本編
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夜8時、残業のない私は身支度を整え隣の同僚に明日の確認をする。
明日はこの同僚と共に出張だ。新幹線で四時間、どうせなら現地に一緒に行こうと打ち合わせをする。
待ち合わせを決めて、帰ろうと席を立つ。立つと気になって見てしまうのは観音坂さんの席だった。外回りに行っているのか今はいない。まぁ、もうそんな声をかけたり飲みに行くことはないのだ。そっとため息をついてふと、その彼女の方を見る。
彼女はというと、仕事が終わったのか終わってないのかは分からないが携帯をいじっている。
あ…観音坂さんを待ってるのか…
あれから観音坂さんには声をかけづらくなり、挨拶もあまりしなくなった。声かけたくても挨拶したくても、彼女持ちだという事が私にストップをかけるのだ。
観音坂さんは彼女を本当に愛している。彼女以外の女性である私は彼女の不安因子、もし彼女が観音坂さんに私の存在が嫌と言われれば、観音坂さん私に対して何を思うのだろうか。
そして本当に声をかけられなくなっていく。観音坂さんに声をかけられる彼女が今はとても羨ましかった。
こんな嫉妬みたいなの嫌…
私は足早にその場を出た。明日は出張、1日あの二人を見ないで済む。
あの二人は今や私の中でとても大きな存在だった。
どうにか気持ちを落ち着かせようと、会社の一角にある自動販売機でコーヒーを買い、飲む。ほろ苦い香りが今の私に丁度良いと思った。
少し落ち着いたところで横のソファーに座る。頭のなかぐちゃぐちゃの自分を整理する必要があった。
まず私はなにが嫌なのだろう、と自分で自分を問う。
他の恋人が私の目の前でいちゃいちゃするのが嫌。
でも私にだって彼氏はいるでしょう?いちゃいちゃしてやればいいじゃない。
観音坂さんに彼女という存在が出来たのが嫌。
先輩を私より後輩の可愛い子にとられて悔しかっただけよね。他にも先輩はいるじゃない。
もう観音坂さんと飲みに行けないことが嫌。
お互いに愚痴を言える関係が良かったのよね。同僚とか彼氏に付き合ってもらえばいいじゃない。
その後も自分の矛盾した感情をまとめていく。そして納得して落ち着き、コーヒーをのみ切って立ち上がる。
そして後味の苦味が沸き上がる。
「…あ…」
私が立ち去ろうと缶を捨て振り替えると、そこには観音坂さんがいた。
まとめたはずの感情が一気にぶっ飛ぶ。
「もう帰り?」
観音坂さんがそう切り出す。声をかけられたことにとても嬉しく感じつつ、私はそうですと返して鞄を肩にかけなおす。
「明日出張なので失礼しますね…」
気まずくなってすぐにその場を離れようとする。しかし、私がその場をを離れられなかったのは観音坂さんに腕を掴まれ引き止められたからだ。
お菓子を持ってきた時すらあまり話していないのだ。そしてそれからまだ2日しかたっていないというのに…
こんなところで話せるほど断られたというショックは癒えていないようだ。
「…や、あの…ごめん…最近挨拶もないから…」
観音坂さんは俯きぎみに言う。頭の中がかき回されるようだった。また矛盾した感情が溢れる。
「あ…の…」
私が戸惑っていると観音坂さんは掴んだ手をを離す。
「…ごめん……君に声を掛けられないのは…少し寂しいみたい…」
観音坂さんは顔をあげ、言葉を押し出すように言った。
え…と驚き言葉が出なかった。
ましまじと観音坂さんの顔を見ていると、観音坂さんはいや…と続ける。
「そりゃ確かに…あの時の発言はもう関わらないでくださいって言ってるようなもんだよな…俺達愚痴を言い合って飲む関係でしかなかったし…お互い恋人持ちだし…澤田に声かけて貰えないのはそりゃ俺のせいだよな…そりゃそうだ…全部俺のせい…朝から水溜まりに足を突っ込むのも俺のせい…前を歩いていた小学生が転んだのも俺のせい…」
観音坂さんは俺のせい俺のせいと繰り返し、どんどん俯いていく。こうなると誰か何か言ってあげない限りずっと続いてしまうのは知っていた。
それでも気にせず私が声をかける。
「その…確かに話かけちゃいけないと思ってました…でも、今日そう言って貰えてめっちゃ嬉しい!寂しいって思ってくれたんですよね?」
駄目だ…嬉しい…
彼女持ちという事を忘れ、少しはしゃぎ観音坂さんの両腕を掴む。ぶんぶんと少しゆすると俯いていた顔があげられ、安心したような優しい微笑みを返される。
「…飲みは駄目だけど、悩みとか相談とかは聞くからさ…」
また声かけてくれ…と言われ、心が舞い上がって躍り狂うようだった。今まで私のなかで渦巻いていた感情が晴れていく。
私がなんども頷くと、それじゃあと観音坂さんは去っていった。
その背中を見送って気づいたのだ。
ああ…私あの人が好きなんだ…
好きという言葉が心に落ちて落ちつく。今までの矛盾した思いは素直な私の想いだった。
100%叶わない恋となった今、告白しようとも思えない。
辛いけど、観音坂さんの幸せを願うことにする。そりゃあ勿論嫉妬しまくることだろうが…自分の思いに気付いてしまったのだからそれも仕方のない事だ。
私は今までと変わらず、好きを隠して見守る事に決めた。
翌日、そういえば今日は出張だった。観音坂さんに声かけてくれとお許しを貰えたというのに今日は会えない…あんなつらかったあの職場に今は行きたくて、話し掛けたくてしょうがなかった。
それでも出張は変えられないので、同僚待ち合わせた場所へといく。
行きに時間がかかるため、新幹線内で食べる駅弁とおやつを買っておこう。
それにしても駅弁というのは何故こんなに心を躍らせるのか…新幹線内で開く駅弁にはとてもわくわくが詰まっていると思う。
新幹線で食べることを考えながら駅弁を選ぶ。
シューマイもいいしそぼろもいい…釜飯も捨てがたいな…
そう見ていくうちに視界の端にひときわ輝くものを見つけた。
そう、その名も牛タン弁当!
牛タン好きならこれを選ぶしかない!…と牛タン弁当を持ってレジへ行くと、丁度同僚が弁当を買っているところだった。
見ると同僚も牛タン弁当を買っていた。
流石牛タン…
なんだかんだ楽しく出張を終え、私は夕飯を食べてから帰ろうか迷っていた。せっかくここまで来たならご当地のものを食べたいとも思う。同僚にどうするの?と聞くと、旦那が待ってるからいいやと言ってさっさと帰っていった。
やっぱ…食べていこ…
近くのお店を調べようとして携帯を開くと彼氏のラインに紛れて知らないアカウントからラインが来ていた。
とりあえず彼氏のラインを開く。
観音坂さんが好きだと気付いても、この彼氏と別れはしなかった。
観音坂さんのことは、叶わないうえに伝えようとも思ってないため、ひどいことをしているようではあるが彼氏は手放さないでいた。
今日はそっちで食べるの?
そのラインにそのつもりであるという事を返して、もうひとつの謎アカウントを開く。
名前の設定がされていない、加えてアイコンもない。そのアカウントに
今どこにいる?
と聞かれていた。流石にこんな訳のわからないアカウントに教えたりするほどバカではないが、貴方はだれですかとだけ確認をとる。
既読 はすぐに着いた。
あ…ごめん…観音坂です…そうだよな…これじゃ誰だか分かんないよな…怖いだけだよな…
そう来たとたん恐怖は一気になくなった。文面でも観音坂さんらしさが出ている。まちがはないだろう。
どうしたんですか、前までラインやってませんでしたよね?
ふとした疑問を送る。前に教えて下さいといった時はラインをやっていなかったはずだった。いつの間に始めたのだろうか…、すぐまた返信される。
いや、今日澤田がいなかったから…
どういうことだ?と私はスタンプを返す。すると今電話いい?と来たためこっちから電話をかける。
「もしもし…観音坂です」
丁寧に電話にでる観音坂さんにはい、知ってますと笑って応える。
電話ごしに聞くと、耳に囁かれてるような…距離が近いような気がしてしまう。
そんな煩悩を振り払うように話はじめる。
「いつの間にライン始めたんですか?アイコンとか名前無かったからまだ作ったばかりですよね?」
さっきの疑問を全部ぶつけていく。なんだかいきなりしゃべりすぎたかもしれない。
すると観音坂さんはいや…と応える。
「今日作ったばっかで…澤田の連絡先…その…分からなかったから…」
前に言っていたこれをはじめ、私の後輩に私のアカウントを聞いたのだという。
なに、それ私のため…?
「昨日ああ言って今日居ないから…そりゃ、あやふやな事言ってるけど…どっち付かずだけど…いや、彼女いるのに声かけてくれなんて俺が悪いのか…俺が突き放したのに澤田と話したいと思う俺がおかしいんだ…声かけてもらえるとか思って楽しみにしてごめんなさ…」「いいいやいやいや待って下さい!」
黙っているうちに一人で思い詰めの沼にはまる観音坂さんを止める。
というか、今なんて言った?この人私が話したくなくて今日いないと思ったの?私とそんなに喋りたいと思ってくれたの?
この疑問をどうしても良いほうに考えてしまう。
「…今日は元々出張で」
とりあえず誤解をとく。
「今そっちに居なくて…なので観音坂さんと喋りたくないとかそんなことないんです。むしろ喋りたくて…今日出張なの忘れそうになるくらい観音坂さんとお話したかったんです!」
だから今とても嬉しいのだと伝える。
「あの…そんな…本当に…?いや…ああだめだ…」
観音坂さんは少し唸ると
「その…めちゃくちゃ嬉しい…」
電話の向こうでどんな顔をしているのかとても気になってしまうが、そんなことを言って貰えた私のにやけも止まらない。
電話で良かったと思う。
「今はどこにいるの?」
私がにやにやして黙っていると観音坂さんが問う。
「まだ出張先にいます。お仕事は終わったんですけどね…」
「じゃあ…帰ってくるの待ってるから、夕飯一緒に行こう…いや…遅いし嫌ならいいんだけど…」
まさかの誘いだった。驚きすぎてすぐに声が出せない。そりゃ、まさか、観音坂さんに夕飯一緒にと言われるなんて…ちょっと前に飲みを拒否られたというのに…
理解するうちに喜びがかくせなくなる。
「行きたい!ですけど…彼女さんはいいんですか?」
そうだ彼女はいいのだろうか。彼女のために私と距離をとったというのに、飲みではないとはいえ一緒に夕飯に行って良いものなのだろうか…
「彼女には澤田が彼氏持ちだと伝えたんだ…そしたら大丈夫になって」
彼氏持ちだけど貴方が好きなんです…とは言えない。やっぱり少し微妙な気持ちにはなるが、好きを隠してでも観音坂さんの側でお話したい。そんな気持ちが勝った。
「すぐに帰ります」
私は即一番早い時間の新幹線を予約した。
明日はこの同僚と共に出張だ。新幹線で四時間、どうせなら現地に一緒に行こうと打ち合わせをする。
待ち合わせを決めて、帰ろうと席を立つ。立つと気になって見てしまうのは観音坂さんの席だった。外回りに行っているのか今はいない。まぁ、もうそんな声をかけたり飲みに行くことはないのだ。そっとため息をついてふと、その彼女の方を見る。
彼女はというと、仕事が終わったのか終わってないのかは分からないが携帯をいじっている。
あ…観音坂さんを待ってるのか…
あれから観音坂さんには声をかけづらくなり、挨拶もあまりしなくなった。声かけたくても挨拶したくても、彼女持ちだという事が私にストップをかけるのだ。
観音坂さんは彼女を本当に愛している。彼女以外の女性である私は彼女の不安因子、もし彼女が観音坂さんに私の存在が嫌と言われれば、観音坂さん私に対して何を思うのだろうか。
そして本当に声をかけられなくなっていく。観音坂さんに声をかけられる彼女が今はとても羨ましかった。
こんな嫉妬みたいなの嫌…
私は足早にその場を出た。明日は出張、1日あの二人を見ないで済む。
あの二人は今や私の中でとても大きな存在だった。
どうにか気持ちを落ち着かせようと、会社の一角にある自動販売機でコーヒーを買い、飲む。ほろ苦い香りが今の私に丁度良いと思った。
少し落ち着いたところで横のソファーに座る。頭のなかぐちゃぐちゃの自分を整理する必要があった。
まず私はなにが嫌なのだろう、と自分で自分を問う。
他の恋人が私の目の前でいちゃいちゃするのが嫌。
でも私にだって彼氏はいるでしょう?いちゃいちゃしてやればいいじゃない。
観音坂さんに彼女という存在が出来たのが嫌。
先輩を私より後輩の可愛い子にとられて悔しかっただけよね。他にも先輩はいるじゃない。
もう観音坂さんと飲みに行けないことが嫌。
お互いに愚痴を言える関係が良かったのよね。同僚とか彼氏に付き合ってもらえばいいじゃない。
その後も自分の矛盾した感情をまとめていく。そして納得して落ち着き、コーヒーをのみ切って立ち上がる。
そして後味の苦味が沸き上がる。
「…あ…」
私が立ち去ろうと缶を捨て振り替えると、そこには観音坂さんがいた。
まとめたはずの感情が一気にぶっ飛ぶ。
「もう帰り?」
観音坂さんがそう切り出す。声をかけられたことにとても嬉しく感じつつ、私はそうですと返して鞄を肩にかけなおす。
「明日出張なので失礼しますね…」
気まずくなってすぐにその場を離れようとする。しかし、私がその場をを離れられなかったのは観音坂さんに腕を掴まれ引き止められたからだ。
お菓子を持ってきた時すらあまり話していないのだ。そしてそれからまだ2日しかたっていないというのに…
こんなところで話せるほど断られたというショックは癒えていないようだ。
「…や、あの…ごめん…最近挨拶もないから…」
観音坂さんは俯きぎみに言う。頭の中がかき回されるようだった。また矛盾した感情が溢れる。
「あ…の…」
私が戸惑っていると観音坂さんは掴んだ手をを離す。
「…ごめん……君に声を掛けられないのは…少し寂しいみたい…」
観音坂さんは顔をあげ、言葉を押し出すように言った。
え…と驚き言葉が出なかった。
ましまじと観音坂さんの顔を見ていると、観音坂さんはいや…と続ける。
「そりゃ確かに…あの時の発言はもう関わらないでくださいって言ってるようなもんだよな…俺達愚痴を言い合って飲む関係でしかなかったし…お互い恋人持ちだし…澤田に声かけて貰えないのはそりゃ俺のせいだよな…そりゃそうだ…全部俺のせい…朝から水溜まりに足を突っ込むのも俺のせい…前を歩いていた小学生が転んだのも俺のせい…」
観音坂さんは俺のせい俺のせいと繰り返し、どんどん俯いていく。こうなると誰か何か言ってあげない限りずっと続いてしまうのは知っていた。
それでも気にせず私が声をかける。
「その…確かに話かけちゃいけないと思ってました…でも、今日そう言って貰えてめっちゃ嬉しい!寂しいって思ってくれたんですよね?」
駄目だ…嬉しい…
彼女持ちという事を忘れ、少しはしゃぎ観音坂さんの両腕を掴む。ぶんぶんと少しゆすると俯いていた顔があげられ、安心したような優しい微笑みを返される。
「…飲みは駄目だけど、悩みとか相談とかは聞くからさ…」
また声かけてくれ…と言われ、心が舞い上がって躍り狂うようだった。今まで私のなかで渦巻いていた感情が晴れていく。
私がなんども頷くと、それじゃあと観音坂さんは去っていった。
その背中を見送って気づいたのだ。
ああ…私あの人が好きなんだ…
好きという言葉が心に落ちて落ちつく。今までの矛盾した思いは素直な私の想いだった。
100%叶わない恋となった今、告白しようとも思えない。
辛いけど、観音坂さんの幸せを願うことにする。そりゃあ勿論嫉妬しまくることだろうが…自分の思いに気付いてしまったのだからそれも仕方のない事だ。
私は今までと変わらず、好きを隠して見守る事に決めた。
翌日、そういえば今日は出張だった。観音坂さんに声かけてくれとお許しを貰えたというのに今日は会えない…あんなつらかったあの職場に今は行きたくて、話し掛けたくてしょうがなかった。
それでも出張は変えられないので、同僚待ち合わせた場所へといく。
行きに時間がかかるため、新幹線内で食べる駅弁とおやつを買っておこう。
それにしても駅弁というのは何故こんなに心を躍らせるのか…新幹線内で開く駅弁にはとてもわくわくが詰まっていると思う。
新幹線で食べることを考えながら駅弁を選ぶ。
シューマイもいいしそぼろもいい…釜飯も捨てがたいな…
そう見ていくうちに視界の端にひときわ輝くものを見つけた。
そう、その名も牛タン弁当!
牛タン好きならこれを選ぶしかない!…と牛タン弁当を持ってレジへ行くと、丁度同僚が弁当を買っているところだった。
見ると同僚も牛タン弁当を買っていた。
流石牛タン…
なんだかんだ楽しく出張を終え、私は夕飯を食べてから帰ろうか迷っていた。せっかくここまで来たならご当地のものを食べたいとも思う。同僚にどうするの?と聞くと、旦那が待ってるからいいやと言ってさっさと帰っていった。
やっぱ…食べていこ…
近くのお店を調べようとして携帯を開くと彼氏のラインに紛れて知らないアカウントからラインが来ていた。
とりあえず彼氏のラインを開く。
観音坂さんが好きだと気付いても、この彼氏と別れはしなかった。
観音坂さんのことは、叶わないうえに伝えようとも思ってないため、ひどいことをしているようではあるが彼氏は手放さないでいた。
今日はそっちで食べるの?
そのラインにそのつもりであるという事を返して、もうひとつの謎アカウントを開く。
名前の設定がされていない、加えてアイコンもない。そのアカウントに
今どこにいる?
と聞かれていた。流石にこんな訳のわからないアカウントに教えたりするほどバカではないが、貴方はだれですかとだけ確認をとる。
既読 はすぐに着いた。
あ…ごめん…観音坂です…そうだよな…これじゃ誰だか分かんないよな…怖いだけだよな…
そう来たとたん恐怖は一気になくなった。文面でも観音坂さんらしさが出ている。まちがはないだろう。
どうしたんですか、前までラインやってませんでしたよね?
ふとした疑問を送る。前に教えて下さいといった時はラインをやっていなかったはずだった。いつの間に始めたのだろうか…、すぐまた返信される。
いや、今日澤田がいなかったから…
どういうことだ?と私はスタンプを返す。すると今電話いい?と来たためこっちから電話をかける。
「もしもし…観音坂です」
丁寧に電話にでる観音坂さんにはい、知ってますと笑って応える。
電話ごしに聞くと、耳に囁かれてるような…距離が近いような気がしてしまう。
そんな煩悩を振り払うように話はじめる。
「いつの間にライン始めたんですか?アイコンとか名前無かったからまだ作ったばかりですよね?」
さっきの疑問を全部ぶつけていく。なんだかいきなりしゃべりすぎたかもしれない。
すると観音坂さんはいや…と応える。
「今日作ったばっかで…澤田の連絡先…その…分からなかったから…」
前に言っていたこれをはじめ、私の後輩に私のアカウントを聞いたのだという。
なに、それ私のため…?
「昨日ああ言って今日居ないから…そりゃ、あやふやな事言ってるけど…どっち付かずだけど…いや、彼女いるのに声かけてくれなんて俺が悪いのか…俺が突き放したのに澤田と話したいと思う俺がおかしいんだ…声かけてもらえるとか思って楽しみにしてごめんなさ…」「いいいやいやいや待って下さい!」
黙っているうちに一人で思い詰めの沼にはまる観音坂さんを止める。
というか、今なんて言った?この人私が話したくなくて今日いないと思ったの?私とそんなに喋りたいと思ってくれたの?
この疑問をどうしても良いほうに考えてしまう。
「…今日は元々出張で」
とりあえず誤解をとく。
「今そっちに居なくて…なので観音坂さんと喋りたくないとかそんなことないんです。むしろ喋りたくて…今日出張なの忘れそうになるくらい観音坂さんとお話したかったんです!」
だから今とても嬉しいのだと伝える。
「あの…そんな…本当に…?いや…ああだめだ…」
観音坂さんは少し唸ると
「その…めちゃくちゃ嬉しい…」
電話の向こうでどんな顔をしているのかとても気になってしまうが、そんなことを言って貰えた私のにやけも止まらない。
電話で良かったと思う。
「今はどこにいるの?」
私がにやにやして黙っていると観音坂さんが問う。
「まだ出張先にいます。お仕事は終わったんですけどね…」
「じゃあ…帰ってくるの待ってるから、夕飯一緒に行こう…いや…遅いし嫌ならいいんだけど…」
まさかの誘いだった。驚きすぎてすぐに声が出せない。そりゃ、まさか、観音坂さんに夕飯一緒にと言われるなんて…ちょっと前に飲みを拒否られたというのに…
理解するうちに喜びがかくせなくなる。
「行きたい!ですけど…彼女さんはいいんですか?」
そうだ彼女はいいのだろうか。彼女のために私と距離をとったというのに、飲みではないとはいえ一緒に夕飯に行って良いものなのだろうか…
「彼女には澤田が彼氏持ちだと伝えたんだ…そしたら大丈夫になって」
彼氏持ちだけど貴方が好きなんです…とは言えない。やっぱり少し微妙な気持ちにはなるが、好きを隠してでも観音坂さんの側でお話したい。そんな気持ちが勝った。
「すぐに帰ります」
私は即一番早い時間の新幹線を予約した。
