鬼滅の刃
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ここは蝶屋敷。蟲柱、胡蝶しのぶが自身の屋敷を鬼殺隊士の治療の場として解放している場所である。
私、苗字名前はその蝶屋敷で看護師見習として働いている。
実は私はこの時代の人間ではない。
というか、この世界の人間ですらない。
令和という時代を生きていた私は、この鬼滅の刃という漫画の世界で何故か生きている。
理由はよく分からない。夜に布団に入って普通に寝て目を開けたら、何故かこの世界にいたのだ。
それから色々あって、今ではこの蝶屋敷で働かせてもらっている。
この世界に来て1年。私は16歳になった。
そんな私の最近の楽しみは、彼らを観察することである。
「いーやーー!!やだやだやだ!!こんな苦い薬なんて飲めないよぉーー!!」
「ダメですよ我妻さん。ちゃんと飲まないと体元に戻りませんよ?ほら、がんばって!」
「うう、いくら名前ちゃんに言われても嫌なものは嫌だよォ~~!!」
「飲まないとアオイに怒られますよ?」
「うう、それも嫌だ。」
そう言って我妻さんは渋々ながら薬の入った湯呑みを受け取った。
そして一気に飲み干すと、「うげぇ、やっぱり苦い!!」と、とても不味そうに顔をゆがめて言った。
そんな彼に私はにっこりと微笑んで、空になった湯呑みを回収する。
「偉い偉い、よく頑張りましたね。」
「うう、もう少しどうにかならないのぉ~~?」
「どうにもなりません。良薬口に苦しって言うじゃないですか。」
「苦いにも限度があるよぉーーー!!」
ああ言えばこう言う。毎日毎日、よく飽きもせず我儘が言えたものだ。
苦いのはどうにもならないし、これは彼が元の体に戻るために必要なものなのだから、いい加減諦めて大人しく飲んでほしいものである。
薬が飲み終わった後も、口の中にまだ苦い味が残っているのか、我妻さんは苦い苦いと泣いている。
そんな彼に私はハアっと、呆れたようにため息をつくとポケットからある物を取り出した。
「しょうがないですねぇ~~。手、出してください。いい物をあげます。」
「いい物?」
我妻さんが不思議そうにしながらも、素直に手を差し出してきた。
私は手に握りしめていたそれを彼の掌の上にそっと置く。
白い小さな紙に包まれていたそれが、カサリと音を立てて広がった。
「……金平糖?」
「差し上げます。口直しにどうぞ。」
我妻さんの手のひらに置いたのは金平糖だった。
白、赤、黄色、ピンク。色とりどりの綺麗な金平糖が手のひらに広がる。
私があげると言うと、彼はちょっぴり目を輝かせて私を見た。
「えっ!いいの?」
「いいですよ。しのぶさんから貰った物の余りですけど……我妻さん、甘いの好きだったでしょ?口直しに差し上げます。」
「わあーー!!ありがとう名前ちゃん!!もう大好き!!結婚しよう!!」
「あははは。もう冗談きついなぁ~~我妻さん!女の子にそんなことばっかり言ってると、本命の禰豆子さんに振り向いてもらえませんよ?」
「えっ!?」
「そういえば竈門さんに聞いたんですけど、禰豆子さんの好物って金平糖なんだそうです。彼女は今は何かを食べたりはできないみたいですけど、金平糖って色とりどりで見ているだけでも綺麗だから、持って行ったらきっと喜びますよ?」
「え?うん、そうだね。でも名前ちゃん!俺……」
「じゃあ私はこれで失礼しますね。私、お2人の恋を応援してますから!!」
「えっ!あっ、うん?ありがとう??」
私は私が自分が言いたいことだけ伝えると、何かを言いたそうにしている我妻さんを放ってさっさと病室を出ていく。
仕事はまだまだ溜まっているのだ、ゆっくりしている暇はない。
私は忙しなく通路を歩きながら、思わず緩みそうになる頬を必死に引き締めていた。
口実は作ってやった、後は彼もがちゃんと行動を移してくれるのみである。
私はドキドキワクワクと、高揚感で高鳴る鼓動を落ち着けようと必死であった。
きっと"善逸くん"は今日にでも"禰豆子ちゃん"にあの金平糖を見せに行くだろう。
そして私はその現場に是非とも立ち会いたい。
遠目からでいい。大好きなぜんねずをじっくりと眺めたい。
(――ああ、早く見たいなぁ~~!!)
ニヤニヤと思わずだらしなく頬が緩んでしまう。
そうなのである、私は鬼滅の刃のキャラクターの中でも我妻善逸が大好きであった。
そして、何よりもぜんねずが大好きなのである。
まさか自分が鬼滅の刃の世界に来てしまうことになるとは夢にも思わなかったが、こうなってしまっては仕方ないと、私は早々に腹を括った。
そして私は思ったのである、折角、鬼滅の刃の世界に来たのならば、大好きなぜんねずをこの目で見たいと。
「ウフフフフ、禰豆子ちゃんが金平糖が大好きなのはファンブックで知ってたから、こうやって善逸くんにさりげなく情報をリークして、背中を押してやる作戦を思いつくなんてさすが私!
後は善逸くんが禰豆子ちゃんに金平糖を渡すタイミングを見逃さないようにしないとねーー!」
ルンルンとスキップでもしそうなくらい上機嫌になる名前。それくらい楽しみなのである。
しかし名前はある重大な勘違いをしていたのである。
それが判明したのは、夕餉を済ませ、後片付けを終えた少し後のことであった。
***********
「「……………」」
何故か私は今、善逸くんと無言で見つめ合っている。
善逸くんはまるで茹でたこのように真っ赤な顔で私に簪を差し出していた。
Why?なぜ?
私の頭の中にはクエスチョンマークが大量発生していた。軽くパニック状態である。
何故私は善逸くんに簪を差し出されているのだろう?
夕餉の後片付けを終えて、さあお風呂の支度でもしようと部屋に戻ろうとしていた時に、急に善逸くんに呼び止められた。
そして、無言で突き出された簪。
真っ赤な色をした綺麗な玉かんざしは、見るからに高価そうなもので、なぜ彼はそれを私に差し出しているのだろうか?
だって私は知っている。
この時代、簪を男性が女性に贈るのは求婚。
つまりはプロポーズの意味であるということを。
「――好きです!!名前ちゃんが大好きです!!俺と結婚して!!結婚してくれたら、毎日鰻と寿司食べさせてあげる!!好きなもの何でも買ってあげるから!!お願いだよ!!俺と結婚してくれ!!」
――なんてこった。
私は自分の顔が盛大にひきつるのを感じ取った。
あれだけ気を配って、彼の恋を後押ししていたのに、当の善逸くんが好きになったのは私だと?
そんなの、そんなのって……
「――解釈違いだ。」
私は手で目を覆い、天を仰ぐように上を向いた。
何度でも言おう。
私はぜんねずが好きなんだ。
私、苗字名前はその蝶屋敷で看護師見習として働いている。
実は私はこの時代の人間ではない。
というか、この世界の人間ですらない。
令和という時代を生きていた私は、この鬼滅の刃という漫画の世界で何故か生きている。
理由はよく分からない。夜に布団に入って普通に寝て目を開けたら、何故かこの世界にいたのだ。
それから色々あって、今ではこの蝶屋敷で働かせてもらっている。
この世界に来て1年。私は16歳になった。
そんな私の最近の楽しみは、彼らを観察することである。
「いーやーー!!やだやだやだ!!こんな苦い薬なんて飲めないよぉーー!!」
「ダメですよ我妻さん。ちゃんと飲まないと体元に戻りませんよ?ほら、がんばって!」
「うう、いくら名前ちゃんに言われても嫌なものは嫌だよォ~~!!」
「飲まないとアオイに怒られますよ?」
「うう、それも嫌だ。」
そう言って我妻さんは渋々ながら薬の入った湯呑みを受け取った。
そして一気に飲み干すと、「うげぇ、やっぱり苦い!!」と、とても不味そうに顔をゆがめて言った。
そんな彼に私はにっこりと微笑んで、空になった湯呑みを回収する。
「偉い偉い、よく頑張りましたね。」
「うう、もう少しどうにかならないのぉ~~?」
「どうにもなりません。良薬口に苦しって言うじゃないですか。」
「苦いにも限度があるよぉーーー!!」
ああ言えばこう言う。毎日毎日、よく飽きもせず我儘が言えたものだ。
苦いのはどうにもならないし、これは彼が元の体に戻るために必要なものなのだから、いい加減諦めて大人しく飲んでほしいものである。
薬が飲み終わった後も、口の中にまだ苦い味が残っているのか、我妻さんは苦い苦いと泣いている。
そんな彼に私はハアっと、呆れたようにため息をつくとポケットからある物を取り出した。
「しょうがないですねぇ~~。手、出してください。いい物をあげます。」
「いい物?」
我妻さんが不思議そうにしながらも、素直に手を差し出してきた。
私は手に握りしめていたそれを彼の掌の上にそっと置く。
白い小さな紙に包まれていたそれが、カサリと音を立てて広がった。
「……金平糖?」
「差し上げます。口直しにどうぞ。」
我妻さんの手のひらに置いたのは金平糖だった。
白、赤、黄色、ピンク。色とりどりの綺麗な金平糖が手のひらに広がる。
私があげると言うと、彼はちょっぴり目を輝かせて私を見た。
「えっ!いいの?」
「いいですよ。しのぶさんから貰った物の余りですけど……我妻さん、甘いの好きだったでしょ?口直しに差し上げます。」
「わあーー!!ありがとう名前ちゃん!!もう大好き!!結婚しよう!!」
「あははは。もう冗談きついなぁ~~我妻さん!女の子にそんなことばっかり言ってると、本命の禰豆子さんに振り向いてもらえませんよ?」
「えっ!?」
「そういえば竈門さんに聞いたんですけど、禰豆子さんの好物って金平糖なんだそうです。彼女は今は何かを食べたりはできないみたいですけど、金平糖って色とりどりで見ているだけでも綺麗だから、持って行ったらきっと喜びますよ?」
「え?うん、そうだね。でも名前ちゃん!俺……」
「じゃあ私はこれで失礼しますね。私、お2人の恋を応援してますから!!」
「えっ!あっ、うん?ありがとう??」
私は私が自分が言いたいことだけ伝えると、何かを言いたそうにしている我妻さんを放ってさっさと病室を出ていく。
仕事はまだまだ溜まっているのだ、ゆっくりしている暇はない。
私は忙しなく通路を歩きながら、思わず緩みそうになる頬を必死に引き締めていた。
口実は作ってやった、後は彼もがちゃんと行動を移してくれるのみである。
私はドキドキワクワクと、高揚感で高鳴る鼓動を落ち着けようと必死であった。
きっと"善逸くん"は今日にでも"禰豆子ちゃん"にあの金平糖を見せに行くだろう。
そして私はその現場に是非とも立ち会いたい。
遠目からでいい。大好きなぜんねずをじっくりと眺めたい。
(――ああ、早く見たいなぁ~~!!)
ニヤニヤと思わずだらしなく頬が緩んでしまう。
そうなのである、私は鬼滅の刃のキャラクターの中でも我妻善逸が大好きであった。
そして、何よりもぜんねずが大好きなのである。
まさか自分が鬼滅の刃の世界に来てしまうことになるとは夢にも思わなかったが、こうなってしまっては仕方ないと、私は早々に腹を括った。
そして私は思ったのである、折角、鬼滅の刃の世界に来たのならば、大好きなぜんねずをこの目で見たいと。
「ウフフフフ、禰豆子ちゃんが金平糖が大好きなのはファンブックで知ってたから、こうやって善逸くんにさりげなく情報をリークして、背中を押してやる作戦を思いつくなんてさすが私!
後は善逸くんが禰豆子ちゃんに金平糖を渡すタイミングを見逃さないようにしないとねーー!」
ルンルンとスキップでもしそうなくらい上機嫌になる名前。それくらい楽しみなのである。
しかし名前はある重大な勘違いをしていたのである。
それが判明したのは、夕餉を済ませ、後片付けを終えた少し後のことであった。
***********
「「……………」」
何故か私は今、善逸くんと無言で見つめ合っている。
善逸くんはまるで茹でたこのように真っ赤な顔で私に簪を差し出していた。
Why?なぜ?
私の頭の中にはクエスチョンマークが大量発生していた。軽くパニック状態である。
何故私は善逸くんに簪を差し出されているのだろう?
夕餉の後片付けを終えて、さあお風呂の支度でもしようと部屋に戻ろうとしていた時に、急に善逸くんに呼び止められた。
そして、無言で突き出された簪。
真っ赤な色をした綺麗な玉かんざしは、見るからに高価そうなもので、なぜ彼はそれを私に差し出しているのだろうか?
だって私は知っている。
この時代、簪を男性が女性に贈るのは求婚。
つまりはプロポーズの意味であるということを。
「――好きです!!名前ちゃんが大好きです!!俺と結婚して!!結婚してくれたら、毎日鰻と寿司食べさせてあげる!!好きなもの何でも買ってあげるから!!お願いだよ!!俺と結婚してくれ!!」
――なんてこった。
私は自分の顔が盛大にひきつるのを感じ取った。
あれだけ気を配って、彼の恋を後押ししていたのに、当の善逸くんが好きになったのは私だと?
そんなの、そんなのって……
「――解釈違いだ。」
私は手で目を覆い、天を仰ぐように上を向いた。
何度でも言おう。
私はぜんねずが好きなんだ。