鬼滅の刃
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「好きです!!一目惚れしました!!俺と付き合ってください!!」
その日、我妻善逸は人生で何度目かになるか分からない一目惚れをし、何度目になるか分からない告白をしていた。
体を綺麗に垂直に曲げて、頭を下げながら告白するその姿を、クラス一の美少女と言われるその少女は困ったように下ろしていた。
「ごめんなさい。私……貴方とは付き合えないわ。」
「――えっ!?どうして!?」
告白を断られた善逸は、絶望の顔でガバリと顔を上げる。
すると少女はちらりと善逸の方を見ると、小さくため息をついた。
「……好みじゃないの。」
「そ、そんなぁ!!」
顔を見てため息をつかれたと思った善逸は、少女のあまりにも残酷な一言にショックのあまり涙を流した。
あんまりだ。そりゃあ俺はイケメンじゃないけど、そんな、そんなあからさまにがっかりしたようにため息をつかなくたって……
善逸は悲しいあまりポタポタと涙を流した。
そんな彼を見て、少女は困ったような顔をする。
「本当にごめんね。けど、私……どうしても金髪はダメなの。黒髪がいいの!」
「そっか……俺はそんなに嫌われて……えっ、黒髪?」
勝手に自分は嫌われたと思い込んだ善逸だったが、少女が言った一言に目が点になる。
「そうなの!私、黒髪フェチなの!」
「く、黒髪フェチ……?」
少女は善逸が戸惑ったように繰り返した言葉に、力強く頷く。
その目はとても生き生きとしていて、キラキラと宝石のように輝いていた。
「夜空みたいに真っ黒な髪!!これぞ日本人の色!!和の色!!特に富岡先生とかつややかな黒髪で素敵よね!!」
「と、冨岡先生!?」
「うん!私の大好きな人なの!」
少女は思春期の男だったら、10人が10人落ちてしまいそうなくらいの可愛らしい笑顔でそう言ったのである。
善逸に……入る隙などなかった。
*********
「ちっっくしょーー〜!!!!!」
善逸は家に帰宅すると、自室に入るなりそう叫んだ。
ネクタイを乱暴に緩め、鞄は適当な所に放り投げて、ベッドに一直線にダイブした。
「ちくしょうちくしょう!!冨岡のあんちくしょう!!風紀委員の仕事で俺を理不尽に殴ってくるだけでもムカつくのに、今度は俺の恋路まで邪魔すんのかよ!!こんちくしょう!!」
善逸は枕に顔をうずめると、目から大量の涙を流してえぐえぐと泣いた。
ついでに鼻水も加わって、すっかりぐちゃぐちゃな、情けない顔になっていた。
「そんなに黒髪がいいのかよーー!!俺だって!!俺だって元々は黒髪だったわーーー!!!」
小さい頃木登りをしていて、雷に打たれて金髪になったという、嘘みたいな体験をしている訳だが、元々善逸の髪は黒髪だったのである。
それだけに、今回振られた理由が「だって、我妻くんは金髪だから」なんて理由では納得など出来なかった。
もしも今も、この髪が黒髪のままだったら、少しは興味を持ってもらえたんだろうか?
「うう……誰でもいいから彼女が欲しい!!彼女が欲しい!!彼女が欲しいぃぃぃぃーーーーー!!!!」
異常なほど女性に執着している善逸は、もはやヤケクソになっていた。
そして「そうだ!」とあることを思いつき、さっそく自転車を走らせたのである。
********
「――で、髪を黒く染めてみたと?」
「うへへ!そうなんだよぉ~~!」
翌日、何故か髪を黒く染めてきた善逸を見て、私はその事の経緯を聞いたのである。
その理由に心底呆れてしまい、思わずジト目で善逸を見つめた。
私と善逸は、幼稚園の頃から家が隣同士の、いわゆる幼馴染みというやつだ。
だから当然善逸が黒髪の頃を知っているし、彼の髪が今のような金髪になってしまった時も傍で見ていた。
幼稚園から始まり、小、中、高とずっと一緒にいる腐れ縁である。
善逸は女の子が大好きだ。
だが、幼馴染である私は異性には入らないらしく、生憎私は善逸に告白されたことがない。
昨日、クラス一の美少女に告白して見事玉砕したらしい幼馴染みは、まだ諦められないらしく、彼女好みだという黒髪に染めてきた。
全くくだらないことである。
それでも、これで自分に振り向いてもらえると思い込んでるらしい能天気な善逸は、にこにこと上機嫌だ。
「うへへへ!これで俺もあの子と付き合えるかもなぁ~~!善逸くん大好きって言われたらどうしよーーー!!!」
「……髪を黒く染めただけで、あんな可愛い子と付き合えると思えるなんて、幸せな頭してるよね。善逸って。」
呆れるあまり、スっと目を細めて言えば、善逸は興ざめたばかりに不機嫌になった。
「なんだよぉ~~!俺だって夢見たっていいだろ!」
「はいはい、夢は夢だよ。」
「お前、俺に冷たくない!?」
「そりゃあ、毎回毎回、好きな女の子ができる度にこうやってくだらない妄想聞かされたら嫌にもなるって……」
「本当に酷いな!」
善逸は「俺の幼馴染み冷たい」とぶつくさと文句を言う。
それは私は、はいはいと言いながら聞き流した。
「……善逸は、ありのままで勝負すればいいんだよ。」
「ありのままじゃ彼女できないから染めたんだろ!?」
ぽつりととても小さな声で呟いたが、耳が良すぎる幼馴染みには聞こえていたらしい。
不満そうな言葉が返ってきた。
そんな彼に私はまた小さくため息をつくと、困ったように苦笑する。
「善逸はそのままでいいんだよ。女の子にパシリみたいにこき使われたり、貢いだりして媚び売らなくたって、善逸の良さを分かってくれる人を探せばいいのに……」
「で、でもさ……このままじゃ彼女できないから、こうして必死になってる訳で……」
「あーもー!!だからぁ!!」
尚もうじうじと悩み出す善逸に、私は遠回しに言うのをやめた。
女は度胸。当たって砕けろ。
私は善逸の頬を両手でガシッと勢いよく掴むと、ぐっと顔を近づけた。
そのままの勢いで彼の鼻先に軽くキスをする。
唇が触れた時間は、とても長いように感じたし、短いようにも感じた。
――さすがに、唇を奪う勇気はなかった。
私がゆっくりと唇を離すと、善逸は目をまん丸にして、ポカンと、ほうけた顔をしていた。
自分が何をされたのか理解すると、みるみるうちに、その顔は真っ赤に染まっていく。
いつもの善逸だったら、それはそれは煩いくらいに取り乱して大絶叫しそうだが、今は何故か黙り込んでいる。
私はそれに勝ち誇ったような笑みを浮かべると、そっと善逸から距離を取るように後ろに下がった。
「……私の気持ち、分かった?」
「~~~~っっ、えっ!!?ええっっ!!?」
善逸がやっと声を発する。
私はくるっと方向転換すると、未だに放心している善逸を置いてさっさと1人で学校へと向かった。
気分は最高に良かった。
だって……ずっと振り向いてくれなかったのだ。
ずっと、私を女の子として見てくれなかった善逸が、初めて私に対してあんなに取り乱してくれた。
今はそれだけでいい。
だけどいつか、ちゃんと振り向いてもらうのだ。
私はひっそりと心にそう誓った。
――数週間後、善逸は髪の色を元に戻した。
それから彼は染めることは無かったという。
その日、我妻善逸は人生で何度目かになるか分からない一目惚れをし、何度目になるか分からない告白をしていた。
体を綺麗に垂直に曲げて、頭を下げながら告白するその姿を、クラス一の美少女と言われるその少女は困ったように下ろしていた。
「ごめんなさい。私……貴方とは付き合えないわ。」
「――えっ!?どうして!?」
告白を断られた善逸は、絶望の顔でガバリと顔を上げる。
すると少女はちらりと善逸の方を見ると、小さくため息をついた。
「……好みじゃないの。」
「そ、そんなぁ!!」
顔を見てため息をつかれたと思った善逸は、少女のあまりにも残酷な一言にショックのあまり涙を流した。
あんまりだ。そりゃあ俺はイケメンじゃないけど、そんな、そんなあからさまにがっかりしたようにため息をつかなくたって……
善逸は悲しいあまりポタポタと涙を流した。
そんな彼を見て、少女は困ったような顔をする。
「本当にごめんね。けど、私……どうしても金髪はダメなの。黒髪がいいの!」
「そっか……俺はそんなに嫌われて……えっ、黒髪?」
勝手に自分は嫌われたと思い込んだ善逸だったが、少女が言った一言に目が点になる。
「そうなの!私、黒髪フェチなの!」
「く、黒髪フェチ……?」
少女は善逸が戸惑ったように繰り返した言葉に、力強く頷く。
その目はとても生き生きとしていて、キラキラと宝石のように輝いていた。
「夜空みたいに真っ黒な髪!!これぞ日本人の色!!和の色!!特に富岡先生とかつややかな黒髪で素敵よね!!」
「と、冨岡先生!?」
「うん!私の大好きな人なの!」
少女は思春期の男だったら、10人が10人落ちてしまいそうなくらいの可愛らしい笑顔でそう言ったのである。
善逸に……入る隙などなかった。
*********
「ちっっくしょーー〜!!!!!」
善逸は家に帰宅すると、自室に入るなりそう叫んだ。
ネクタイを乱暴に緩め、鞄は適当な所に放り投げて、ベッドに一直線にダイブした。
「ちくしょうちくしょう!!冨岡のあんちくしょう!!風紀委員の仕事で俺を理不尽に殴ってくるだけでもムカつくのに、今度は俺の恋路まで邪魔すんのかよ!!こんちくしょう!!」
善逸は枕に顔をうずめると、目から大量の涙を流してえぐえぐと泣いた。
ついでに鼻水も加わって、すっかりぐちゃぐちゃな、情けない顔になっていた。
「そんなに黒髪がいいのかよーー!!俺だって!!俺だって元々は黒髪だったわーーー!!!」
小さい頃木登りをしていて、雷に打たれて金髪になったという、嘘みたいな体験をしている訳だが、元々善逸の髪は黒髪だったのである。
それだけに、今回振られた理由が「だって、我妻くんは金髪だから」なんて理由では納得など出来なかった。
もしも今も、この髪が黒髪のままだったら、少しは興味を持ってもらえたんだろうか?
「うう……誰でもいいから彼女が欲しい!!彼女が欲しい!!彼女が欲しいぃぃぃぃーーーーー!!!!」
異常なほど女性に執着している善逸は、もはやヤケクソになっていた。
そして「そうだ!」とあることを思いつき、さっそく自転車を走らせたのである。
********
「――で、髪を黒く染めてみたと?」
「うへへ!そうなんだよぉ~~!」
翌日、何故か髪を黒く染めてきた善逸を見て、私はその事の経緯を聞いたのである。
その理由に心底呆れてしまい、思わずジト目で善逸を見つめた。
私と善逸は、幼稚園の頃から家が隣同士の、いわゆる幼馴染みというやつだ。
だから当然善逸が黒髪の頃を知っているし、彼の髪が今のような金髪になってしまった時も傍で見ていた。
幼稚園から始まり、小、中、高とずっと一緒にいる腐れ縁である。
善逸は女の子が大好きだ。
だが、幼馴染である私は異性には入らないらしく、生憎私は善逸に告白されたことがない。
昨日、クラス一の美少女に告白して見事玉砕したらしい幼馴染みは、まだ諦められないらしく、彼女好みだという黒髪に染めてきた。
全くくだらないことである。
それでも、これで自分に振り向いてもらえると思い込んでるらしい能天気な善逸は、にこにこと上機嫌だ。
「うへへへ!これで俺もあの子と付き合えるかもなぁ~~!善逸くん大好きって言われたらどうしよーーー!!!」
「……髪を黒く染めただけで、あんな可愛い子と付き合えると思えるなんて、幸せな頭してるよね。善逸って。」
呆れるあまり、スっと目を細めて言えば、善逸は興ざめたばかりに不機嫌になった。
「なんだよぉ~~!俺だって夢見たっていいだろ!」
「はいはい、夢は夢だよ。」
「お前、俺に冷たくない!?」
「そりゃあ、毎回毎回、好きな女の子ができる度にこうやってくだらない妄想聞かされたら嫌にもなるって……」
「本当に酷いな!」
善逸は「俺の幼馴染み冷たい」とぶつくさと文句を言う。
それは私は、はいはいと言いながら聞き流した。
「……善逸は、ありのままで勝負すればいいんだよ。」
「ありのままじゃ彼女できないから染めたんだろ!?」
ぽつりととても小さな声で呟いたが、耳が良すぎる幼馴染みには聞こえていたらしい。
不満そうな言葉が返ってきた。
そんな彼に私はまた小さくため息をつくと、困ったように苦笑する。
「善逸はそのままでいいんだよ。女の子にパシリみたいにこき使われたり、貢いだりして媚び売らなくたって、善逸の良さを分かってくれる人を探せばいいのに……」
「で、でもさ……このままじゃ彼女できないから、こうして必死になってる訳で……」
「あーもー!!だからぁ!!」
尚もうじうじと悩み出す善逸に、私は遠回しに言うのをやめた。
女は度胸。当たって砕けろ。
私は善逸の頬を両手でガシッと勢いよく掴むと、ぐっと顔を近づけた。
そのままの勢いで彼の鼻先に軽くキスをする。
唇が触れた時間は、とても長いように感じたし、短いようにも感じた。
――さすがに、唇を奪う勇気はなかった。
私がゆっくりと唇を離すと、善逸は目をまん丸にして、ポカンと、ほうけた顔をしていた。
自分が何をされたのか理解すると、みるみるうちに、その顔は真っ赤に染まっていく。
いつもの善逸だったら、それはそれは煩いくらいに取り乱して大絶叫しそうだが、今は何故か黙り込んでいる。
私はそれに勝ち誇ったような笑みを浮かべると、そっと善逸から距離を取るように後ろに下がった。
「……私の気持ち、分かった?」
「~~~~っっ、えっ!!?ええっっ!!?」
善逸がやっと声を発する。
私はくるっと方向転換すると、未だに放心している善逸を置いてさっさと1人で学校へと向かった。
気分は最高に良かった。
だって……ずっと振り向いてくれなかったのだ。
ずっと、私を女の子として見てくれなかった善逸が、初めて私に対してあんなに取り乱してくれた。
今はそれだけでいい。
だけどいつか、ちゃんと振り向いてもらうのだ。
私はひっそりと心にそう誓った。
――数週間後、善逸は髪の色を元に戻した。
それから彼は染めることは無かったという。