本編
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パカっと、小さな箱を開いて私は途方に暮れる。彼氏が高校から今日まで私を愛してきた証が部屋の照明に照されて光をはなっている。
先ほど彼氏にプロポーズされたのだ。
いつか来るだろうと先延ばしにはなってきたが、よりにもよってこのタイミングで…
私が観音坂さんに恋してるって気がついたばかりのこのタイミングで…
一時的に受け取りはしたものの、どうしようと私は指輪を眺めていた。
安定したいなら勿論受け取るべきなのだ、私は可能性の無い観音坂さんは既に諦めて居たつもりだった。ここでこの思いを絶ちきる決意はまだ固まらなかった。
好き…でも言えない。
言わない時点で諦めるもなにも無いだろうと自分に言い聞かせる。それでも私の心は落ち着かないままだった。
それならいっそ言って破局してから彼氏と結婚するか?そんなの彼氏に申し訳ない…
私は指輪の箱をそっと閉じる。
そして翌日、モヤモヤした気持ちのまま出勤をする。コンビニで買ったおにぎりを食べ損ねた朝ごはんの変わりに食べ、仕事にとりかかる。
…手につく訳がなかった。
今日は残業確定だろう。こうも整理つかないとは…
集中力をちょこちょこ切らしてその度に椅子の背もたれに寄りかかって天井をぼうっと見つめる私に心配そうに同僚が話しかける。
「悩みごとでもあるの?」
悩みごと…そうだ、これは大分なやみごとだ。しかし私は疲れただけ、と応えた。
同僚は疑うように見るが、黙っているうちに諦めて仕事にもどる。
私も仕事進めないと…
止まった手を再び動かした。
あまりにも終わらないため朝コンビニで買った飲み物でお昼をすませ、お昼休みも仕事をした。
「澤田…」
ふと声をかけてきたのは私のなやみの張本人だった。私は一瞬手を止め観音坂さんを見る。
「…昨日、もしかして迷惑だった?」
あまりに唐突で、どうしてそんな結論になったのかも分からなくて私はすっとんきょうな声を出してしまう。
観音坂さんの中で何が起きたのか…彼は少ししゅんとした様子だ。
「な…なんでそんなことになってるんですか?楽しかったじゃないですか!」
私は否定して、ちゃんと楽しかったということを伝える。迷惑なはずがない…
それでも観音坂さんは相変わらず自信無さげに言う。
「だって、澤田相当疲れてるだろ…?」
どうやら今日の様子を見ていたらしい。私は恥ずかしくなる。観音坂さんにみられるほど目立ってしまったのだろうか…
「昨日出張してたもんな…そのことを考えずに俺は…」
観音坂さんがどんどん俯いていく。
「ま、まって!違うんですよ!」
慌てて首をふる。観音坂さんは少しだけ顔をあげる。
「でも、さっき隣の人に疲れてるって…」
そこも聞かれてたか…
同僚はお昼を食べに行っているらしい。立ちっぱにしてしまった観音坂さんをその同僚の席に座らせ、ちゃんと誤解をとく。
「違うんです、本当は私的な考えごとをしてしまっていただけなんです。」
考えごと…?と問われ、しかたなく好きな人の名前を伏せて私は一連の流れを話す。
昨日観音坂さんと別れたあと、彼氏が家に来ていたこと。彼氏が内定貰えたこと。彼氏にプロポーズされたこと。そして、本当は彼氏以上に好きな人が出来てしまっていること。
だからといって好きといえず、どうしていいか分からなくなっているということを話した。
観音坂さんに話してしまった。
好きな人を伏せてとは言え、言い終わった後少し恥ずかしくなる。
私が少し顔を伏せると
「突っ込んだこと聞いちゃって、ごめん…」
…と、観音坂さんが口を開く。
「…こんなの言っても、なににもならないかもだけど…確かに確実な方選んだ方が基本は良い、俺もそうしてきたと思う…でも、こういう時は……挑戦もありなのかなぁと…」
観音坂さんがいつものおっとりした口調で続ける。
「前に、安定なんてものは興味ないって言ってた奴がいるんだ…その時は敵対してたけど…場合によってはそれも…」
分からなくはないような…観音坂さんは考え込むように言う。
その様子を見て嬉しくなってしまった。一緒に考えてくれているのだ。好きな人張本人だとは露知らず、観音坂さんは話してくれた。
悩み自体は解決はしてはいないのだが、そりゃ嬉しいものだ。
「こんなん、解決にもならないよな…」
「そんな…一緒に考えてくれただけでも嬉しいです。ありがとうございます。」
観音坂さんは微妙な顔をする。まぁ、解決はしないけど本当にありがたかった。
「あの…私も…聞くだけになっちゃうかもですけど、愚痴だけじゃなく悩みとか話して下さいね?」
私がお礼の代わりにそう言うと、観音坂さんは少しだけ何か考えてるように黙ったが、やがて周りを少し見渡してから
「俺も…」
と、再び話しはじめた。
「その…彼女いるの知ってると思うけど…最近…彼女と一緒にいても、どうしても考えてしまう人がいて…彼女も好きだけど…その人を思うと、どうしてもそっちを優先させてしまう…」
観音坂さんは少し恥ずかしそうに話している。しかし、私は聞くんじゃなかったと後悔していた。先ほどの話で破局してみるのもありかなと考えていたが、この時点でそれも出来ないものになってしまった。
私はそんな気持ちを押し殺して聞く。
「その人をどう思ってるんですか?」
正直聞きたくないことをきいてしまった。
「…好き…なんだと思う。」
観音坂さんは顔を赤らめる。私は絶句してしまう。暫くお互い固まっていたが、観音坂さんがそれを破る。
「…でも言えない。」
言えない理由は言わなかった。私は、そうなんですねとほぼ空元気に言う。
「…おんなじです、私も好きな人には言えない。」
観音坂さんと視線を合わせることはできなかった。なにも言えずに破局してしまった。
泣きそうになるが堪えて黙る。
観音坂さんも顔をあげず息すら止めているのではないかというほど動かない。
どうしようもなくなったその時
「なーにしてんですか?お葬式ですか?独歩くんどうしたの?」
嵐が来た。涙が一気に引っ込んだためある意味救いだったが…
観音坂さんも顔をあげ彼女を無言で見ている。彼女は観音坂さんを後ろからハグして
「お昼休み終わっちゃいますよ?独歩くんお昼食べてないでしょ?ほら、いこ!」
というと観音坂さんの手を引いて食堂の方へ行った。
ムカつくが泣くことは我慢できた。
しかし、もう観音坂さんには言えない。私の知らない誰かを思う観音坂さんの表情を見てしまった今、破局することが分かっていても言うのは無理だ。
私が観音坂さんと接していない間に、誰かが観音坂さんの心を奪って行った。彼女以上に観音坂さんを虜にした人がいた。
悩んでいたことよりもその事実が私の残業時間を伸ばしたのだった。
先ほど彼氏にプロポーズされたのだ。
いつか来るだろうと先延ばしにはなってきたが、よりにもよってこのタイミングで…
私が観音坂さんに恋してるって気がついたばかりのこのタイミングで…
一時的に受け取りはしたものの、どうしようと私は指輪を眺めていた。
安定したいなら勿論受け取るべきなのだ、私は可能性の無い観音坂さんは既に諦めて居たつもりだった。ここでこの思いを絶ちきる決意はまだ固まらなかった。
好き…でも言えない。
言わない時点で諦めるもなにも無いだろうと自分に言い聞かせる。それでも私の心は落ち着かないままだった。
それならいっそ言って破局してから彼氏と結婚するか?そんなの彼氏に申し訳ない…
私は指輪の箱をそっと閉じる。
そして翌日、モヤモヤした気持ちのまま出勤をする。コンビニで買ったおにぎりを食べ損ねた朝ごはんの変わりに食べ、仕事にとりかかる。
…手につく訳がなかった。
今日は残業確定だろう。こうも整理つかないとは…
集中力をちょこちょこ切らしてその度に椅子の背もたれに寄りかかって天井をぼうっと見つめる私に心配そうに同僚が話しかける。
「悩みごとでもあるの?」
悩みごと…そうだ、これは大分なやみごとだ。しかし私は疲れただけ、と応えた。
同僚は疑うように見るが、黙っているうちに諦めて仕事にもどる。
私も仕事進めないと…
止まった手を再び動かした。
あまりにも終わらないため朝コンビニで買った飲み物でお昼をすませ、お昼休みも仕事をした。
「澤田…」
ふと声をかけてきたのは私のなやみの張本人だった。私は一瞬手を止め観音坂さんを見る。
「…昨日、もしかして迷惑だった?」
あまりに唐突で、どうしてそんな結論になったのかも分からなくて私はすっとんきょうな声を出してしまう。
観音坂さんの中で何が起きたのか…彼は少ししゅんとした様子だ。
「な…なんでそんなことになってるんですか?楽しかったじゃないですか!」
私は否定して、ちゃんと楽しかったということを伝える。迷惑なはずがない…
それでも観音坂さんは相変わらず自信無さげに言う。
「だって、澤田相当疲れてるだろ…?」
どうやら今日の様子を見ていたらしい。私は恥ずかしくなる。観音坂さんにみられるほど目立ってしまったのだろうか…
「昨日出張してたもんな…そのことを考えずに俺は…」
観音坂さんがどんどん俯いていく。
「ま、まって!違うんですよ!」
慌てて首をふる。観音坂さんは少しだけ顔をあげる。
「でも、さっき隣の人に疲れてるって…」
そこも聞かれてたか…
同僚はお昼を食べに行っているらしい。立ちっぱにしてしまった観音坂さんをその同僚の席に座らせ、ちゃんと誤解をとく。
「違うんです、本当は私的な考えごとをしてしまっていただけなんです。」
考えごと…?と問われ、しかたなく好きな人の名前を伏せて私は一連の流れを話す。
昨日観音坂さんと別れたあと、彼氏が家に来ていたこと。彼氏が内定貰えたこと。彼氏にプロポーズされたこと。そして、本当は彼氏以上に好きな人が出来てしまっていること。
だからといって好きといえず、どうしていいか分からなくなっているということを話した。
観音坂さんに話してしまった。
好きな人を伏せてとは言え、言い終わった後少し恥ずかしくなる。
私が少し顔を伏せると
「突っ込んだこと聞いちゃって、ごめん…」
…と、観音坂さんが口を開く。
「…こんなの言っても、なににもならないかもだけど…確かに確実な方選んだ方が基本は良い、俺もそうしてきたと思う…でも、こういう時は……挑戦もありなのかなぁと…」
観音坂さんがいつものおっとりした口調で続ける。
「前に、安定なんてものは興味ないって言ってた奴がいるんだ…その時は敵対してたけど…場合によってはそれも…」
分からなくはないような…観音坂さんは考え込むように言う。
その様子を見て嬉しくなってしまった。一緒に考えてくれているのだ。好きな人張本人だとは露知らず、観音坂さんは話してくれた。
悩み自体は解決はしてはいないのだが、そりゃ嬉しいものだ。
「こんなん、解決にもならないよな…」
「そんな…一緒に考えてくれただけでも嬉しいです。ありがとうございます。」
観音坂さんは微妙な顔をする。まぁ、解決はしないけど本当にありがたかった。
「あの…私も…聞くだけになっちゃうかもですけど、愚痴だけじゃなく悩みとか話して下さいね?」
私がお礼の代わりにそう言うと、観音坂さんは少しだけ何か考えてるように黙ったが、やがて周りを少し見渡してから
「俺も…」
と、再び話しはじめた。
「その…彼女いるの知ってると思うけど…最近…彼女と一緒にいても、どうしても考えてしまう人がいて…彼女も好きだけど…その人を思うと、どうしてもそっちを優先させてしまう…」
観音坂さんは少し恥ずかしそうに話している。しかし、私は聞くんじゃなかったと後悔していた。先ほどの話で破局してみるのもありかなと考えていたが、この時点でそれも出来ないものになってしまった。
私はそんな気持ちを押し殺して聞く。
「その人をどう思ってるんですか?」
正直聞きたくないことをきいてしまった。
「…好き…なんだと思う。」
観音坂さんは顔を赤らめる。私は絶句してしまう。暫くお互い固まっていたが、観音坂さんがそれを破る。
「…でも言えない。」
言えない理由は言わなかった。私は、そうなんですねとほぼ空元気に言う。
「…おんなじです、私も好きな人には言えない。」
観音坂さんと視線を合わせることはできなかった。なにも言えずに破局してしまった。
泣きそうになるが堪えて黙る。
観音坂さんも顔をあげず息すら止めているのではないかというほど動かない。
どうしようもなくなったその時
「なーにしてんですか?お葬式ですか?独歩くんどうしたの?」
嵐が来た。涙が一気に引っ込んだためある意味救いだったが…
観音坂さんも顔をあげ彼女を無言で見ている。彼女は観音坂さんを後ろからハグして
「お昼休み終わっちゃいますよ?独歩くんお昼食べてないでしょ?ほら、いこ!」
というと観音坂さんの手を引いて食堂の方へ行った。
ムカつくが泣くことは我慢できた。
しかし、もう観音坂さんには言えない。私の知らない誰かを思う観音坂さんの表情を見てしまった今、破局することが分かっていても言うのは無理だ。
私が観音坂さんと接していない間に、誰かが観音坂さんの心を奪って行った。彼女以上に観音坂さんを虜にした人がいた。
悩んでいたことよりもその事実が私の残業時間を伸ばしたのだった。
