第22章「邪魅編」
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神主とヤクザたちが手を組んでいると調べた私たちは、品子さんたちを守るために彼等をとっちめると決めた。
その為にどうするか。邪魅を仲間にした私たちは改めて話し合いをしていた。
「小妖怪たちによると、品子さんたちを屋敷から追い出すために奴らは今夜仕掛けてくる気みたいだ。」
「またあやつらは……」
懲りずにまた品子さんたちを襲おうとしている神主たちに、邪魅は苛立ちを隠すことなく悔しげな声を上げる。
邪魅から聞いた話しよると、彼等が品子さんを狙う理由はなんとこの土地を狙ってのことだった。
邪魅の噂をわざと広めることで品子さんたちを家から追い出し、この土地を安く手に入れて歓楽街にして儲けを得るというなんとも身勝手な理由だった。
「品子さんは神主から今日、新しい札を受け取ってるのを小妖怪たちが見てる。それがどうやらかなりヤバい代物らしくて……」
「そんな!いよいよ彼等も手段を選ばなくなってきたってこと?」
「そうかもしれない。だから僕らは今夜決着をつけよう。」
「そうだね。品子さんの護衛はどうしようか。」
「それなら氷麗に任せようと思う。」
「お任せ下さいリクオ様。」
「それじゃあ、今夜改めて集まろう。」
そんな話し合いをして、邪魅とは一度分かれてから屋敷へと戻ったのだった。
ところが、屋敷から戻ってくると、品子さんの様子がおかしかった。
今夜もいつもの様に女子は女子で集まって品子さんの部屋で寝ようということになっていたのだが、品子さんが急に今夜は一人にして欲しいと言い出したのである。
それに焦ったのは私だった。今夜品子さんが襲われると分かっているのに一人になどできる訳がないからだ。
「えっ、品子さんどうして?」
「そうだよ。また邪魅に襲われたら大変だよ!みんなで一緒にいた方がいいよ。」
「ごめんなさい。夏目さん、家長さん。神主さんから貰った強力な御札の効果を発揮するために、今夜は私一人で過ごさないといけないみたいなの。」
そう言って品子さんが今日貰ってきた言う御札を見せてくれた。
品子さん曰く、今夜の御札は今までの中でもかなり強力な力を宿した御札らしく、品子さんを守ってくれると言われたのだそうだ。
「今度こそあの邪魅を倒せるはずだって……」
「そうなんだ!良かったね!」
「ええ、でもその為には守りの力が分散しない様に私一人で部屋で過ごさないといけないみたいで……」
「まあ、それなら仕方ないね。」
「怖いだろうけど、今後の安息のためならね。」
「がんばってね、品子さん!」
「ええ、ありがとうみんな。」
女の子たちが口々に品子さんに励ましの言葉を伝える。
そんな中、私はじっと御札を見つめていた。
御札からは嫌な気配が漏れ出ていて、名取さんやゆらちゃんが使う御札からはそんな気配はした事はなかった。
これは本当に良くないものだと素人の私でも分かるくらい、この御札からは禍々しい気配を感じるのだ。
こんなの使ったら品子さんはどうなってしまうんだろう……
私は無意識に顔が強ばってしまい、それに気付いた品子さんが心配そうに私を見つめてきた。
「夏目さん大丈夫?顔色が悪いわよ?」
「えっ、いや……」
「わっ!彩乃ちゃん真っ青だわ!」
「大変!夏目先輩早く休んでください!」
「えっ?う、うん、ありがとう……」
リクオくんの計画では、御札は部屋に一旦貼らせることになっている。
危なくなるようならすぐに助けに入れるように、邪魅も品子さんの傍にいる。
だから、きっと大丈夫な筈だ。それでも万が一何かあったらと思うと、私は品子さんが心配で堪らなかった。
(大丈夫……きっと上手くいく。)
ぎゅっと不安になる気持ちを押し殺すように、私は拳を強く握りしめた。
本当なら御札のことを話してやめてもらいたいけれど、きっと今私が神主さんとヤクザたちの関係を話したところできっと簡単には信じてもらえないだろう。
それに、どうしてそんなこと知っているのかと聞かれて妖怪や邪魅から聞いたと話したら、疑心暗鬼になっている品子さんはきっと私が邪魅とグルになって襲ってきたと誤解されてしまう可能性もある。
リクオくんはそれなら目の前で邪魅が味方であると証拠を見せつけてしまえばいいと言っていた。
リクオくんにはリクオくんの考えがあるのだろう。きっと大丈夫。今はリクオくんを信じてみよう。
だからここは余計なことは言わずにいよう。
私はきっとこの後少しだけ怖い思いをさせてしまうだろう品子さんに申し訳なさから心の中でこっそりと謝ると、夜の計画に向けて準備を始めるのだった。
******
夜中の24時が回る頃、みんながすやすやと眠りについたのを確認して、私と氷麗ちゃんはリクオくんたちと合流するためにこっそりと布団から出て、音を立てないようにパジャマの脱いで、下に着ていた私服に着替える。
今頃神主とヤクザたちは神社に集まって会合をしているはずだろう。
今夜こそ品子さんたちを家から追い出せると思い込んで油断している筈だ。
そっとみんなを起こさないように部屋から出ようと足を忍ばせる。
一歩歩く度にギシギシと小さく床が軋む音がするので、いつ誰かが起きないかとヒヤヒヤしてしまう。
(そーっと、そーーっと……)
「んぅ?夏目先輩?及川さん?」
「「っ!?」」
その時、床の軋む音で起きたのか、家長さんが起きてしまった。
眠たげに目を擦りながらモゾモゾと布団から起き上がる。
私はどうしようと冷や汗をダラダラと垂れ流す。
すると、何を思ったのか氷麗ちゃんはそっと家長さんに素早く近づいて……
「呪いの吹雪、雪山殺し!」
「はうあ!!」
「!?」
氷麗ちゃんは突然家長さんにふぅーっと冷たい冷気の籠った吐息を吹きかけると、そのまま家長さんは凍りついた様にパタリと枕に倒れ込んで気絶した。
「ふー、危ない危ない。」
氷麗はひと仕事終えた様な感じでやれやれと額の汗を拭うと、満足気に私の方を向いて満面の笑顔を向けた。そしてやってやりましたとばかりにグッと親指を立ててみせる。
あまりにも鮮やかな流れに私は唖然としてしまったが、ハッと我に変えると青ざめて家長さんに駆け寄った。
「つつつ、氷麗ちゃん!?家長さんに何を??」
「ちょっと気絶してもらっただけですよ。大丈夫ですって!」
「えええ、でもだからって力を使うのは……」
「これくらいで死んだりしませんし、大したことないですから気にしすぎです!それよりも早くリクオ様の所へ向かいましょう!」
「う、うん……」
私は家長さんにそっと布団を掛け直すと、慌てて氷麗ちゃんと一緒に品子さんの部屋へと向かうのだった。
その時、まさかあの子が起きてその様子を見ていたなんて気付きもしないで……
*****
「きゃぁぁぁ!」
一方その頃、品子は壁に張りつけた御札から生まれた妖に襲われそうになっていた。
部屋には10体もの妖が品子を取り囲んでニタニタと気味の悪い笑みを浮かべて見下ろしている。
あまりの恐怖に品子は涙を流し、ガタガタと震えていた。
「何なのよ!全然御札効かないじゃない!」
「キシャァァァ!」
「きゃぁぁぁぁ!」
妖たちが品子に一斉に襲いかかったその瞬間、品子は死を覚悟した。
頭を抱えて蹲り、痛みに備えて身を縮めた。
その瞬間、ザシュっと何かが振り下ろされる音と共に、「ギャァァァ!」と妖の断末魔のような悲鳴が聞こえて、品子はそっと目を開けた。
目の前には散々自分を苦しててきたあの邪魅がいて、けれどどういう事か“あれが“品子のことをまるで守るように品子を背に庇って妖たちを切りつけていたのだった。
訳の分からない状況に、品子は目を丸くする。
(ーーえっ?今、守ってくれた?)
どういう事だろう。どうして邪魅が私を守ってくれるの?
品子は訳が分からずに混乱した。
そんな時に部屋の戸を勢いよく開けて彩乃とニャンコ先生が入ってくる。
「ーー品子さん!大丈夫!?」
「夏目さん!」
「どうやら一人で大丈夫だったみてぇだな。流石だぜ。」
彩乃の後ろには、見たこともない白髪の男性と、黒髪に金目の女性がいた。
2人とも、今の時代では珍しい着物姿だった。
「夏目さん、その人たちは……」
「ええっとね。この人たちは味方なの!悪い人じゃない!それはほんと!後ね。実は邪魅も品子さんの味方だったの。」
「ーーえ?」
「詳しい話を知りたかったらついて来な。」
「あっ!ちょっと!」
白髪の男性はそれだけ言ってくるりを身を翻すと、そのままスタスタと歩き出してしまう。
それに夏目さんと黒髪の女性もすぐに追いかけるように歩き出したので、私は慌てて彼女たちを追いかけるように駆け出した。
本当にもう、訳が分からない。何が起きているのよ。
誰もこの状況を説明してくれないので、私は混乱しながらも夏目さんを信じてついて行くしかなかった。
その為にどうするか。邪魅を仲間にした私たちは改めて話し合いをしていた。
「小妖怪たちによると、品子さんたちを屋敷から追い出すために奴らは今夜仕掛けてくる気みたいだ。」
「またあやつらは……」
懲りずにまた品子さんたちを襲おうとしている神主たちに、邪魅は苛立ちを隠すことなく悔しげな声を上げる。
邪魅から聞いた話しよると、彼等が品子さんを狙う理由はなんとこの土地を狙ってのことだった。
邪魅の噂をわざと広めることで品子さんたちを家から追い出し、この土地を安く手に入れて歓楽街にして儲けを得るというなんとも身勝手な理由だった。
「品子さんは神主から今日、新しい札を受け取ってるのを小妖怪たちが見てる。それがどうやらかなりヤバい代物らしくて……」
「そんな!いよいよ彼等も手段を選ばなくなってきたってこと?」
「そうかもしれない。だから僕らは今夜決着をつけよう。」
「そうだね。品子さんの護衛はどうしようか。」
「それなら氷麗に任せようと思う。」
「お任せ下さいリクオ様。」
「それじゃあ、今夜改めて集まろう。」
そんな話し合いをして、邪魅とは一度分かれてから屋敷へと戻ったのだった。
ところが、屋敷から戻ってくると、品子さんの様子がおかしかった。
今夜もいつもの様に女子は女子で集まって品子さんの部屋で寝ようということになっていたのだが、品子さんが急に今夜は一人にして欲しいと言い出したのである。
それに焦ったのは私だった。今夜品子さんが襲われると分かっているのに一人になどできる訳がないからだ。
「えっ、品子さんどうして?」
「そうだよ。また邪魅に襲われたら大変だよ!みんなで一緒にいた方がいいよ。」
「ごめんなさい。夏目さん、家長さん。神主さんから貰った強力な御札の効果を発揮するために、今夜は私一人で過ごさないといけないみたいなの。」
そう言って品子さんが今日貰ってきた言う御札を見せてくれた。
品子さん曰く、今夜の御札は今までの中でもかなり強力な力を宿した御札らしく、品子さんを守ってくれると言われたのだそうだ。
「今度こそあの邪魅を倒せるはずだって……」
「そうなんだ!良かったね!」
「ええ、でもその為には守りの力が分散しない様に私一人で部屋で過ごさないといけないみたいで……」
「まあ、それなら仕方ないね。」
「怖いだろうけど、今後の安息のためならね。」
「がんばってね、品子さん!」
「ええ、ありがとうみんな。」
女の子たちが口々に品子さんに励ましの言葉を伝える。
そんな中、私はじっと御札を見つめていた。
御札からは嫌な気配が漏れ出ていて、名取さんやゆらちゃんが使う御札からはそんな気配はした事はなかった。
これは本当に良くないものだと素人の私でも分かるくらい、この御札からは禍々しい気配を感じるのだ。
こんなの使ったら品子さんはどうなってしまうんだろう……
私は無意識に顔が強ばってしまい、それに気付いた品子さんが心配そうに私を見つめてきた。
「夏目さん大丈夫?顔色が悪いわよ?」
「えっ、いや……」
「わっ!彩乃ちゃん真っ青だわ!」
「大変!夏目先輩早く休んでください!」
「えっ?う、うん、ありがとう……」
リクオくんの計画では、御札は部屋に一旦貼らせることになっている。
危なくなるようならすぐに助けに入れるように、邪魅も品子さんの傍にいる。
だから、きっと大丈夫な筈だ。それでも万が一何かあったらと思うと、私は品子さんが心配で堪らなかった。
(大丈夫……きっと上手くいく。)
ぎゅっと不安になる気持ちを押し殺すように、私は拳を強く握りしめた。
本当なら御札のことを話してやめてもらいたいけれど、きっと今私が神主さんとヤクザたちの関係を話したところできっと簡単には信じてもらえないだろう。
それに、どうしてそんなこと知っているのかと聞かれて妖怪や邪魅から聞いたと話したら、疑心暗鬼になっている品子さんはきっと私が邪魅とグルになって襲ってきたと誤解されてしまう可能性もある。
リクオくんはそれなら目の前で邪魅が味方であると証拠を見せつけてしまえばいいと言っていた。
リクオくんにはリクオくんの考えがあるのだろう。きっと大丈夫。今はリクオくんを信じてみよう。
だからここは余計なことは言わずにいよう。
私はきっとこの後少しだけ怖い思いをさせてしまうだろう品子さんに申し訳なさから心の中でこっそりと謝ると、夜の計画に向けて準備を始めるのだった。
******
夜中の24時が回る頃、みんながすやすやと眠りについたのを確認して、私と氷麗ちゃんはリクオくんたちと合流するためにこっそりと布団から出て、音を立てないようにパジャマの脱いで、下に着ていた私服に着替える。
今頃神主とヤクザたちは神社に集まって会合をしているはずだろう。
今夜こそ品子さんたちを家から追い出せると思い込んで油断している筈だ。
そっとみんなを起こさないように部屋から出ようと足を忍ばせる。
一歩歩く度にギシギシと小さく床が軋む音がするので、いつ誰かが起きないかとヒヤヒヤしてしまう。
(そーっと、そーーっと……)
「んぅ?夏目先輩?及川さん?」
「「っ!?」」
その時、床の軋む音で起きたのか、家長さんが起きてしまった。
眠たげに目を擦りながらモゾモゾと布団から起き上がる。
私はどうしようと冷や汗をダラダラと垂れ流す。
すると、何を思ったのか氷麗ちゃんはそっと家長さんに素早く近づいて……
「呪いの吹雪、雪山殺し!」
「はうあ!!」
「!?」
氷麗ちゃんは突然家長さんにふぅーっと冷たい冷気の籠った吐息を吹きかけると、そのまま家長さんは凍りついた様にパタリと枕に倒れ込んで気絶した。
「ふー、危ない危ない。」
氷麗はひと仕事終えた様な感じでやれやれと額の汗を拭うと、満足気に私の方を向いて満面の笑顔を向けた。そしてやってやりましたとばかりにグッと親指を立ててみせる。
あまりにも鮮やかな流れに私は唖然としてしまったが、ハッと我に変えると青ざめて家長さんに駆け寄った。
「つつつ、氷麗ちゃん!?家長さんに何を??」
「ちょっと気絶してもらっただけですよ。大丈夫ですって!」
「えええ、でもだからって力を使うのは……」
「これくらいで死んだりしませんし、大したことないですから気にしすぎです!それよりも早くリクオ様の所へ向かいましょう!」
「う、うん……」
私は家長さんにそっと布団を掛け直すと、慌てて氷麗ちゃんと一緒に品子さんの部屋へと向かうのだった。
その時、まさかあの子が起きてその様子を見ていたなんて気付きもしないで……
*****
「きゃぁぁぁ!」
一方その頃、品子は壁に張りつけた御札から生まれた妖に襲われそうになっていた。
部屋には10体もの妖が品子を取り囲んでニタニタと気味の悪い笑みを浮かべて見下ろしている。
あまりの恐怖に品子は涙を流し、ガタガタと震えていた。
「何なのよ!全然御札効かないじゃない!」
「キシャァァァ!」
「きゃぁぁぁぁ!」
妖たちが品子に一斉に襲いかかったその瞬間、品子は死を覚悟した。
頭を抱えて蹲り、痛みに備えて身を縮めた。
その瞬間、ザシュっと何かが振り下ろされる音と共に、「ギャァァァ!」と妖の断末魔のような悲鳴が聞こえて、品子はそっと目を開けた。
目の前には散々自分を苦しててきたあの邪魅がいて、けれどどういう事か“あれが“品子のことをまるで守るように品子を背に庇って妖たちを切りつけていたのだった。
訳の分からない状況に、品子は目を丸くする。
(ーーえっ?今、守ってくれた?)
どういう事だろう。どうして邪魅が私を守ってくれるの?
品子は訳が分からずに混乱した。
そんな時に部屋の戸を勢いよく開けて彩乃とニャンコ先生が入ってくる。
「ーー品子さん!大丈夫!?」
「夏目さん!」
「どうやら一人で大丈夫だったみてぇだな。流石だぜ。」
彩乃の後ろには、見たこともない白髪の男性と、黒髪に金目の女性がいた。
2人とも、今の時代では珍しい着物姿だった。
「夏目さん、その人たちは……」
「ええっとね。この人たちは味方なの!悪い人じゃない!それはほんと!後ね。実は邪魅も品子さんの味方だったの。」
「ーーえ?」
「詳しい話を知りたかったらついて来な。」
「あっ!ちょっと!」
白髪の男性はそれだけ言ってくるりを身を翻すと、そのままスタスタと歩き出してしまう。
それに夏目さんと黒髪の女性もすぐに追いかけるように歩き出したので、私は慌てて彼女たちを追いかけるように駆け出した。
本当にもう、訳が分からない。何が起きているのよ。
誰もこの状況を説明してくれないので、私は混乱しながらも夏目さんを信じてついて行くしかなかった。