第4章「子狐編」
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「本来暴力をチラつかせるのは趣味じゃないんだけどなぁ~」
「どの面さげてそれを言うか。」
「……あの……」
彩乃の言葉にニャンコ先生がすかさず突っ込みを入れる。
二人のそんなやり取りに、遠慮がちに声をかけてくる子狐。
彩乃がどうしたのかと子狐の方へ視線を向けると、子狐はおずおずと一枚の葉っぱを差し出してきた。
「……僕の名を書いてあります。僕を子分にしてください。きっと、お役に立ってみせます。」
まっすぐな瞳で彩乃を見上げてくる子狐に、彩乃は困ったように眉尻を下げる。
「……いらないよ。」
彩乃がそう言った瞬間、子狐は絶望したような、今にも泣き出しそうな表情を浮かべた。
「……やっぱり、僕が弱いから?僕なんか役に立たない?」
「違うよ。」
そう言って彩乃は子狐の頭を優しく撫でる。
「こんなもので縛りたくないの。私たちは、主従の関係なんかじゃないでしょ?あなたと私は、もっと別の繋がりがあると思うよ。」
「……別の?」
「うん、例えば……友達とか。」
「……とも、だち……?」
彩乃の言葉を、覚えたての言葉のように繰り返して呟く子狐。
一瞬嬉しそうに口元を緩めた子狐だったが、すぐにその表情はまた悲しげなものへと戻ってしまう。
「……だけど、あなたは一緒には居てくれないのでしょう?……なら、僕はまた独りぼっちだ。」
「……子狐、君の家族は?」
「かあ様は、数日前に死んじゃった。」
「……そう……」
子狐は母親を亡くした時の事を思い出したのか、その大きな瞳からはポロポロと涙が零れ落ちてくる。
「……っ、独りは……もう、やだよぉ~。」
「……だったら、一緒に来る?」
「……えっ?」
「おい!」
涙を流す子狐が放っておけなくて、彩乃は思わずそんな事を口にしていた。
突然の申し出に子狐はきょとりと目を丸くし、ニャンコ先生は余計なことをと言いたげに声を上げた。
「おい彩乃!お前、安い同情なんかで軽々しく言うでない!」
「……先生。私、この子のこと放っとけないよ。……だから、頼んでみる。」
「はっ?」
「?」
「子狐、私に任せて!」
何のことだと首を傾げる子狐と先生に、彩乃はにっこりと笑顔を浮かべるのだった。
*****
「――という訳でして、お願いします!!」
「いやいや、先輩、頭を上げてください!」
ここは奴良組本家。つまりは、リクオの家である。
子狐の引き取り手先にあれこれ悩んだ結果、彩乃は奴良組に預けることを考えたのだった。
「突然の訪問の上に無理なお願いだけど、お願い奴良くん!子狐を奴良組に入れてあげて欲しいの!!」
「せ、先輩……土下座なんかしないでください!」
藤原家で一緒に暮らすということも考えたが、自分は人間で子狐は妖だ。
普通の狐とは訳が違う。
それなら、いっそ奴良組に預けた方が、子狐の為にいいと考えたのだ。
そうして現在、彩乃はリクオに土下座をして頼み込んでいた。
「せ、先輩っ!わかりましたから、顔を上げてください!」
「いいの!?」
リクオの言葉に彩乃はガバリと顔を上げて反応する。
するとリクオはにっこりと人の良さそうな笑みを浮かべて言った。
「もちろんいいですよ。力の弱い妖怪を保護するのも、 奴良組の役目の一つだって、おじいちゃんも言ってましたし……僕からおじいちゃんに頼んでみます。」
「あっ……ありがとう、 奴良くん!!」
「いえいえ」
リクオの器の大きさに感激しつつ、彩乃は自分の後ろにくっついていた子狐へと振り返る。
「良かったね、子狐!」
「えっ?えっ?」
状況が飲み込めない子狐は頭に疑問符が浮かび上がる。
「今日からここが子狐のお家になるんだよ!……嫌だった?」
「……僕の、お家……?」
子狐が戸惑いながらぐるりと周りを見回すと、彩乃たちの部屋を覗き見していた納豆小僧たち小物妖怪たちがわらわらと子狐を取り囲んだ。
「ひっ!」
「お前、今日からうちに入るのか?」
「おいらは納豆小僧!よろしくな!」
「おれば小鬼だ!」
「あたしはね!」
「あわわわっ!」
沢山の奴良組の妖怪たちに囲まれて戸惑っている子狐を温かな眼差しで見守りつつ、どうやら受け入れてもらえた様子の子狐にほっとしていた。
「……本当にありがとう、 奴良くん。」
「いえ、困ったときはお互い様って言いますし……」
「でも……ありがとう。」
「はい!」
嬉しそうに笑う彩乃に、リクオは穏やかに微笑むのだった。
こうして、子狐は奴良組預かりの妖怪となったのでした。
*****
「……あの、これは?」
「うふふ、開けてみて?」
その日の夜、藤原家に帰ると、何故かとても機嫌良さげな塔子さんから箱を渡された。
「?、……あっ!」
「うふふ、驚いた?」
彩乃が不思議そうに箱を開けると、そこには一つのスマホが入っていた。
「……これっ!」
「私と滋さんも買ってきたのよ!お揃いね!」
そう言って2つのスマホを嬉しそうに見せてくる塔子。
「いえ、そうじゃなくて……私の分まで……いいんですか?」
「何言ってるの?彩乃ちゃんとこれから連絡を取る為に買ってきたんだから、当然彩乃ちゃんが貰ってくれなきゃ困るわ?」
「ええっ!?わ、私の為に!?す……すみません!!」
まさか部活や合宿の事で迷惑をかけてしまったのかと焦る彩乃。
しかし、滋と塔子は慌てる彩乃に苦笑しながら、優しく頭を撫でてくれた。
「元々仕事で必要になりそうだったんだ。彩乃が気にする事じゃない。」
「そうよ。これからは何かあったらこれで彩乃ちゃんとも連絡が取れるし、安心出来るわぁ~」
「……っ、あ、ありがとう……ございます!」
「ふふ、大袈裟ねぇ。」
にこにこと穏やかに笑う藤原夫妻に、彩乃は貰ったばかりの携帯を大切そうに胸に抱き締めるのだった。
「どの面さげてそれを言うか。」
「……あの……」
彩乃の言葉にニャンコ先生がすかさず突っ込みを入れる。
二人のそんなやり取りに、遠慮がちに声をかけてくる子狐。
彩乃がどうしたのかと子狐の方へ視線を向けると、子狐はおずおずと一枚の葉っぱを差し出してきた。
「……僕の名を書いてあります。僕を子分にしてください。きっと、お役に立ってみせます。」
まっすぐな瞳で彩乃を見上げてくる子狐に、彩乃は困ったように眉尻を下げる。
「……いらないよ。」
彩乃がそう言った瞬間、子狐は絶望したような、今にも泣き出しそうな表情を浮かべた。
「……やっぱり、僕が弱いから?僕なんか役に立たない?」
「違うよ。」
そう言って彩乃は子狐の頭を優しく撫でる。
「こんなもので縛りたくないの。私たちは、主従の関係なんかじゃないでしょ?あなたと私は、もっと別の繋がりがあると思うよ。」
「……別の?」
「うん、例えば……友達とか。」
「……とも、だち……?」
彩乃の言葉を、覚えたての言葉のように繰り返して呟く子狐。
一瞬嬉しそうに口元を緩めた子狐だったが、すぐにその表情はまた悲しげなものへと戻ってしまう。
「……だけど、あなたは一緒には居てくれないのでしょう?……なら、僕はまた独りぼっちだ。」
「……子狐、君の家族は?」
「かあ様は、数日前に死んじゃった。」
「……そう……」
子狐は母親を亡くした時の事を思い出したのか、その大きな瞳からはポロポロと涙が零れ落ちてくる。
「……っ、独りは……もう、やだよぉ~。」
「……だったら、一緒に来る?」
「……えっ?」
「おい!」
涙を流す子狐が放っておけなくて、彩乃は思わずそんな事を口にしていた。
突然の申し出に子狐はきょとりと目を丸くし、ニャンコ先生は余計なことをと言いたげに声を上げた。
「おい彩乃!お前、安い同情なんかで軽々しく言うでない!」
「……先生。私、この子のこと放っとけないよ。……だから、頼んでみる。」
「はっ?」
「?」
「子狐、私に任せて!」
何のことだと首を傾げる子狐と先生に、彩乃はにっこりと笑顔を浮かべるのだった。
*****
「――という訳でして、お願いします!!」
「いやいや、先輩、頭を上げてください!」
ここは奴良組本家。つまりは、リクオの家である。
子狐の引き取り手先にあれこれ悩んだ結果、彩乃は奴良組に預けることを考えたのだった。
「突然の訪問の上に無理なお願いだけど、お願い奴良くん!子狐を奴良組に入れてあげて欲しいの!!」
「せ、先輩……土下座なんかしないでください!」
藤原家で一緒に暮らすということも考えたが、自分は人間で子狐は妖だ。
普通の狐とは訳が違う。
それなら、いっそ奴良組に預けた方が、子狐の為にいいと考えたのだ。
そうして現在、彩乃はリクオに土下座をして頼み込んでいた。
「せ、先輩っ!わかりましたから、顔を上げてください!」
「いいの!?」
リクオの言葉に彩乃はガバリと顔を上げて反応する。
するとリクオはにっこりと人の良さそうな笑みを浮かべて言った。
「もちろんいいですよ。力の弱い妖怪を保護するのも、 奴良組の役目の一つだって、おじいちゃんも言ってましたし……僕からおじいちゃんに頼んでみます。」
「あっ……ありがとう、 奴良くん!!」
「いえいえ」
リクオの器の大きさに感激しつつ、彩乃は自分の後ろにくっついていた子狐へと振り返る。
「良かったね、子狐!」
「えっ?えっ?」
状況が飲み込めない子狐は頭に疑問符が浮かび上がる。
「今日からここが子狐のお家になるんだよ!……嫌だった?」
「……僕の、お家……?」
子狐が戸惑いながらぐるりと周りを見回すと、彩乃たちの部屋を覗き見していた納豆小僧たち小物妖怪たちがわらわらと子狐を取り囲んだ。
「ひっ!」
「お前、今日からうちに入るのか?」
「おいらは納豆小僧!よろしくな!」
「おれば小鬼だ!」
「あたしはね!」
「あわわわっ!」
沢山の奴良組の妖怪たちに囲まれて戸惑っている子狐を温かな眼差しで見守りつつ、どうやら受け入れてもらえた様子の子狐にほっとしていた。
「……本当にありがとう、 奴良くん。」
「いえ、困ったときはお互い様って言いますし……」
「でも……ありがとう。」
「はい!」
嬉しそうに笑う彩乃に、リクオは穏やかに微笑むのだった。
こうして、子狐は奴良組預かりの妖怪となったのでした。
*****
「……あの、これは?」
「うふふ、開けてみて?」
その日の夜、藤原家に帰ると、何故かとても機嫌良さげな塔子さんから箱を渡された。
「?、……あっ!」
「うふふ、驚いた?」
彩乃が不思議そうに箱を開けると、そこには一つのスマホが入っていた。
「……これっ!」
「私と滋さんも買ってきたのよ!お揃いね!」
そう言って2つのスマホを嬉しそうに見せてくる塔子。
「いえ、そうじゃなくて……私の分まで……いいんですか?」
「何言ってるの?彩乃ちゃんとこれから連絡を取る為に買ってきたんだから、当然彩乃ちゃんが貰ってくれなきゃ困るわ?」
「ええっ!?わ、私の為に!?す……すみません!!」
まさか部活や合宿の事で迷惑をかけてしまったのかと焦る彩乃。
しかし、滋と塔子は慌てる彩乃に苦笑しながら、優しく頭を撫でてくれた。
「元々仕事で必要になりそうだったんだ。彩乃が気にする事じゃない。」
「そうよ。これからは何かあったらこれで彩乃ちゃんとも連絡が取れるし、安心出来るわぁ~」
「……っ、あ、ありがとう……ございます!」
「ふふ、大袈裟ねぇ。」
にこにこと穏やかに笑う藤原夫妻に、彩乃は貰ったばかりの携帯を大切そうに胸に抱き締めるのだった。