鬼滅の刃
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――私には好きな人がいる。
「――名前ちゃんおはよう。今日もピアスにスカートの丈に……うん。校則違反だね。」
「……頭がド派手な風紀委員に言われたくない。」
「ひどい!これは地毛なのに!」
「雷に打たれて髪が染まるとかふざけてんの?」
「本当なんだってば!」
「はいはい。じゃあ私は行くから~」
「あっ、ちょっ、待って……!」
呼び止める善逸の声など無視して、名前はさっさと校舎の中に入っていってしまった。
それを少し複雑そうな顔で見送る善逸。
「俺、嫌われてんのかな~……」
そんな善逸の呟きなど、彼女の耳には届かなかった。
(――今日も話し掛けてもらえた……)
口角が釣り上がるのを止められない。にやける。
名前は今日も今日とで大好きな人に声をかけてもらえて、嬉しそうに頬を緩めた。
「うふふふ」と、何も知らない人が見たら怪しいことこの上ないくらいに満面の笑みを浮かべて浮かれてしまっていた。
――風紀委員の我妻善逸。
それが名前の好きな人だった。
風紀委員なのに金髪だったり、それが雷に打たれて変わったとか嘘のような本当の話があったり、泣き虫で男なのにすっごく情けなくて、女の子が大好きでモテたくて必死になりすぎて、やることなすことが全部気持ち悪いとか、散々な周りの評価がある人だ。
それでも、彼はとても優しいのだ。
誰かが困っていたり、悲しんでいると放っておけなくて、人のために自分のことのように泣いてくれる……そんなとても優しい人なのだ。
「はぁ~、もう大好き。好きすぎて苛めたい。」
「……どんな愛情表現よ。」
「だって、泣いている顔もすっごく可愛いんだよ。」
「そんなこと言うのあんたくらいだわ。」
心底呆れたように呟く友人に、名前は心外だとばかりに眉をひそめる。
毎日毎日、善逸への想いを聞かされている友人は、心底どうでもよさげに言った。
「あんたって本当に我妻くんのこと好きだよねぇ。構ってもらうためにわざとピアスをつけたり、スカートの丈を短くして校則違反してまでよくやるわ。」
「うう、だって自分から話し掛けるとか無理なんだもん!彼、風紀委員だから、校則破れば話し掛けてもらえるし。」
「そんな遠回しなことしなくても、同じ委員に入ったりするなりすればいいんじゃない?」
「なっ!善逸くんと同じ委員になるとかいきなりハードル高いわ!」
「小心者かよ。」
呆れたようにジト目で見つめてくる友人に、名前は困ったように目を逸らす。
「だってしょうがないじゃない。……恥ずかしいんだもん。」
「あんたのその好きな人の前でだけ素直になれない性格というか、ツンデレというか、なんとかなんないの?あいつ女好きだから、ちょっとばかし素直になって好意を示せば、すぐに仲良くなれそうだけど?」
「善逸くんが女にだらしないみたいに言わないで。」
「事実じゃん。」
「あ~、善逸くん好き。本当に好き!」
「はいはい。」
友人の心底呆れたような声を無視して、名前は今日も幸せそうであった。
名前が善逸を好きになったのは、去年の夏のこと。
暑さで体調の悪かった名前は無理をして体育の授業に参加していた。
たけど途中で貧血を起こして倒れてしまった名前を、誰よりも早く助けて保健室まで運んでくれたのが善逸だったのだ。
それから名前はずっと、善逸に陰ながら片想いをしている。
「うう、善逸くんなんであんなにカッコいいんだろ……」
「そんなこと思ってるのはあんたくらい……あ"っ。」
「そんなことないよぉ~、善逸くんはカッコいいし、優しいから、私みたいに彼を好きな人いるって……ん?」
友人が変な声を出したので、気になって机に突っ伏していた顔を上げると、何故か友人が後ろを見て固まっていた。
「……?」
気になって釣られるようにして後ろを振り返れば、そこにいたのはついさっきまで噂をしていた好きな人……善逸くん本人が真っ赤な顔をして突っ立っていた。
口をパクパクと鯉のように開いたり閉じたりして、ものすごく狼狽えた顔でこちらを見ている。
――あっ、真っ赤になっている顔も可愛い。
そんな呑気なことを考えて現実逃避すること数秒。
本人に先程までの会話を聞かれていたと理解して数秒。
真っ赤な顔になって固まること数秒。
そして赤から青に顔色が変色するまで数秒。
善逸くんと十秒も見つめあってしまった。
「……ぅ……ぁっ……さらばっ!!」
ガタンっ!!
「ちょっ!名前!?ここで逃げんの!?」
「あっ!」
あまりの恥ずかしさで死にたくなりつつも、その場から逃亡することに全力を注いだ。
丁度、放課後の教室で誰もいないからと油断しまくっていた。
善逸くんは耳がいいから、きっと会話は全部聞かれていたかもしれない。
だってあんなに戸惑った顔してたし!!
うわぁぁあぁあぁーーー!!明日からどんな顔して会えば!!
ていうかもう恥ずかしさと後悔で今すぐ死ねる!!
「――ちょっ、待って名前ちゃん!」
「!」
名前を呼ばれて思わず振り返れば、善逸くんが私を追い掛けて来ていた。
なっ……何で追いかけて来てんだよぉーーっっ!!!
わあぁあーーー!!頼む!!今はそっとしておいて!!
今フラれたら死ぬ!本当に!本気でショック死するからぁっっ!!
「待っててば名前ちゃん!」
「足はえーなちくしょー!!」
そうだった。善逸くんはものすごく足速いんだよ。
くっそう、逃げ切れねーわ!
もう息苦しいぃぃぃーーー!!!
でもこっちは捕まりたくないんだよ!!
「ぜぇ……はぁ……し、しつこい……よ……」
「……ぜぇ……だって……名前ちゃんが……ぜぇ……逃げ……る、から……」
「そりゃ……逃げる……わ……」
もう息も絶え絶えになって校舎裏にまで逃げてしまった。
これ逆に詰んだんじゃないかな?
何でよりによって校舎裏とか人気のない所に逃げ込んだ私!?
「――じゃあ、私はこれで!」
「ちょっ!ちょっと待って!さっきの話だけど……!」
「わあ!ーーっ!いい!フラれるのは分かってるからいいですっ!!」
「ちょっと待ってーー!?何で俺が名前ちゃんをフルことになってんの!?ありえないんですけど!?」
「はあっ!?だって、私いつも善逸くんに可愛くない態度取ってたし、冷たかったし……嫌われてるかと……」
「だからって俺が名前ちゃん嫌いになる訳ないでしょ!!?寧ろ俺が嫌われてるかと思ってたわ!!」
「何で!?それこそありえないでしょ!!」
「だって俺が話し掛ける度に嫌そうな顔してたし、なんか俺が話し掛けた時だけ心臓の音すっごく速くなるしぃ!?」
「そんなの、好きな人の前で緊張して顔が強ばってただけだし!それこそドキドキして心臓が速くなってただけでしょうがー!!」
「ア"ーーーッッ!!そんな可愛い理由だったの!?結婚前提に付き合おうっ!!」
「なぁー!!か、可愛いって何!?結婚て!?てか、善逸くんは私が好きなの!?」
「好きだよ!すっっごい大好きっ!!」
「んん"っ!!」
もう何が何やら……お互いに大声で告白し合ってるし、恥ずかしいやら嬉しいやらで訳が分からなくなる。
なのに善逸くんは可愛いくらいの満面の笑みを浮かべて言うんだ。
「俺は名前ちゃんが好きだよ。毎日毎日一番に声を掛けてたのだって、気になってたからだし、俺に声を掛けてもらいたくてわざと校則違反までしてたって知って、すごく可愛いなって思ったし、毎日毎日目で追ってた子と両想いだったなら、もう遠慮しなくていいよね?」
「う、そ、それは……」
「名前ちゃんは俺が好きなんだよね?」
「すっ!?……嫌いじゃない。」
「それは名前ちゃん的に好きってことだよね!?じゃあ付き合おう!」
「何でそうなるの!?」
「……やっぱり俺のこと嫌い?」
しゅんと捨てられた子犬みたいな目で見つめられ、思わずきゅんと心臓がときめいた。
ええい、もうどうにでもなれ!!
「~~っ!好きだよ!好きですっっ!!」
思わず力いっぱい叫べば、善逸くんはとてもとても幸せそうに笑った。
あまりにも嬉しそうに笑うものだから、恥ずかしくて、でもこっちまで幸せな気持ちになってしまった。
こんなの雰囲気も何もあったもんじゃなくて、ただの勢いだけの告白になっちゃったけど、それでもいいかもしれないと、私に優しく微笑んでくれる善逸くんの笑顔を見て……そう思ったんだ。
「――名前ちゃんおはよう。今日もピアスにスカートの丈に……うん。校則違反だね。」
「……頭がド派手な風紀委員に言われたくない。」
「ひどい!これは地毛なのに!」
「雷に打たれて髪が染まるとかふざけてんの?」
「本当なんだってば!」
「はいはい。じゃあ私は行くから~」
「あっ、ちょっ、待って……!」
呼び止める善逸の声など無視して、名前はさっさと校舎の中に入っていってしまった。
それを少し複雑そうな顔で見送る善逸。
「俺、嫌われてんのかな~……」
そんな善逸の呟きなど、彼女の耳には届かなかった。
(――今日も話し掛けてもらえた……)
口角が釣り上がるのを止められない。にやける。
名前は今日も今日とで大好きな人に声をかけてもらえて、嬉しそうに頬を緩めた。
「うふふふ」と、何も知らない人が見たら怪しいことこの上ないくらいに満面の笑みを浮かべて浮かれてしまっていた。
――風紀委員の我妻善逸。
それが名前の好きな人だった。
風紀委員なのに金髪だったり、それが雷に打たれて変わったとか嘘のような本当の話があったり、泣き虫で男なのにすっごく情けなくて、女の子が大好きでモテたくて必死になりすぎて、やることなすことが全部気持ち悪いとか、散々な周りの評価がある人だ。
それでも、彼はとても優しいのだ。
誰かが困っていたり、悲しんでいると放っておけなくて、人のために自分のことのように泣いてくれる……そんなとても優しい人なのだ。
「はぁ~、もう大好き。好きすぎて苛めたい。」
「……どんな愛情表現よ。」
「だって、泣いている顔もすっごく可愛いんだよ。」
「そんなこと言うのあんたくらいだわ。」
心底呆れたように呟く友人に、名前は心外だとばかりに眉をひそめる。
毎日毎日、善逸への想いを聞かされている友人は、心底どうでもよさげに言った。
「あんたって本当に我妻くんのこと好きだよねぇ。構ってもらうためにわざとピアスをつけたり、スカートの丈を短くして校則違反してまでよくやるわ。」
「うう、だって自分から話し掛けるとか無理なんだもん!彼、風紀委員だから、校則破れば話し掛けてもらえるし。」
「そんな遠回しなことしなくても、同じ委員に入ったりするなりすればいいんじゃない?」
「なっ!善逸くんと同じ委員になるとかいきなりハードル高いわ!」
「小心者かよ。」
呆れたようにジト目で見つめてくる友人に、名前は困ったように目を逸らす。
「だってしょうがないじゃない。……恥ずかしいんだもん。」
「あんたのその好きな人の前でだけ素直になれない性格というか、ツンデレというか、なんとかなんないの?あいつ女好きだから、ちょっとばかし素直になって好意を示せば、すぐに仲良くなれそうだけど?」
「善逸くんが女にだらしないみたいに言わないで。」
「事実じゃん。」
「あ~、善逸くん好き。本当に好き!」
「はいはい。」
友人の心底呆れたような声を無視して、名前は今日も幸せそうであった。
名前が善逸を好きになったのは、去年の夏のこと。
暑さで体調の悪かった名前は無理をして体育の授業に参加していた。
たけど途中で貧血を起こして倒れてしまった名前を、誰よりも早く助けて保健室まで運んでくれたのが善逸だったのだ。
それから名前はずっと、善逸に陰ながら片想いをしている。
「うう、善逸くんなんであんなにカッコいいんだろ……」
「そんなこと思ってるのはあんたくらい……あ"っ。」
「そんなことないよぉ~、善逸くんはカッコいいし、優しいから、私みたいに彼を好きな人いるって……ん?」
友人が変な声を出したので、気になって机に突っ伏していた顔を上げると、何故か友人が後ろを見て固まっていた。
「……?」
気になって釣られるようにして後ろを振り返れば、そこにいたのはついさっきまで噂をしていた好きな人……善逸くん本人が真っ赤な顔をして突っ立っていた。
口をパクパクと鯉のように開いたり閉じたりして、ものすごく狼狽えた顔でこちらを見ている。
――あっ、真っ赤になっている顔も可愛い。
そんな呑気なことを考えて現実逃避すること数秒。
本人に先程までの会話を聞かれていたと理解して数秒。
真っ赤な顔になって固まること数秒。
そして赤から青に顔色が変色するまで数秒。
善逸くんと十秒も見つめあってしまった。
「……ぅ……ぁっ……さらばっ!!」
ガタンっ!!
「ちょっ!名前!?ここで逃げんの!?」
「あっ!」
あまりの恥ずかしさで死にたくなりつつも、その場から逃亡することに全力を注いだ。
丁度、放課後の教室で誰もいないからと油断しまくっていた。
善逸くんは耳がいいから、きっと会話は全部聞かれていたかもしれない。
だってあんなに戸惑った顔してたし!!
うわぁぁあぁあぁーーー!!明日からどんな顔して会えば!!
ていうかもう恥ずかしさと後悔で今すぐ死ねる!!
「――ちょっ、待って名前ちゃん!」
「!」
名前を呼ばれて思わず振り返れば、善逸くんが私を追い掛けて来ていた。
なっ……何で追いかけて来てんだよぉーーっっ!!!
わあぁあーーー!!頼む!!今はそっとしておいて!!
今フラれたら死ぬ!本当に!本気でショック死するからぁっっ!!
「待っててば名前ちゃん!」
「足はえーなちくしょー!!」
そうだった。善逸くんはものすごく足速いんだよ。
くっそう、逃げ切れねーわ!
もう息苦しいぃぃぃーーー!!!
でもこっちは捕まりたくないんだよ!!
「ぜぇ……はぁ……し、しつこい……よ……」
「……ぜぇ……だって……名前ちゃんが……ぜぇ……逃げ……る、から……」
「そりゃ……逃げる……わ……」
もう息も絶え絶えになって校舎裏にまで逃げてしまった。
これ逆に詰んだんじゃないかな?
何でよりによって校舎裏とか人気のない所に逃げ込んだ私!?
「――じゃあ、私はこれで!」
「ちょっ!ちょっと待って!さっきの話だけど……!」
「わあ!ーーっ!いい!フラれるのは分かってるからいいですっ!!」
「ちょっと待ってーー!?何で俺が名前ちゃんをフルことになってんの!?ありえないんですけど!?」
「はあっ!?だって、私いつも善逸くんに可愛くない態度取ってたし、冷たかったし……嫌われてるかと……」
「だからって俺が名前ちゃん嫌いになる訳ないでしょ!!?寧ろ俺が嫌われてるかと思ってたわ!!」
「何で!?それこそありえないでしょ!!」
「だって俺が話し掛ける度に嫌そうな顔してたし、なんか俺が話し掛けた時だけ心臓の音すっごく速くなるしぃ!?」
「そんなの、好きな人の前で緊張して顔が強ばってただけだし!それこそドキドキして心臓が速くなってただけでしょうがー!!」
「ア"ーーーッッ!!そんな可愛い理由だったの!?結婚前提に付き合おうっ!!」
「なぁー!!か、可愛いって何!?結婚て!?てか、善逸くんは私が好きなの!?」
「好きだよ!すっっごい大好きっ!!」
「んん"っ!!」
もう何が何やら……お互いに大声で告白し合ってるし、恥ずかしいやら嬉しいやらで訳が分からなくなる。
なのに善逸くんは可愛いくらいの満面の笑みを浮かべて言うんだ。
「俺は名前ちゃんが好きだよ。毎日毎日一番に声を掛けてたのだって、気になってたからだし、俺に声を掛けてもらいたくてわざと校則違反までしてたって知って、すごく可愛いなって思ったし、毎日毎日目で追ってた子と両想いだったなら、もう遠慮しなくていいよね?」
「う、そ、それは……」
「名前ちゃんは俺が好きなんだよね?」
「すっ!?……嫌いじゃない。」
「それは名前ちゃん的に好きってことだよね!?じゃあ付き合おう!」
「何でそうなるの!?」
「……やっぱり俺のこと嫌い?」
しゅんと捨てられた子犬みたいな目で見つめられ、思わずきゅんと心臓がときめいた。
ええい、もうどうにでもなれ!!
「~~っ!好きだよ!好きですっっ!!」
思わず力いっぱい叫べば、善逸くんはとてもとても幸せそうに笑った。
あまりにも嬉しそうに笑うものだから、恥ずかしくて、でもこっちまで幸せな気持ちになってしまった。
こんなの雰囲気も何もあったもんじゃなくて、ただの勢いだけの告白になっちゃったけど、それでもいいかもしれないと、私に優しく微笑んでくれる善逸くんの笑顔を見て……そう思ったんだ。
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