第22章「邪魅編」
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「なんなのあのヤクザたち!」
品子さんの家に帰って来るなり、巻さんが怒り心頭にテーブルを叩いた。
実はここに帰ってくるまでに色々とあったのだ。
昨日、私とリクオくんに絡んできたあのヤクザたちと昼間にも遭遇したのだ。
彼等は品子さんのことを「化け物憑き」と呼び、早く家を手放すように脅迫してきたのである。
そういうこともあり、優しい巻さんがついにキレた。
品子さんを腫れ物を触るように遠巻きに恐れている近所の人たちにも、品子さんを悪く言うヤクザたちにも。
何も悪いことなんてしてないのに、ただ、その一族の末裔にというだけで……
品子さんの抱えている想いを知り、力になりたいと思っている私たちからしたら、許せないことだった。
そうして不愉快な気持ちで私たちは帰宅することとなり、今に至る。
「ぜったいあやしーよ!あいつら!」
「何で品子さんを脅すわけ!?」
「あの人たちは……邪魅の噂がたって出ていった家を安く買い叩いてるブローカーなのよ。」
「やっぱり!あいつ等が犯人じゃん!」
「えっ!?犯人!?」
「きっとあいつ等が邪魅を操って欲しい家や土地を奪うために襲わせてんのよ!」
「なっ、なるほど……」
巻さんの推測に納得する人もいれば、そんなこと本当に可能なのかと疑問に思う人たちもいた。
「……ニャンコ先生はどう思う?」
「妖が人なんかに使役できるとは思えないが、それが祓い屋や何かしらの術に精通した者であれば可能かもしれないぞ?」
「そっか……」
「まっ、あの邪魅とかいう奴が人から妖に転じたものなら、人に従う可能性は全くない訳ではないだろうがな。」
「それってどういう……」
なんだか意味深なことを言うニャンコ先生に尋ねようとしたが、品子さんのお母さんが「夕飯できたわよ〜」っとタイミングよく声をかけてきたので、それはできなかった。
それから話はうやむやになってしまい、なんだかもやもやしたまま夕飯を食べたのであった。
*
後片付けを終えた後、みんなが各々の時間を過ごしている間、私はどうしてもやりたいことがあってニャンコ先生を連れて外へと出ることにした。
「ちょっと散歩してくるね。」
「一人で大丈夫?」
「一応、ニャンコ先生もいるから……」
「一応とはなんだ!?私は立派な用心棒だろ!」
出かけることを透ちゃんに伝えると、心配してくれた。
用心棒の先生は一応扱いされて不機嫌になっていたけれど……
そんな先生を宥めながら出かける為に鞄を肩にかける。
「それじゃ、行ってくるね。」
「ええ、気をつけて。」
「いってきます。」
透ちゃんはきっと私が邪魅関係で動こうとしていることに気付いているのだろう。
それでも詳しく聞かずに送り出してくれる。本当に理解のある友達でいつも助けられている。
私のことを一番理解してくれている大切な友達。
そんな透ちゃんにも友人帳のことは話せないけれど、いつかお礼を言えたらいいなと思っている。
ニャンコ先生が肩に乗ったのを確認すると、私は透ちゃんに笑顔を向けて「いってきます」と言って歩き出した。
*
「それでどうする気だ?」
「邪魅を探そうと思うの。」
「また面倒な……当てはあるのか?」
「名取さんから教わった、探しものの陣をやってみるつもり。」
大顔の妖怪の時も、袖もぎの時も上手くいった。
だからきっと今回もこの術で邪魅を見つけられる筈だと思ったのだ。
妖怪退治には抵抗があるくせに、祓い屋である名取さんの術を都合のいい時にだけ使わせてもらうのは少しだけ申し訳ない気もするが、人助けの為だと割り切ることにする。
術のために必要な人型の紙人形と陣を描いた紙も持ってきている。
清継くん達の前で術を使えばきっとみんなもついてきてしまうだろう。
流石に私の我儘にみんなを巻き込むわけにはいかない。
だから何も言わずにこっそりと出てきたのだ。
……リクオくんと氷麗ちゃんにくらいは言っておくべきだったかもしれない。
だけど私と行動しているのを透ちゃんや田沼くんに見られたら、リクオくんたちの正体が妖怪だと勘づかれてしまう恐れがある。
そんな迷惑はかけられない。
(やっぱり私と先生だけで何とかしないと……)
きっと後で怒られるだろうな。
それでもやっぱり迷惑はかけたくないのだ。
リクオくんは友達の前では妖怪であることを隠していたいだろうし、人間でいたいように思うから。
邪魅を見つけ出したら、話を聞きたい。
襲われる可能性もあるけれど、どうにも邪魅は噂ほどの悪い妖怪には思えないのだ。
(もしかしたら、邪魅は……)
自分の勘が当たっているかなんてわからない。
それでも今は、邪魅に会って確かめなければならない。
私は人が少なそうな場所を探して町を彷徨いていると、小さな公園を見つけた。
夜なので子供はおろか人は誰もいない。周りにいるのは小さな妖怪だけで、襲われる心配もないだろう。
私は術を使うならここがいいと思い、公園の中に足を踏み入れることにした。
「ここなら人もいないし、誰かに見られる心配もないね。」
私はベンチに陣が描かれた紙を置くと、人型人形に持ってきていた紐を括り付けた。
人型人形は飛ばすとものすごい勢いで飛んでいってしまう。
とても人間の足で追いつける速さではない上に夜で視界が悪いのもあって確実に見失ってしまう。
だから今回は人型人形に紐を括り付けておくことにしたのだ。
これで慌てて追いかける必要もない。
一通りの準備を終えて、術を発動するために昨日の夜に見た邪魅の姿を思い浮かべる。
するとカサカサと人型人形は微かに動き出した。
ふわりと風もないのに浮かび上がり、こっちだと案内するように紐を引っ張りながら飛び上がる。
「……あっちか。」
「――彩乃ちゃん!」
人型人形に導かれるままに歩き出そうとした瞬間、私の名前を呼ぶ声が夜の公園に響いた。
驚いて振り返れば、そこにはリクオくんと氷麗ちゃんがいた。
驚きで目を大きく見開く。
どうしてここに居るのか。どうやって見つけたのか。聞きたいことはあったけれど、リクオくんがなんだか怒っている雰囲気で、それどころではなかった。
リクオくんは私を見つけると、ズンズンと早歩きの割には重い足音を立てて近付いてくる。
眉をしかめ、目は釣り上がり、顔が完全に怒っていて、迫力があった。
その迫力に思わずひくりと頬がひきつる。
リクオくんが近づく度に無意識に一歩一歩後ずさってしまったのは本能によるものだと思いたい。
リクオくんは後ずさる私を逃がさないというように、手首を掴んできた。
「あっ、あの、リクオくん!」
「――バカ!」
間髪入れずに怒鳴られ、思わずたじろぐ。
リクオくんに黙って出てきてしまったことを、申し訳ないという気持ちがあったからだ。
だからここは素直にちゃんと謝ろうと思った。
「ご、ごめ……「僕はそんなに頼りない?」
「……え?」
謝ろうとした私の言葉を遮ってリクオくんが口を開く。
彼が発した言葉は私にとってとても予想外なもので、何故彼がそんなことを言うのか分からなかった。
リクオくんはずっと私を助けてくれた。だからいつも頼りにしてばかりで申し訳なく思っていて、頼りにならないなんてこと、一度も思ったことなんてない。
それを伝えたくて、私は首を横に振った。絶対にそんなことないと。
だけどリクオくんは私の手を掴んだまま俯いて言う。
「どうして僕を……僕たちを頼ってくれないの。どうして彩乃ちゃんはそうやって一人で何でも解決しようとするの。僕たちが……僕が信じられない?」
「そんなことない!違うのリクオくん!私はただ、みんなの前で私と行動することでリクオくんの正体がみんなにバレないか心配で……」
「そんなことよりも!」
「っ!」
リクオくんが突然大きな声を出したことで、私はびっくりして思わず肩を縮めてしまう。
それにリクオくんは悲しそうに、寂しそうに顔を歪めて、とても……傍にいる私でもやっと聞き取れるようなとても小さな声で言った。
「そんなことよりも、君に信じてもらえないことの方が嫌だ。」
「…………」
その瞬間やっとわかった。
私がリクオくんの為と思ってした行動は、リクオくんを傷つけてしまったのだと。
黙って一人で解決することは、私を信じてくれて、力になってくれようとしているリクオくんを裏切ることになるなんて思わなかったの。……傷つけるつもりなんて……なかったの。
「……ごめんなさい。」
「……っ」
「ごめんね、リクオくん。」
掴まれた手首が痛いくらい強い力で握られて、それでも私はその手を振り払わなかった。
空いているもう片方の手をそっと重ねて、リクオくんの手を包み込むように握る。
私はリクオくんに甘えすぎていたんだ。
リクオくんの気持ちを知っていてずっと先延ばしにしているのは、リクオくんならきっと私の答えが出るまで待っていてくれると知っているから。
黙って行動したのは、リクオくんならきっと許してくれるとどこかで思っていたから。
いくらニャンコ先生が一緒にいるとはいえ、軽率な行動をしてしまったと反省している。
もしも私が邪魅と対峙して、何かあればきっとリクオくんは自分を責めてしまう。
それがわかっていたのに、一人で解決しようとしていた。
私は最低なことを、一番してはいけない人にしようとしていた。
リクオくんの悲しそうな顔を見てそれがやっと理解できるなんて、本当にひどすぎる。
ごめんねリクオくん。ごめんなさい。
「……もうしないから。今度は何があってもちゃんとリクオくんを頼るから。一人で解決しようなんてしないから。だからリクオくん……」
(泣かないで)
リクオくんは泣いてなんていないけど、私の行動に傷ついて泣いている気がした。
だから言葉にはしなかったけど、そっと口を動かして言った。
それが伝わったのか、リクオくんはくしゃりとますます泣きそうに顔を歪めて、私の肩に顔を埋めてきた。
私は解放された両手をそっとリクオくんの背に回して、ぎゅっと抱き締めたのだった。
品子さんの家に帰って来るなり、巻さんが怒り心頭にテーブルを叩いた。
実はここに帰ってくるまでに色々とあったのだ。
昨日、私とリクオくんに絡んできたあのヤクザたちと昼間にも遭遇したのだ。
彼等は品子さんのことを「化け物憑き」と呼び、早く家を手放すように脅迫してきたのである。
そういうこともあり、優しい巻さんがついにキレた。
品子さんを腫れ物を触るように遠巻きに恐れている近所の人たちにも、品子さんを悪く言うヤクザたちにも。
何も悪いことなんてしてないのに、ただ、その一族の末裔にというだけで……
品子さんの抱えている想いを知り、力になりたいと思っている私たちからしたら、許せないことだった。
そうして不愉快な気持ちで私たちは帰宅することとなり、今に至る。
「ぜったいあやしーよ!あいつら!」
「何で品子さんを脅すわけ!?」
「あの人たちは……邪魅の噂がたって出ていった家を安く買い叩いてるブローカーなのよ。」
「やっぱり!あいつ等が犯人じゃん!」
「えっ!?犯人!?」
「きっとあいつ等が邪魅を操って欲しい家や土地を奪うために襲わせてんのよ!」
「なっ、なるほど……」
巻さんの推測に納得する人もいれば、そんなこと本当に可能なのかと疑問に思う人たちもいた。
「……ニャンコ先生はどう思う?」
「妖が人なんかに使役できるとは思えないが、それが祓い屋や何かしらの術に精通した者であれば可能かもしれないぞ?」
「そっか……」
「まっ、あの邪魅とかいう奴が人から妖に転じたものなら、人に従う可能性は全くない訳ではないだろうがな。」
「それってどういう……」
なんだか意味深なことを言うニャンコ先生に尋ねようとしたが、品子さんのお母さんが「夕飯できたわよ〜」っとタイミングよく声をかけてきたので、それはできなかった。
それから話はうやむやになってしまい、なんだかもやもやしたまま夕飯を食べたのであった。
*
後片付けを終えた後、みんなが各々の時間を過ごしている間、私はどうしてもやりたいことがあってニャンコ先生を連れて外へと出ることにした。
「ちょっと散歩してくるね。」
「一人で大丈夫?」
「一応、ニャンコ先生もいるから……」
「一応とはなんだ!?私は立派な用心棒だろ!」
出かけることを透ちゃんに伝えると、心配してくれた。
用心棒の先生は一応扱いされて不機嫌になっていたけれど……
そんな先生を宥めながら出かける為に鞄を肩にかける。
「それじゃ、行ってくるね。」
「ええ、気をつけて。」
「いってきます。」
透ちゃんはきっと私が邪魅関係で動こうとしていることに気付いているのだろう。
それでも詳しく聞かずに送り出してくれる。本当に理解のある友達でいつも助けられている。
私のことを一番理解してくれている大切な友達。
そんな透ちゃんにも友人帳のことは話せないけれど、いつかお礼を言えたらいいなと思っている。
ニャンコ先生が肩に乗ったのを確認すると、私は透ちゃんに笑顔を向けて「いってきます」と言って歩き出した。
*
「それでどうする気だ?」
「邪魅を探そうと思うの。」
「また面倒な……当てはあるのか?」
「名取さんから教わった、探しものの陣をやってみるつもり。」
大顔の妖怪の時も、袖もぎの時も上手くいった。
だからきっと今回もこの術で邪魅を見つけられる筈だと思ったのだ。
妖怪退治には抵抗があるくせに、祓い屋である名取さんの術を都合のいい時にだけ使わせてもらうのは少しだけ申し訳ない気もするが、人助けの為だと割り切ることにする。
術のために必要な人型の紙人形と陣を描いた紙も持ってきている。
清継くん達の前で術を使えばきっとみんなもついてきてしまうだろう。
流石に私の我儘にみんなを巻き込むわけにはいかない。
だから何も言わずにこっそりと出てきたのだ。
……リクオくんと氷麗ちゃんにくらいは言っておくべきだったかもしれない。
だけど私と行動しているのを透ちゃんや田沼くんに見られたら、リクオくんたちの正体が妖怪だと勘づかれてしまう恐れがある。
そんな迷惑はかけられない。
(やっぱり私と先生だけで何とかしないと……)
きっと後で怒られるだろうな。
それでもやっぱり迷惑はかけたくないのだ。
リクオくんは友達の前では妖怪であることを隠していたいだろうし、人間でいたいように思うから。
邪魅を見つけ出したら、話を聞きたい。
襲われる可能性もあるけれど、どうにも邪魅は噂ほどの悪い妖怪には思えないのだ。
(もしかしたら、邪魅は……)
自分の勘が当たっているかなんてわからない。
それでも今は、邪魅に会って確かめなければならない。
私は人が少なそうな場所を探して町を彷徨いていると、小さな公園を見つけた。
夜なので子供はおろか人は誰もいない。周りにいるのは小さな妖怪だけで、襲われる心配もないだろう。
私は術を使うならここがいいと思い、公園の中に足を踏み入れることにした。
「ここなら人もいないし、誰かに見られる心配もないね。」
私はベンチに陣が描かれた紙を置くと、人型人形に持ってきていた紐を括り付けた。
人型人形は飛ばすとものすごい勢いで飛んでいってしまう。
とても人間の足で追いつける速さではない上に夜で視界が悪いのもあって確実に見失ってしまう。
だから今回は人型人形に紐を括り付けておくことにしたのだ。
これで慌てて追いかける必要もない。
一通りの準備を終えて、術を発動するために昨日の夜に見た邪魅の姿を思い浮かべる。
するとカサカサと人型人形は微かに動き出した。
ふわりと風もないのに浮かび上がり、こっちだと案内するように紐を引っ張りながら飛び上がる。
「……あっちか。」
「――彩乃ちゃん!」
人型人形に導かれるままに歩き出そうとした瞬間、私の名前を呼ぶ声が夜の公園に響いた。
驚いて振り返れば、そこにはリクオくんと氷麗ちゃんがいた。
驚きで目を大きく見開く。
どうしてここに居るのか。どうやって見つけたのか。聞きたいことはあったけれど、リクオくんがなんだか怒っている雰囲気で、それどころではなかった。
リクオくんは私を見つけると、ズンズンと早歩きの割には重い足音を立てて近付いてくる。
眉をしかめ、目は釣り上がり、顔が完全に怒っていて、迫力があった。
その迫力に思わずひくりと頬がひきつる。
リクオくんが近づく度に無意識に一歩一歩後ずさってしまったのは本能によるものだと思いたい。
リクオくんは後ずさる私を逃がさないというように、手首を掴んできた。
「あっ、あの、リクオくん!」
「――バカ!」
間髪入れずに怒鳴られ、思わずたじろぐ。
リクオくんに黙って出てきてしまったことを、申し訳ないという気持ちがあったからだ。
だからここは素直にちゃんと謝ろうと思った。
「ご、ごめ……「僕はそんなに頼りない?」
「……え?」
謝ろうとした私の言葉を遮ってリクオくんが口を開く。
彼が発した言葉は私にとってとても予想外なもので、何故彼がそんなことを言うのか分からなかった。
リクオくんはずっと私を助けてくれた。だからいつも頼りにしてばかりで申し訳なく思っていて、頼りにならないなんてこと、一度も思ったことなんてない。
それを伝えたくて、私は首を横に振った。絶対にそんなことないと。
だけどリクオくんは私の手を掴んだまま俯いて言う。
「どうして僕を……僕たちを頼ってくれないの。どうして彩乃ちゃんはそうやって一人で何でも解決しようとするの。僕たちが……僕が信じられない?」
「そんなことない!違うのリクオくん!私はただ、みんなの前で私と行動することでリクオくんの正体がみんなにバレないか心配で……」
「そんなことよりも!」
「っ!」
リクオくんが突然大きな声を出したことで、私はびっくりして思わず肩を縮めてしまう。
それにリクオくんは悲しそうに、寂しそうに顔を歪めて、とても……傍にいる私でもやっと聞き取れるようなとても小さな声で言った。
「そんなことよりも、君に信じてもらえないことの方が嫌だ。」
「…………」
その瞬間やっとわかった。
私がリクオくんの為と思ってした行動は、リクオくんを傷つけてしまったのだと。
黙って一人で解決することは、私を信じてくれて、力になってくれようとしているリクオくんを裏切ることになるなんて思わなかったの。……傷つけるつもりなんて……なかったの。
「……ごめんなさい。」
「……っ」
「ごめんね、リクオくん。」
掴まれた手首が痛いくらい強い力で握られて、それでも私はその手を振り払わなかった。
空いているもう片方の手をそっと重ねて、リクオくんの手を包み込むように握る。
私はリクオくんに甘えすぎていたんだ。
リクオくんの気持ちを知っていてずっと先延ばしにしているのは、リクオくんならきっと私の答えが出るまで待っていてくれると知っているから。
黙って行動したのは、リクオくんならきっと許してくれるとどこかで思っていたから。
いくらニャンコ先生が一緒にいるとはいえ、軽率な行動をしてしまったと反省している。
もしも私が邪魅と対峙して、何かあればきっとリクオくんは自分を責めてしまう。
それがわかっていたのに、一人で解決しようとしていた。
私は最低なことを、一番してはいけない人にしようとしていた。
リクオくんの悲しそうな顔を見てそれがやっと理解できるなんて、本当にひどすぎる。
ごめんねリクオくん。ごめんなさい。
「……もうしないから。今度は何があってもちゃんとリクオくんを頼るから。一人で解決しようなんてしないから。だからリクオくん……」
(泣かないで)
リクオくんは泣いてなんていないけど、私の行動に傷ついて泣いている気がした。
だから言葉にはしなかったけど、そっと口を動かして言った。
それが伝わったのか、リクオくんはくしゃりとますます泣きそうに顔を歪めて、私の肩に顔を埋めてきた。
私は解放された両手をそっとリクオくんの背に回して、ぎゅっと抱き締めたのだった。