ウマ娘 タキモル♀以外
「エアグルーヴぅ〜あなたはきれいだにゃ〜おはだしゅべしゅべだにゃ〜」
「た、たわけっ! 存分に休めとは言ったが、酒で羽目を外せとは一言も言っていない!」
トレーナーの慰労目的で、私は温泉旅行に強引に連れ出した。強張っていた私に、彼女は「ゆっくりしていいよ」と優しく言ってきて、私はその言葉に甘えて存分に湯に浸かり、食事を楽しんだ。彼女も温泉と食事を堪能していた。までは、良かったのだが……
「貴様が、ここまで酒に弱かったとは……」
「今日は久々に飲んじゃおう!」と冷蔵庫の缶ビールを一缶飲んだトレーナーは、思い切り酔っ払ってしまい……未成年の私に絡んでいるというわけだ。
「エアグルーヴ〜しゅき〜しゅきしゅき〜!」
「おい、ベタベタと触るな!浴衣を脱がそうとするな!」
「うふふ〜てれやさんめ〜」
「貴様……朝になったら覚えてろよ……」
そういえば、母は笑い上戸だった。あのときは、母を邪険に扱うことなんて出来ずされるがままだったが。こいつは、どうやら絡み上戸らしい。
「エアグルーヴも〜おしゃけのも〜? いまならわたしたちだけらし、バレないバレない!」
「飲むか! 女帝たるもの、酒に溺れたりするものか! そもそも私は未成年だぞ!」
「も〜! かったいにゃ〜! あはははは!」
ケラケラと笑い声を上げて、トレーナーは畳に転がり子どものように足をばたつかせる。その姿は、私の理想であるいつものトレーナーとは程遠い。アルコールとは、こうも人をダメにするものなのか。酒なんか一生飲まん。
私は部屋の灯りを暗くし、隅にあった布団を敷いて、強引に彼女を抱え上げた。
「もう寝ろ! 酔っ払いはおやすみの時間だ!」
「え〜! まだあそびたいよ〜!」
「問答無用!」
トレーナーを敷き布団の上に転がすと、彼女はがっちりと私に抱きついてきた。
「ねぇねぇ、エアグルーヴも、いっしょにねよ?」
結構な力だ。引き剥がそうとしても、必死に張り付いてくる。無理に引き剥がせば、ウマ娘の腕力でケガをさせかねない。一度抵抗を諦めて、力が抜けるのを待った方が良さそうだ。
私は、大人しく彼女と布団の中に入った。
「まったく……今は何も聞かんだろうから諦めるが、朝になったらこってり絞ってやるからな」
「えへへ〜」
「ふやけた顔をするな!」
抱きつかれて、至近距離に彼女の顔が近付く。その口は酒臭い。頬は紅潮して、目尻はふにゃりと垂れ下がっている。彼女のこんな姿は、初めて見た。
トレーナーは私に向かって微笑んで、再び口を開く。
「エアグルーヴ……ありがとう。わたしの、いちばんすてきな、ウマむすめ」
「なっ……」
「わたし、あなたのたんとうトレーナーで、よかった……いつも、ありがとう……だいしゅき」
「貴様……」
その言葉を最後に、彼女は寝息を立て始めた。すっかり安心しきった、大人とは思えないあどけない寝顔だ。
「この、たわけが」
彼女が眠ったら、その隙に腕から抜け出すつもりだったのに。その言葉が嬉しくて、抜け出す気が失せてきてしまった。私は、そっと彼女の髪を撫でる。撫でると、彼女の口角はゆるゆると上がった。
「今日はゆっくり寝ろ。だが、明日は朝一番で説教だからな……おやすみ、私のトレーナー」
ああ、今日も疲れた。だが、彼女がトレーナーではなく一人の人として気を抜ける、こんな夜も悪くないだろう。私も、ゆっくりと目を閉じた。
「いいか? 貴様は、今後私の前以外で飲酒禁止だ!! 酒に酔ってたわけた姿を決して見せるな!!」
「ビール開けた後のこと全然覚えてないけど、ごめんなさい!!」
翌朝。目覚めたトレーナーは隣にいた私を見て、何かを勘違いして布団から飛び出し、土下座した。さらに、飲んで以降の記憶はないらしい。本当に呆れた。
私は、決して酒なんか飲まん!
「た、たわけっ! 存分に休めとは言ったが、酒で羽目を外せとは一言も言っていない!」
トレーナーの慰労目的で、私は温泉旅行に強引に連れ出した。強張っていた私に、彼女は「ゆっくりしていいよ」と優しく言ってきて、私はその言葉に甘えて存分に湯に浸かり、食事を楽しんだ。彼女も温泉と食事を堪能していた。までは、良かったのだが……
「貴様が、ここまで酒に弱かったとは……」
「今日は久々に飲んじゃおう!」と冷蔵庫の缶ビールを一缶飲んだトレーナーは、思い切り酔っ払ってしまい……未成年の私に絡んでいるというわけだ。
「エアグルーヴ〜しゅき〜しゅきしゅき〜!」
「おい、ベタベタと触るな!浴衣を脱がそうとするな!」
「うふふ〜てれやさんめ〜」
「貴様……朝になったら覚えてろよ……」
そういえば、母は笑い上戸だった。あのときは、母を邪険に扱うことなんて出来ずされるがままだったが。こいつは、どうやら絡み上戸らしい。
「エアグルーヴも〜おしゃけのも〜? いまならわたしたちだけらし、バレないバレない!」
「飲むか! 女帝たるもの、酒に溺れたりするものか! そもそも私は未成年だぞ!」
「も〜! かったいにゃ〜! あはははは!」
ケラケラと笑い声を上げて、トレーナーは畳に転がり子どものように足をばたつかせる。その姿は、私の理想であるいつものトレーナーとは程遠い。アルコールとは、こうも人をダメにするものなのか。酒なんか一生飲まん。
私は部屋の灯りを暗くし、隅にあった布団を敷いて、強引に彼女を抱え上げた。
「もう寝ろ! 酔っ払いはおやすみの時間だ!」
「え〜! まだあそびたいよ〜!」
「問答無用!」
トレーナーを敷き布団の上に転がすと、彼女はがっちりと私に抱きついてきた。
「ねぇねぇ、エアグルーヴも、いっしょにねよ?」
結構な力だ。引き剥がそうとしても、必死に張り付いてくる。無理に引き剥がせば、ウマ娘の腕力でケガをさせかねない。一度抵抗を諦めて、力が抜けるのを待った方が良さそうだ。
私は、大人しく彼女と布団の中に入った。
「まったく……今は何も聞かんだろうから諦めるが、朝になったらこってり絞ってやるからな」
「えへへ〜」
「ふやけた顔をするな!」
抱きつかれて、至近距離に彼女の顔が近付く。その口は酒臭い。頬は紅潮して、目尻はふにゃりと垂れ下がっている。彼女のこんな姿は、初めて見た。
トレーナーは私に向かって微笑んで、再び口を開く。
「エアグルーヴ……ありがとう。わたしの、いちばんすてきな、ウマむすめ」
「なっ……」
「わたし、あなたのたんとうトレーナーで、よかった……いつも、ありがとう……だいしゅき」
「貴様……」
その言葉を最後に、彼女は寝息を立て始めた。すっかり安心しきった、大人とは思えないあどけない寝顔だ。
「この、たわけが」
彼女が眠ったら、その隙に腕から抜け出すつもりだったのに。その言葉が嬉しくて、抜け出す気が失せてきてしまった。私は、そっと彼女の髪を撫でる。撫でると、彼女の口角はゆるゆると上がった。
「今日はゆっくり寝ろ。だが、明日は朝一番で説教だからな……おやすみ、私のトレーナー」
ああ、今日も疲れた。だが、彼女がトレーナーではなく一人の人として気を抜ける、こんな夜も悪くないだろう。私も、ゆっくりと目を閉じた。
「いいか? 貴様は、今後私の前以外で飲酒禁止だ!! 酒に酔ってたわけた姿を決して見せるな!!」
「ビール開けた後のこと全然覚えてないけど、ごめんなさい!!」
翌朝。目覚めたトレーナーは隣にいた私を見て、何かを勘違いして布団から飛び出し、土下座した。さらに、飲んで以降の記憶はないらしい。本当に呆れた。
私は、決して酒なんか飲まん!
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