この新鮮な感想を消えてしまう前に書き留めておきたい。なんというか……すごいものを見たなって……
ウマ娘とトレーナーは厚い信頼関係で結ばれていて、トレーナーは担当ウマ娘に対して大なり小なり「この子の走りが好き…！！だから勝ってほしい…！！」と狂気めいた執着心を抱いているわけですが、スティルのトレーナーはその最たるものなんですね。慎ましく臆病な理性の彼女と、闘争心という獣欲に溢れた本能の彼女をどちらも愛して、守って行こうと誓ったトレーナー。走りで本能をさらけ出してしまった結果、「化物」と謗られ遠ざけられていたスティルは、生まれて初めてその人間に自分を本能ごと「美しい」と受け入れられ、愛される。そんなん惚れますよ。内なる狂気という化物を押さえ込んで生きてきたのに、その化物ごと自分を愛してくれる化物が現れたんだから。
どんなに化物と誹られても避けられても、世界に存在を忘れられても、ただ一人の愛してくれる人がいればそれでいい。スティルはそうしてトレーナーを愛し、トレーナーを喜（悦）ばせたい一心で勝利を重ねる。そして彼女の本能的な走りにのめり込めばのめり込むほど、人としての機能を失い瞳の色も彼女と同じ紅色に変わり、心だけでなく身体も化物となっていくトレーナー。視界が紅くどんどん狭まり、スティルしか見えなくなる演出は怖くて「夜中見なくて良かった……」と思いました。二人はズブズブと文字通り「二人の世界」として共依存に溺れて行くわけですが……最後のレースを終えて、肉体の衰弱したトレーナーは長期入院という形でスティルと距離を置くことに。本当は、スティルだけではなくトレーナー自体も「このまま共依存していけば、自分は崩壊する」「そうなってしまえば、スティルを悲しませてしまう」と分かっていたのです。だから「お見舞いに来なくていいからね」と言うわけで。
そしてエピローグ。長期入院を終えたトレーナーは、スティルがバラバラの手紙を残して消えてしまったことを知ります。どんなに強欲でも、トレーナーを独り占めしたくても、結局優しいのがスティル。トレーナーには人間として生きていてほしいから、愛しているから、本当はずっと一緒にいたいのに自分の気持ちを押さえ込んで消えた彼女。そこで、彼女が消えてしまっても諦めないのがトレーナーの狂気なんですよね。「彼女を守りたい」という最初の気持ちを貫き通して、彼女をひとりぼっちにしないようにこの世の果てまで追いかけて捕まえるわけで。狂気ですね。狂気とは究極の愛なんですよね。世界から彼女が消えてしまっても、消えるのが彼女の望みでも、果てまで追いかけて「貴方を守るって誓ったからね」と離さないトレーナー。愛とは自分勝手ですね。きっと、トレーナーとスティルはこのまま世界から消えて、二人だけの世界でいつまでも幸せに踊り続けるのでしょう。この結末を「メリバ」と3文字で言ってしまえば簡単ですが、そんな簡単に言い表したくないのがカプ厨オタクなんですよ。でもそれはそれとしてこのウマ娘の世界でいろんなシチュエーションでラブラブしてて欲しい気持ちもある！！ネオユニヴァースにトレーナーとの関係をからかわれて照れるスティルも見たいし！！「月姫」のアルクェイドグッドエンドみたいな！！心がふたつある〜〜！！
めっちゃ長文ですがこれにて失礼します。