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注意
・この作品はあやかし友人帳とゴーストハントのクロスオーバーになります。
つまりは夏目×ぬら孫×GHのクロスオーバーになります。
この作品を読む方はあやかし友人帳という作者が書いている作品(ぬら孫×夏目)を先に読んでからにしてください。
・主人公は夏目くん成り代わり♀です。
・このお話はあやかし友人帳で安倍晴明を倒してから数年後、ナナシが高校生になってからのお話になります。
*********
安倍晴明との激しい戦いから数年、ナナシはこの春から高校生になっていた。
高校生になり、リクオたちや北本たちとは学校が離れてしまったが、今でもぬら孫含め、彼等との交流は続いている。
今ではすっかり妖怪たちはぬら組がまとめてくれているお陰か大人しくなり、再び妖怪という存在は影の存在としてひっそりと隠れ始めた。
そうなると不思議なもので、あれだけ人々の目に晒され、ニュースやネットにも妖怪たちの姿が晒されたというのに、彼等が闇に身を隠すと、それはまるで最初から無かったかのように消えてしまったのだ。
それは撮られた映像からも、もちろん人々の記憶からも……例外として、妖怪に直接関わってしまった人々の記憶は残ってしまっているが、人間とは都合のいい脳をしているもので、妖怪とずっと関わらずにいるとあれは夢だったのかもと勝手に脳が記憶に蓋をしようとしてしまう。
いつの間にかあれだけ大きな戦いとなったにも関わらず、今では世間はとても平和に穏やかな時間を過ごしていた。
そして私、夏目ナナシは現在は東京の都心から少し離れた田舎に近い雰囲気のある高校生に通っている。
これは、そんな穏やかな日々を過ごしていた矢先に訪れた出会いと怪奇の物語である。
小さい頃から、変なものを見た。
幽霊や妖と呼ばれるそれは、見た目は人と変わらない姿をしている者から、小さな異形の姿をした者までいて、姿形は様々だった。
私は物心ついた頃にはそれが見えていて、随分苦労させられて来たけれど、理解してくれる人がいて、支えてくれる人がいて、力になってくれる人がいる。
そして妖にも友人と呼べる大切な者たちができた。
今では大切だと思える彼等との絆は、確実に私の中で宝物になっていた。
「ーー夏目ナナシさん?」
「え?」
それは突然の事だった。
学校の廊下を歩いていると、不意に誰かに名前を呼ばれて立ち止まった。
振り返ってみると、そこには妙に大人びた雰囲気のする、綺麗な顔立ちの黒髪の男性が立っていた。
見たところ、年齢は私と歳が近そうな少年だった。しかし制服は着ておらず、知り合いでもなかった為、私はつい妖なのではないかと警戒して、顔をしかめてしまった。
それでも少年は構わないのか、特に気を悪くした様子もなく涼しげな顔で淡々と尋ねてきた。
「君が夏目ナナシさんか?」
「……そうですけど、貴方は?」
「僕は渋谷一也。ちょっと君の噂を聞いてね。興味が湧いたから話をしてみたかったんだ。」
「噂……ですか?」
私はつい怪訝な顔で聞き返す。
噂と聞くと、経験上あまりいい印象がないからだ。
警戒心剥き出しに目を細めてしかめっ面をしてしまっても、渋谷さんは無表情のまま淡々と言葉を続けた。
「君は幽霊が視えるそうだね。」
「それはただの噂です。私にはそんな力ありませんよ。」
私が即座に否定すると、渋谷さんは顎に手を当てて考えるような仕草をした。
それからちらりとこちらを一瞥する。
「そうかな?君は授業中に突然叫び声を上げたり、何かに怯えたように急に走り出すことが時たまあるそうだね。まるで何かを視てはいけないものを見てしまったかのような、その奇妙な行動が噂の元になってるようだが……まあ、君がただ挙動不審な人物なのだとしたら、精神科をお勧めするところだ。……しかし僕はどうにも君には力があるというのは本当のことに思える。」
「そうですか。要件はそれだけですか?なら私はこれで失礼します。」
「君は随分せっかちなんだな。それとも図星だから話をしたくないのかな?」
「いきなり現れて変なことを聞いてくる人がいたら誰だって逃げたくなると思いますが?」
「単刀直入に言おう。君の力が本物なら、僕の仕事を手伝ってみないか?」
「人の話聞いてます?」
なんて自分勝手な人なんだ。
私はあまりにも身勝手に人の話を聞かない渋谷さんに少しばかり苛立っていた。
自分が妖に一々反応してしまうせいで、学校で変な噂が流れていることは知っていた。
それは今までの転校先でもあったことなので、気にないようにしていた。
けれどまさかこんな風に噂を聞きつけて絡んでくる人は初めてだった。
というか仕事ってなんだ。この人私と歳が近そうだから学校の生徒じゃないの?
……ん?もしかして……
「……渋谷さんはもしかして祓い屋ですか?」
「違う。僕はゴーストハント。」
「……え?」
聞き慣れない単語に思わず聞き返すように声を漏らす。
すると渋谷さんは相変わらず感情の読めない淡々とした表情で説明してくれた。
「直訳すれば幽霊退治……かな。ここの校長の依頼で旧校舎の調査に来たんだ。」
「旧校舎の?」
「そう。取り壊し工事をしようとすると事故が起こる旧校舎を調査して欲しいってね。」
「はあ……」
「そこでこの学校の噂を色々と調べているうちに君のことを知った。祓い屋を知ってると言うことは、少なくとも君はこの業界について無関係ではないんだな。」
うっかり墓穴を掘った自分を殴りたくなった。
この人は所謂霊能者的な人の関係者なのだろう。
祓い屋のことを知っているようだし、うっかり口にしてしまった自分が悪いが、どうやら私は渋谷さんに興味を持たれているらしい。
きっと噂を聞いて面白半分に尋ねてきたのだろう。
あまりそういう噂なんかに踊らされたり、野次馬的なことには興味はなさそうに見えるのに、意外と好奇心旺盛なのだろうか?
淡々とした冷たい無表情を浮かべる彼からはなんの感情も読み取れない。
この人は何をしたくて私に接触してきたのだろうか?
「……たまたま知り合いに祓い屋をしてる人がいるだけです。私自身に力がある訳じゃ……「レイコー!友人帳を渡せー!」危ない!!」
なんとか渋谷さんに興味を無くしてもらおうと。言い訳を考えていたところ、不意に顔を上げた瞬間、窓の向こうから大きな口の妖がこちらに向かって飛び込んで来るのが見えた。
私は咄嗟に駆け出して渋谷さんを背に庇うように前に出た。
ガシャーンと窓ガラスが割れる音と共に大きな口の妖が学校に飛び込んできた。
守らなければ。私は思わず反射的に妖の顔面に拳を振り上げていた。
「この!!」
「ぎゃっ!いたい!ひえぇぇ!」
鈍い打撃音と共に顔面に拳がめり込み、それに妖は悲鳴を上げた。
たまらず涙目になって窓から逃げ出して去っていく妖を見つめながら、私はほっと安堵の息をついたのである。
そしてハッと我に返ると、慌てて渋谷さんの方を見た。
(やばいやばい!どうしよう。渋谷さんに思いっきり妖を殴ってるところ見られた!)
これではもう、妖が見えないなど言い訳はできない。どうやっても誤魔化せない。
私があたふたと焦っているのに、渋谷さんは相変わらず淡々とした表情のまま私をじっと見ていた。
「……今、何かいたのか?」
「……え?」
すると渋谷さんから意外な言葉が出てきた。
まるでそれはさっきまでの出来事が分かっていないかのような……
(……もしかして、渋谷さんは妖が見えてない?)
「えっと……」
「僕には突然窓ガラスが割れたように見えた。だがあまりにも不自然な割れ方だ。ボールが投げ込まれて割れたような風だったのに、それらしき物が投げ込まれた様子もない。」
「……」
「内側にガラスの破片が落ちているのを見るに、何かが外から入り込んで割れたのは確かだ。そして君の先程の言動からして、何かが窓から飛び込んできて、君はそれを追い払ったのか?」
「……えっと……」
まるで探るような視線に、思わず狼狽えてしまう。だけど、ここで認めなければきっと大丈夫だ。
やっぱりこの人、妖が見えないんだ。
それなら……
「私にはなんの事か分かりません。先生に窓のことを報告しないといけないので、私はこれで失礼しますね。」
ぺこりと頭を下げて私はそそくさとその場を立ち去るべく足早に駆け出した。
早くこの場を去りたかった。これ以上渋谷さんに 関わってはいけないと思ったからだ。
相手がどんなつもりで私に声をかけてきたのかは分からないが、わざわざ自分から厄介事に関わるようなことはしたくない。
私が逃げるように走り去るのを、渋谷さんともう1人の人が影からずっと見ていたことを私は知らなかった。
「……どう思う、リン。」
「彼女が見える人間というのは本当のようです。先程貴方のことを妖怪から守っていました。それも拳一つで追い払えるとなると……」
「かなりの力の持ち主……ということか?」
こくりと、リンと呼ばれた青年は静かに頷いた。
渋谷は何か考えがあるのか暫く黙り込むと、その形の良い唇をクスリと微かに釣り上げて笑った。
彼にしては珍しく笑みを浮かべたのである。
まるで都合のいい手駒を見つけたようなそんな企みのある笑みを浮かべ、彼は一言呟くように言ったのである。
「彼女のことをもう少し詳しく調べてくれ。」
「……わかりました。」
こうしてすっかり目をつけられたナナシが後に旧校舎での事件に巻き込まれることになるのである。
・この作品はあやかし友人帳とゴーストハントのクロスオーバーになります。
つまりは夏目×ぬら孫×GHのクロスオーバーになります。
この作品を読む方はあやかし友人帳という作者が書いている作品(ぬら孫×夏目)を先に読んでからにしてください。
・主人公は夏目くん成り代わり♀です。
・このお話はあやかし友人帳で安倍晴明を倒してから数年後、ナナシが高校生になってからのお話になります。
*********
安倍晴明との激しい戦いから数年、ナナシはこの春から高校生になっていた。
高校生になり、リクオたちや北本たちとは学校が離れてしまったが、今でもぬら孫含め、彼等との交流は続いている。
今ではすっかり妖怪たちはぬら組がまとめてくれているお陰か大人しくなり、再び妖怪という存在は影の存在としてひっそりと隠れ始めた。
そうなると不思議なもので、あれだけ人々の目に晒され、ニュースやネットにも妖怪たちの姿が晒されたというのに、彼等が闇に身を隠すと、それはまるで最初から無かったかのように消えてしまったのだ。
それは撮られた映像からも、もちろん人々の記憶からも……例外として、妖怪に直接関わってしまった人々の記憶は残ってしまっているが、人間とは都合のいい脳をしているもので、妖怪とずっと関わらずにいるとあれは夢だったのかもと勝手に脳が記憶に蓋をしようとしてしまう。
いつの間にかあれだけ大きな戦いとなったにも関わらず、今では世間はとても平和に穏やかな時間を過ごしていた。
そして私、夏目ナナシは現在は東京の都心から少し離れた田舎に近い雰囲気のある高校生に通っている。
これは、そんな穏やかな日々を過ごしていた矢先に訪れた出会いと怪奇の物語である。
小さい頃から、変なものを見た。
幽霊や妖と呼ばれるそれは、見た目は人と変わらない姿をしている者から、小さな異形の姿をした者までいて、姿形は様々だった。
私は物心ついた頃にはそれが見えていて、随分苦労させられて来たけれど、理解してくれる人がいて、支えてくれる人がいて、力になってくれる人がいる。
そして妖にも友人と呼べる大切な者たちができた。
今では大切だと思える彼等との絆は、確実に私の中で宝物になっていた。
「ーー夏目ナナシさん?」
「え?」
それは突然の事だった。
学校の廊下を歩いていると、不意に誰かに名前を呼ばれて立ち止まった。
振り返ってみると、そこには妙に大人びた雰囲気のする、綺麗な顔立ちの黒髪の男性が立っていた。
見たところ、年齢は私と歳が近そうな少年だった。しかし制服は着ておらず、知り合いでもなかった為、私はつい妖なのではないかと警戒して、顔をしかめてしまった。
それでも少年は構わないのか、特に気を悪くした様子もなく涼しげな顔で淡々と尋ねてきた。
「君が夏目ナナシさんか?」
「……そうですけど、貴方は?」
「僕は渋谷一也。ちょっと君の噂を聞いてね。興味が湧いたから話をしてみたかったんだ。」
「噂……ですか?」
私はつい怪訝な顔で聞き返す。
噂と聞くと、経験上あまりいい印象がないからだ。
警戒心剥き出しに目を細めてしかめっ面をしてしまっても、渋谷さんは無表情のまま淡々と言葉を続けた。
「君は幽霊が視えるそうだね。」
「それはただの噂です。私にはそんな力ありませんよ。」
私が即座に否定すると、渋谷さんは顎に手を当てて考えるような仕草をした。
それからちらりとこちらを一瞥する。
「そうかな?君は授業中に突然叫び声を上げたり、何かに怯えたように急に走り出すことが時たまあるそうだね。まるで何かを視てはいけないものを見てしまったかのような、その奇妙な行動が噂の元になってるようだが……まあ、君がただ挙動不審な人物なのだとしたら、精神科をお勧めするところだ。……しかし僕はどうにも君には力があるというのは本当のことに思える。」
「そうですか。要件はそれだけですか?なら私はこれで失礼します。」
「君は随分せっかちなんだな。それとも図星だから話をしたくないのかな?」
「いきなり現れて変なことを聞いてくる人がいたら誰だって逃げたくなると思いますが?」
「単刀直入に言おう。君の力が本物なら、僕の仕事を手伝ってみないか?」
「人の話聞いてます?」
なんて自分勝手な人なんだ。
私はあまりにも身勝手に人の話を聞かない渋谷さんに少しばかり苛立っていた。
自分が妖に一々反応してしまうせいで、学校で変な噂が流れていることは知っていた。
それは今までの転校先でもあったことなので、気にないようにしていた。
けれどまさかこんな風に噂を聞きつけて絡んでくる人は初めてだった。
というか仕事ってなんだ。この人私と歳が近そうだから学校の生徒じゃないの?
……ん?もしかして……
「……渋谷さんはもしかして祓い屋ですか?」
「違う。僕はゴーストハント。」
「……え?」
聞き慣れない単語に思わず聞き返すように声を漏らす。
すると渋谷さんは相変わらず感情の読めない淡々とした表情で説明してくれた。
「直訳すれば幽霊退治……かな。ここの校長の依頼で旧校舎の調査に来たんだ。」
「旧校舎の?」
「そう。取り壊し工事をしようとすると事故が起こる旧校舎を調査して欲しいってね。」
「はあ……」
「そこでこの学校の噂を色々と調べているうちに君のことを知った。祓い屋を知ってると言うことは、少なくとも君はこの業界について無関係ではないんだな。」
うっかり墓穴を掘った自分を殴りたくなった。
この人は所謂霊能者的な人の関係者なのだろう。
祓い屋のことを知っているようだし、うっかり口にしてしまった自分が悪いが、どうやら私は渋谷さんに興味を持たれているらしい。
きっと噂を聞いて面白半分に尋ねてきたのだろう。
あまりそういう噂なんかに踊らされたり、野次馬的なことには興味はなさそうに見えるのに、意外と好奇心旺盛なのだろうか?
淡々とした冷たい無表情を浮かべる彼からはなんの感情も読み取れない。
この人は何をしたくて私に接触してきたのだろうか?
「……たまたま知り合いに祓い屋をしてる人がいるだけです。私自身に力がある訳じゃ……「レイコー!友人帳を渡せー!」危ない!!」
なんとか渋谷さんに興味を無くしてもらおうと。言い訳を考えていたところ、不意に顔を上げた瞬間、窓の向こうから大きな口の妖がこちらに向かって飛び込んで来るのが見えた。
私は咄嗟に駆け出して渋谷さんを背に庇うように前に出た。
ガシャーンと窓ガラスが割れる音と共に大きな口の妖が学校に飛び込んできた。
守らなければ。私は思わず反射的に妖の顔面に拳を振り上げていた。
「この!!」
「ぎゃっ!いたい!ひえぇぇ!」
鈍い打撃音と共に顔面に拳がめり込み、それに妖は悲鳴を上げた。
たまらず涙目になって窓から逃げ出して去っていく妖を見つめながら、私はほっと安堵の息をついたのである。
そしてハッと我に返ると、慌てて渋谷さんの方を見た。
(やばいやばい!どうしよう。渋谷さんに思いっきり妖を殴ってるところ見られた!)
これではもう、妖が見えないなど言い訳はできない。どうやっても誤魔化せない。
私があたふたと焦っているのに、渋谷さんは相変わらず淡々とした表情のまま私をじっと見ていた。
「……今、何かいたのか?」
「……え?」
すると渋谷さんから意外な言葉が出てきた。
まるでそれはさっきまでの出来事が分かっていないかのような……
(……もしかして、渋谷さんは妖が見えてない?)
「えっと……」
「僕には突然窓ガラスが割れたように見えた。だがあまりにも不自然な割れ方だ。ボールが投げ込まれて割れたような風だったのに、それらしき物が投げ込まれた様子もない。」
「……」
「内側にガラスの破片が落ちているのを見るに、何かが外から入り込んで割れたのは確かだ。そして君の先程の言動からして、何かが窓から飛び込んできて、君はそれを追い払ったのか?」
「……えっと……」
まるで探るような視線に、思わず狼狽えてしまう。だけど、ここで認めなければきっと大丈夫だ。
やっぱりこの人、妖が見えないんだ。
それなら……
「私にはなんの事か分かりません。先生に窓のことを報告しないといけないので、私はこれで失礼しますね。」
ぺこりと頭を下げて私はそそくさとその場を立ち去るべく足早に駆け出した。
早くこの場を去りたかった。これ以上渋谷さんに 関わってはいけないと思ったからだ。
相手がどんなつもりで私に声をかけてきたのかは分からないが、わざわざ自分から厄介事に関わるようなことはしたくない。
私が逃げるように走り去るのを、渋谷さんともう1人の人が影からずっと見ていたことを私は知らなかった。
「……どう思う、リン。」
「彼女が見える人間というのは本当のようです。先程貴方のことを妖怪から守っていました。それも拳一つで追い払えるとなると……」
「かなりの力の持ち主……ということか?」
こくりと、リンと呼ばれた青年は静かに頷いた。
渋谷は何か考えがあるのか暫く黙り込むと、その形の良い唇をクスリと微かに釣り上げて笑った。
彼にしては珍しく笑みを浮かべたのである。
まるで都合のいい手駒を見つけたようなそんな企みのある笑みを浮かべ、彼は一言呟くように言ったのである。
「彼女のことをもう少し詳しく調べてくれ。」
「……わかりました。」
こうしてすっかり目をつけられたナナシが後に旧校舎での事件に巻き込まれることになるのである。