「わあ～、すごい豪華。」
「おお～、刺身だ刺身！」

並べられた豪華な食事の数々に、物珍しげに目を輝かせる彩乃と先生。
それを名取は可笑しそうに笑う。

「沢山あるからいっぱい食べるといい。」
「ありがとうございます。」
「主様、こいつに肉をもっと食わせてやってください。ガリガリなのです。」
「私の分もあげようか？」
「いりません。柊もそんなに食べれないから。」
「だったら私が貰ってやろうか？」
「……先生もいい加減減量しないと太るよ。」
「リクオ様、魚の小骨取って差し上げますね。」
「えっ！いいよ氷麗。自分で出来るから。」

わいわいと皆で賑やかな食事を取る彩乃達。
笑顔が飛び交う食卓に、彩乃は心から楽しいと感じていた。
やがて食事が終わると、皆各々好きな時間を過ごした。
もう一度風呂に入る者。部屋で寛ぐ者。ニャンコ先生と名取に至っては、夜遅くまで飲み明かしていた。

「ちゃっちゃと酌をしろ彩乃ー！」
「結構いける口だね猫ちゃん。」
「おうー！まだまだ飲めるぞー！」
「いい加減に寝なさい！この酔っ払い共！！」
「……私は巡回に行ってくる。」
「彩乃ちゃんも大変だなぁ」
「ですね。」

夜の１０時になっても飲み続ける馬鹿二人組に怒鳴る彩乃を見て、リクオと氷麗は同情の眼差しを向けるのだった。

＊＊＊＊＊

「……眠れない。」

夜中、彩乃は中々寝付けずに布団から起き上がった。
あまりにも楽しくて、興奮しすぎたせいか体は疲れている筈なのに、時間が過ぎるのが勿体なくて眠れずにいた。

（何か飲もうかな……）

彩乃はこのままでは眠れそうになくて、何か気を紛らわそうと一度部屋を出ることにした。
隣でスヤスヤと眠る氷麗を起こさないようにそっと部屋から出る彩乃。

「……ふう。」
「やあ、君も眠れないのかい？」
「……名取さん？」

居間に行くと、テーブルでお茶を啜る名取がいた。
誰か居たことに一瞬驚いた彩乃だったが、すぐに冷静になって名取の元へ近付いていった。

「……君もお茶飲むかい？」
「そうですね、飲みます。」

名取が入れてくれたお茶を受け取りながら、彩乃は彼の隣の椅子に座る。
暫く二人は無言でお茶を飲んで過ごし、静かに時を過ごしていた。