鬼滅の刃
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
早朝の学校。運動部がグラウンドを走り回る声が響く中、校舎の中だけはしんと静まり返っていた。
それもそうだ。
登校時間まで、まだだいぶ余裕のある時間帯。
運動部でもない、風紀委員でもない、ましてや日直でもない。
朝早く学校に来る理由のないはずの私が、まだ空が薄暗い、こんな時間帯にやって来たのにはちゃんと理由がある。
――今日、私は好きな人に告白しようと思う。
その為に、私は昨日、徹夜でラブレターを書き上げたのである。
令和にもなって、今時ラブレターなんて、古風というか、古臭いなって自分でも思う。
けれど相手の連絡先を知らない私は、LINEなんてものはできない。
SNSなんかで告白するにしても、私は彼との連絡ツールなんて何ひとつ知らないのだ。
だって私と彼は友人でもなんでもない。
ただのクラスメイトの一人でしかない。
大した接点も何もない私が、いきなり告白なんてしようものなら、こんな方法しか思いつかなかったのだ。
(愛は込めたもの!愛は!!)
徹夜で何度も、何度も書き直したラブレターだ。
きっと受け取ってもらえると信じよう。
私はラブレターを胸に抱きしめて、深く深呼吸する。
これを出したら、もう後戻りはできない。
けれど、前に前進するにはアピールも大切なことだ。
私はゆっくりと目を開けると、下駄箱を開けようと手を伸ばした。その瞬間……
「あれ~~?あんたもう学校来てたの?」
「――っ!?」
バタンっ!!
突然背後から声をかけられ、ドキンと心臓が大きく跳ねる。
思わず慌てて下駄箱の蓋を開けて、ラブレターを押し込むように中に放り込めば、素早く蓋を閉めて振り返る。
その間わずか3秒であった。
振り返った時に背後に立っていたのは、クラスメイトの友人であった。
声をかけてきたのが友人であったことに、私はほっと安堵の息を吐き出した。
「なんだぁ~、あんたか。」
「なんだぁ~……じゃないわよ。何してたの?てか、こんな朝早く学校来るなんて珍しいじゃん。」
「……ちょっとね。後で話す。」
私がそう言うと、友人は訝しげに眉をひそめながらも、「ふーん」と興味を無くしたように呟き、それ以上は聞いてこなかった。
「まあいっか!私まで朝練あるから、後で教室でね!」
「うん。」
元気よく手を振りながらグラウンドに戻っていく友人を、同じように手を振りながら見送る。
勝負は放課後である。
****************
――そして時間が経つのは早いもので、いつの間にか放課後になっていた。
部活に入ってない生徒達がチラホラと帰っていく中、私は人気のない校舎裏でひとり、ある人を待っていた。
ラブレターに、今日の放課後に校舎裏で待っていると書いておいたのである。
ドキドキと、早鐘のように心臓の音が先程から鳴り止まない。
鼓動が早くなりすぎて、緊張のあまり逃げ出したくなる。
あの人は来てくれるだろうか。
無視されたりしないだろうか。
不安と緊張。そしてほんの僅かな期待にそわそわと落ち着かない。
目を閉じて、深く深呼吸していると、カサリと草が揺れる音がした。
誰かが近づいてきている。
カサカサと草や小石を踏む音がする。
来てくれた。それだけでももう嬉しくて、私はパッと笑顔で目を開けた。
「――やっ、やあ……」
「え……っ」
目の前に現れた人物に、思わず言葉を失った。
だって……目の前にいたのは"あの人"じゃない。
学校でも一際目立つ金髪の持ち主で、この学校の風紀員。
イケメンだけど、女好きで、見境なく女の子に声をかけまくる上にしつこく、騒々しい。
よく変顔をするものだから、学校では"残念なイケメン"として有名なクラスメイトの我妻善逸くん。
彼が何故か私の目の前に立っていた。
何故彼がここにいるのだろう。
あの人が来てしまう前に、早くどこかに行ってくれないかな。
私は何故彼がこのタイミングでここに現れたのか理解できず、そんなことを思っていた。
だけど、彼が真っ赤な顔で照れながら手に持っているそれを目にした瞬間、私の視点はそれに釘付けになった。
「……あっ……我妻くん、それ……」
「――えっ?あっ、これ?……やっぱり君がくれたんだね。その……ありがとう。」
震える指先でそれを指さす。
私が見ているものに気づいた我妻くんが、それを私に見せるように持ち上げる。
それは紛れもなく私が、"あの人"に出した筈のラブレターだった。
何でそれを我妻くんが持っているの?
なんで?何で何で?
頭の中は完全に混乱していた。
だけど、私の気持ちなんて知らない我妻くんは、私を置いて勝手に話し出す。
「あの、俺……女の子からラブレターなんて貰ったの、生まれて初めてで……朝、下駄箱に入ってるのを見て、すっごい嬉しかったんだ!!正直泣くほど嬉しくて!!こんな俺で良かったらお願いします!!」
「えっ、えっ?下駄箱?えっ?」
ガシッと勢いよく、手を両手で包み込むように握られる。
でも今はそんなことどうでもいい。
どういうことだろう?
私は確かに"あの人"の下駄箱に入れた筈だ。
それなのに、なんで彼とこんなことになっているんだろう。
もう訳がわからなかった。
だけど、ふと思い出した。
そういえば、我妻くんの下駄箱って、"あの人"の隣じゃなかっただろうか……
そう考えて、首筋に妙な冷や汗がつたう。
(まさか……まさか、いやいや、そんな……)
浮かぶのは、最悪の事態。
(まさか……入れる下駄箱を……間違えた……?)
――そして更に思い出す。
私……ラブレターに好きな人の名前書いてない。
最悪な凡ミスである。
ラブレターには"あなた"と書いていた。
彼の名前を……1度も入れていなかったのだ。
そう、妙に冷静な頭で理解した瞬間、サーっと顔が青ざめる。
「う、あ……」
喉が急激に、カラカラに乾いていく。変な汗も出てきた。
どうしよう。どうしようどうしよう……どうしたら、いい?
断らなければ。誤解を解かなければ……今すぐに。
そう思って口を開こうとした。
けれどその瞬間、我妻くんの私の手を握る力が強くなった。
びっくりして、私より背の高い彼を見上げる。
すると心配そうに私の顔を覗き込む我妻くんと目が合った。
「大丈夫?すっごい手汗だよ。もしかして緊張してる?」
「えっ、いや、あの……」
「俺ね、すっごい嬉しいの!君みたいな可愛い女の子と付き合えるなんて、人生捨てたもんじゃないよね!」
「えっ……と……」
我妻くんは、まるで太陽のように、眩しいほどに輝かしい笑顔で笑う。
ほんのりと赤く色づく頬が、照れているのだと分かる。
そして、とてもとても幸せそうに笑うのだ。
まるで世界中の幸せに満たされたかのように、本当に幸せそうに。
その笑顔を見てしまった瞬間、私は口を噤んだ。
断らなければ。誤解を解かなければ。
頭ではそう……思っているのに、何故かその言葉が出てこない。
言うのを躊躇ってしまうのだ。
「……我妻、くん……」
「ん?」
にっこりと、とても優しい笑顔で笑いかけてくれる彼を見て、ゴクリと喉を鳴らした。
冷や汗がつたう。けれど……
「よろしく……ね?」
気付けば私は、そんな言葉を口にしていた。
するとますます嬉しそうにその笑顔は破顔する。
「もちろんだよ!!よろしくね!!俺の彼女さん!!」
「は、はは……」
目をキラキラと輝かせて、興奮しきった様子で我妻くんは叫ぶ。
私の腕をぶんぶんと激しく振り回して、それはそれは嬉しそうに微笑むのだった。
思わず乾いた笑みが浮かぶ私。
けれどどうしてか、不思議と嫌な感じはしなかった。
寧ろ……こんな始まり方もありかな?とか思い始めている自分の気持ちに驚いた。
じっと我妻くんの顔を見つめる。
目にうっすらと涙を浮かべて、泣きながら喜んでくれる我妻くんを見ていると、こんな恋もありかもしれないと思えた。
それもそうだ。
登校時間まで、まだだいぶ余裕のある時間帯。
運動部でもない、風紀委員でもない、ましてや日直でもない。
朝早く学校に来る理由のないはずの私が、まだ空が薄暗い、こんな時間帯にやって来たのにはちゃんと理由がある。
――今日、私は好きな人に告白しようと思う。
その為に、私は昨日、徹夜でラブレターを書き上げたのである。
令和にもなって、今時ラブレターなんて、古風というか、古臭いなって自分でも思う。
けれど相手の連絡先を知らない私は、LINEなんてものはできない。
SNSなんかで告白するにしても、私は彼との連絡ツールなんて何ひとつ知らないのだ。
だって私と彼は友人でもなんでもない。
ただのクラスメイトの一人でしかない。
大した接点も何もない私が、いきなり告白なんてしようものなら、こんな方法しか思いつかなかったのだ。
(愛は込めたもの!愛は!!)
徹夜で何度も、何度も書き直したラブレターだ。
きっと受け取ってもらえると信じよう。
私はラブレターを胸に抱きしめて、深く深呼吸する。
これを出したら、もう後戻りはできない。
けれど、前に前進するにはアピールも大切なことだ。
私はゆっくりと目を開けると、下駄箱を開けようと手を伸ばした。その瞬間……
「あれ~~?あんたもう学校来てたの?」
「――っ!?」
バタンっ!!
突然背後から声をかけられ、ドキンと心臓が大きく跳ねる。
思わず慌てて下駄箱の蓋を開けて、ラブレターを押し込むように中に放り込めば、素早く蓋を閉めて振り返る。
その間わずか3秒であった。
振り返った時に背後に立っていたのは、クラスメイトの友人であった。
声をかけてきたのが友人であったことに、私はほっと安堵の息を吐き出した。
「なんだぁ~、あんたか。」
「なんだぁ~……じゃないわよ。何してたの?てか、こんな朝早く学校来るなんて珍しいじゃん。」
「……ちょっとね。後で話す。」
私がそう言うと、友人は訝しげに眉をひそめながらも、「ふーん」と興味を無くしたように呟き、それ以上は聞いてこなかった。
「まあいっか!私まで朝練あるから、後で教室でね!」
「うん。」
元気よく手を振りながらグラウンドに戻っていく友人を、同じように手を振りながら見送る。
勝負は放課後である。
****************
――そして時間が経つのは早いもので、いつの間にか放課後になっていた。
部活に入ってない生徒達がチラホラと帰っていく中、私は人気のない校舎裏でひとり、ある人を待っていた。
ラブレターに、今日の放課後に校舎裏で待っていると書いておいたのである。
ドキドキと、早鐘のように心臓の音が先程から鳴り止まない。
鼓動が早くなりすぎて、緊張のあまり逃げ出したくなる。
あの人は来てくれるだろうか。
無視されたりしないだろうか。
不安と緊張。そしてほんの僅かな期待にそわそわと落ち着かない。
目を閉じて、深く深呼吸していると、カサリと草が揺れる音がした。
誰かが近づいてきている。
カサカサと草や小石を踏む音がする。
来てくれた。それだけでももう嬉しくて、私はパッと笑顔で目を開けた。
「――やっ、やあ……」
「え……っ」
目の前に現れた人物に、思わず言葉を失った。
だって……目の前にいたのは"あの人"じゃない。
学校でも一際目立つ金髪の持ち主で、この学校の風紀員。
イケメンだけど、女好きで、見境なく女の子に声をかけまくる上にしつこく、騒々しい。
よく変顔をするものだから、学校では"残念なイケメン"として有名なクラスメイトの我妻善逸くん。
彼が何故か私の目の前に立っていた。
何故彼がここにいるのだろう。
あの人が来てしまう前に、早くどこかに行ってくれないかな。
私は何故彼がこのタイミングでここに現れたのか理解できず、そんなことを思っていた。
だけど、彼が真っ赤な顔で照れながら手に持っているそれを目にした瞬間、私の視点はそれに釘付けになった。
「……あっ……我妻くん、それ……」
「――えっ?あっ、これ?……やっぱり君がくれたんだね。その……ありがとう。」
震える指先でそれを指さす。
私が見ているものに気づいた我妻くんが、それを私に見せるように持ち上げる。
それは紛れもなく私が、"あの人"に出した筈のラブレターだった。
何でそれを我妻くんが持っているの?
なんで?何で何で?
頭の中は完全に混乱していた。
だけど、私の気持ちなんて知らない我妻くんは、私を置いて勝手に話し出す。
「あの、俺……女の子からラブレターなんて貰ったの、生まれて初めてで……朝、下駄箱に入ってるのを見て、すっごい嬉しかったんだ!!正直泣くほど嬉しくて!!こんな俺で良かったらお願いします!!」
「えっ、えっ?下駄箱?えっ?」
ガシッと勢いよく、手を両手で包み込むように握られる。
でも今はそんなことどうでもいい。
どういうことだろう?
私は確かに"あの人"の下駄箱に入れた筈だ。
それなのに、なんで彼とこんなことになっているんだろう。
もう訳がわからなかった。
だけど、ふと思い出した。
そういえば、我妻くんの下駄箱って、"あの人"の隣じゃなかっただろうか……
そう考えて、首筋に妙な冷や汗がつたう。
(まさか……まさか、いやいや、そんな……)
浮かぶのは、最悪の事態。
(まさか……入れる下駄箱を……間違えた……?)
――そして更に思い出す。
私……ラブレターに好きな人の名前書いてない。
最悪な凡ミスである。
ラブレターには"あなた"と書いていた。
彼の名前を……1度も入れていなかったのだ。
そう、妙に冷静な頭で理解した瞬間、サーっと顔が青ざめる。
「う、あ……」
喉が急激に、カラカラに乾いていく。変な汗も出てきた。
どうしよう。どうしようどうしよう……どうしたら、いい?
断らなければ。誤解を解かなければ……今すぐに。
そう思って口を開こうとした。
けれどその瞬間、我妻くんの私の手を握る力が強くなった。
びっくりして、私より背の高い彼を見上げる。
すると心配そうに私の顔を覗き込む我妻くんと目が合った。
「大丈夫?すっごい手汗だよ。もしかして緊張してる?」
「えっ、いや、あの……」
「俺ね、すっごい嬉しいの!君みたいな可愛い女の子と付き合えるなんて、人生捨てたもんじゃないよね!」
「えっ……と……」
我妻くんは、まるで太陽のように、眩しいほどに輝かしい笑顔で笑う。
ほんのりと赤く色づく頬が、照れているのだと分かる。
そして、とてもとても幸せそうに笑うのだ。
まるで世界中の幸せに満たされたかのように、本当に幸せそうに。
その笑顔を見てしまった瞬間、私は口を噤んだ。
断らなければ。誤解を解かなければ。
頭ではそう……思っているのに、何故かその言葉が出てこない。
言うのを躊躇ってしまうのだ。
「……我妻、くん……」
「ん?」
にっこりと、とても優しい笑顔で笑いかけてくれる彼を見て、ゴクリと喉を鳴らした。
冷や汗がつたう。けれど……
「よろしく……ね?」
気付けば私は、そんな言葉を口にしていた。
するとますます嬉しそうにその笑顔は破顔する。
「もちろんだよ!!よろしくね!!俺の彼女さん!!」
「は、はは……」
目をキラキラと輝かせて、興奮しきった様子で我妻くんは叫ぶ。
私の腕をぶんぶんと激しく振り回して、それはそれは嬉しそうに微笑むのだった。
思わず乾いた笑みが浮かぶ私。
けれどどうしてか、不思議と嫌な感じはしなかった。
寧ろ……こんな始まり方もありかな?とか思い始めている自分の気持ちに驚いた。
じっと我妻くんの顔を見つめる。
目にうっすらと涙を浮かべて、泣きながら喜んでくれる我妻くんを見ていると、こんな恋もありかもしれないと思えた。