第5章「雛編」
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「えへへ」
「キモいぞ彩乃。」
先程からずっと、貰ったばかりのスマホを眺めてはにやにやと嬉しそうに顔をにやけさせる彩乃。
子狐と出会ったその夜、子狐に新たな居場所も出来て、スマホも貰えて彩乃の心は満ち足りていた。
「……後は、卵が無事に孵ってくれれば……」
ピシッ!
「……え?」
ピシピシッ
何気なく卵の方を見ると、いつの間にか卵にヒビが入っていた。
そして一つヒビが入ると、その亀裂はどんどん大きくなっていく。
「せ、先生!卵が……!」
「何っ!?ヒヨコヒヨコ!」
ピシピシっ!
パリンッ!!
「「!!??」」
卵は一層大きく揺れ動くと、殻を破って中から雛が出てきた。
しかし、彩乃と先生はその雛の姿を見て、仰天した。
「……ひ……人型ー!?」
「ヒヨコじゃないぞ!!?」
卵から生まれて雛は、人のような姿に頭に角が生えた姿だった。
てっきり鳥っぽいものをイメージしていた二人は、その予想外の姿に衝撃を受けた。
「……くしゅん」
「……はっ!わー!お湯お湯!!」
「わー!タオルタオル!」
まるで小人のような小さな可愛らしい命は、鳥のように産毛も生えていない。
裸で寒そうなその雛に慌てて二人はお湯と布を用意した。
彩乃のお茶碗のお風呂に入った雛は、温かそうに湯船につかる。
じーーっ
じーーっ
「……くっ、この私にガンを飛ばすとは……てかこいつ、喰えるのか?」
「わけのわからないもの食べるとお腹壊すよ、先生。」
「……むむ。その角……よく見ればそ奴辰未という妖の雛ではないか?」
「……タツミ?」
彩乃が不思議そうに首を傾げると、先生は説明してくれた。
「鳥と竜に近い妖で、自分達では子育てをしない。だから数も少ない。雛は孵って最初に見た生物の形に変化するらしい。ある程度まで育ててもらったら本来の姿となり旅立っていくと聞いたことがある。……実際にこの目で見たのは初めてだがな。」
「……へぇ。じゃあ先に先生を見てたら招き猫型の姿になってたのね……私で良かったわ。」
「おい。それはどういう意味だ?」
「……別に。」
「……何故目を逸らす?」
うっかり招き猫姿に角が生えている先生似の雛を想像してしまい、彩乃は必死に笑いを堪えて先生から目を逸らしたのだった。
「……なっ、何はともあれ、無事に生まれてきてくれて良かったわ。」
「……顔がにやけてるぞ?」
「……っ、気のせい気のせい。……ふふ、可愛い。」
ごしごしと優しくタオルで雛の体を拭いてやり、それからハンカチを縫って作ったミニサイズの着物を着せてやった。
「~~っっ、かっ、可愛い……!!」
にこにこと嬉しそうに笑う雛の可愛らしさに、彩乃は顔がにやけるのを止められない。
元来彼女は昔から可愛い物好きで、小さな妖相手などによく絆されやすい。
そんなんだから当然、この愛らしい雛にも既にメロメロだった。
「……おい、いい加減現実に帰ってこい。」
「……はっ!そう言えば一体何日くらいで育つんだろう?」
「さあな。辰未の成長は早いと聞く。三、四日くらいじゃないか?」
「ごはんはミルクでいいのかな?」
「……案外、人肉かも知れんぞ?」
ニヤリと意地悪そうな笑みを浮かべて先生がそう言うと、雛は突然ニャンコ先生の尻尾にかぶりついた。
ガブリ
「ぎゃあ!」
「ああ!そんなの食べたらお腹壊すよ?ぺっしなさい!」
「何たる恩知らず!このもやしより私の方が貢献したんだぞ!」
「なっ!もやしって何よーー!!」
軽率だっただろうか?
卵を孵したところで鳥の飼い方も知らないくせに、ましてや竜のことなど人には解らない。
人のことなど、竜には解らない。
来週には合宿があるのだが、何日くらいで大きくなるのだろう…
無事に育て上げられるだろうか……
そんな一抹の不安を抱えたまま、夜は更けていく……
「キモいぞ彩乃。」
先程からずっと、貰ったばかりのスマホを眺めてはにやにやと嬉しそうに顔をにやけさせる彩乃。
子狐と出会ったその夜、子狐に新たな居場所も出来て、スマホも貰えて彩乃の心は満ち足りていた。
「……後は、卵が無事に孵ってくれれば……」
ピシッ!
「……え?」
ピシピシッ
何気なく卵の方を見ると、いつの間にか卵にヒビが入っていた。
そして一つヒビが入ると、その亀裂はどんどん大きくなっていく。
「せ、先生!卵が……!」
「何っ!?ヒヨコヒヨコ!」
ピシピシっ!
パリンッ!!
「「!!??」」
卵は一層大きく揺れ動くと、殻を破って中から雛が出てきた。
しかし、彩乃と先生はその雛の姿を見て、仰天した。
「……ひ……人型ー!?」
「ヒヨコじゃないぞ!!?」
卵から生まれて雛は、人のような姿に頭に角が生えた姿だった。
てっきり鳥っぽいものをイメージしていた二人は、その予想外の姿に衝撃を受けた。
「……くしゅん」
「……はっ!わー!お湯お湯!!」
「わー!タオルタオル!」
まるで小人のような小さな可愛らしい命は、鳥のように産毛も生えていない。
裸で寒そうなその雛に慌てて二人はお湯と布を用意した。
彩乃のお茶碗のお風呂に入った雛は、温かそうに湯船につかる。
じーーっ
じーーっ
「……くっ、この私にガンを飛ばすとは……てかこいつ、喰えるのか?」
「わけのわからないもの食べるとお腹壊すよ、先生。」
「……むむ。その角……よく見ればそ奴辰未という妖の雛ではないか?」
「……タツミ?」
彩乃が不思議そうに首を傾げると、先生は説明してくれた。
「鳥と竜に近い妖で、自分達では子育てをしない。だから数も少ない。雛は孵って最初に見た生物の形に変化するらしい。ある程度まで育ててもらったら本来の姿となり旅立っていくと聞いたことがある。……実際にこの目で見たのは初めてだがな。」
「……へぇ。じゃあ先に先生を見てたら招き猫型の姿になってたのね……私で良かったわ。」
「おい。それはどういう意味だ?」
「……別に。」
「……何故目を逸らす?」
うっかり招き猫姿に角が生えている先生似の雛を想像してしまい、彩乃は必死に笑いを堪えて先生から目を逸らしたのだった。
「……なっ、何はともあれ、無事に生まれてきてくれて良かったわ。」
「……顔がにやけてるぞ?」
「……っ、気のせい気のせい。……ふふ、可愛い。」
ごしごしと優しくタオルで雛の体を拭いてやり、それからハンカチを縫って作ったミニサイズの着物を着せてやった。
「~~っっ、かっ、可愛い……!!」
にこにこと嬉しそうに笑う雛の可愛らしさに、彩乃は顔がにやけるのを止められない。
元来彼女は昔から可愛い物好きで、小さな妖相手などによく絆されやすい。
そんなんだから当然、この愛らしい雛にも既にメロメロだった。
「……おい、いい加減現実に帰ってこい。」
「……はっ!そう言えば一体何日くらいで育つんだろう?」
「さあな。辰未の成長は早いと聞く。三、四日くらいじゃないか?」
「ごはんはミルクでいいのかな?」
「……案外、人肉かも知れんぞ?」
ニヤリと意地悪そうな笑みを浮かべて先生がそう言うと、雛は突然ニャンコ先生の尻尾にかぶりついた。
ガブリ
「ぎゃあ!」
「ああ!そんなの食べたらお腹壊すよ?ぺっしなさい!」
「何たる恩知らず!このもやしより私の方が貢献したんだぞ!」
「なっ!もやしって何よーー!!」
軽率だっただろうか?
卵を孵したところで鳥の飼い方も知らないくせに、ましてや竜のことなど人には解らない。
人のことなど、竜には解らない。
来週には合宿があるのだが、何日くらいで大きくなるのだろう…
無事に育て上げられるだろうか……
そんな一抹の不安を抱えたまま、夜は更けていく……