鬼滅の刃
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その女の子はいつも朝が早かった。
毎朝生徒たちの身だしなみチェックをしなければならない風紀委員の俺は兎も角、その子は風紀委員でもなければ、日直でも何でもない日でも、毎日1番に登校して来ていた。
「――あっ、おはよう名前ちゃん。」
「おはようございます、我妻先輩。」
俺がいつものように彼女を見つけてにこやかに挨拶をすると、名前ちゃんは無表情でぺこりと小さく会釈して挨拶を返す。
彼女はあまり感情を表に出さない子だ。
ニコリとも作り笑いを浮かべない彼女は禰豆子ちゃんと同じクラスの中等部の子だった。
「今日も早いねぇ~」
「まあ……早めに来て自習しようかと……」
「わざわざ自主勉するの!?名前ちゃんは偉いねぇ!」
「そうですか?」
「そうだよ!わざわざ授業以外でも勉強するなんて!」
「俺と違ってしっかりしてるなぁ~」と俺は素直に彼女に感心しながらそう口にした。
名前ちゃんは俺よりも年下なのに、全然しっかりしていて、頭もいい。
成績も学年トップらしいし、全国模試でもかなりの上位らしい。本当にすごいなぁ。
俺がそんなことを思っていると、名前ちゃんは「じゃあ私はそろそろ教室に……」と言ったので、俺はまたねと言って別れた。
毎朝俺たちはこんな調子て何気なく会話をする。
でも逆に言えば、この朝の時間以外では全くといっていい程接点はなかった。
そんな彼女に俺は、恋をしている。
初めはなんとなく気になったのがきっかけ。
何故か風紀委員でもないのに毎朝誰よりも早く登校してくる彼女に純粋に興味を抱いたから。
それから毎朝俺から話しかけるようになって、最初は戸惑っていた彼女も少しずつ言葉を返してくれるようになって、いつしかこの僅かな時間は俺にとって大切な時間になっていたんだ。
俺が話しかけると、最近は無表情だった顔が少しだけ柔らかく微笑んでくれるようになった。
それが堪らなく嬉しくて、可愛くて、俺は彼女が好きになった。
「今日も可愛かったなぁ~~」
「そうか、良かったな。」
お昼休みに食堂で親友の炭治郎と伊之助の三人と昼食を取る。
今朝あった出来事を幸せそうに語る俺に、炭治郎はにこにこと笑顔で話を聞いてくれる。
「たまにさぁ、俺が話しかけると笑ってくれるようになったんだ。それがまた可愛くって!!」
「あいつ笑うのか?」
伊之助が怪訝そうにそんなことを言うと、俺はくわっと目をかっぴらいて伊之助に詰め寄った。
「ばっっかじゃねーの!!?笑ってるでしょうか!俺と話す時はめっちゃっ可愛く笑ってくれてるでしょうが!!」
「はぁん!!?知らねーわ!!俺見てねーもん!!」
「あっ!!そうだったわね!!俺だけでしたね!!俺だけが名前ちゃんの笑顔を見れるんでしたね!!やだ!!最高じゃない!!?」
「コイツうぜぇ。」
「善逸!周りに迷惑だから騒ぐな!」
伊之助の両肩を掴んで激しく揺さぶりながら大声を上げれば、炭治郎は慌てたように善逸に静かにするように注意した。
そんな光景はもはや日常茶番と化していて、周りの生徒たちはまたあの三馬鹿かと呆れたように遠目から見ているだけであった。
「そんなに好きなら、朝以外でも声をかけたらいいんじゃないか?」
「それな!!俺、名前ちゃんに告白する!!」
「え?いや、流石にそれは性急すぎないか?」
「いーや!こういうのは早い方がいいの!!」
「あっ、おい善逸!」
「行っちまったなぁ」
「ああ……」
善は急げと言うばかりに食堂を飛び出して行ってしまった善逸の背中を、炭治郎は心配そうに、伊之助は呆れたように見送った。
果たして、彼の告白の結果はどうなるのであろうか。
ーー名前視点ーー
朝の教室が好きだった。
誰もいない静かな空間に、私だけしかいない教室。
そんな場所で勉強や読書をする。そんな時間が私はとても好きだった。
家でやるよりもずっと、学校でやった方が勉強に集中できたのもあって、私は誰よりも早く学校に登校しては僅かなその時間を楽しんでいた。
そんな日々を繰り返していたある日、私は声をかけられた。
その人は、女好きの変態で有名な生徒だった。
学園の風紀を取り締まる風紀委員でありながら、金髪なんて髪色をしたその高等部の先輩は、いつも朝早く登校して来た私を見つけると、笑顔で挨拶をしてくれた。
我妻善逸というその先輩は、学園ではそんな噂で有名な人だった。
私は地味で目立たない、言うならば真面目だけが取り柄のような、そんなどこにでもいそうな平凡な女だ。
制服だって、スカートの丈は規定通りだし、まるでお手本とばかりにきっちりと、真面目すぎるくらいに着こなしている。
規則違反なんて、無縁なのが取り柄のような私である。
だからその日、風紀委員の我妻先輩に声をかけられたのは予想外すぎてとても驚いたのを覚えている。
『君、中等部の名前ちゃんだよね。禰豆子ちゃんと同じクラスの。』
『そうですけど、何ですか?規則違反はしてないつもりですが……』
『あっ、ごめん。校則違反で呼び止めた訳じゃないんだ。ただ、何で毎朝そんなに早いのかなって……』
『それは先輩には関係の無いことでは?』
『えっ、いや、まあそうなんだけど……』
初めて彼とまともに会話したのはこんな会話だった。
思えば、私は初対面の頃から可愛げがなかった。
ニコリとでも笑えれば、まだ可愛いげがあったかもしれない。
けれど表情筋の死んだこの顔の筋肉は中々笑おうとはしてくれないのである。
最初はただ鬱陶しいだけだけだった彼との会話も、毎日顔を合わせれば多少なりとも情は湧いてくるし、私がどんなに無表情で無愛想な態度で接しても、彼は嫌な顔ひとつせずにいつも笑って話しかけてくれた。
そんな日々を繰り返していくうちに、私は我妻先輩を目で追うようになっていた。
女好きでヘタレで変態だのと、あまりいい噂は聞かないが、それでも彼は優しい人であった。
風紀委員をやめたいと言っている割に、人をよく見ているし、友達のためなら自分から進んで面倒事に首を突っ込む。
普段はそういうのを誰よりも嫌っているくせに、本当に困っている人は放っておけない。
不良のような派手な髪色をしている割には、とても優しい人なのだ。
自分には絶対にできない。そんな優しさに、彼の明るさに、私が好意を抱くようになるのは遅くはなかった。
読書のための朝の登校時間が、彼に会いたいからという理由に変わった。
毎朝毎朝、彼に1番に会いたくて、早く会いたくて、欠かさず同じ時間に登校する。
それが私にとってかけがえない大切な時間。
我妻先輩は、きっと知らない。
私がどれだけ、あの時間を大切にしているか。
どれだけ、彼が好きなのか。
――ぼんやりと昼休みに教室でお弁当を一人で食べる。
そんな時に突然教室の扉がガラッと大きな音を立てて勢いよく開かれた。
自然とそちらに顔を向ける。そこには、見慣れた金髪が……
「――えっ。」
「名前ちゃん!俺と……付き合ってください!!」
突然現れた我妻先輩。
息を切らせながら大声で恥ずかしげもなく大告白をしてくれた彼に、私はなんて答えればいいのか……
毎朝生徒たちの身だしなみチェックをしなければならない風紀委員の俺は兎も角、その子は風紀委員でもなければ、日直でも何でもない日でも、毎日1番に登校して来ていた。
「――あっ、おはよう名前ちゃん。」
「おはようございます、我妻先輩。」
俺がいつものように彼女を見つけてにこやかに挨拶をすると、名前ちゃんは無表情でぺこりと小さく会釈して挨拶を返す。
彼女はあまり感情を表に出さない子だ。
ニコリとも作り笑いを浮かべない彼女は禰豆子ちゃんと同じクラスの中等部の子だった。
「今日も早いねぇ~」
「まあ……早めに来て自習しようかと……」
「わざわざ自主勉するの!?名前ちゃんは偉いねぇ!」
「そうですか?」
「そうだよ!わざわざ授業以外でも勉強するなんて!」
「俺と違ってしっかりしてるなぁ~」と俺は素直に彼女に感心しながらそう口にした。
名前ちゃんは俺よりも年下なのに、全然しっかりしていて、頭もいい。
成績も学年トップらしいし、全国模試でもかなりの上位らしい。本当にすごいなぁ。
俺がそんなことを思っていると、名前ちゃんは「じゃあ私はそろそろ教室に……」と言ったので、俺はまたねと言って別れた。
毎朝俺たちはこんな調子て何気なく会話をする。
でも逆に言えば、この朝の時間以外では全くといっていい程接点はなかった。
そんな彼女に俺は、恋をしている。
初めはなんとなく気になったのがきっかけ。
何故か風紀委員でもないのに毎朝誰よりも早く登校してくる彼女に純粋に興味を抱いたから。
それから毎朝俺から話しかけるようになって、最初は戸惑っていた彼女も少しずつ言葉を返してくれるようになって、いつしかこの僅かな時間は俺にとって大切な時間になっていたんだ。
俺が話しかけると、最近は無表情だった顔が少しだけ柔らかく微笑んでくれるようになった。
それが堪らなく嬉しくて、可愛くて、俺は彼女が好きになった。
「今日も可愛かったなぁ~~」
「そうか、良かったな。」
お昼休みに食堂で親友の炭治郎と伊之助の三人と昼食を取る。
今朝あった出来事を幸せそうに語る俺に、炭治郎はにこにこと笑顔で話を聞いてくれる。
「たまにさぁ、俺が話しかけると笑ってくれるようになったんだ。それがまた可愛くって!!」
「あいつ笑うのか?」
伊之助が怪訝そうにそんなことを言うと、俺はくわっと目をかっぴらいて伊之助に詰め寄った。
「ばっっかじゃねーの!!?笑ってるでしょうか!俺と話す時はめっちゃっ可愛く笑ってくれてるでしょうが!!」
「はぁん!!?知らねーわ!!俺見てねーもん!!」
「あっ!!そうだったわね!!俺だけでしたね!!俺だけが名前ちゃんの笑顔を見れるんでしたね!!やだ!!最高じゃない!!?」
「コイツうぜぇ。」
「善逸!周りに迷惑だから騒ぐな!」
伊之助の両肩を掴んで激しく揺さぶりながら大声を上げれば、炭治郎は慌てたように善逸に静かにするように注意した。
そんな光景はもはや日常茶番と化していて、周りの生徒たちはまたあの三馬鹿かと呆れたように遠目から見ているだけであった。
「そんなに好きなら、朝以外でも声をかけたらいいんじゃないか?」
「それな!!俺、名前ちゃんに告白する!!」
「え?いや、流石にそれは性急すぎないか?」
「いーや!こういうのは早い方がいいの!!」
「あっ、おい善逸!」
「行っちまったなぁ」
「ああ……」
善は急げと言うばかりに食堂を飛び出して行ってしまった善逸の背中を、炭治郎は心配そうに、伊之助は呆れたように見送った。
果たして、彼の告白の結果はどうなるのであろうか。
ーー名前視点ーー
朝の教室が好きだった。
誰もいない静かな空間に、私だけしかいない教室。
そんな場所で勉強や読書をする。そんな時間が私はとても好きだった。
家でやるよりもずっと、学校でやった方が勉強に集中できたのもあって、私は誰よりも早く学校に登校しては僅かなその時間を楽しんでいた。
そんな日々を繰り返していたある日、私は声をかけられた。
その人は、女好きの変態で有名な生徒だった。
学園の風紀を取り締まる風紀委員でありながら、金髪なんて髪色をしたその高等部の先輩は、いつも朝早く登校して来た私を見つけると、笑顔で挨拶をしてくれた。
我妻善逸というその先輩は、学園ではそんな噂で有名な人だった。
私は地味で目立たない、言うならば真面目だけが取り柄のような、そんなどこにでもいそうな平凡な女だ。
制服だって、スカートの丈は規定通りだし、まるでお手本とばかりにきっちりと、真面目すぎるくらいに着こなしている。
規則違反なんて、無縁なのが取り柄のような私である。
だからその日、風紀委員の我妻先輩に声をかけられたのは予想外すぎてとても驚いたのを覚えている。
『君、中等部の名前ちゃんだよね。禰豆子ちゃんと同じクラスの。』
『そうですけど、何ですか?規則違反はしてないつもりですが……』
『あっ、ごめん。校則違反で呼び止めた訳じゃないんだ。ただ、何で毎朝そんなに早いのかなって……』
『それは先輩には関係の無いことでは?』
『えっ、いや、まあそうなんだけど……』
初めて彼とまともに会話したのはこんな会話だった。
思えば、私は初対面の頃から可愛げがなかった。
ニコリとでも笑えれば、まだ可愛いげがあったかもしれない。
けれど表情筋の死んだこの顔の筋肉は中々笑おうとはしてくれないのである。
最初はただ鬱陶しいだけだけだった彼との会話も、毎日顔を合わせれば多少なりとも情は湧いてくるし、私がどんなに無表情で無愛想な態度で接しても、彼は嫌な顔ひとつせずにいつも笑って話しかけてくれた。
そんな日々を繰り返していくうちに、私は我妻先輩を目で追うようになっていた。
女好きでヘタレで変態だのと、あまりいい噂は聞かないが、それでも彼は優しい人であった。
風紀委員をやめたいと言っている割に、人をよく見ているし、友達のためなら自分から進んで面倒事に首を突っ込む。
普段はそういうのを誰よりも嫌っているくせに、本当に困っている人は放っておけない。
不良のような派手な髪色をしている割には、とても優しい人なのだ。
自分には絶対にできない。そんな優しさに、彼の明るさに、私が好意を抱くようになるのは遅くはなかった。
読書のための朝の登校時間が、彼に会いたいからという理由に変わった。
毎朝毎朝、彼に1番に会いたくて、早く会いたくて、欠かさず同じ時間に登校する。
それが私にとってかけがえない大切な時間。
我妻先輩は、きっと知らない。
私がどれだけ、あの時間を大切にしているか。
どれだけ、彼が好きなのか。
――ぼんやりと昼休みに教室でお弁当を一人で食べる。
そんな時に突然教室の扉がガラッと大きな音を立てて勢いよく開かれた。
自然とそちらに顔を向ける。そこには、見慣れた金髪が……
「――えっ。」
「名前ちゃん!俺と……付き合ってください!!」
突然現れた我妻先輩。
息を切らせながら大声で恥ずかしげもなく大告白をしてくれた彼に、私はなんて答えればいいのか……