第22章「邪魅編」
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ニャンコ先生がうっかりみんなの前で喋ってしまったせいで、先生がただの猫ではなく妖怪だということがバレてしまった。
更なる誤解を生むことになってしまったが、ニャンコ先生は私の式で、安全な用心棒だという嘘をつくことで、みんなに納得してもらうことになった。
いつかはみんなに本当のことを話そう。
そう思いながら私は嘘をついてしまったことに小さな罪悪感を感じながらも、自分を納得させた。
「まさか、夏目先輩の猫が妖怪だったなんて……ただのブサイクな猫だとばかり。」
「なんだお前。この私に喧嘩を売っているのか!?」
「うおー!すごい!本当に喋ってる!まさかこんな身近な所に妖怪がいたなんて!かっ、感激だ!」
ニャンコ先生が妖怪だと知り、清継は目をキラキラと輝かせながら、酷く興奮していた。
なんせずっと探していた念願の妖怪が目の前にいるのだ。
彼の喜びと感動は半端なかった。
しかしニャンコ先生はじっと見つめられた上にブサイクと侮辱され、少しばかり不機嫌そうであった。
「いやぁ〜、よく見たらなかなか味のある顔じゃないか!愛らしいし賢そうだ!」
「……む?お前なかなか見込みがあるじゃないか。ニャンコ先生と呼んでいいぞ。」
「ありがとうございますニャンコ先生!ついでに触ってもいいですか?後は妖怪について色々と聞きたいことが……」
「お前ちょっと図々しいぞ。」
「偉大なるニャンコ先生!きっと愛らしい見た目とは裏腹に大妖怪なのでしょう!」
「わかってるじゃないか!如何にも!この姿は招き猫を依代にしている仮の姿。本来の私はそれはそれは優美で美しいのだ!仮の姿に騙されずよく私の正体を見破った!特別に触ることを許そう!」
「ははー!ありがたき幸せ!」
清継はそれはそれは大袈裟なくらいに体全体を使って見事な土下座をしてみせた。
そんな2人の様子を少しだけ離れた所から見守っていた彩乃たち。
「……ちょろ。」
「しっ!巻聞こえるよ!」
(先生。清継くんにいい様に乗せられてるよ……)
巻さんと鳥居さんのやり取りを聞きながら、私は小さくため息をついた。
それからなんやかんやと時間はあっという間に過ぎ、夜になった。
私たち女子組は全員品子さんの部屋で寝泊まりすることになった。
品子さんの部屋はとても広く、女の子7人で布団を敷いても余裕なくらいだった。
男の子たちは別の部屋で夜中に警備するらしい。
私も一応戦力の1人として入っている以上、見回りに名乗り出ようとしたが、女の子たちから「夏目先輩が品子ちゃんの傍にいないと意味ないです!」と言われて一緒にいることになった。
「はぁ〜!やっと自由になった。あの清継とかいう小僧、めちゃくちゃしつこかったぞ!?」
「清継くんは妖怪が大好きなんだよ。そんな彼の前で喋った先生の自業自得でしょ?」
「少しくらい助けてくれてもいいだろうが!お陰で数時間質問攻めにされるわ、もみくちゃに触りまくられるわで散々だったぞ!?」
「嫌われるよりはいいじゃない。清継くん、すっかり先生のこと気に入ったみたいだし。」
「嬉しくないわ!」
ニャンコ先生が妖怪だとバレた後、先生は清継くんに捕まって数時間にわたって質問攻めにされ、揉みくちゃに触りまくられたのだった。
妖怪に興味津々の清継くんの前で妖怪だとバレるようなことをした先生の自業自得なので、私は助けなかった。
お陰ですっかり懐かれてしまったらしい。
ニャンコ先生はぐったりと布団の上に寝そべると、「私はもう寝るぞ」と言ってすぐに寝てしまった。
プープーと大きな鼻ちょうちんを膨らませながら熟睡する先生に思わず苦笑する。
「……なんか、妖怪って聞いて少し怖かったけど、こうやって見るとなんか可愛いかも。」
「確かに。ブサかわいいかも。」
家長さんと鳥居さんの言葉に少しだけほっとする。
妖怪という異形の存在は人からしたら未知だ。
そんな得体の知れない存在は恐怖でしかない。
それでもニャンコ先生を受け入れてくれたみんなには感謝しかない。
「さぁ〜て、護衛は男の子にまかせてねよー!」
「こんなに清十字に女の子がいるなんて思わなかった。それはすごい心強いわ!」
「うんうん。それに夏目先輩と猫ちゃんもいるしね!明日は海で遊ぼー!」
明日は海水浴だと楽しそうに話す女の子たち。
みんながそれぞれ布団に入り就寝する。
そうして夜は更けていく……
***
時刻は夜の1時を回ろうとしていた。
リクオたち男子組は品子さんの部屋周辺をずっと見回っていたが、リクオが不審な人影を見つけたことで事態は動いていた。
一方その頃、すっかり寝静まっていた女子たちの中で、家長カナだけは眠れずにいた。何故なら……
――カナ視点――
「ハァ……ハァ……(なんで、なんで……)」
ビュウビュウと強く吹き荒れる風が古い日本家屋の屋敷の窓をガタガタと揺らし、真夜中も相まって不気味さをより際立たせる。
それがより私の恐怖を膨れ上がらせた。
(……いる!)
私は恐怖でガタガタと震える手で布団をギュッと握りしめる。
「それ」をじっと見つめていると、やがて視線に気づいたのかこちらを振り返る。
私は慌てて「それ」から目を逸らすように寝返りを打って寝たフリをする。
(さっき言ってたオバケだ……怖い!)
人一倍オカルトが苦手で怖がりな私は、みんなが寝静まっても一人だけ眠れずにいたのだ。
自分一人だけ取り残されて、ひどく心細い気持ちになっていたところに「それ」は暗闇から現れた。
特に何をするでもなく、ただじっとそこに立っているだけ。けれどそれだけでも人ならざるものがそこにいるだけで恐怖は十分だった。
私はできるだけ「それ」に起きていることを悟られないように息を潜めようとした。
けれど恐怖に震えるこの体はどうしてもいうことは聞いてくれず、自然とはあはあと零れ落ちる息は荒くなっていく。
「それ」はこちらに視線を向けたまま、やがて懐の刀を抜こうと手にかけた。
「ヒッ!」
ついに声が漏れてしまった。
私はもうダメだと目をぎゅっと瞑り、やがて来るだろう痛みに恐怖した。
閉じた瞳から、ポロリ一筋の涙が零れ落ちた。その時だった……
「そこまで!捕まえたよ!」
聞き慣れた凛とした声に思わず目を開く。
布団から飛び起きれば、そこには夏目先輩がオバケの手首を掴んで刀を抜くのを止めていた。
――夏目視点――
邪魅だと思われる妖怪が現れたことはすぐにわかった。
みんなが私を頼りにしてくれている以上、何もせずに寝るのは忍びなくて、実はひっそりと起きていた。
時おり眠気に負けてうとうとしそうになる睡魔に抗いながら、邪魅が現れるのを待つ。
やがて時間が経ち、夜の闇が深みを増すとそれは不意に現れた。
邪魅が現れたことで部屋の空気が一瞬だけ重くなったのを感じた。
(――来た!)
私は邪魅を捕まえるタイミングを逃さないように、布団の中にもぐり息を潜める。
だけどその時、家長さんの小さな悲鳴が聞こえてギョッとした。
(家長さん、もしかして起きてる!?)
家長さんの悲鳴に反応して、邪魅だと思われる妖怪は懐の刀を抜こうと刀に手をかけた。
これはまずいと、私は隠れるのをやめて布団から飛び出した。
「――そこまで!捕まえたよ!」
「な……夏目、先輩!」
家長さんが驚いたように私を見る。
だけど今は家長さんを気遣う余裕がなくて、じっと邪魅を睨みつける。
「あなたが邪魅ね?どうして品子さんを狙うの?」
「……私は……」
邪魅が何か言いかけた瞬間、戸を豪快に開け放ち「どこだ妖怪ぃぃぃーー!」と叫びながら部屋に清継くんと島くんが入り込んで来たのだった。
「……っ!」
「あっ!待って!」
その叫びに眠っていた女の子たちも目を覚ます。
私も驚いた拍子にうっかり邪魅の手を離してしまい、その隙に邪魅は暗闇に溶け込むようにして消えてしまった。
「いたか?島くんいたか!?こっちに出るって奴良くんが言ったんだ!」
「おっ、おい2人共。女の子の部屋に勝手に入るのはまずいって!」
勝手に入ってきた清継くんと島くんは、止めようとする田沼くんの言葉を無視してキョロキョロと何かを探すように部屋の中を見回す。
「な……なぁ〜にぃ〜?」
「え?」
「誰か入ってきたの?」
「う……う〜ん?」
騒ぎによって女の子たちが次々と起き出す。
みんなまだ寝ぼけているのか、状況を理解できていたいようだった。
「暗くてわからん。」
巻さんがそう呟くと、立ち上がって電気の紐を引っ張った。
それによりバッと部屋の中が一気に明るくなる。
「……え?」
「なんだぁ!?いないじゃないか!奴良くんのうそつきィーー!」
明かりがついた瞬間、広がっていた光景に私は絶句してしまった。
何をどうしたらそうなったのか、島くんは巻さんの胸に顔を埋め、しかもその上で揉んでさえおり、清継くんは鳥居さんを押し倒すような格好で彼女の上に馬乗りになっていた。
目の前に広がるハレンチな光景に、私はすっかり邪魅のことなど頭から消し飛び、一気に真っ赤になった後さっと熱が冷めたように青ざめた。
ニャンコ先生が隣で「これが俗に言う『らっきーすけべ』というやつか……」と呟いていたが、私は頭が真っ白になっていて動けずにいた。
誰よりも先に我に返ったのは田沼くんで、真っ青になって島くんと清継くんを女の子たちから引き剥がした。
「何やってるんだ2人共!早く謝れ!」
「えっ?えっ?」
「あれ?及川さんは?」
「……ふ……ざけんなどちくしょー!!」
パチーン!という盛大な音が部屋に響き、清継くんと島くんの左頬には大きな手型の跡が残ったのだった。
その後はうだうだと言い訳する2人を正座させ、30分にわたりこんこんと全員から説教が始まったのは言うまでもない。
更なる誤解を生むことになってしまったが、ニャンコ先生は私の式で、安全な用心棒だという嘘をつくことで、みんなに納得してもらうことになった。
いつかはみんなに本当のことを話そう。
そう思いながら私は嘘をついてしまったことに小さな罪悪感を感じながらも、自分を納得させた。
「まさか、夏目先輩の猫が妖怪だったなんて……ただのブサイクな猫だとばかり。」
「なんだお前。この私に喧嘩を売っているのか!?」
「うおー!すごい!本当に喋ってる!まさかこんな身近な所に妖怪がいたなんて!かっ、感激だ!」
ニャンコ先生が妖怪だと知り、清継は目をキラキラと輝かせながら、酷く興奮していた。
なんせずっと探していた念願の妖怪が目の前にいるのだ。
彼の喜びと感動は半端なかった。
しかしニャンコ先生はじっと見つめられた上にブサイクと侮辱され、少しばかり不機嫌そうであった。
「いやぁ〜、よく見たらなかなか味のある顔じゃないか!愛らしいし賢そうだ!」
「……む?お前なかなか見込みがあるじゃないか。ニャンコ先生と呼んでいいぞ。」
「ありがとうございますニャンコ先生!ついでに触ってもいいですか?後は妖怪について色々と聞きたいことが……」
「お前ちょっと図々しいぞ。」
「偉大なるニャンコ先生!きっと愛らしい見た目とは裏腹に大妖怪なのでしょう!」
「わかってるじゃないか!如何にも!この姿は招き猫を依代にしている仮の姿。本来の私はそれはそれは優美で美しいのだ!仮の姿に騙されずよく私の正体を見破った!特別に触ることを許そう!」
「ははー!ありがたき幸せ!」
清継はそれはそれは大袈裟なくらいに体全体を使って見事な土下座をしてみせた。
そんな2人の様子を少しだけ離れた所から見守っていた彩乃たち。
「……ちょろ。」
「しっ!巻聞こえるよ!」
(先生。清継くんにいい様に乗せられてるよ……)
巻さんと鳥居さんのやり取りを聞きながら、私は小さくため息をついた。
それからなんやかんやと時間はあっという間に過ぎ、夜になった。
私たち女子組は全員品子さんの部屋で寝泊まりすることになった。
品子さんの部屋はとても広く、女の子7人で布団を敷いても余裕なくらいだった。
男の子たちは別の部屋で夜中に警備するらしい。
私も一応戦力の1人として入っている以上、見回りに名乗り出ようとしたが、女の子たちから「夏目先輩が品子ちゃんの傍にいないと意味ないです!」と言われて一緒にいることになった。
「はぁ〜!やっと自由になった。あの清継とかいう小僧、めちゃくちゃしつこかったぞ!?」
「清継くんは妖怪が大好きなんだよ。そんな彼の前で喋った先生の自業自得でしょ?」
「少しくらい助けてくれてもいいだろうが!お陰で数時間質問攻めにされるわ、もみくちゃに触りまくられるわで散々だったぞ!?」
「嫌われるよりはいいじゃない。清継くん、すっかり先生のこと気に入ったみたいだし。」
「嬉しくないわ!」
ニャンコ先生が妖怪だとバレた後、先生は清継くんに捕まって数時間にわたって質問攻めにされ、揉みくちゃに触りまくられたのだった。
妖怪に興味津々の清継くんの前で妖怪だとバレるようなことをした先生の自業自得なので、私は助けなかった。
お陰ですっかり懐かれてしまったらしい。
ニャンコ先生はぐったりと布団の上に寝そべると、「私はもう寝るぞ」と言ってすぐに寝てしまった。
プープーと大きな鼻ちょうちんを膨らませながら熟睡する先生に思わず苦笑する。
「……なんか、妖怪って聞いて少し怖かったけど、こうやって見るとなんか可愛いかも。」
「確かに。ブサかわいいかも。」
家長さんと鳥居さんの言葉に少しだけほっとする。
妖怪という異形の存在は人からしたら未知だ。
そんな得体の知れない存在は恐怖でしかない。
それでもニャンコ先生を受け入れてくれたみんなには感謝しかない。
「さぁ〜て、護衛は男の子にまかせてねよー!」
「こんなに清十字に女の子がいるなんて思わなかった。それはすごい心強いわ!」
「うんうん。それに夏目先輩と猫ちゃんもいるしね!明日は海で遊ぼー!」
明日は海水浴だと楽しそうに話す女の子たち。
みんながそれぞれ布団に入り就寝する。
そうして夜は更けていく……
***
時刻は夜の1時を回ろうとしていた。
リクオたち男子組は品子さんの部屋周辺をずっと見回っていたが、リクオが不審な人影を見つけたことで事態は動いていた。
一方その頃、すっかり寝静まっていた女子たちの中で、家長カナだけは眠れずにいた。何故なら……
――カナ視点――
「ハァ……ハァ……(なんで、なんで……)」
ビュウビュウと強く吹き荒れる風が古い日本家屋の屋敷の窓をガタガタと揺らし、真夜中も相まって不気味さをより際立たせる。
それがより私の恐怖を膨れ上がらせた。
(……いる!)
私は恐怖でガタガタと震える手で布団をギュッと握りしめる。
「それ」をじっと見つめていると、やがて視線に気づいたのかこちらを振り返る。
私は慌てて「それ」から目を逸らすように寝返りを打って寝たフリをする。
(さっき言ってたオバケだ……怖い!)
人一倍オカルトが苦手で怖がりな私は、みんなが寝静まっても一人だけ眠れずにいたのだ。
自分一人だけ取り残されて、ひどく心細い気持ちになっていたところに「それ」は暗闇から現れた。
特に何をするでもなく、ただじっとそこに立っているだけ。けれどそれだけでも人ならざるものがそこにいるだけで恐怖は十分だった。
私はできるだけ「それ」に起きていることを悟られないように息を潜めようとした。
けれど恐怖に震えるこの体はどうしてもいうことは聞いてくれず、自然とはあはあと零れ落ちる息は荒くなっていく。
「それ」はこちらに視線を向けたまま、やがて懐の刀を抜こうと手にかけた。
「ヒッ!」
ついに声が漏れてしまった。
私はもうダメだと目をぎゅっと瞑り、やがて来るだろう痛みに恐怖した。
閉じた瞳から、ポロリ一筋の涙が零れ落ちた。その時だった……
「そこまで!捕まえたよ!」
聞き慣れた凛とした声に思わず目を開く。
布団から飛び起きれば、そこには夏目先輩がオバケの手首を掴んで刀を抜くのを止めていた。
――夏目視点――
邪魅だと思われる妖怪が現れたことはすぐにわかった。
みんなが私を頼りにしてくれている以上、何もせずに寝るのは忍びなくて、実はひっそりと起きていた。
時おり眠気に負けてうとうとしそうになる睡魔に抗いながら、邪魅が現れるのを待つ。
やがて時間が経ち、夜の闇が深みを増すとそれは不意に現れた。
邪魅が現れたことで部屋の空気が一瞬だけ重くなったのを感じた。
(――来た!)
私は邪魅を捕まえるタイミングを逃さないように、布団の中にもぐり息を潜める。
だけどその時、家長さんの小さな悲鳴が聞こえてギョッとした。
(家長さん、もしかして起きてる!?)
家長さんの悲鳴に反応して、邪魅だと思われる妖怪は懐の刀を抜こうと刀に手をかけた。
これはまずいと、私は隠れるのをやめて布団から飛び出した。
「――そこまで!捕まえたよ!」
「な……夏目、先輩!」
家長さんが驚いたように私を見る。
だけど今は家長さんを気遣う余裕がなくて、じっと邪魅を睨みつける。
「あなたが邪魅ね?どうして品子さんを狙うの?」
「……私は……」
邪魅が何か言いかけた瞬間、戸を豪快に開け放ち「どこだ妖怪ぃぃぃーー!」と叫びながら部屋に清継くんと島くんが入り込んで来たのだった。
「……っ!」
「あっ!待って!」
その叫びに眠っていた女の子たちも目を覚ます。
私も驚いた拍子にうっかり邪魅の手を離してしまい、その隙に邪魅は暗闇に溶け込むようにして消えてしまった。
「いたか?島くんいたか!?こっちに出るって奴良くんが言ったんだ!」
「おっ、おい2人共。女の子の部屋に勝手に入るのはまずいって!」
勝手に入ってきた清継くんと島くんは、止めようとする田沼くんの言葉を無視してキョロキョロと何かを探すように部屋の中を見回す。
「な……なぁ〜にぃ〜?」
「え?」
「誰か入ってきたの?」
「う……う〜ん?」
騒ぎによって女の子たちが次々と起き出す。
みんなまだ寝ぼけているのか、状況を理解できていたいようだった。
「暗くてわからん。」
巻さんがそう呟くと、立ち上がって電気の紐を引っ張った。
それによりバッと部屋の中が一気に明るくなる。
「……え?」
「なんだぁ!?いないじゃないか!奴良くんのうそつきィーー!」
明かりがついた瞬間、広がっていた光景に私は絶句してしまった。
何をどうしたらそうなったのか、島くんは巻さんの胸に顔を埋め、しかもその上で揉んでさえおり、清継くんは鳥居さんを押し倒すような格好で彼女の上に馬乗りになっていた。
目の前に広がるハレンチな光景に、私はすっかり邪魅のことなど頭から消し飛び、一気に真っ赤になった後さっと熱が冷めたように青ざめた。
ニャンコ先生が隣で「これが俗に言う『らっきーすけべ』というやつか……」と呟いていたが、私は頭が真っ白になっていて動けずにいた。
誰よりも先に我に返ったのは田沼くんで、真っ青になって島くんと清継くんを女の子たちから引き剥がした。
「何やってるんだ2人共!早く謝れ!」
「えっ?えっ?」
「あれ?及川さんは?」
「……ふ……ざけんなどちくしょー!!」
パチーン!という盛大な音が部屋に響き、清継くんと島くんの左頬には大きな手型の跡が残ったのだった。
その後はうだうだと言い訳する2人を正座させ、30分にわたりこんこんと全員から説教が始まったのは言うまでもない。