ボンゴレ十代目が好きになったのは奴良組のお姫様でした。
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安倍晴明との戦いから数十年が経ち、彩乃たちはすっかり大人へと成長し、皆がそれぞれの人生を歩んでいた。
夏目とリクオは大学を卒業後すぐに祝言を上げ、晴れて夫婦となった。
そして二人の間には一人娘がいたのだった。
その娘、奴良凛はリクオと彩乃の娘らしく生真面目で仲間思いの優しい娘に育った。
しかし、ある一点のことに関してだけ、奴良組を悩ませていた。
それはある意味で父親譲りの頑固さであり、リクオの娘らしい問題でもあった。
「ぜっったいに嫌!!」
大きな奴良組の屋敷に、少女の怒声が響き渡る。
少女、凛は怒りで顔を歪ませながら、曽祖父であるぬらりひょんをキッと睨みつけた。
「私はぜっったいに四代目なんて継がないから!」
「凛、またそんな事を言って……本当に昔のリクオそっくりじゃわい。」
「私は平穏に!平凡に!人間として生きていくの!」
「……本当にリクオそっくりじゃわい。」
キリッと目を釣り上げてそう宣言する曾孫に、ぬらりひょんは頭を抱えて唸る。
それに苦笑するのは母親である彩乃だ。
「ぬらりひょんさん、今は何言っても逆効果だと思いますよ?」
「そうだよじいちゃん。凛には凛の好きなように生きて欲しいんだから。」
「お前さん等が甘やかすからこんなこと言ってるんじゃないか?」
ぬらりひょんがやれやれと肩を竦めて言うものだから、リクオは「僕は凛の意見を尊重したいんだよ」と困ったように苦笑しながら答える。
彩乃もそれに同意するように頷くのだった。
「まあいいか。ワシは“どっち“かが四代目を継いでくれたらそれでいいわい。」
そう言ってぬらりひょんの視線は彩乃のお腹に向けられる。
彩乃のお腹はぽっこりと大きく膨れ上がっており、もうすぐに第二子が産まれる予定であった。
「……まっ、産まれてくる息子も継がないと言う可能性もあるがな。」
「相変わらず嫌な奴だな斑よ。」
話を聞いていたニャンコ先生が鼻でぬらりひょんを笑う。
それにぬらりひょんはふんっと嫌味ったらしく鼻を鳴らしてお互いに睨み合うのだった。
相変わらずこの2人は仲がいいのか悪いのか……
ふと壁にかけられた時計を見ると、もうすぐ登校時間ギリギリに迫っていた。
「あーー!もうこんな時間!おじいちゃんに構ってる場合じゃなかった!」
「おい、酷くないか?」
「いってきまーす!」
「気をつけて行ってくるのよ。」
母親の言葉に元気に「はーい」と答えながら凛は慌ただしく学校に登校すべく走り出す。
それに慌てて護衛の妖怪たちもついて行くのだった。
*
こんにちは、私の名前は奴良凛です。
奴良組三代目、奴良リクオの娘です。そんな私は妖怪ぬらりひょんの血を引いています。
母も祖母も曾祖母も人間だった私には、ほんの少ししか妖怪の血が入っていません。
だから自分の中に妖怪の血が入ってるって言われても実感が湧かないし、私は未だに妖怪になった事がありません。
お父さんは8歳の時にはもう妖怪として覚醒したらしいのに、私にはそんな傾向が1ミリもないんです。
だから決めました。私は人間として生きていく。
立派な妖怪になれないから、立派な人間になってみせようと。
それで少しでも実家から離れて過ごしたかった私は、地元の浮世絵中ではなく、隣町の並盛中に入学しました。
誰も私を知らない場所で人間として生きてみたいんです。
そんな私の憩いの場所は並盛中です。
今日も素敵な中学生ライフを楽しもうと思います。
なーんて自分語りをしてみたが、学校にいる間だけが、自分が人間として生きられる貴重な時間であった。
「京子ちゃん、花ちゃんおはよー!」
「おはよう凛」
「凛ちゃんおはよー!」
クラスに入るなり元気よく挨拶した私を出迎えてくれたのは親友の京子ちゃんと花ちゃんだ。
2人は中学になってから友達になったのだが、2人とも妙に気があってあっという間に親友になった。
私が学校が好きな理由の1つが2人に会えることである。
いつも穏やかで笑顔の可愛い京子ちゃんと、クールで大人っぼい花ちゃん。
この2人のお陰で、私はとても人間らしくいられてる気がするのだ。
(……本当にここにいると自分が普通の人間なんじゃないかって思えてくる……)
実はこっそり氷麗を含めた若い妖怪たちが生徒に化けて護衛をしていたりするのだが、しかし本人はまったく気付いていなかった。
本人はいたって普通に人間として学校で過ごしている気である。
しかし凛は知らなかった。他人から見た自分がかなり目立った存在であったことを……
*
凛たちが仲良く女の子同士でお喋りに花を咲かせていると、そんな様子を少し離れた所からクラスの男子たちが見ていることに凛はまったく気付いていなかった。
「おい見ろよ。笹川と奴良、やっぱり可愛いよな〜!」
「流石このクラスでマドンナの地位を競ってるだけあるよな。」
「黒川も美人じゃね?大人っぽいし。あの3人仲良いよな〜、美人が3人も並ぶと花があるぜ。」
「だよな。俺このクラスでよかったぁ〜」
そんなコソコソと小声で話す男子たちの噂話を、ツナは大量のノートを運びながら聞いていた。
少し前に担任から頼まれて回収したノートを職員室まで運ぶように言われてしまったのだ。
断ることができないツナは、面倒くさいと思いながらも1人でクラス全員分のノートを運ぶことにしたのである。
本来なら2人で運ぶはずのノートは、バックれたもう1人のクラスメイトによって1人でやらされているツナであった。
「はぁ〜、なんで俺こんなことしてるだろ……うわっ!」
ズデン
バササー!
そんなツナが自分はなんて情けないんだと思いながら歩いていると、教室を出たところでつまずいて盛大に転んだツナは、廊下に大量のノートを落としたのであった。
バサバサと大きな音を立てて廊下に散らばったノートを見て、あまりの情けなさに涙が出そうになった。
「……大丈夫?沢田くん。」
「……え?」
思わず涙目になっていたツナの顔に影がさしたと思えば、それは心配してツナの顔を覗き込んだ奴良凛と笹川京子であった。
思いがけない人物に声をかけられて、ツナは突っ伏した状態のまま動けなかった。
それを動けないと受け取ったのか、凛はツナに手を差し伸べる。
「大丈夫?立てる?」
「ーーあっ!うん!」
ツナは慌てて凛に差し伸べられた手を取ると、素早く立ち上がった。
学年でも5本指に入る美少女の女の子と思わぬところで握手をしてしまい、ツナは心なしかドキドキしていた。
ツナが立ち上がったのを確認すると、凛と京子は廊下に散らばったノートを拾い始めたので、ツナも慌てて拾い出す。
「あっ、ありがとう。奴良さん。笹川さん。」
「気にしないで!」
「そうそう。これってクラス全員分でしょ?1人で運ぶの大変だから一緒に運ぶよ。」
「えっ、いいの!?」
「もちろんだよ。だって私学級委員だし!流石に3人はいらないと思うから、京子ちゃんは待ってて。」
「2人で大丈夫?」
「うん!」
にっこりと可愛らしく微笑む凛に、ツナは心の底から嬉しくなって、頭の中でこっそりガッツリポーズをとった。
入学当時から綺麗な女の子だと気になっていた女の子たちだったのだ。
思いがけずそんな気になる笹川京子と奴良凛の2人と話すチャンスが巡ってきて、ツナの心はウキウキと弾んだ。
京子と別れた後、凛とツナはノートを2人で分けながら運んでいた。
「……確か山田くんと2人で運ぶように先生に頼まれてなかった?」
「えっ?ああ……えっと……はは!」
(山田はバックれました。)
そんなこと情けなくて気になる子に言えないツナは、笑って誤魔化す。
それに凛は怪訝そうな目を向ける。
きっと押し付けられたことに気付いたのだろう。凛は小さくため息をつく。
「……沢田くんは人が良すぎると思うよ。」
「仕方ないよ。おれこんなんだし、ダメツナだし……」
「自分で自分を卑下するの良くないと思う。沢田くんには沢田くんの良いところいっぱいあるよ。」
「ーーえっ。」
(今……俺のこと励ましてくれた?)
ツナはちょっとだけ感動した。
そんなやり取りをしていると、あっという間に職員室についてしまった。
ツナはもう少し話していたかったなと思いつつ、担任にノートを渡し、職員室を後にする。
「「失礼しました。」」
ガラッと職員室の扉を閉めて、ホッと一息つく。
2人で分担したとはいえ、ノート数十冊分はかなり重たかったのだ。
「沢田くんお疲れ様。私、教室に戻るけどどうする?」
「あっ、俺ちょっとトイレに……」
「そう、じゃあお先に。またね!」
「あっ、うん……また……」
凛が手を振りながら階段を昇って消えていくのを、ツナはほんのりと頬を赤く染めながら見送った。
気分はウキウキである。ツナにしては珍しく学校でいい事があって、気分が高揚しているのだ。
そんなツナの背後をじっと見つめる視線があった。
当然廊下の火災報知器の扉が開くと、中から黒いスーツに身を包んだ赤ん坊が出てきたのである。
「ちゃおっス」
「リボーン!おまっ!またそんな所から!」
「あれがお前の意中の女か?」
「お前には関係ないだろ!」
「笹川京子と奴良凛か……どっちが本命なんだ?」
「だから!お前には関係ないって!」
「告白しねぇのか?」
「人の話聞けよ!」
ツナと会話のキャッチボールをする気は無いのか、リボーンは自分の聞きたいことだけ問いかけてくる。
そんなリボーンに諦めてツナはため息をついた。
最近自分をマフィアのボスにするとかなんか訳の分からないことを言って、沢田家に居候しているこの赤ん坊が、今はツナによって最大の悩みであった。
「……そんなことできるわけないだろ。俺なんて相手にされないって……」
「だからお前はダメツナなんだ。告白もしてねぇのに諦めんな。」
「だから……」
チャキ
ツナが何か言おうとする前に、リボーンは相棒のレオンを銃に変形させて、その銃口をツナに向けた。
「いっぺん死んで死ぬ気で告白してこい!」
スガン!
一切の躊躇なく、リボーンはその引き金を引いた。
そこでツナの意識は途切れたのであった。
*
「奴良凛!俺と付き合え!」
「…………」
放課後の正門前にて。私はいつものように京子ちゃんと花ちゃんと3人で帰宅しようとしていた。
そんな時に持田先輩に呼び止められ、今大勢の生徒の前で公開告白をされていた。
正直に言おう。勘弁して欲しい。私は平凡で平和な学園生活を送りたいのだ。
なのになんでこんな目立つところで告白なんてしてくるんだこの先輩は。
余っ程自信があるのか、それとも単なる目立ちたがり屋なのかはわからないが、告白されている私はかなり恥ずかしい。
やめてくれ。全校生徒のみんなが見てるんだよ。こちとりゃ目立ちたくないんだよ。
いやいや、でも持田先輩も勇気を出して告白してくれたのにそんな風に思うのは良くないんじゃ……いや、ないな。
だって「付き合え」って命令形だよ。上から目線だよ。どんだけ自分に自信があるんだ。
花ちゃんもそれに対してイラついているようで隣でボソッと「態度が偉そうなのよ。マジでないわ」とか呟いてるのが聞こえる。
持田先輩は正直苦手だ。よく話しかけてくるし、京子ちゃんや花ちゃんにもよく声をかけているのを見かける。
気軽に肩を抱いてくるなどの過度なスキンシップも、彼を苦手だと思わせる要因の一つである。
正直に言って好みでは無い。ここはきっぱりと断ろう。
「あの、持田先輩。私は……「うおおおおおおおーーーーーー!!!」……えっ?」
その時、何処から叫び声が聞こえてきた。
それはどんどんこちらに近づいてきているようで、声量が大きくなっていく。
そして何かがとんでもないスピードでこちらに駆け寄ってくるのが見えてきたかと思えば、それはすぐに凛の前で急ブレーキをかけてきた。
砂埃が大量に舞い、視界が悪くそれがなんなのかわからなかったが、その砂埃が収まると見えてきた人影に凛はぎょっと目を見開いた。
「うぉぉぉぉぉ!!奴良凛!!」
「さっ、沢田くん!?」
「なっ、なんだぁ!?」
目の前には何故かパンイチ姿の沢田綱吉が立っており、凛をギロリと鋭い眼差しで睨みつけるように見つめていた。
いつもの気弱な沢田綱吉の印象からは程遠い鋭い眼光と気迫に、凛は困惑してしまう。
それに何故彼はパンイチ姿なのだろうか……額の炎はなんなんだろう。どうして誰も突っ込まないの?額が燃えるなんて明らかに変だよね!?
リボーンと死ぬ気弾の事情を知らない凛は知る由がなかった。
「奴良凛!俺と付き合ってください!!」
「ーーえっ?」
沢田くんは一体どうしたんだろう。
どうして沢田くんまで私に告白しているのだろう。
もう訳がわからない。そしてどうしてパンイチ姿なのだろう。
それにしても……沢田くんのあの身体能力の高さはなんだろう。
明らかに人間ではありえない身体能力だった。
もしかして沢田くんも妖怪なのだろうか……
それなら人間離れしたあの足の速さや建物の屋根を飛び越える脚力も頷ける。
いやいや、それよりも今はこの状況をどうにかしなければ……
私はすっかり注目の的になっている自分たちにそっとため息をつく。
みんな遠巻きにこちらを見守っている。ひそひそと噂話をしているのだろう。そんな声も聞こえてくる。
花ちゃんと京子ちゃんたちも困ったようにこちらを心配そうに見ている。
ああ、早く帰りたいな……
告白してくれた2人には悪いが、2人のどちらとも付き合う気は無いのだ。
私がどう断ろうかと考えていると、持田先輩が沢田くんに絡んでいた。
「お前!いきなりなんなんだ!そんな馬鹿みたいな格好して、ふざんな変態野郎!」
バキッ!
「いてぇ!」
持田先輩が沢田くんを殴った。
(ーーあれ?額の炎が消えてる?)
持田先輩が殴った瞬間にどうやら沢田くんはいつもの沢田くんに戻ったようで、彼の纏う雰囲気がいつもの頼りない雰囲気に戻ったような気がした。
殴られた沢田くんは余程痛かったのか、頬に手を当てて涙目になっている。
「持田先輩、いくらなんでも殴るのは……」
「お前は優しいな奴良。だがこんな変態野郎を庇う必要はないぞ!」
持田先輩は沢田くんをギロリと睨みつけると、彼を指さした。
それにびくりと肩を震わせる沢田くん。
「おい沢田!お前よくも俺の告白を邪魔してくれたな!しかも俺の後に告白するとはいい度胸だ!こんな屈辱は倍にして返さないとな……」
「いっ、いや、俺は……」
「沢田綱吉!お前に決闘を申し込む!」
「なーーーー!!?」
「なっ!?持田先輩!?」
この人は何を言い出すんだ。
突然の持田先輩の言葉に慌てたのは沢田くんだけじゃなくて、不本意ながら当事者にされた私もである。
これ以上面倒事を起こさないでくれ。
ただ平穏な学校生活を送りたいだけなのにどうしてこんなことになってるのか……
しかし持田先輩の暴走は止まらない。
誰かこいつの口を塞いでくれと私は切実に願った。
こうして、何故か私を巡って沢田くんと持田先輩が決闘をすることになったのだが、どうやって知ったのかそれを知った奴良組のみんなが面白おかしく宴会の話題にしたのは後日語ろうと思う。
夏目とリクオは大学を卒業後すぐに祝言を上げ、晴れて夫婦となった。
そして二人の間には一人娘がいたのだった。
その娘、奴良凛はリクオと彩乃の娘らしく生真面目で仲間思いの優しい娘に育った。
しかし、ある一点のことに関してだけ、奴良組を悩ませていた。
それはある意味で父親譲りの頑固さであり、リクオの娘らしい問題でもあった。
「ぜっったいに嫌!!」
大きな奴良組の屋敷に、少女の怒声が響き渡る。
少女、凛は怒りで顔を歪ませながら、曽祖父であるぬらりひょんをキッと睨みつけた。
「私はぜっったいに四代目なんて継がないから!」
「凛、またそんな事を言って……本当に昔のリクオそっくりじゃわい。」
「私は平穏に!平凡に!人間として生きていくの!」
「……本当にリクオそっくりじゃわい。」
キリッと目を釣り上げてそう宣言する曾孫に、ぬらりひょんは頭を抱えて唸る。
それに苦笑するのは母親である彩乃だ。
「ぬらりひょんさん、今は何言っても逆効果だと思いますよ?」
「そうだよじいちゃん。凛には凛の好きなように生きて欲しいんだから。」
「お前さん等が甘やかすからこんなこと言ってるんじゃないか?」
ぬらりひょんがやれやれと肩を竦めて言うものだから、リクオは「僕は凛の意見を尊重したいんだよ」と困ったように苦笑しながら答える。
彩乃もそれに同意するように頷くのだった。
「まあいいか。ワシは“どっち“かが四代目を継いでくれたらそれでいいわい。」
そう言ってぬらりひょんの視線は彩乃のお腹に向けられる。
彩乃のお腹はぽっこりと大きく膨れ上がっており、もうすぐに第二子が産まれる予定であった。
「……まっ、産まれてくる息子も継がないと言う可能性もあるがな。」
「相変わらず嫌な奴だな斑よ。」
話を聞いていたニャンコ先生が鼻でぬらりひょんを笑う。
それにぬらりひょんはふんっと嫌味ったらしく鼻を鳴らしてお互いに睨み合うのだった。
相変わらずこの2人は仲がいいのか悪いのか……
ふと壁にかけられた時計を見ると、もうすぐ登校時間ギリギリに迫っていた。
「あーー!もうこんな時間!おじいちゃんに構ってる場合じゃなかった!」
「おい、酷くないか?」
「いってきまーす!」
「気をつけて行ってくるのよ。」
母親の言葉に元気に「はーい」と答えながら凛は慌ただしく学校に登校すべく走り出す。
それに慌てて護衛の妖怪たちもついて行くのだった。
*
こんにちは、私の名前は奴良凛です。
奴良組三代目、奴良リクオの娘です。そんな私は妖怪ぬらりひょんの血を引いています。
母も祖母も曾祖母も人間だった私には、ほんの少ししか妖怪の血が入っていません。
だから自分の中に妖怪の血が入ってるって言われても実感が湧かないし、私は未だに妖怪になった事がありません。
お父さんは8歳の時にはもう妖怪として覚醒したらしいのに、私にはそんな傾向が1ミリもないんです。
だから決めました。私は人間として生きていく。
立派な妖怪になれないから、立派な人間になってみせようと。
それで少しでも実家から離れて過ごしたかった私は、地元の浮世絵中ではなく、隣町の並盛中に入学しました。
誰も私を知らない場所で人間として生きてみたいんです。
そんな私の憩いの場所は並盛中です。
今日も素敵な中学生ライフを楽しもうと思います。
なーんて自分語りをしてみたが、学校にいる間だけが、自分が人間として生きられる貴重な時間であった。
「京子ちゃん、花ちゃんおはよー!」
「おはよう凛」
「凛ちゃんおはよー!」
クラスに入るなり元気よく挨拶した私を出迎えてくれたのは親友の京子ちゃんと花ちゃんだ。
2人は中学になってから友達になったのだが、2人とも妙に気があってあっという間に親友になった。
私が学校が好きな理由の1つが2人に会えることである。
いつも穏やかで笑顔の可愛い京子ちゃんと、クールで大人っぼい花ちゃん。
この2人のお陰で、私はとても人間らしくいられてる気がするのだ。
(……本当にここにいると自分が普通の人間なんじゃないかって思えてくる……)
実はこっそり氷麗を含めた若い妖怪たちが生徒に化けて護衛をしていたりするのだが、しかし本人はまったく気付いていなかった。
本人はいたって普通に人間として学校で過ごしている気である。
しかし凛は知らなかった。他人から見た自分がかなり目立った存在であったことを……
*
凛たちが仲良く女の子同士でお喋りに花を咲かせていると、そんな様子を少し離れた所からクラスの男子たちが見ていることに凛はまったく気付いていなかった。
「おい見ろよ。笹川と奴良、やっぱり可愛いよな〜!」
「流石このクラスでマドンナの地位を競ってるだけあるよな。」
「黒川も美人じゃね?大人っぽいし。あの3人仲良いよな〜、美人が3人も並ぶと花があるぜ。」
「だよな。俺このクラスでよかったぁ〜」
そんなコソコソと小声で話す男子たちの噂話を、ツナは大量のノートを運びながら聞いていた。
少し前に担任から頼まれて回収したノートを職員室まで運ぶように言われてしまったのだ。
断ることができないツナは、面倒くさいと思いながらも1人でクラス全員分のノートを運ぶことにしたのである。
本来なら2人で運ぶはずのノートは、バックれたもう1人のクラスメイトによって1人でやらされているツナであった。
「はぁ〜、なんで俺こんなことしてるだろ……うわっ!」
ズデン
バササー!
そんなツナが自分はなんて情けないんだと思いながら歩いていると、教室を出たところでつまずいて盛大に転んだツナは、廊下に大量のノートを落としたのであった。
バサバサと大きな音を立てて廊下に散らばったノートを見て、あまりの情けなさに涙が出そうになった。
「……大丈夫?沢田くん。」
「……え?」
思わず涙目になっていたツナの顔に影がさしたと思えば、それは心配してツナの顔を覗き込んだ奴良凛と笹川京子であった。
思いがけない人物に声をかけられて、ツナは突っ伏した状態のまま動けなかった。
それを動けないと受け取ったのか、凛はツナに手を差し伸べる。
「大丈夫?立てる?」
「ーーあっ!うん!」
ツナは慌てて凛に差し伸べられた手を取ると、素早く立ち上がった。
学年でも5本指に入る美少女の女の子と思わぬところで握手をしてしまい、ツナは心なしかドキドキしていた。
ツナが立ち上がったのを確認すると、凛と京子は廊下に散らばったノートを拾い始めたので、ツナも慌てて拾い出す。
「あっ、ありがとう。奴良さん。笹川さん。」
「気にしないで!」
「そうそう。これってクラス全員分でしょ?1人で運ぶの大変だから一緒に運ぶよ。」
「えっ、いいの!?」
「もちろんだよ。だって私学級委員だし!流石に3人はいらないと思うから、京子ちゃんは待ってて。」
「2人で大丈夫?」
「うん!」
にっこりと可愛らしく微笑む凛に、ツナは心の底から嬉しくなって、頭の中でこっそりガッツリポーズをとった。
入学当時から綺麗な女の子だと気になっていた女の子たちだったのだ。
思いがけずそんな気になる笹川京子と奴良凛の2人と話すチャンスが巡ってきて、ツナの心はウキウキと弾んだ。
京子と別れた後、凛とツナはノートを2人で分けながら運んでいた。
「……確か山田くんと2人で運ぶように先生に頼まれてなかった?」
「えっ?ああ……えっと……はは!」
(山田はバックれました。)
そんなこと情けなくて気になる子に言えないツナは、笑って誤魔化す。
それに凛は怪訝そうな目を向ける。
きっと押し付けられたことに気付いたのだろう。凛は小さくため息をつく。
「……沢田くんは人が良すぎると思うよ。」
「仕方ないよ。おれこんなんだし、ダメツナだし……」
「自分で自分を卑下するの良くないと思う。沢田くんには沢田くんの良いところいっぱいあるよ。」
「ーーえっ。」
(今……俺のこと励ましてくれた?)
ツナはちょっとだけ感動した。
そんなやり取りをしていると、あっという間に職員室についてしまった。
ツナはもう少し話していたかったなと思いつつ、担任にノートを渡し、職員室を後にする。
「「失礼しました。」」
ガラッと職員室の扉を閉めて、ホッと一息つく。
2人で分担したとはいえ、ノート数十冊分はかなり重たかったのだ。
「沢田くんお疲れ様。私、教室に戻るけどどうする?」
「あっ、俺ちょっとトイレに……」
「そう、じゃあお先に。またね!」
「あっ、うん……また……」
凛が手を振りながら階段を昇って消えていくのを、ツナはほんのりと頬を赤く染めながら見送った。
気分はウキウキである。ツナにしては珍しく学校でいい事があって、気分が高揚しているのだ。
そんなツナの背後をじっと見つめる視線があった。
当然廊下の火災報知器の扉が開くと、中から黒いスーツに身を包んだ赤ん坊が出てきたのである。
「ちゃおっス」
「リボーン!おまっ!またそんな所から!」
「あれがお前の意中の女か?」
「お前には関係ないだろ!」
「笹川京子と奴良凛か……どっちが本命なんだ?」
「だから!お前には関係ないって!」
「告白しねぇのか?」
「人の話聞けよ!」
ツナと会話のキャッチボールをする気は無いのか、リボーンは自分の聞きたいことだけ問いかけてくる。
そんなリボーンに諦めてツナはため息をついた。
最近自分をマフィアのボスにするとかなんか訳の分からないことを言って、沢田家に居候しているこの赤ん坊が、今はツナによって最大の悩みであった。
「……そんなことできるわけないだろ。俺なんて相手にされないって……」
「だからお前はダメツナなんだ。告白もしてねぇのに諦めんな。」
「だから……」
チャキ
ツナが何か言おうとする前に、リボーンは相棒のレオンを銃に変形させて、その銃口をツナに向けた。
「いっぺん死んで死ぬ気で告白してこい!」
スガン!
一切の躊躇なく、リボーンはその引き金を引いた。
そこでツナの意識は途切れたのであった。
*
「奴良凛!俺と付き合え!」
「…………」
放課後の正門前にて。私はいつものように京子ちゃんと花ちゃんと3人で帰宅しようとしていた。
そんな時に持田先輩に呼び止められ、今大勢の生徒の前で公開告白をされていた。
正直に言おう。勘弁して欲しい。私は平凡で平和な学園生活を送りたいのだ。
なのになんでこんな目立つところで告白なんてしてくるんだこの先輩は。
余っ程自信があるのか、それとも単なる目立ちたがり屋なのかはわからないが、告白されている私はかなり恥ずかしい。
やめてくれ。全校生徒のみんなが見てるんだよ。こちとりゃ目立ちたくないんだよ。
いやいや、でも持田先輩も勇気を出して告白してくれたのにそんな風に思うのは良くないんじゃ……いや、ないな。
だって「付き合え」って命令形だよ。上から目線だよ。どんだけ自分に自信があるんだ。
花ちゃんもそれに対してイラついているようで隣でボソッと「態度が偉そうなのよ。マジでないわ」とか呟いてるのが聞こえる。
持田先輩は正直苦手だ。よく話しかけてくるし、京子ちゃんや花ちゃんにもよく声をかけているのを見かける。
気軽に肩を抱いてくるなどの過度なスキンシップも、彼を苦手だと思わせる要因の一つである。
正直に言って好みでは無い。ここはきっぱりと断ろう。
「あの、持田先輩。私は……「うおおおおおおおーーーーーー!!!」……えっ?」
その時、何処から叫び声が聞こえてきた。
それはどんどんこちらに近づいてきているようで、声量が大きくなっていく。
そして何かがとんでもないスピードでこちらに駆け寄ってくるのが見えてきたかと思えば、それはすぐに凛の前で急ブレーキをかけてきた。
砂埃が大量に舞い、視界が悪くそれがなんなのかわからなかったが、その砂埃が収まると見えてきた人影に凛はぎょっと目を見開いた。
「うぉぉぉぉぉ!!奴良凛!!」
「さっ、沢田くん!?」
「なっ、なんだぁ!?」
目の前には何故かパンイチ姿の沢田綱吉が立っており、凛をギロリと鋭い眼差しで睨みつけるように見つめていた。
いつもの気弱な沢田綱吉の印象からは程遠い鋭い眼光と気迫に、凛は困惑してしまう。
それに何故彼はパンイチ姿なのだろうか……額の炎はなんなんだろう。どうして誰も突っ込まないの?額が燃えるなんて明らかに変だよね!?
リボーンと死ぬ気弾の事情を知らない凛は知る由がなかった。
「奴良凛!俺と付き合ってください!!」
「ーーえっ?」
沢田くんは一体どうしたんだろう。
どうして沢田くんまで私に告白しているのだろう。
もう訳がわからない。そしてどうしてパンイチ姿なのだろう。
それにしても……沢田くんのあの身体能力の高さはなんだろう。
明らかに人間ではありえない身体能力だった。
もしかして沢田くんも妖怪なのだろうか……
それなら人間離れしたあの足の速さや建物の屋根を飛び越える脚力も頷ける。
いやいや、それよりも今はこの状況をどうにかしなければ……
私はすっかり注目の的になっている自分たちにそっとため息をつく。
みんな遠巻きにこちらを見守っている。ひそひそと噂話をしているのだろう。そんな声も聞こえてくる。
花ちゃんと京子ちゃんたちも困ったようにこちらを心配そうに見ている。
ああ、早く帰りたいな……
告白してくれた2人には悪いが、2人のどちらとも付き合う気は無いのだ。
私がどう断ろうかと考えていると、持田先輩が沢田くんに絡んでいた。
「お前!いきなりなんなんだ!そんな馬鹿みたいな格好して、ふざんな変態野郎!」
バキッ!
「いてぇ!」
持田先輩が沢田くんを殴った。
(ーーあれ?額の炎が消えてる?)
持田先輩が殴った瞬間にどうやら沢田くんはいつもの沢田くんに戻ったようで、彼の纏う雰囲気がいつもの頼りない雰囲気に戻ったような気がした。
殴られた沢田くんは余程痛かったのか、頬に手を当てて涙目になっている。
「持田先輩、いくらなんでも殴るのは……」
「お前は優しいな奴良。だがこんな変態野郎を庇う必要はないぞ!」
持田先輩は沢田くんをギロリと睨みつけると、彼を指さした。
それにびくりと肩を震わせる沢田くん。
「おい沢田!お前よくも俺の告白を邪魔してくれたな!しかも俺の後に告白するとはいい度胸だ!こんな屈辱は倍にして返さないとな……」
「いっ、いや、俺は……」
「沢田綱吉!お前に決闘を申し込む!」
「なーーーー!!?」
「なっ!?持田先輩!?」
この人は何を言い出すんだ。
突然の持田先輩の言葉に慌てたのは沢田くんだけじゃなくて、不本意ながら当事者にされた私もである。
これ以上面倒事を起こさないでくれ。
ただ平穏な学校生活を送りたいだけなのにどうしてこんなことになってるのか……
しかし持田先輩の暴走は止まらない。
誰かこいつの口を塞いでくれと私は切実に願った。
こうして、何故か私を巡って沢田くんと持田先輩が決闘をすることになったのだが、どうやって知ったのかそれを知った奴良組のみんなが面白おかしく宴会の話題にしたのは後日語ろうと思う。