タキモル♀
──タキオンが、夏バテした。
「おお、これはこれは。トレーナー君の弁当は食べているんだがねぇ」
曰く、暑くて食欲が薄くなり、最近はほぼ一日一食(わたしのお弁当だ)で済ませてしまっているそうだ。そのせいで、タキオンはただでさえ同期のウマ娘と比べて痩せ型だというのに、さらに痩せてしまった。
「困ったねぇ。体重が減ってしまったとなると、実験ももろもろ前提条件の組み直しだ」
「ちゃんと食べなきゃダメだよ」
わたしが担当トレーナーに着く前は、研究に没頭して三日三晩飲まず食わずで倒れるなんてザラだったらしい。その頃と比べたら、一食でも食べているなんてマシだろうが……心配は心配だ。
「暑くて食欲が湧かないんだよ〜朝食があらゆる機能に優位に働くのは無論知っているが、それとこれとは話が別だ」
タキオンは、心なしか顔色が悪い。最近は熱帯夜も続いているし、寝不足もあるのかもしれない。
「……というわけなんですよ。皆さんは担当の子の食生活に困られたりします?」
トレーナー談話室。わたしはタキオンの同期のウマ娘を担当しているトレーナー達に、話を聞いてみた。
「うちのダンツは逆にいつも食欲旺盛だから、太らないように管理するのが大変で……」
「カフェは食欲にムラがあるんですよね。食べるときはたくさん食べるけど、食べないときはコーヒーで済まそうとするんですよ」
「実はポッケも最近夏バテ気味なんです。xxさんのタキオンと同じですね。暑さにやられちゃって食欲ないみたいで」
情報交換をする中、あ、と声を漏らしたのはカフェのトレーナーだった。
「そういえば、カフェがすごい痩せてた時に私、『補食』を作ってて……」
「補食」とは、三食とは別に栄養を補うために用意する食事のことだ。特に少食なウマ娘……有名どころではタマモクロスかな?……を担当したトレーナーは詳しいらしいが、カフェのトレーナーも例外ではなかったようだった。
ダンツのトレーナーが、そういえば!と人差し指を立てた。
「理事長の『大豊食祭』プロジェクトで、にんじんと苺がたくさん採れたみたいで! 参加していないトレーナーでもお裾分けが貰えるそうですよ!」
「なら、いっちょ作ってみますか! にんじんと苺で! タキオンのトレーナーさん、いいよな?」
ポッケのトレーナーが立ち上がり、必然的にわたしも調理に加わることになった。
「ん? んん…? 甘いねぇ!! それに流動体だから咀嚼もいらないし、ビタミンも豊富だ!」
四人のトレーナーで共同で作った「にんじんと苺のスムージー」は大成功だった。紅茶に砂糖をどっさり入れないと気が済まない甘党タキオンも、砂糖不使用と気付くことなくちゅるちゅるストローで啜っている。
「いやぁ、見直したよトレーナー君! これならいつでも摂取できそうだ! 何より甘くて美味いからねぇ!」
タキオンの笑顔に、わたしも思わず口元が緩む。たくさん作って小分けに冷凍しておいたから、しばらくは保つだろう。
「冷たくて美味しいからって飲み過ぎてもダメだからね? 一日一食までです!」
「ええー!? 」
タキオンの大げさに残念そうな声がトレーナー室に響く中、わたしは旧理科実験室に放置されてホコリを被りかけていたミキサーに深く感謝したのだった。ミキサーも、久々に活躍の機会を与えられてきっと喜んでいることだろう。
わたしは、タキオンが「飽きた」と駄々をこね出す前に、次のスムージーの材料を考え始めることになったが……
「おお、これはこれは。トレーナー君の弁当は食べているんだがねぇ」
曰く、暑くて食欲が薄くなり、最近はほぼ一日一食(わたしのお弁当だ)で済ませてしまっているそうだ。そのせいで、タキオンはただでさえ同期のウマ娘と比べて痩せ型だというのに、さらに痩せてしまった。
「困ったねぇ。体重が減ってしまったとなると、実験ももろもろ前提条件の組み直しだ」
「ちゃんと食べなきゃダメだよ」
わたしが担当トレーナーに着く前は、研究に没頭して三日三晩飲まず食わずで倒れるなんてザラだったらしい。その頃と比べたら、一食でも食べているなんてマシだろうが……心配は心配だ。
「暑くて食欲が湧かないんだよ〜朝食があらゆる機能に優位に働くのは無論知っているが、それとこれとは話が別だ」
タキオンは、心なしか顔色が悪い。最近は熱帯夜も続いているし、寝不足もあるのかもしれない。
「……というわけなんですよ。皆さんは担当の子の食生活に困られたりします?」
トレーナー談話室。わたしはタキオンの同期のウマ娘を担当しているトレーナー達に、話を聞いてみた。
「うちのダンツは逆にいつも食欲旺盛だから、太らないように管理するのが大変で……」
「カフェは食欲にムラがあるんですよね。食べるときはたくさん食べるけど、食べないときはコーヒーで済まそうとするんですよ」
「実はポッケも最近夏バテ気味なんです。xxさんのタキオンと同じですね。暑さにやられちゃって食欲ないみたいで」
情報交換をする中、あ、と声を漏らしたのはカフェのトレーナーだった。
「そういえば、カフェがすごい痩せてた時に私、『補食』を作ってて……」
「補食」とは、三食とは別に栄養を補うために用意する食事のことだ。特に少食なウマ娘……有名どころではタマモクロスかな?……を担当したトレーナーは詳しいらしいが、カフェのトレーナーも例外ではなかったようだった。
ダンツのトレーナーが、そういえば!と人差し指を立てた。
「理事長の『大豊食祭』プロジェクトで、にんじんと苺がたくさん採れたみたいで! 参加していないトレーナーでもお裾分けが貰えるそうですよ!」
「なら、いっちょ作ってみますか! にんじんと苺で! タキオンのトレーナーさん、いいよな?」
ポッケのトレーナーが立ち上がり、必然的にわたしも調理に加わることになった。
「ん? んん…? 甘いねぇ!! それに流動体だから咀嚼もいらないし、ビタミンも豊富だ!」
四人のトレーナーで共同で作った「にんじんと苺のスムージー」は大成功だった。紅茶に砂糖をどっさり入れないと気が済まない甘党タキオンも、砂糖不使用と気付くことなくちゅるちゅるストローで啜っている。
「いやぁ、見直したよトレーナー君! これならいつでも摂取できそうだ! 何より甘くて美味いからねぇ!」
タキオンの笑顔に、わたしも思わず口元が緩む。たくさん作って小分けに冷凍しておいたから、しばらくは保つだろう。
「冷たくて美味しいからって飲み過ぎてもダメだからね? 一日一食までです!」
「ええー!? 」
タキオンの大げさに残念そうな声がトレーナー室に響く中、わたしは旧理科実験室に放置されてホコリを被りかけていたミキサーに深く感謝したのだった。ミキサーも、久々に活躍の機会を与えられてきっと喜んでいることだろう。
わたしは、タキオンが「飽きた」と駄々をこね出す前に、次のスムージーの材料を考え始めることになったが……