最終選別~柱合会議まで
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「ふん!」
「ぬわぁ~!」
翌日の朝、炭治郎くんの訓練を見せてもらった。
今日の訓練はどんな体勢になっても受け身を取って素早く起き上がれるようになる訓練だった。
炭治郎くんは真剣を持って鱗滝先生を斬るつもりで本気で向かっていく。
対して先生は素手で、丸腰。けれど元柱であった先生からすれば、炭治郎くんを軽くあしらうなんてとても容易いことだった。
先生は何度も何度も向かってくる炭治郎くんをぶん投げては地面に転がしていた。
「……あいつ、全然受け身取れてないな。」
「まだ呼吸も何もかも始めたばかりなんだもん。しょうがないよ。」
「にしても、半年もここで修業してるんだぞ?」
「私達だってそれくらい掛かったでしょ?懐かしいなぁ~」
鱗滝との修業の日々を思い出して、小羽は懐かしそうに呟く。
対して清隆には辛い出来事だったのか、苦虫を噛みつぶしたような顔になっていた。
「だけどさぁ。あいつは禰豆子ちゃんを人間に戻すんだから、もっともっと強くならないとダメだ。こんな所でいつまでもくすぶってたら、いつまで経ってもあの子は救えない。」
(……すっかり禰豆子ちゃんの虜だね。)
小羽は呆れたような、困ったような、何とも言えない表情で清隆を見ていた。
(相手は人を襲わないとは言え、"鬼"なんだよ……?)
鬼は嫌いだ。例え元人間だとしても、彼等は鬼になった瞬間に人を食らう化け物になり果てる。それが家族であってもだ。
私たちの両親を殺したのだって、鬼だった。
あの日の悪夢は、きっと一生忘れることは出来ないだろう。
強烈な血の匂いと恐怖。そして死にたくなるような痛みとともに脳裏にしっかりと刻まれた記憶は、染み付いて取れることはない。
「……はあ。」
「どうした小羽?」
「……何でもないよ。」
お願いだからどうか、本気で好きになるなんて馬鹿な真似だけはしないで欲しい。
妹としては、兄の恋は素直に応援してやりたい。けれど、相手が鬼では、きっと幸せになんてなれやしない。
私はただ、たった一人の家族に普通の幸せを掴んで欲しいだけなのだ。
「――やっぱり、俺も禰豆子ちゃんが一日でも早く人間に戻れるように情報を集めるべきだよな。」
「……はあ。」
小羽の気持ちを知ってか知らずか、清隆はのんきである。
小羽は再び深いため息をついた。
(――まあ、炭治郎くんの立場や気持ちを考えたら、どうにかしたいって気持ちは痛いほどよく分かるよ。でも……)
私だって両親を鬼に殺された身だ。
もしも炭治郎くんを同じように、お兄ちゃんが鬼にされでもしたら、私はきっと、彼と同じように必死になって人間に戻す方法を探すだろう。
それでも、やっぱり鬼は嫌いなんだ。
頭では彼の行動を理解できても、心がそれを許せないのだ。
小羽がふと俯いていた顔を上げると、目の前では炭治郎がまた鱗滝に投げ飛ばされていた。
彼の着物は砂や泥を纏ったせいで泥だらけに汚れていて、着物はボロボロ。
手も擦り傷や打ち身などで傷だらけであった。
数年前には自分も、あんな風に必死になって修業に励んでいた。
毎日毎日、傷だらけになって、ボロボロになって、手だって豆だらけになるまで刀を振るっていた。
『小羽。お前は鬼殺隊になんかならなくていい。もう修業なんてしなくていいんだ。普通の女の子のように誰か好きな男を見つけて、結婚して、子供を産んで、幸せになってくれ。お前だけでも……頼むから。頼むから……お前は前線に出ないでくれ。』
そう悲痛な声で私に泣いて懇願してきた兄の言葉は、今でも私の中で鮮明に思い出せる。
『分かったよお兄ちゃん。だから泣かないで……』
あの時、私はそう答えた。
でも、どうしても兄が心配で、鬼殺隊になることは諦めたものの、どうしても兄の側にいたくて、私は兄の鎹鴉という形でこうして鬼殺隊とは別の形で前線に出ている。
本当はお兄ちゃんはそれすらも嫌だったみたいだけど……
私がお館様や長に無理を言ってそうさせてもらったのだ。
でもね、お兄ちゃん。本当は私は……
「やあー!!」
「遅い!」
バシィ!!
「うわぁっ!」
また炭治郎くんが投げ飛ばされた。
「あいつ……上手くなってるな。」
「うん。」
そう。炭治郎くんはいつの間にか受け身を取るのが上手くなっていた。
投げ飛ばされた瞬間、瞬時に体を反転させて、すぐに体勢を立て直せるようになってきていた。
成長している。確実に。とても早い速度で。
(それだけ、禰豆子ちゃんの為に必死なんだろうな……)
守るものがある者はとても強くなれる。
彼にとってそれは妹の禰󠄀豆子ちゃんだ。
私にとってのお兄ちゃんみたいに。
「――すごいな。」
思わずポツリと本音が溢れた。
私も、あんな風に戦いたい。もっと強くなりたい。
守られてばかりじゃなくて、私だって守る存在で有りたい。
忘れかけていた感情が、諦めようとしていた願いが、私の中で大きく膨らんでいく。
(私も……鬼殺隊として戦いたい……)
いつしか、そんな想いが自分の中で芽生え始めていた。
「ぬわぁ~!」
翌日の朝、炭治郎くんの訓練を見せてもらった。
今日の訓練はどんな体勢になっても受け身を取って素早く起き上がれるようになる訓練だった。
炭治郎くんは真剣を持って鱗滝先生を斬るつもりで本気で向かっていく。
対して先生は素手で、丸腰。けれど元柱であった先生からすれば、炭治郎くんを軽くあしらうなんてとても容易いことだった。
先生は何度も何度も向かってくる炭治郎くんをぶん投げては地面に転がしていた。
「……あいつ、全然受け身取れてないな。」
「まだ呼吸も何もかも始めたばかりなんだもん。しょうがないよ。」
「にしても、半年もここで修業してるんだぞ?」
「私達だってそれくらい掛かったでしょ?懐かしいなぁ~」
鱗滝との修業の日々を思い出して、小羽は懐かしそうに呟く。
対して清隆には辛い出来事だったのか、苦虫を噛みつぶしたような顔になっていた。
「だけどさぁ。あいつは禰豆子ちゃんを人間に戻すんだから、もっともっと強くならないとダメだ。こんな所でいつまでもくすぶってたら、いつまで経ってもあの子は救えない。」
(……すっかり禰豆子ちゃんの虜だね。)
小羽は呆れたような、困ったような、何とも言えない表情で清隆を見ていた。
(相手は人を襲わないとは言え、"鬼"なんだよ……?)
鬼は嫌いだ。例え元人間だとしても、彼等は鬼になった瞬間に人を食らう化け物になり果てる。それが家族であってもだ。
私たちの両親を殺したのだって、鬼だった。
あの日の悪夢は、きっと一生忘れることは出来ないだろう。
強烈な血の匂いと恐怖。そして死にたくなるような痛みとともに脳裏にしっかりと刻まれた記憶は、染み付いて取れることはない。
「……はあ。」
「どうした小羽?」
「……何でもないよ。」
お願いだからどうか、本気で好きになるなんて馬鹿な真似だけはしないで欲しい。
妹としては、兄の恋は素直に応援してやりたい。けれど、相手が鬼では、きっと幸せになんてなれやしない。
私はただ、たった一人の家族に普通の幸せを掴んで欲しいだけなのだ。
「――やっぱり、俺も禰豆子ちゃんが一日でも早く人間に戻れるように情報を集めるべきだよな。」
「……はあ。」
小羽の気持ちを知ってか知らずか、清隆はのんきである。
小羽は再び深いため息をついた。
(――まあ、炭治郎くんの立場や気持ちを考えたら、どうにかしたいって気持ちは痛いほどよく分かるよ。でも……)
私だって両親を鬼に殺された身だ。
もしも炭治郎くんを同じように、お兄ちゃんが鬼にされでもしたら、私はきっと、彼と同じように必死になって人間に戻す方法を探すだろう。
それでも、やっぱり鬼は嫌いなんだ。
頭では彼の行動を理解できても、心がそれを許せないのだ。
小羽がふと俯いていた顔を上げると、目の前では炭治郎がまた鱗滝に投げ飛ばされていた。
彼の着物は砂や泥を纏ったせいで泥だらけに汚れていて、着物はボロボロ。
手も擦り傷や打ち身などで傷だらけであった。
数年前には自分も、あんな風に必死になって修業に励んでいた。
毎日毎日、傷だらけになって、ボロボロになって、手だって豆だらけになるまで刀を振るっていた。
『小羽。お前は鬼殺隊になんかならなくていい。もう修業なんてしなくていいんだ。普通の女の子のように誰か好きな男を見つけて、結婚して、子供を産んで、幸せになってくれ。お前だけでも……頼むから。頼むから……お前は前線に出ないでくれ。』
そう悲痛な声で私に泣いて懇願してきた兄の言葉は、今でも私の中で鮮明に思い出せる。
『分かったよお兄ちゃん。だから泣かないで……』
あの時、私はそう答えた。
でも、どうしても兄が心配で、鬼殺隊になることは諦めたものの、どうしても兄の側にいたくて、私は兄の鎹鴉という形でこうして鬼殺隊とは別の形で前線に出ている。
本当はお兄ちゃんはそれすらも嫌だったみたいだけど……
私がお館様や長に無理を言ってそうさせてもらったのだ。
でもね、お兄ちゃん。本当は私は……
「やあー!!」
「遅い!」
バシィ!!
「うわぁっ!」
また炭治郎くんが投げ飛ばされた。
「あいつ……上手くなってるな。」
「うん。」
そう。炭治郎くんはいつの間にか受け身を取るのが上手くなっていた。
投げ飛ばされた瞬間、瞬時に体を反転させて、すぐに体勢を立て直せるようになってきていた。
成長している。確実に。とても早い速度で。
(それだけ、禰豆子ちゃんの為に必死なんだろうな……)
守るものがある者はとても強くなれる。
彼にとってそれは妹の禰󠄀豆子ちゃんだ。
私にとってのお兄ちゃんみたいに。
「――すごいな。」
思わずポツリと本音が溢れた。
私も、あんな風に戦いたい。もっと強くなりたい。
守られてばかりじゃなくて、私だって守る存在で有りたい。
忘れかけていた感情が、諦めようとしていた願いが、私の中で大きく膨らんでいく。
(私も……鬼殺隊として戦いたい……)
いつしか、そんな想いが自分の中で芽生え始めていた。