいられるタイムリミットが出来てしまった。
もともと叶わない恋であり、さらに言えなくなったのだ。諦めも肝心だろう。
せめて澤田でいられる今だけは…
籍を入れるのは一ヶ月後と決め、いろいろな準備が始まっていた。
彼氏とそんな将来の話をしていても、私は観音坂さんのことを考えてしまう。
彼氏には申し訳ないけれど、それほど観音坂さんが好きになってしまったのだ。
それを、そんな苦しい気持ちをぶつける場所はどこにもない。
最近そのせいもあってか仕事効率が悪く、残業まみれになった。
放心したり考えていたりと仕事が手につかず、そのぶん残業時間が伸びての繰り返し。
観音坂さんはあれからも声をかけたりかけられたりしてはいたが、恋愛関係の話は出来なくなった。もともとしなかったが、あの日の話題には触れないようにしていた。
それ以外は世間話もしている。
「今日も…残業する?」
観音坂さんに聞かれて、多分することになりそうですと応えると
「なら…」
また夕飯を一緒に食べないか?勿論食べますと応える。残業する日は観音坂さんと夕飯を一緒することが増えた。残業仲間のようになってしまっているが、タイムリミットのある私はそれをわざと使っているのもあった。
彼氏も仕事で夕飯を作りに来なくなったため、どちらにせよどこかで外食しなければならない。
言うことは出来ないが側で好きと思うことくらいは許して欲しいのだ。
「そういえば、明日出張一緒だろ?…その打ち合わせも、兼ねて…」
そういえばと思い出す。珍しく、遠くの外回りが被って奇跡だと思ったのだ。
結婚話が進む一方でこんなに観音坂さんと一緒にいていいのかと思う。
「そうですね。」
観音坂さんの側だけでは他の何もかもを忘れて、ただ貴方を好きでいたい。
その切なさに一人苦しみながらも、タイムリミットまでは伝えられない恋をする。
「それじゃあ明日は駅前ですね。」
待ち合わせを確認して、その時の新幹線を予約する。また新幹線で遠くへ売り込みに行くのだ。
本来なら面倒臭いが、今回は観音坂さんも一緒ということもあって少し嬉しかった。
と、頼んでいた定食がくる。
今回は前のようなお高いところでなく、普通の和食屋にした。
和食というのも、別になんでもよかったのだが打ち合わせなら落ち着いた和食屋がいいかとおもっただけだ。特にこだわりはないが、とにかく値段だけは払える所がよかった。
「なんか、グルメ雑誌作れそうなくらい、いろんなお店行ってるな…」
そう言って笑いをこぼす観音坂さんに私は
「いっそ作っちゃいます?私達だけのグルメ雑誌…美味しかった所だけまとめるんです」
と冗談で返す。それでも本当に残業のお陰もあっていろんなお店に行っている。
美味しい所も、微妙な所もこの短期間に結構行った。二人とも物足りなくてもう一軒行ったりもしている。
「美味しかった所だけ…いいなそれ」
そう言って笑みをこぼす観音坂さんは定食の蓋を開ける。そこには蕎麦が入っていた。どうやら観音坂さんはざるそばを頼んだらしい。私はというとあの時と同じ、天ぷらにした。
一口かじる。あの時のとはどうしたって比べられないが、庶民の私としてはこちらも美味しい。今回のお店はあたりみたいだ。
明日に備えて今日はもう一軒行かずに帰ることになった。出張だというのにこんなワクワクしてしまうのは観音坂さんと一緒だからだろう。
明日の準備がはかどって、なかなか寝られなかった。
翌日、待ち合わせより30分も早くついてしまいまたいつものように駅弁を選んでいた。
あの牛タン弁当がまた置かれている。私は迷うことなくそれにした。
牛タン好きを唸らせる美味しさだったのだ。まさか、紐を引くと温かくなるとは…
それを買って待ち合わせの場所に戻ると、観音坂さんがいた。
「おはようございます!」
と元気よく言うと観音坂さんは
「おはよう」
元気だなぁと笑って返してくれた。
その笑顔にまたきゅんとしつつ、私は観音坂さんの荷物をみた。
「あれ、牛タン弁当…」
まさかここでも被るとは…牛タン恐るべし
新幹線ではお弁当食べるとき以外は寝ていた。二人とも残業続きで寝不足なのだ。
正直少しお喋りできるかなと期待したが、気がつけば爆睡。こんな時、あの彼女だったらずっと喋り通すのだろうけど…色気の無い自分には悲しくなる。
着いてからはのんびりする暇もお店を見る暇もなくすぐ営業先に向かわなくてはならなかった。
今回は送迎の車もないため、自分たちで行かなくてはならない。私達は事前に調べた交通経路で向かう。
その後営業先では何故か観音坂さんが謝りまくった。
というのも、相手の人がなかなか怖い人だったのだ。言葉遣いも悪く大声で不機嫌に聞くのだからそりゃあ怖いものだ。
私がビビって黙っているとその人に、なぜ喋らないんだと怒られてしまった。その時に声が出せなかった私をフォローしようと観音坂さんが割り込んで、怒りの矛先が変わったのだった。
そして、流れるままに観音坂さんがめちゃくちゃ謝るという…
大分疲れが溜まってしまい、営業先を出て二人とも自分の世界に入ってしまった。
もとはといえば、私が悪いのだ…私があの時声を出せていたら…
とか
あの人の態度がそもそも悪いんじゃないか
とか
観音坂さんを謝らせてしまった
とか、反省しまくる。その世界を先に抜けたらしい観音坂さんが沈黙を破った。
「…疲れたな」
それを聞いてようやく私も抜け出すことができた。
「…迷惑おかけして…すみません」
私が、もっと強ければ…
結局、私が弱かったせいで観音坂さんを怒りの渦に巻き込んだのだ。そう思うととても申し訳なくなってしまう。
「…いや、俺が…俺が上手く話せてたら…あんな怒らせたりしなかった…いつもそうだ…すぐに人を怒らせて…何もかも全部俺が悪い…」
「観音坂さん!」
危うくまた自分の世界に入ってしまいそうになった観音坂さんを呼び止め、気分転換にと私は続けた。
「夕飯探しがてら、お散歩でもしませんか?」
観音坂さんはそうだな、と頷く。そして私達はプラプラと歩く。
商店街を見つけ、商店街を歩いていると美味しそうなコロッケやら大判焼きやら唐揚げが売っていた。
「大判焼き…」
好物の甘いものについついめをひかれてしまう。
「…食べ歩きでもする?…その方が色々食べれるかもだし…嫌ならいいけど…」
気を効かせて観音坂さんがそう言ってくれる。ちゃんとしたお店に入らないのもありか、と私は頷く。
「丁度食べたいものがあった所です。…観音坂さんも大判焼き…食べますか?」
私が聞くと、観音坂さんは
「…クリームがいい」
と言った。私は分かりました待ってて下さいとそこに待たせる。
チョコレートとクリームを買って戻る。
どうぞと言ってクリームの方を手渡す。
「あの…お金」
「前にてんぷら奢ってもらったので、安いですけど奢らせて下さい。」
観音坂さんがでもという前に、熱々の大判焼きをほおばり美味しいですよと言う。
すると観音坂さんも、クリームの大判焼きをかじった。
「…美味しい…」
そう呟いて大判焼きを眺めているその姿にはまたきゅんとしてしまった。
もうここまでくると何をしていてもきゅんキュンしてしまう。いつの間にそんなに好きになっていたのだろうか。
ふと、現実を思い出してしまった。
タイムリミットは来月1日。それまでが好きでいられる期間。だからといってなにをする訳でもないが、この気持ちは大事にしたかった。
大判焼きをほおばる観音坂さんが可愛いくて、好きだなぁと思う。
こうして好きを自覚する度に、切なさが募っていくのだ。
どれだけ好きになろうと、絶対言えない。
そのことが私の胸をぎゅうっと締め付ける。
紛らわせるように私は大判焼きをかじった。熱々のチョコレートクリームがとても甘い。
「ご馳走さま…」
先に食べ終わった観音坂さんが嬉しそうに言
う。いえいえ、と返して私も自分の大判焼きを食べきった。
すると、ピコンとスマホが光る。画面を見ると彼氏からだった。
今日早く帰れる?
そんなラインに私は後回しでいいかと画面を消した。
「…いいの?」
観音坂さんが心配そうにこちらを見てくる。内容見られていたようだった。
「後で返します。」
すると、暫く黙りこんで俯いた後観音坂さんはおそるおそる私に問いかけた。
「…結婚…するの?」
あれ以来こう言った話をお互いにしていなかったため、少し話しずらさがある。
そして、好きな人に結婚する報告をするというのはなかなか辛いものがあった。
「…来月に…入籍することになったんです。」
声が震えた。バレてないといいけど…そう思って観音坂さんを除き見ると、観音坂さんと目が合った。さっと目をそらす。
「やっぱり…確実な方を取っちゃうんです。だから私は…叶わないのなら言いません。」
言ったら玉砕。それは良い、でもこの関係が崩れるのは嫌だ。なにより、観音坂さんに今の彼女よりも好きな人がいるって聞いてしまったのだ。叶わなすぎる恋だった。
思い出してしまって泣きそうになるのを堪える。
だからこの話題になるのは嫌だったのだ。気まずさと切なさでとても苦しくなる。
「……好きな人より…安定……そうか…」
観音坂さんは何か考え込むように俯いた。そして、ふいに近寄って来たかとおもえば突然強引に唇を奪われた。
何が起きたのか理解できずに、私は目を見開いた。そして解放されると、観音坂さんは照れるでも謝るでもなく言う。
「今や好きでもない相手と結婚するって…?そんなものなら強引でも俺がお前を奪い取るよ…」
静かに饒舌になる観音坂さんは再び私に近寄る。驚きすぎて私は一歩後ずさってしまうが、そんなのも構わず観音坂さんは言った。
「…好きな人が誰とか知らないけど、そいつを選ばないなら…俺が欲しい。」
そして私は腰を抜かしてしまった。それを見て我に返った観音坂さんが慌てて私を支える。
「…ごめん、驚かすつもりは……でも冗談とかじゃ、ないから…考えてみて。」
ちょっとあれだから先に帰ると言って観音坂さんは先に行ってしまった。
私はまだ頭の整理がつかず混乱していた。
観音坂さんが好きな人って…まさか…
そして彼氏への返信は忘れ去られた。
