本編
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昨日はなんとなく眠れなくて携帯をいじっていた。翌日起きて時計をみると、本来家を出る時間の5分前を指している。化粧もそこそこに慌てて飛び出した。
なんとか遅刻10分に抑えられ、席につく。
「なに、ゆうか寝坊?」
朝ごはんも食べてないの?と同僚が笑いながらおやつを分けてくれる。
「ちょっと、寝れなくて…」
ありがたく分けてくれたおやつをひとつ口に入れる。ストロベリーのペーストの入ったチョコレートがとろける。甘酸っぱさが口で広がる。しかし、のんびり堪能もしていられない。
私は慌てて持ってきたシュシュで髪をひとつに束ねる。
そして、仕事に取りかかろうとすると
「おはようございます」
そう言って声をかけてきたのは昨日会った観音坂さんの彼女だった。
「…おはよう」
挨拶を返しながら彼女の方を向く。昨日はお酒が入っていたからかよくわからなかったが、こうして見ると結構可愛い子だった。
うーん…なんか好きにはなれないかな。
昔から美人と可愛い子はなんとなく近寄り難いイメージを持ってはいたのだが、彼女に対しては何故か喋りたくないと思うほどだった。
「あの、昨日はお世話になりました」
独歩くんが、と付け足す彼女はそう言ってペコリと頭を下げる。
この子に関わった覚えは無いんだけど。なんでこの子が私の前にきて頭を下げているんだろう…
再び腹のなかからムカムカが沸き上がってきた。私が飲んだのは、迷惑をかけられたのは観音坂さんであってあなたじゃないんだよ、とか思ってしまう。
彼女に顔あげるよう促して顔を合わすが、正直吐いてしまいそうになる苛立ちを抑えるので限界だった。
どうしようかと彼女の顔を見ていると
「どうした…」
彼女の後ろから観音坂さんが歩いてきた。こちらの様子をみてすぐ来たのだろう、手にはボールペンが握られていた。
彼女は観音坂さんを見ると、可愛らしく首を寝かせて
「独歩くんが昨日迷惑かけてご免なさいしてたの」
といった。ああ…やっぱり好きになれないこの子…表情筋が固くなる。
可愛いのは確かなのだが…。
彼女は再び
「本当にご免なさい!ほら!独歩くんも」
頭を下げた。なんだ、結局いちゃいちゃしに来たんじゃん。目の前でまたのろけやらいちゃいちゃやらを見せられると思うと何故だかとても泣きたくなった。
「…酔いつぶれて迷惑かけたことは…謝る。」
ポツリと呟く程度の声で観音坂さんは言う。
「でも…このこと…君は関係ない」
観音坂さんは彼女の頭を起こす。
「君は謝らなくていい。」
また私の心はズキンと軋んだ。
観音坂さんは優しく彼女の手を引いてここを離れた。その様子を見送って、軋む心を抑えた。…なんなんだろう。二人を見ていると言い表せない感覚が沸いてくる。
その後観音坂さんは一人で謝りに来た。大丈夫と言ってもずっと謝ってくるのでまたやってしまった。
「お詫びは今度の飲み代でいいですよ」
飲みに行かないと決めていたというのに、まさか自分から、それも可愛くない誘いかたをしてしまうとは…すると観音坂さんは少し視線をさ迷わせて言った。
「その…さっき彼女に…他の女の人と飲みに行かないでって言われちゃって……俺も彼女出来たし、澤田も、彼氏いるし…飲むのはもうやめよう」
私の思考回路が止まる。断られると思っていなかった。それもさっきの彼女を大事に思っての観音坂さんの行動…理解はできる。それは当然だ、私も毎度彼氏を気にして飲んでいたところはある。しかし、断られたことがとてもショックだったのだ。
私は声を絞り出す。
「…そ…う…ですね…」
そりゃそうだ。そりゃそうなのだ。
優先されるのは愚痴を聞いてくれる後輩ではない、あたりまえだろう。
私は不自然に笑顔をつくる。歪になって無いわけがなかった。あまりにもショックが大きい。
そんなに断られるとは思ってなかったのだろうか…自分自身がわからなくなる。
そう言ってだまっていると、横から同僚が割って入る。
「彼女、可愛いですね!」
観音坂さんはパッと表情を輝かせる。
「ありがとう…」
彼女への褒め言葉を自分の事のように…それはそれは嬉しそうに礼を言う。
そんなに好きか…
「めっちゃ、若いですね。どーやって捕まえたんですか?」
私はまた嫌みのように言ってしまう。もっとやさしく言えないのか…
観音坂さんは少し奥の机で仕事をしている彼女を眺める。
「最初は…向こうから…」
そうして二人の成り立ちが話された。彼女の方から声をかけて来たのが始まりらしい、それからは休み時間に挨拶や世間話をするようになったという。そのうちお互い惹かれ合い、すぐに彼女の方から告白してきたそうだ。
話終えた観音坂さんは少し顔が赤い。
同僚はにやにやしながら観音坂さんを見ている。本来なら他人の色恋ほど面白く茶化せるものはないが、どうもこの二人の話は面白いとも、茶化そうとも出来ない。正直私は黙っていたかった。
どんどん私の腹のなかが黒々した感情で溢れる。黙っていないと漏れでてしまいそうだ。
すると、ぴこんと私のスマホが光る。助かった…と話の最中だが失礼して開く。
今日は早く帰っておいで。
どうやら彼氏が来てくれているようだ。私はスタンプで返信し、画面を眺め既読を待った。
「…彼氏?」
横から観音坂さんに聞かれてうなずく。同僚も一緒に覗きこんで説明する。
「この子、高校からずっと付き合ってるんですよ!ほんと、仲良しったらないですよね!」
観音坂さんは凄いなと呟いた。確かに周りが1ヶ月続かずして別れたりしているなか、私達は何年も一緒にいる。自分でも凄いと思う。喧嘩もなく、彼氏はひたすらに私を愛してくれる。彼氏からスタンプで気をつけてと返され
「結婚式は呼んでよね」
同僚はそう言って去っていく。
結婚…彼氏との会話のなかで出てこなかったと言えば嘘になる。しかし、結婚をしていないのは彼氏のストップがかかっているからだった。未だに就職が出来ていないうえに養われるのは嫌、養えるくらいになりたい。だから私が結婚してもいいと言っても彼氏はまだ出来ないという。
毎日頑張ってはいるものの、結婚は当分先になるだろう。
そのようなことを聞かれる前にと、ざっくりと観音坂さんに言うと。彼はそうなのか…と言う。なんだか反応しづらい話をしてしまったかもしれない。それでも観音坂さんには彼氏のことを聞かれたくないと思ってしまったのだ。
本当は気付いていたのかもしれない。素直になれない理由にも、このチクリと刺さる感覚にも。それはきっと彼氏よりも…
このときの私はまだそれを認めずにいた。
そして後日、観音坂さんは丁寧に謝りながらお菓子を持ってきたのだった。
なんとか遅刻10分に抑えられ、席につく。
「なに、ゆうか寝坊?」
朝ごはんも食べてないの?と同僚が笑いながらおやつを分けてくれる。
「ちょっと、寝れなくて…」
ありがたく分けてくれたおやつをひとつ口に入れる。ストロベリーのペーストの入ったチョコレートがとろける。甘酸っぱさが口で広がる。しかし、のんびり堪能もしていられない。
私は慌てて持ってきたシュシュで髪をひとつに束ねる。
そして、仕事に取りかかろうとすると
「おはようございます」
そう言って声をかけてきたのは昨日会った観音坂さんの彼女だった。
「…おはよう」
挨拶を返しながら彼女の方を向く。昨日はお酒が入っていたからかよくわからなかったが、こうして見ると結構可愛い子だった。
うーん…なんか好きにはなれないかな。
昔から美人と可愛い子はなんとなく近寄り難いイメージを持ってはいたのだが、彼女に対しては何故か喋りたくないと思うほどだった。
「あの、昨日はお世話になりました」
独歩くんが、と付け足す彼女はそう言ってペコリと頭を下げる。
この子に関わった覚えは無いんだけど。なんでこの子が私の前にきて頭を下げているんだろう…
再び腹のなかからムカムカが沸き上がってきた。私が飲んだのは、迷惑をかけられたのは観音坂さんであってあなたじゃないんだよ、とか思ってしまう。
彼女に顔あげるよう促して顔を合わすが、正直吐いてしまいそうになる苛立ちを抑えるので限界だった。
どうしようかと彼女の顔を見ていると
「どうした…」
彼女の後ろから観音坂さんが歩いてきた。こちらの様子をみてすぐ来たのだろう、手にはボールペンが握られていた。
彼女は観音坂さんを見ると、可愛らしく首を寝かせて
「独歩くんが昨日迷惑かけてご免なさいしてたの」
といった。ああ…やっぱり好きになれないこの子…表情筋が固くなる。
可愛いのは確かなのだが…。
彼女は再び
「本当にご免なさい!ほら!独歩くんも」
頭を下げた。なんだ、結局いちゃいちゃしに来たんじゃん。目の前でまたのろけやらいちゃいちゃやらを見せられると思うと何故だかとても泣きたくなった。
「…酔いつぶれて迷惑かけたことは…謝る。」
ポツリと呟く程度の声で観音坂さんは言う。
「でも…このこと…君は関係ない」
観音坂さんは彼女の頭を起こす。
「君は謝らなくていい。」
また私の心はズキンと軋んだ。
観音坂さんは優しく彼女の手を引いてここを離れた。その様子を見送って、軋む心を抑えた。…なんなんだろう。二人を見ていると言い表せない感覚が沸いてくる。
その後観音坂さんは一人で謝りに来た。大丈夫と言ってもずっと謝ってくるのでまたやってしまった。
「お詫びは今度の飲み代でいいですよ」
飲みに行かないと決めていたというのに、まさか自分から、それも可愛くない誘いかたをしてしまうとは…すると観音坂さんは少し視線をさ迷わせて言った。
「その…さっき彼女に…他の女の人と飲みに行かないでって言われちゃって……俺も彼女出来たし、澤田も、彼氏いるし…飲むのはもうやめよう」
私の思考回路が止まる。断られると思っていなかった。それもさっきの彼女を大事に思っての観音坂さんの行動…理解はできる。それは当然だ、私も毎度彼氏を気にして飲んでいたところはある。しかし、断られたことがとてもショックだったのだ。
私は声を絞り出す。
「…そ…う…ですね…」
そりゃそうだ。そりゃそうなのだ。
優先されるのは愚痴を聞いてくれる後輩ではない、あたりまえだろう。
私は不自然に笑顔をつくる。歪になって無いわけがなかった。あまりにもショックが大きい。
そんなに断られるとは思ってなかったのだろうか…自分自身がわからなくなる。
そう言ってだまっていると、横から同僚が割って入る。
「彼女、可愛いですね!」
観音坂さんはパッと表情を輝かせる。
「ありがとう…」
彼女への褒め言葉を自分の事のように…それはそれは嬉しそうに礼を言う。
そんなに好きか…
「めっちゃ、若いですね。どーやって捕まえたんですか?」
私はまた嫌みのように言ってしまう。もっとやさしく言えないのか…
観音坂さんは少し奥の机で仕事をしている彼女を眺める。
「最初は…向こうから…」
そうして二人の成り立ちが話された。彼女の方から声をかけて来たのが始まりらしい、それからは休み時間に挨拶や世間話をするようになったという。そのうちお互い惹かれ合い、すぐに彼女の方から告白してきたそうだ。
話終えた観音坂さんは少し顔が赤い。
同僚はにやにやしながら観音坂さんを見ている。本来なら他人の色恋ほど面白く茶化せるものはないが、どうもこの二人の話は面白いとも、茶化そうとも出来ない。正直私は黙っていたかった。
どんどん私の腹のなかが黒々した感情で溢れる。黙っていないと漏れでてしまいそうだ。
すると、ぴこんと私のスマホが光る。助かった…と話の最中だが失礼して開く。
今日は早く帰っておいで。
どうやら彼氏が来てくれているようだ。私はスタンプで返信し、画面を眺め既読を待った。
「…彼氏?」
横から観音坂さんに聞かれてうなずく。同僚も一緒に覗きこんで説明する。
「この子、高校からずっと付き合ってるんですよ!ほんと、仲良しったらないですよね!」
観音坂さんは凄いなと呟いた。確かに周りが1ヶ月続かずして別れたりしているなか、私達は何年も一緒にいる。自分でも凄いと思う。喧嘩もなく、彼氏はひたすらに私を愛してくれる。彼氏からスタンプで気をつけてと返され
「結婚式は呼んでよね」
同僚はそう言って去っていく。
結婚…彼氏との会話のなかで出てこなかったと言えば嘘になる。しかし、結婚をしていないのは彼氏のストップがかかっているからだった。未だに就職が出来ていないうえに養われるのは嫌、養えるくらいになりたい。だから私が結婚してもいいと言っても彼氏はまだ出来ないという。
毎日頑張ってはいるものの、結婚は当分先になるだろう。
そのようなことを聞かれる前にと、ざっくりと観音坂さんに言うと。彼はそうなのか…と言う。なんだか反応しづらい話をしてしまったかもしれない。それでも観音坂さんには彼氏のことを聞かれたくないと思ってしまったのだ。
本当は気付いていたのかもしれない。素直になれない理由にも、このチクリと刺さる感覚にも。それはきっと彼氏よりも…
このときの私はまだそれを認めずにいた。
そして後日、観音坂さんは丁寧に謝りながらお菓子を持ってきたのだった。
