第5章「雛編」
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「私のせいでって……どういうことなの?タマは?」
「こいつは自分の意思で飯を拒否してんだよ。これ以上成長しない為にな……」
「なっ、どうして!?」
「……お前と、離れたくなかったんだろーな。」
「……ぁ……」
鴆の言葉に、彩乃は息を飲んだ。
そしてぐったりとしているタマを見つめながら鴆は言葉を続ける。
「本来辰未つーのは鳥の巣に卵を産み落として、その巣の親鳥に雛を育てさせる。人間が育てたりなんざしねーだろうよ。ただの鳥ならそこまで雛に愛情は向けない。だがこいつは……」
鴆は一度言葉を止めると、タマを同情するような眼差しで見つめた。
「お前にだいぶ大事にしてもらったんだろうな……成長を拒み、お前の側を離れたくないと思う程に……」
「タマ……」
彩乃はタマをそっと抱き上げると、タマは微かに身じろぎ、その小さな手で彩乃の指をぎゅっと握り締めた。
まるで、離れたくないと言うように……
「……もっと、一緒にいたいって……思ってくれたんだね。」
「……夏目。おめーが辰未に愛情を注いだことは悪いとは言わねぇが、人間のあんたが妖怪に関わるのは良いことだとは思えねぇ。現に、その雛はあんたに関わって、余計な感情を知っちまった。」
「……そう、だね。」
鴆の言葉が彩乃の心に重くのしかかる。
ショックを受けたようにしゅんと項垂れる彩乃に、鴆はくしゃりと彩乃の頭を優しく撫でた。
「わっ!」
「だがな、夏目。こいつはお前がいなかったらきっと……生まれてくることすらできなかったんだ。……それだけは、確かだ。」
「……鴆……」
叱ったかと思えばとても優しい目で褒めてくれた。
その事に彩乃はどう反応を返したらいいのかわからず、戸惑ったように瞳を揺らした。
「とりあえずは栄養剤を煎じてやるから、あったけぇ牛乳にでも溶かして飲ませてやれ。」
「ありがとう、鴆。」
彩乃は鴆から薬を受け取ると、隣に座っていたニャンコ先生に声をかけた。
「それじゃあ帰ろっか、先生。」
「やれやれ、やっとか」
「あっ、待ってください、先輩!」
「へ?」
帰ろうと立ち上がると、リクオに呼び止められた。
「もう暗いですし、送っていきます。」
「えっ?でも……」
彩乃が遠慮して断ろうとすると、それを感じ取ったリクオが提案をしてきた。
「遠慮しないでください。今から駅に向かうと遅くなってしまうし、それに……空から帰った方が早く家に帰れますし、その雛を早く休ませてあげたいでしょう?」
「あっ……」
リクオがタマを見つめながら言うので、彩乃は彼がタマの体調を気遣ってくれているとわかった。
確かに今はタマの体の事を考えれば、お言葉に甘えた方がいいのかもしれないと思ったのだ。
「……わかった。お願いしてもいいかな?」
「もちろんです。氷麗、用意してくれる?」
「はい、リクオ様!」
リクオのご厚意で輪入道を呼んでもらい、彩乃は牛車の中で静かにタマを抱き締めていた。
「……」
誰も一言も喋らない。
皆、彩乃が落ち込んでいるのに気付いて話し掛ける事ができずにいた。
(……夏目先輩、やっぱりさっきの鴆くんの言葉、気にしてるんだな……)
自分が安易な気持ちで妖怪の卵を拾ったばかりに、タマがこんなにも弱ってしまっている。
(夏目先輩はたぶん、自分を責めてる。)
まだ彩乃と出会って日の浅いリクオでも、それだけはわかった。
リクオの護衛に着いてきていた首無や氷麗もじっと彩乃を見つめたまま黙り込んでいる。
(……早く、雛が元気になるといいな……)
そうすれば、先輩はまた笑ってくれる。
タマを抱き締めていたまま、落ち込んだように俯いてる彩乃の姿を見て、リクオは心から雛の回復を願うのだった。
「こいつは自分の意思で飯を拒否してんだよ。これ以上成長しない為にな……」
「なっ、どうして!?」
「……お前と、離れたくなかったんだろーな。」
「……ぁ……」
鴆の言葉に、彩乃は息を飲んだ。
そしてぐったりとしているタマを見つめながら鴆は言葉を続ける。
「本来辰未つーのは鳥の巣に卵を産み落として、その巣の親鳥に雛を育てさせる。人間が育てたりなんざしねーだろうよ。ただの鳥ならそこまで雛に愛情は向けない。だがこいつは……」
鴆は一度言葉を止めると、タマを同情するような眼差しで見つめた。
「お前にだいぶ大事にしてもらったんだろうな……成長を拒み、お前の側を離れたくないと思う程に……」
「タマ……」
彩乃はタマをそっと抱き上げると、タマは微かに身じろぎ、その小さな手で彩乃の指をぎゅっと握り締めた。
まるで、離れたくないと言うように……
「……もっと、一緒にいたいって……思ってくれたんだね。」
「……夏目。おめーが辰未に愛情を注いだことは悪いとは言わねぇが、人間のあんたが妖怪に関わるのは良いことだとは思えねぇ。現に、その雛はあんたに関わって、余計な感情を知っちまった。」
「……そう、だね。」
鴆の言葉が彩乃の心に重くのしかかる。
ショックを受けたようにしゅんと項垂れる彩乃に、鴆はくしゃりと彩乃の頭を優しく撫でた。
「わっ!」
「だがな、夏目。こいつはお前がいなかったらきっと……生まれてくることすらできなかったんだ。……それだけは、確かだ。」
「……鴆……」
叱ったかと思えばとても優しい目で褒めてくれた。
その事に彩乃はどう反応を返したらいいのかわからず、戸惑ったように瞳を揺らした。
「とりあえずは栄養剤を煎じてやるから、あったけぇ牛乳にでも溶かして飲ませてやれ。」
「ありがとう、鴆。」
彩乃は鴆から薬を受け取ると、隣に座っていたニャンコ先生に声をかけた。
「それじゃあ帰ろっか、先生。」
「やれやれ、やっとか」
「あっ、待ってください、先輩!」
「へ?」
帰ろうと立ち上がると、リクオに呼び止められた。
「もう暗いですし、送っていきます。」
「えっ?でも……」
彩乃が遠慮して断ろうとすると、それを感じ取ったリクオが提案をしてきた。
「遠慮しないでください。今から駅に向かうと遅くなってしまうし、それに……空から帰った方が早く家に帰れますし、その雛を早く休ませてあげたいでしょう?」
「あっ……」
リクオがタマを見つめながら言うので、彩乃は彼がタマの体調を気遣ってくれているとわかった。
確かに今はタマの体の事を考えれば、お言葉に甘えた方がいいのかもしれないと思ったのだ。
「……わかった。お願いしてもいいかな?」
「もちろんです。氷麗、用意してくれる?」
「はい、リクオ様!」
リクオのご厚意で輪入道を呼んでもらい、彩乃は牛車の中で静かにタマを抱き締めていた。
「……」
誰も一言も喋らない。
皆、彩乃が落ち込んでいるのに気付いて話し掛ける事ができずにいた。
(……夏目先輩、やっぱりさっきの鴆くんの言葉、気にしてるんだな……)
自分が安易な気持ちで妖怪の卵を拾ったばかりに、タマがこんなにも弱ってしまっている。
(夏目先輩はたぶん、自分を責めてる。)
まだ彩乃と出会って日の浅いリクオでも、それだけはわかった。
リクオの護衛に着いてきていた首無や氷麗もじっと彩乃を見つめたまま黙り込んでいる。
(……早く、雛が元気になるといいな……)
そうすれば、先輩はまた笑ってくれる。
タマを抱き締めていたまま、落ち込んだように俯いてる彩乃の姿を見て、リクオは心から雛の回復を願うのだった。