機能回復訓練
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誰も居ないはずの部屋の中で、とある一つの影がモゾモゾと動いていた。
カタリと小さな音を立てて茶箪笥の扉が開かれると、中にあった目的の物を見つけ、影はニヤリと口角を釣り上げて笑った。
「むふふふ~~、み~~つけたぁ~~。前にここにアオイちゃんが仕舞ってたの見てたんだよなぁ~~」
そう言って茶箪笥に置いてあった饅頭の箱を勝手に取り出して食べ始めてしまう。
その正体はもうお分かりであろう。そう、善逸である。
善逸と伊之助が訓練に来なくなってから、もうかれこれ一週間が経とうとしていた。
自分よりもずっと華奢な女の子であるカナヲに圧倒的な実力差で負けた二人は、炭治郎のみが必死に訓練に参加する中で、サボりまくっていた。
伊之助は裏山に篭って野生動物たちと楽しく野山を駆け回り、善逸は気配を消して、こうやって誰も居ない時を狙っては、部屋に忍び込んで食べ物を摘み食いしていた。
今もこうしてこっそりと部屋に忍び込んでは、仕舞っておいたお饅頭を物色して、摘み食いしている真っ最中であった。
「(もぐもぐ)……うーん、この前食べた団子の方が美味しかったかなぁ~~」
勝手に摘み食いをしておいて、偉そうに文句を言う善逸。
その時、彼の耳に誰かの足音が聞こえてきた。
その足音は段々とこちらに近づいて来ているようだった。
(ヤバイ!誰か来る!……あれ?でも、この音って……)
まずいと思ったのはほんの一瞬で、その足音の主が善逸にとって、とても安心できる存在であると分かり、善逸は逃げ出すのをやめた。
ガラッ
「――あっ、ここに居たんだね。」
「小羽ちゃん。」
足音の主は小羽であった。
彼女は善逸がここに居るのを知っていたのか、迷いのない様子でこの部屋で足を止めると、そっと襖を開けて顔を覗かせた。
「小羽ちゃん、帰って来てたんだね。おかえり。」
「うん、ただいま。」
善逸たちが訓練をサボっていたこの一週間の間、小羽は善逸が動けないのもあって、一人で任務に出ていたのだ。
そしてつい先程帰還したという訳である。
小羽はアオイから善逸と伊之助が訓練をサボっていること、炭治郎のみが訓練をがんばっており、最近はカナヲに勝つために、全集中“常中”の訓練を始めたと聞かされていた。
だからこうして、善逸が居そうな場所を勘を頼りに探していたのである。
「アオイから聞いたよ。訓練、参加しなくていいの?」
「……小羽ちゃんも、俺に訓練に参加しろって言いに来たんでしょ?でも俺、もうやりたくない。」
「そっか……分かったよ。」
「えっ」
善逸はどこか罰が悪そうに小羽から目を逸らしてそう言う。
しかし意外にも小羽は「分かった」と、それだけ言って部屋を出て行こうとした。
真面目な小羽のことだから、てっきり訓練に参加しろと説教をしてくるのではと思っていた善逸は、あっさりと身を引いて去ろうとする小羽に呆れられたのではと思って青ざめた。
確かに自分は訓練をサボってはいるが、好きな子に嫌われることだけは嫌だった。
善逸は部屋を出て行こうとする小羽の腕を咄嗟に掴んで引き止めた。
「――待って!」
「……どうしたの?」
突然引き止められた小羽は不思議そうに振り返る。
小羽からは善逸に対しての呆れや怒りの感情の音はしなかった。
だから善逸は困惑した。
てっきり訓練をサボっている自分に呆れ返っているのではと思ったのに、小羽の心はとても凪いでいた。
彼女が何を考えているのか分からない。
だから善逸は心に思ったことを素直に聞いてみた。
「小羽ちゃんは……俺に訓練に参加しろって言いに来たんじゃないの?」
善逸の言葉に小羽は少しだけ困ったように眉尻を下げた。
「うーん、最初はそのつもりだったけど、でも善逸くんは訓練やりたくないんだよね?」
「……うん。」
善逸が重々しく頷くと、小羽は「うん、だから善逸くんがやりたくないなら、無理にやろうなんて言わないよ。」そう言って微笑んだ。
その言葉に善逸は戸惑い、困惑した表情を浮かべて小羽を見た。
「えっ……いいの?俺が言うのもなんだけどさ、こういうのって、やらなきゃダメなんじゃ?」
「そんなことないんじゃない?こういうのって、無理にやらせても意味ないと思うもの。本人にやる気がないのなら、厳しい訓練なんてついて来れないよ。特に全集中“常中”は、柱や継子くらいの隊士が死に物狂いで会得するものだし。だから善逸くんがやりたくないのなら、私は無理にやれなんて言わないよ。」
「小羽ちゃん……」
それは遠回しに自分を見限っていると、そう言われたようで、善逸は悲しくなった。
けれど、「でも……」と続いた言葉に、俯きかけていた顔を上げた。
「もしも善逸くんがまた訓練をしてもいいって気持ちになれたらさ、その時は私も一緒に手伝うよ。」
「……本当に?」
「うん。私も一緒に訓練に付き合うし、きっと炭治郎くんだって、お兄ちゃんだって、今はサボってるけれど、伊之助も。みんな一緒にがんばってくれるよ。きっと!」
「……でも俺、全然カナヲちゃんに勝てないんだ。それに努力するのって苦手だし……俺は炭治郎みたいにがんばれないよ。」
しゅんと落ち込む善逸に、小羽はにっこりと笑顔を浮かべる。
そして善逸を励ますように彼の手を自分の両手で包み込むと、ぎゅっと強く握り締めた。
「――大丈夫だよ。そりゃ、誰だって楽に強くなれるならその方がいいって思うよ。でも残念ながらそんな近道はないの。あまりにも辛くて、訓練を途中で逃げ出したくなっても仕方ない。……でもね、善逸くんは。善逸くんなら絶対に最後までやり遂げられるって思うの。だから善逸くん。もしも……もしもね、また訓練を頑張ろうって思えたら、その時はもう一度だけがんばってみない?」
「……小羽ちゃん……」
「今はそんなに気になれないのは分かってる。だから今は私も善逸くんに無理強いはしない。最終的に決めるのは善逸くんだしね。」
「……分かったよ。俺……もう少しだけがんばってみる。」
「……ありがとう。善逸くん。」
善逸が少しだけ前向きな考えになってくれたようで、小羽は嬉しそうに微笑んだ。
それに善逸は気まずそうにしつつも、照れくさそうに笑い返してくれたのだった。
「……あっ、あのさ……小羽ちゃん。」
「ん?」
やや躊躇いがちに善逸が口を開く。
それに小羽は不思議そうに首を傾げると、善逸はほんのりと頬を赤く染めながらこう言ったのである。
「小羽ちゃんに、見せたい場所があるんだ。」
カタリと小さな音を立てて茶箪笥の扉が開かれると、中にあった目的の物を見つけ、影はニヤリと口角を釣り上げて笑った。
「むふふふ~~、み~~つけたぁ~~。前にここにアオイちゃんが仕舞ってたの見てたんだよなぁ~~」
そう言って茶箪笥に置いてあった饅頭の箱を勝手に取り出して食べ始めてしまう。
その正体はもうお分かりであろう。そう、善逸である。
善逸と伊之助が訓練に来なくなってから、もうかれこれ一週間が経とうとしていた。
自分よりもずっと華奢な女の子であるカナヲに圧倒的な実力差で負けた二人は、炭治郎のみが必死に訓練に参加する中で、サボりまくっていた。
伊之助は裏山に篭って野生動物たちと楽しく野山を駆け回り、善逸は気配を消して、こうやって誰も居ない時を狙っては、部屋に忍び込んで食べ物を摘み食いしていた。
今もこうしてこっそりと部屋に忍び込んでは、仕舞っておいたお饅頭を物色して、摘み食いしている真っ最中であった。
「(もぐもぐ)……うーん、この前食べた団子の方が美味しかったかなぁ~~」
勝手に摘み食いをしておいて、偉そうに文句を言う善逸。
その時、彼の耳に誰かの足音が聞こえてきた。
その足音は段々とこちらに近づいて来ているようだった。
(ヤバイ!誰か来る!……あれ?でも、この音って……)
まずいと思ったのはほんの一瞬で、その足音の主が善逸にとって、とても安心できる存在であると分かり、善逸は逃げ出すのをやめた。
ガラッ
「――あっ、ここに居たんだね。」
「小羽ちゃん。」
足音の主は小羽であった。
彼女は善逸がここに居るのを知っていたのか、迷いのない様子でこの部屋で足を止めると、そっと襖を開けて顔を覗かせた。
「小羽ちゃん、帰って来てたんだね。おかえり。」
「うん、ただいま。」
善逸たちが訓練をサボっていたこの一週間の間、小羽は善逸が動けないのもあって、一人で任務に出ていたのだ。
そしてつい先程帰還したという訳である。
小羽はアオイから善逸と伊之助が訓練をサボっていること、炭治郎のみが訓練をがんばっており、最近はカナヲに勝つために、全集中“常中”の訓練を始めたと聞かされていた。
だからこうして、善逸が居そうな場所を勘を頼りに探していたのである。
「アオイから聞いたよ。訓練、参加しなくていいの?」
「……小羽ちゃんも、俺に訓練に参加しろって言いに来たんでしょ?でも俺、もうやりたくない。」
「そっか……分かったよ。」
「えっ」
善逸はどこか罰が悪そうに小羽から目を逸らしてそう言う。
しかし意外にも小羽は「分かった」と、それだけ言って部屋を出て行こうとした。
真面目な小羽のことだから、てっきり訓練に参加しろと説教をしてくるのではと思っていた善逸は、あっさりと身を引いて去ろうとする小羽に呆れられたのではと思って青ざめた。
確かに自分は訓練をサボってはいるが、好きな子に嫌われることだけは嫌だった。
善逸は部屋を出て行こうとする小羽の腕を咄嗟に掴んで引き止めた。
「――待って!」
「……どうしたの?」
突然引き止められた小羽は不思議そうに振り返る。
小羽からは善逸に対しての呆れや怒りの感情の音はしなかった。
だから善逸は困惑した。
てっきり訓練をサボっている自分に呆れ返っているのではと思ったのに、小羽の心はとても凪いでいた。
彼女が何を考えているのか分からない。
だから善逸は心に思ったことを素直に聞いてみた。
「小羽ちゃんは……俺に訓練に参加しろって言いに来たんじゃないの?」
善逸の言葉に小羽は少しだけ困ったように眉尻を下げた。
「うーん、最初はそのつもりだったけど、でも善逸くんは訓練やりたくないんだよね?」
「……うん。」
善逸が重々しく頷くと、小羽は「うん、だから善逸くんがやりたくないなら、無理にやろうなんて言わないよ。」そう言って微笑んだ。
その言葉に善逸は戸惑い、困惑した表情を浮かべて小羽を見た。
「えっ……いいの?俺が言うのもなんだけどさ、こういうのって、やらなきゃダメなんじゃ?」
「そんなことないんじゃない?こういうのって、無理にやらせても意味ないと思うもの。本人にやる気がないのなら、厳しい訓練なんてついて来れないよ。特に全集中“常中”は、柱や継子くらいの隊士が死に物狂いで会得するものだし。だから善逸くんがやりたくないのなら、私は無理にやれなんて言わないよ。」
「小羽ちゃん……」
それは遠回しに自分を見限っていると、そう言われたようで、善逸は悲しくなった。
けれど、「でも……」と続いた言葉に、俯きかけていた顔を上げた。
「もしも善逸くんがまた訓練をしてもいいって気持ちになれたらさ、その時は私も一緒に手伝うよ。」
「……本当に?」
「うん。私も一緒に訓練に付き合うし、きっと炭治郎くんだって、お兄ちゃんだって、今はサボってるけれど、伊之助も。みんな一緒にがんばってくれるよ。きっと!」
「……でも俺、全然カナヲちゃんに勝てないんだ。それに努力するのって苦手だし……俺は炭治郎みたいにがんばれないよ。」
しゅんと落ち込む善逸に、小羽はにっこりと笑顔を浮かべる。
そして善逸を励ますように彼の手を自分の両手で包み込むと、ぎゅっと強く握り締めた。
「――大丈夫だよ。そりゃ、誰だって楽に強くなれるならその方がいいって思うよ。でも残念ながらそんな近道はないの。あまりにも辛くて、訓練を途中で逃げ出したくなっても仕方ない。……でもね、善逸くんは。善逸くんなら絶対に最後までやり遂げられるって思うの。だから善逸くん。もしも……もしもね、また訓練を頑張ろうって思えたら、その時はもう一度だけがんばってみない?」
「……小羽ちゃん……」
「今はそんなに気になれないのは分かってる。だから今は私も善逸くんに無理強いはしない。最終的に決めるのは善逸くんだしね。」
「……分かったよ。俺……もう少しだけがんばってみる。」
「……ありがとう。善逸くん。」
善逸が少しだけ前向きな考えになってくれたようで、小羽は嬉しそうに微笑んだ。
それに善逸は気まずそうにしつつも、照れくさそうに笑い返してくれたのだった。
「……あっ、あのさ……小羽ちゃん。」
「ん?」
やや躊躇いがちに善逸が口を開く。
それに小羽は不思議そうに首を傾げると、善逸はほんのりと頬を赤く染めながらこう言ったのである。
「小羽ちゃんに、見せたい場所があるんだ。」