ボンゴレ十代目が好きになったのは奴良組のお姫様でした。
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道場に到着すると、武具を身につけて準備万端の持田先輩がいた。
そういえば持田先輩は剣道部だったなとふと思い出す。
(ちょっと待って。ということは得意の剣道で勝負をつけようって言うの?それはいくらなんでも卑怯じゃない?)
「きやがったな変態ストーカーめ!お前のようなこの世のクズは神が見逃そうがこの持田が許さん!成敗してやる!」
「そんなぁーー!」
「心配するな。貴様のようなドアホでもわかる簡単な勝負だ!貴様は剣道初心者!そこで10分間に1本でも俺からとれば貴様の勝ち!できなければ俺の勝ちとする!」
(いやいや、全然フェアじゃないじゃん!せめてハンデくらいつけないと!)
「そして商品はもちろん!奴良凛だ!!」
「しょっ、商品!?」
持田先輩の言葉に凛はムッと眉を寄せた。
勝手にこれだけ騒ぎを大きくして、挙句の果てに私を商品扱い!?いくらなんでも自分勝手すぎる!
だいたい、私はどっちとも付き合う気はないんだけど!?
私が怒りでワナワナと震えていると、花ちゃんと京子ちゃんも不機嫌そうに眉を寄せて怒っていた。
「ひどい!凛ちゃんは物じゃないのに!」
「あいつサイテーね。」
「京子ちゃん、花ちゃん……」
友達っていいなってちょっとじんとしてしまった。
思わず涙ぐむと、私の少し離れた距離から凄まじい殺気を感じた気がした。
「ーーお嬢を商品扱いするなんて……許せません。あいつ氷漬けにしてやろうかしら……」
(ーーん?)
今、聞き覚えのあるような声がしたような……
ゾクッとした寒気に思わず振り返るが、そこにはただの野次馬となったギャラリーの生徒達がいるのみ。
というか先生はどうした。なんで止めないの?
こういうのって先生がなんとかするもんでは?
そう思って周囲を見回すと、なんと先生たちまでギャラリーの中に紛れ込んでいた。
……この学校もうダメかもしれない。
もうみんな、あの風紀委員長様に粛清されればいい。
なんて少しやさぐれた気持ちになっていると、沢田くんが急に「俺……トイレ行ってくる!!」と言って走り去ってしまった。
「逃げたな……あいつトイレ逃亡(エスケープ)多いから。」
「間違いない。」
「ったく、ダメツナはよー!」
「なっ!なんだと……」
怒りなのか持田先輩がわなわなと身体を震わせる。
しかしそれは違っていたようで、次の瞬間には高らかに笑い出したのだった。
「ふはははは!これで不戦勝!凛は俺のもの!」
不戦勝など不名誉な勝利に怒り心頭かと思えば、持田先輩は嬉しそうに高笑いを浮かべる。
そんな彼に凛は冷ややかな目を向けた。
それは周りも同じだったようで、自分勝手な勝利に酔いしれる持田先輩に後輩たちはもちろん、周囲もドン引いていた。
しかしそれに持田先輩は気付かずに馴れ馴れしく凛の肩を抱く。
凛はイラつきながらもその手を丁寧にべりっと剥がした。
本当は払い除けてやりたかったが、優しさである。
「いい加減にしてください。私は持田先輩とは付き合う気はありません!」
「何!?なら沢田と付き合う気か!?」
「どっちとも付き合いません!そもそも私の気持ちを無視して勝手に盛り上がらないでください。迷惑です!」
凛がはっきりと自分の気持ちを口にすると、周りもちょっとだけ気まずそうになる。
みんな凛の気持ちなどどうでも良く、ただお祭り騒ぎがしたかっただけなのだ。
ーー逃げ出した沢田くんだって持田先輩に巻き込まれたようなものだ。
こんな大騒ぎになってしまって、大人しい沢田くんが逃げ出してしまっても仕方ないと思う。
私だってできることなら逃げ出してしまいたいくらいだ。
だから当事者でありながら逃げ出してしまった沢田くんへ恨み言は別にないけれど、少しだけ残念な気持ちになった。
別に沢田くんと持田先輩に争って欲しい訳ではなく、ただ純粋に沢田くんが私を放って自分だけ逃げてしまったことへ少しだけ期待はずれな気持ちを勝手に私が抱いてしまっただけだ。
沢田くんは別に正義感溢れる性格でもないのに、助けて欲しかったなんて自分勝手な願いだ。だからここは自分の力だけで切り抜けなくては……
それにしても私ががはっきりと「迷惑」だと言葉にしたのに、持田先輩の頭はどうなっているのか、それを照れ隠しによるものだと判断したらしい。
彼は一瞬だけ怯んだ顔をしたものの、すぐに笑顔になってガハハと笑い出す。
「照れているのか?凛は恥ずかしがり屋だな!だがまたそれが可愛いぞ!」
「どんな思考回路してるんですか!私はっきりと迷惑だって言いましたよね!?」
はっきりと嫌だと伝えないと分からないバカなのだろうか。
もう嫌だ。私はただ、平和に学園生活を謳歌したいだけなのに、何故こんな目に合わないといけないんだ。私が何をした。
神様がいたら呪ってやる。凛は話の通じない持田先輩にもう涙目になり始めていた。
そろそろ本気でキレそうになっていたその時……
「うぉぉぉぉぉぉ!!いざ!!勝負!!」
「なっ!?」
「沢田くん!?」
トイレに逃げていた筈の沢田くんが全速力で戻ってきた。
何故かまたパンイチ姿ではあるが、戻ってきてくれたことに凛は無意識に自分でも気付かないうちにほっと安心した気持ちになっていた。
沢田くんが勝つという保証はないのに、ほんの少しだけ戻ってきてくれたことが嬉しかったのだ。
ギャラリーのみんなは沢田くんの姿に「変態だ」とか「サイテー」だとか叫んでいたが、今の凛にはそんなこと些細なことに思えて、兎に角沢田くんが戻ってきてくれたことが素直に嬉しかったのである。
「うぉぉぉぉぉぉ!!」
「ぶっ!」
沢田くんは持田先輩に一直線に向かって突っ込んでいく。
防具も何も身につけずにパンイチという無防備な格好で突進していく彼に、持田先輩は笑いを堪えきれずに盛大に吹き出した。
「ギャハハハ!裸で向かってくるとはブァカの極みだな!」
「沢田くん!」
持田先輩は容赦なく沢田くんに面を打ち込む気のようで、竹刀を高く構えると力強く振り下ろす。
流石に危ない行動に思わず沢田くんの名を呼んで静止の声をかけるが、それでも彼は止まらない。
(ーーいや、待って。でも沢田くんがもしも妖怪なら、これくらいのことで怪我はしないはず……でも、もしも人間だったら……)
「手加減するとでも思ったか!散れ!カスが!」
バチィ!!
沢田くんは受け身の姿勢もかばいもせずに、なんと顔面で持田先輩の渾身の面を受け止めたのである。
そしてそれに驚いている持田先輩を押しのけて、そのままの勢いで沢田くんは持田先輩に頭突きを食らわせたのである。
「だぁぁ!」
「うっ!」
頭突きを食らわせた勢いのまま、持田先輩を押し倒す沢田くん。
馬乗りになって彼にのしかかった状態になった沢田くんは、そのまま右手を高々と上げると、その勢いのまま手刀をくらわせようとしているように見えた。……が。
「手刀だ!」
「面を打つ気だ!」
「うぉぉぉぉ!!」
ぶぢぃ!!
「ぎゃぁぁぁ!」
次の瞬間には持田先輩の悲痛な叫び声が上がった。
なんと、沢田くんは持田先輩に手刀を打つどころか、持田先輩の髪の毛を鷲掴みにすると、そのまま勢いよく髪の毛をむしり取ったのである。
しかもごっそりと持っていったようで、持田先輩は哀れにも額のあたりから頭のてっぺんまで髪の毛がごっそり抜けていた。
そしてその鷲掴みした髪の毛を高らかに持ち上げると、沢田くんは叫んだのである。
「100本とったーーっ!!」
すると少しの静寂の後、みんながわっと歓声を上げた。
「考えたなツナの奴!」
「確かに何を一本取るかは言ってなかったもんな!」
みんなが沢田くんを認めたようで、予想外の”一本”にみんな可笑しそうに笑い声を上げる。
しかし凛は正直笑えなかった。
いくら持田先輩に対してかなりイラついていたとはいえ、年頃の少年の頭皮をハゲにしてしまうのはあまりにもむごい行いではないだろうか。
沢田くんのあまりにも予想外の行動への驚きや、持田先輩への哀れみから、かなり溜飲が下がったが、正直凛はかなり引いていた。
えっ、これ笑い事にしていいのか?とか一人だけ真面目に考えていた。
しかもまだ審判は沢田くんの勝ちを宣言していない。
だからなのか、沢田くんは手に持っている持田先輩の髪の毛を審判に見せつけるように差し出した。
「これでどーだぁ!」
「ひぃっ!」
あまりにもすごい気迫で沢田くんが迫るものだから、審判も青ざめた顔でドン引いている。
小さく悲鳴を上げて怯える彼が、まだ納得して勝利宣言をしないと思ったのか、沢田くんは「ちくしょ〜〜!」と悔しげに叫び声を上げながら更に持田先輩の髪をむしり始めてしまった。
それには流石に周りのみんなも怯えたように青ざめる。
いつもオドオドしていて頼りなさげな沢田くんからは想像もできない姿に、みんなが戸惑い始めている。
私も唖然として見守るばかりである。
やがて沢田くんは持田先輩の全ての頭皮の髪をむしり取ると、それを両手で審判に見せた。
「全部本!」
「赤!」
審判も真っ青になりながら沢田くんの勝利を宣言した。
沢田くんの勝利を宣言する赤い旗が上がると、みんなは少しだけ青ざめながら、でも興奮した様子でわっと歓声を上げ、沢田くんを取り囲んだ。
「スゲェ!勝ちやがった!」
「めちゃくちゃだけどいかしてたぜ!」
「なんて奴だ!」
「なんかスカッとしちゃった!」
「見直したぜ!」
みんなが口々に沢田くんへ賞賛の声をかける。
持田先輩は正直哀れに思うが、私が沢田くんに助けられたのは事実である。
それはちゃんとお礼を言わないといけないと思った。
「沢田くん」
「!、奴良さん!」
みんなが注目する中で声をかけるのはかなり勇気がいるが、今言わないといけない気がした。
私が声をかけると、沢田くんは緊張した様子で私を見てきた。
「勝ってくれてありがとう。」
「いっ、いや!そんな……」
沢田くんが照れたようにはにかむ。
あと、これだけは言わなければ……
「それと……告白の返事なんだけど……」
「えっ!?あっ!あれはその……冗談!冗談なんだ!」
「……えっ?そうだったの?」
「あはは!実はそうなんだ!(俺のバカー!)」
凛に断られると思ったツナは思わず自分から冗談だと言ってしまうが、心の中で自分自身が情けなく、意気地無しと自分自身を罵った。
けれど、冗談だと聞いた凛は明らかにぱあっと顔を明るくさせて、安堵したようにほっと息を吐いた。
その表情を見て、ツナは凛が告白を断る気であったどころか迷惑に思っていたことを察してしまって落ち込んだ。
「な〜んだ。そうだったんだね。沢田くんも人が悪いなぁ!そういう冗談は良くないよ!今度からはやめてね?」
「あははは!ごめんごめん!」
ツナは心の中で泣いた。
凛は冗談だとわかりほっと胸を撫で下ろした。
ふぅー、よかったぁ!沢田くんの告白って冗談だったんだ。
焦って返事しなくて良かった。
それでも今回は沢田くんには助けられちゃったな。
それにしてもあの人並み外れた運動神経はやっぱり沢田くんは妖怪なのかな。
確かめてみたいけど、もしも勘違いだったら私の正体が妖怪だってバレちゃうし……
ーーうん、今は様子見しよう。
とかなんとか考えていた。
こうして持田先輩による告白事件はなんとか終わったのであるが、これをきっかけに凛は沢田綱吉と少しずつ接点を持つようになるのだが、その事はまだ凛も沢田綱吉も知る由もなかったのである。
そういえば持田先輩は剣道部だったなとふと思い出す。
(ちょっと待って。ということは得意の剣道で勝負をつけようって言うの?それはいくらなんでも卑怯じゃない?)
「きやがったな変態ストーカーめ!お前のようなこの世のクズは神が見逃そうがこの持田が許さん!成敗してやる!」
「そんなぁーー!」
「心配するな。貴様のようなドアホでもわかる簡単な勝負だ!貴様は剣道初心者!そこで10分間に1本でも俺からとれば貴様の勝ち!できなければ俺の勝ちとする!」
(いやいや、全然フェアじゃないじゃん!せめてハンデくらいつけないと!)
「そして商品はもちろん!奴良凛だ!!」
「しょっ、商品!?」
持田先輩の言葉に凛はムッと眉を寄せた。
勝手にこれだけ騒ぎを大きくして、挙句の果てに私を商品扱い!?いくらなんでも自分勝手すぎる!
だいたい、私はどっちとも付き合う気はないんだけど!?
私が怒りでワナワナと震えていると、花ちゃんと京子ちゃんも不機嫌そうに眉を寄せて怒っていた。
「ひどい!凛ちゃんは物じゃないのに!」
「あいつサイテーね。」
「京子ちゃん、花ちゃん……」
友達っていいなってちょっとじんとしてしまった。
思わず涙ぐむと、私の少し離れた距離から凄まじい殺気を感じた気がした。
「ーーお嬢を商品扱いするなんて……許せません。あいつ氷漬けにしてやろうかしら……」
(ーーん?)
今、聞き覚えのあるような声がしたような……
ゾクッとした寒気に思わず振り返るが、そこにはただの野次馬となったギャラリーの生徒達がいるのみ。
というか先生はどうした。なんで止めないの?
こういうのって先生がなんとかするもんでは?
そう思って周囲を見回すと、なんと先生たちまでギャラリーの中に紛れ込んでいた。
……この学校もうダメかもしれない。
もうみんな、あの風紀委員長様に粛清されればいい。
なんて少しやさぐれた気持ちになっていると、沢田くんが急に「俺……トイレ行ってくる!!」と言って走り去ってしまった。
「逃げたな……あいつトイレ逃亡(エスケープ)多いから。」
「間違いない。」
「ったく、ダメツナはよー!」
「なっ!なんだと……」
怒りなのか持田先輩がわなわなと身体を震わせる。
しかしそれは違っていたようで、次の瞬間には高らかに笑い出したのだった。
「ふはははは!これで不戦勝!凛は俺のもの!」
不戦勝など不名誉な勝利に怒り心頭かと思えば、持田先輩は嬉しそうに高笑いを浮かべる。
そんな彼に凛は冷ややかな目を向けた。
それは周りも同じだったようで、自分勝手な勝利に酔いしれる持田先輩に後輩たちはもちろん、周囲もドン引いていた。
しかしそれに持田先輩は気付かずに馴れ馴れしく凛の肩を抱く。
凛はイラつきながらもその手を丁寧にべりっと剥がした。
本当は払い除けてやりたかったが、優しさである。
「いい加減にしてください。私は持田先輩とは付き合う気はありません!」
「何!?なら沢田と付き合う気か!?」
「どっちとも付き合いません!そもそも私の気持ちを無視して勝手に盛り上がらないでください。迷惑です!」
凛がはっきりと自分の気持ちを口にすると、周りもちょっとだけ気まずそうになる。
みんな凛の気持ちなどどうでも良く、ただお祭り騒ぎがしたかっただけなのだ。
ーー逃げ出した沢田くんだって持田先輩に巻き込まれたようなものだ。
こんな大騒ぎになってしまって、大人しい沢田くんが逃げ出してしまっても仕方ないと思う。
私だってできることなら逃げ出してしまいたいくらいだ。
だから当事者でありながら逃げ出してしまった沢田くんへ恨み言は別にないけれど、少しだけ残念な気持ちになった。
別に沢田くんと持田先輩に争って欲しい訳ではなく、ただ純粋に沢田くんが私を放って自分だけ逃げてしまったことへ少しだけ期待はずれな気持ちを勝手に私が抱いてしまっただけだ。
沢田くんは別に正義感溢れる性格でもないのに、助けて欲しかったなんて自分勝手な願いだ。だからここは自分の力だけで切り抜けなくては……
それにしても私ががはっきりと「迷惑」だと言葉にしたのに、持田先輩の頭はどうなっているのか、それを照れ隠しによるものだと判断したらしい。
彼は一瞬だけ怯んだ顔をしたものの、すぐに笑顔になってガハハと笑い出す。
「照れているのか?凛は恥ずかしがり屋だな!だがまたそれが可愛いぞ!」
「どんな思考回路してるんですか!私はっきりと迷惑だって言いましたよね!?」
はっきりと嫌だと伝えないと分からないバカなのだろうか。
もう嫌だ。私はただ、平和に学園生活を謳歌したいだけなのに、何故こんな目に合わないといけないんだ。私が何をした。
神様がいたら呪ってやる。凛は話の通じない持田先輩にもう涙目になり始めていた。
そろそろ本気でキレそうになっていたその時……
「うぉぉぉぉぉぉ!!いざ!!勝負!!」
「なっ!?」
「沢田くん!?」
トイレに逃げていた筈の沢田くんが全速力で戻ってきた。
何故かまたパンイチ姿ではあるが、戻ってきてくれたことに凛は無意識に自分でも気付かないうちにほっと安心した気持ちになっていた。
沢田くんが勝つという保証はないのに、ほんの少しだけ戻ってきてくれたことが嬉しかったのだ。
ギャラリーのみんなは沢田くんの姿に「変態だ」とか「サイテー」だとか叫んでいたが、今の凛にはそんなこと些細なことに思えて、兎に角沢田くんが戻ってきてくれたことが素直に嬉しかったのである。
「うぉぉぉぉぉぉ!!」
「ぶっ!」
沢田くんは持田先輩に一直線に向かって突っ込んでいく。
防具も何も身につけずにパンイチという無防備な格好で突進していく彼に、持田先輩は笑いを堪えきれずに盛大に吹き出した。
「ギャハハハ!裸で向かってくるとはブァカの極みだな!」
「沢田くん!」
持田先輩は容赦なく沢田くんに面を打ち込む気のようで、竹刀を高く構えると力強く振り下ろす。
流石に危ない行動に思わず沢田くんの名を呼んで静止の声をかけるが、それでも彼は止まらない。
(ーーいや、待って。でも沢田くんがもしも妖怪なら、これくらいのことで怪我はしないはず……でも、もしも人間だったら……)
「手加減するとでも思ったか!散れ!カスが!」
バチィ!!
沢田くんは受け身の姿勢もかばいもせずに、なんと顔面で持田先輩の渾身の面を受け止めたのである。
そしてそれに驚いている持田先輩を押しのけて、そのままの勢いで沢田くんは持田先輩に頭突きを食らわせたのである。
「だぁぁ!」
「うっ!」
頭突きを食らわせた勢いのまま、持田先輩を押し倒す沢田くん。
馬乗りになって彼にのしかかった状態になった沢田くんは、そのまま右手を高々と上げると、その勢いのまま手刀をくらわせようとしているように見えた。……が。
「手刀だ!」
「面を打つ気だ!」
「うぉぉぉぉ!!」
ぶぢぃ!!
「ぎゃぁぁぁ!」
次の瞬間には持田先輩の悲痛な叫び声が上がった。
なんと、沢田くんは持田先輩に手刀を打つどころか、持田先輩の髪の毛を鷲掴みにすると、そのまま勢いよく髪の毛をむしり取ったのである。
しかもごっそりと持っていったようで、持田先輩は哀れにも額のあたりから頭のてっぺんまで髪の毛がごっそり抜けていた。
そしてその鷲掴みした髪の毛を高らかに持ち上げると、沢田くんは叫んだのである。
「100本とったーーっ!!」
すると少しの静寂の後、みんながわっと歓声を上げた。
「考えたなツナの奴!」
「確かに何を一本取るかは言ってなかったもんな!」
みんなが沢田くんを認めたようで、予想外の”一本”にみんな可笑しそうに笑い声を上げる。
しかし凛は正直笑えなかった。
いくら持田先輩に対してかなりイラついていたとはいえ、年頃の少年の頭皮をハゲにしてしまうのはあまりにもむごい行いではないだろうか。
沢田くんのあまりにも予想外の行動への驚きや、持田先輩への哀れみから、かなり溜飲が下がったが、正直凛はかなり引いていた。
えっ、これ笑い事にしていいのか?とか一人だけ真面目に考えていた。
しかもまだ審判は沢田くんの勝ちを宣言していない。
だからなのか、沢田くんは手に持っている持田先輩の髪の毛を審判に見せつけるように差し出した。
「これでどーだぁ!」
「ひぃっ!」
あまりにもすごい気迫で沢田くんが迫るものだから、審判も青ざめた顔でドン引いている。
小さく悲鳴を上げて怯える彼が、まだ納得して勝利宣言をしないと思ったのか、沢田くんは「ちくしょ〜〜!」と悔しげに叫び声を上げながら更に持田先輩の髪をむしり始めてしまった。
それには流石に周りのみんなも怯えたように青ざめる。
いつもオドオドしていて頼りなさげな沢田くんからは想像もできない姿に、みんなが戸惑い始めている。
私も唖然として見守るばかりである。
やがて沢田くんは持田先輩の全ての頭皮の髪をむしり取ると、それを両手で審判に見せた。
「全部本!」
「赤!」
審判も真っ青になりながら沢田くんの勝利を宣言した。
沢田くんの勝利を宣言する赤い旗が上がると、みんなは少しだけ青ざめながら、でも興奮した様子でわっと歓声を上げ、沢田くんを取り囲んだ。
「スゲェ!勝ちやがった!」
「めちゃくちゃだけどいかしてたぜ!」
「なんて奴だ!」
「なんかスカッとしちゃった!」
「見直したぜ!」
みんなが口々に沢田くんへ賞賛の声をかける。
持田先輩は正直哀れに思うが、私が沢田くんに助けられたのは事実である。
それはちゃんとお礼を言わないといけないと思った。
「沢田くん」
「!、奴良さん!」
みんなが注目する中で声をかけるのはかなり勇気がいるが、今言わないといけない気がした。
私が声をかけると、沢田くんは緊張した様子で私を見てきた。
「勝ってくれてありがとう。」
「いっ、いや!そんな……」
沢田くんが照れたようにはにかむ。
あと、これだけは言わなければ……
「それと……告白の返事なんだけど……」
「えっ!?あっ!あれはその……冗談!冗談なんだ!」
「……えっ?そうだったの?」
「あはは!実はそうなんだ!(俺のバカー!)」
凛に断られると思ったツナは思わず自分から冗談だと言ってしまうが、心の中で自分自身が情けなく、意気地無しと自分自身を罵った。
けれど、冗談だと聞いた凛は明らかにぱあっと顔を明るくさせて、安堵したようにほっと息を吐いた。
その表情を見て、ツナは凛が告白を断る気であったどころか迷惑に思っていたことを察してしまって落ち込んだ。
「な〜んだ。そうだったんだね。沢田くんも人が悪いなぁ!そういう冗談は良くないよ!今度からはやめてね?」
「あははは!ごめんごめん!」
ツナは心の中で泣いた。
凛は冗談だとわかりほっと胸を撫で下ろした。
ふぅー、よかったぁ!沢田くんの告白って冗談だったんだ。
焦って返事しなくて良かった。
それでも今回は沢田くんには助けられちゃったな。
それにしてもあの人並み外れた運動神経はやっぱり沢田くんは妖怪なのかな。
確かめてみたいけど、もしも勘違いだったら私の正体が妖怪だってバレちゃうし……
ーーうん、今は様子見しよう。
とかなんとか考えていた。
こうして持田先輩による告白事件はなんとか終わったのであるが、これをきっかけに凛は沢田綱吉と少しずつ接点を持つようになるのだが、その事はまだ凛も沢田綱吉も知る由もなかったのである。
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