第21章「東方の森編」
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「何を……言っているんですか?」
「君の祖母、夏目レイコはとても霊力の高い人だったそうですね。色々調べてみたのですが、ただ美しかった。強かったと噂ばかり。中々情報が少なくて……是非とも聞かせて頂きたいのです。噂の夏目レイコとはどういう人だったのかを……」
「――何故?」
「祓い屋ですからね。力の強い者には興味があるのです。」
「……興味って……」
「――そうだ。君のお母様は?お母様もさぞ力の強い方だったのでしょうね。」
「違います!母は……母は普通の、物静かな人だったと……多分、ですが……」
「そうですか。強力だと噂の夏目レイコの娘にさえ、遺伝するとは限らない。視える人間は我々にとって貴重です。ましてや強力であればある程。」
的場は目を細めて笑いながら、彩乃を押し倒したまま見下ろしてくる。
その目は彩乃を見ているというよりも、彩乃の中に宿るその力だけを見ているような気がした。
的場はゆっくりと彩乃から退くと、にこやかに微笑んで言った。
「遠い昔、村人達を襲いくる妖へと我が先祖が弓をひいたのが家業の始まり。今は金を出す奴と仲間のためにやっています。……君も、無理解な人達といるのは面倒でしょう。的場一門に入れば、そういう煩わしさから解放されますよ。」
「――お断りします。」
彩乃は的場を睨み付けるように見据えると、ハッキリとそう答えた。
――今、はっきりと分かった。
私と的場さんは、絶対に分かり合えない。
妖をただの化け物や金儲けの道具としか見れないこの人の気持ちなんて、絶対に理解できないし、したくない。
同じ人間ですら、利用できるかできないかで見定め、妖を視える人間に対してすら、その利用価値がなければ興味すら抱かない。
的場さんが私に興味を持つのは、ただレイコさん譲りの力があるから、それだけだ。
私は……的場さんが嫌いだ。
「レイコさんのことも、何も、貴方と話すことなんてないです。」
「――おや……それは困った。……では、話したくなるようにしましょうか。」
的場はそう言うと、床に転がった妖の封印された壺を見た。
それに気付いた彩乃は、咄嗟に壺を拾うと、的場の視線から隠すように壺を後ろに隠した。
「――そうですねぇ。その壺……それに封じられた妖は君のお友達だったのですか?」
「違います。別に……ただ少し話をしただけです。」
「そうだ失礼な!こんな下等動物と誰が!」
その時、的場が怪しげに目だけを細めて笑ったのに、彩乃は気付かなかった。
「――話したくなったら、言ってください。」
「……」
「……、…………、……」
「?」
「…………、……」
「……ぅ……」
的場がスッとまるでお参りするように両手を顔の前で合わせると、何やらぶつぶつと聞き取れないような小さな声で呟き始めた。
それはお経のような、呪文のような、不思議な言葉だった。
彩乃が怪訝そうに眉をひそめると、突然壺の中の妖が呻き声を上げ始めたのである。
「うう……い、痛い……」
「……っ!?」
(呪文?あれに反応して……)
それにより、的場が何かしているのだと漸く気付いた彩乃は、ハッとして的場を見る。
咄嗟に彩乃は的場に掴み掛かった。
「や……やめてください!この妖は関係ないって言っているでしょう!?」
「関係ないなら気にしなくていいですよ。」
「気にします!妖を傷つけるのはやめてください!」
「何故、君が気にするんです?関係ないのでしょう?この妖は捕まえてみたのはいいものの、使えそうもないですし、人間に対しても随分な態度だ。死んだって、代わりならいくらでもいる。」
「……っ」
的場の言葉に、彩乃は思わず言葉を失った。
青ざめた顔で的場を見上げる。
しかし、当の的場は涼しげな顔で彩乃を見下ろしている。
「交渉の材料にもならないなら、もう必要も……」
「っ!やめてください!知らないんです!」
彩乃はすがり付くような想いで的場に訴える。
「祖母のことは本当に何も!話したくても話せることがないんです!祖母を知る人は……話を聞いてもあまり……好意的ではなくて……だから!……兎に角、この妖に酷いことをしないでください。本当に、本当に何も知らないんです!」
「……成る程。人はおばあ様や君に冷たかったのですね。だから妖たちにそそのかされて情を移すようになったと。」
「なっ!……いいえ。確かに辛い時もあったけれど、優しい人達にもたくさん出会えました。それは、妖だって同じです。……私にとって妖も人も、大切な存在なんです。」
彩乃がまっすぐな瞳で的場を見つめながらハッキリとそう言うと、的場は呆れたように小さくため息をついた。
「――危険ですね。君はすっかり妖に心を奪われている。目を覚ましなさい。彼等は人を惑わし、裏切りますよ。」
「そんなことない!確かに妖は人を騙したりする者もいるけれど、それは人間だって同じでしょう!?妖ばかりが悪い存在じゃないです!」
「……はあ。君は少し頭を冷やしなさい。連れていけ。」
的場がそう言うと、側に控えたいた式神たちが彩乃を連れていこうと纏わりついてきた。
「放して!触らないで!」
「……君は、一度妖で痛い目に合わないとわからないのでしょうか?」
「……っ!」
的場が抵抗する彩乃を見つめながら、そんなことをポツリと呟いていた。
しかし、彩乃がその言葉に答える前に、彩乃は再び座敷牢へと連れ戻されてしまったのである。
「君の祖母、夏目レイコはとても霊力の高い人だったそうですね。色々調べてみたのですが、ただ美しかった。強かったと噂ばかり。中々情報が少なくて……是非とも聞かせて頂きたいのです。噂の夏目レイコとはどういう人だったのかを……」
「――何故?」
「祓い屋ですからね。力の強い者には興味があるのです。」
「……興味って……」
「――そうだ。君のお母様は?お母様もさぞ力の強い方だったのでしょうね。」
「違います!母は……母は普通の、物静かな人だったと……多分、ですが……」
「そうですか。強力だと噂の夏目レイコの娘にさえ、遺伝するとは限らない。視える人間は我々にとって貴重です。ましてや強力であればある程。」
的場は目を細めて笑いながら、彩乃を押し倒したまま見下ろしてくる。
その目は彩乃を見ているというよりも、彩乃の中に宿るその力だけを見ているような気がした。
的場はゆっくりと彩乃から退くと、にこやかに微笑んで言った。
「遠い昔、村人達を襲いくる妖へと我が先祖が弓をひいたのが家業の始まり。今は金を出す奴と仲間のためにやっています。……君も、無理解な人達といるのは面倒でしょう。的場一門に入れば、そういう煩わしさから解放されますよ。」
「――お断りします。」
彩乃は的場を睨み付けるように見据えると、ハッキリとそう答えた。
――今、はっきりと分かった。
私と的場さんは、絶対に分かり合えない。
妖をただの化け物や金儲けの道具としか見れないこの人の気持ちなんて、絶対に理解できないし、したくない。
同じ人間ですら、利用できるかできないかで見定め、妖を視える人間に対してすら、その利用価値がなければ興味すら抱かない。
的場さんが私に興味を持つのは、ただレイコさん譲りの力があるから、それだけだ。
私は……的場さんが嫌いだ。
「レイコさんのことも、何も、貴方と話すことなんてないです。」
「――おや……それは困った。……では、話したくなるようにしましょうか。」
的場はそう言うと、床に転がった妖の封印された壺を見た。
それに気付いた彩乃は、咄嗟に壺を拾うと、的場の視線から隠すように壺を後ろに隠した。
「――そうですねぇ。その壺……それに封じられた妖は君のお友達だったのですか?」
「違います。別に……ただ少し話をしただけです。」
「そうだ失礼な!こんな下等動物と誰が!」
その時、的場が怪しげに目だけを細めて笑ったのに、彩乃は気付かなかった。
「――話したくなったら、言ってください。」
「……」
「……、…………、……」
「?」
「…………、……」
「……ぅ……」
的場がスッとまるでお参りするように両手を顔の前で合わせると、何やらぶつぶつと聞き取れないような小さな声で呟き始めた。
それはお経のような、呪文のような、不思議な言葉だった。
彩乃が怪訝そうに眉をひそめると、突然壺の中の妖が呻き声を上げ始めたのである。
「うう……い、痛い……」
「……っ!?」
(呪文?あれに反応して……)
それにより、的場が何かしているのだと漸く気付いた彩乃は、ハッとして的場を見る。
咄嗟に彩乃は的場に掴み掛かった。
「や……やめてください!この妖は関係ないって言っているでしょう!?」
「関係ないなら気にしなくていいですよ。」
「気にします!妖を傷つけるのはやめてください!」
「何故、君が気にするんです?関係ないのでしょう?この妖は捕まえてみたのはいいものの、使えそうもないですし、人間に対しても随分な態度だ。死んだって、代わりならいくらでもいる。」
「……っ」
的場の言葉に、彩乃は思わず言葉を失った。
青ざめた顔で的場を見上げる。
しかし、当の的場は涼しげな顔で彩乃を見下ろしている。
「交渉の材料にもならないなら、もう必要も……」
「っ!やめてください!知らないんです!」
彩乃はすがり付くような想いで的場に訴える。
「祖母のことは本当に何も!話したくても話せることがないんです!祖母を知る人は……話を聞いてもあまり……好意的ではなくて……だから!……兎に角、この妖に酷いことをしないでください。本当に、本当に何も知らないんです!」
「……成る程。人はおばあ様や君に冷たかったのですね。だから妖たちにそそのかされて情を移すようになったと。」
「なっ!……いいえ。確かに辛い時もあったけれど、優しい人達にもたくさん出会えました。それは、妖だって同じです。……私にとって妖も人も、大切な存在なんです。」
彩乃がまっすぐな瞳で的場を見つめながらハッキリとそう言うと、的場は呆れたように小さくため息をついた。
「――危険ですね。君はすっかり妖に心を奪われている。目を覚ましなさい。彼等は人を惑わし、裏切りますよ。」
「そんなことない!確かに妖は人を騙したりする者もいるけれど、それは人間だって同じでしょう!?妖ばかりが悪い存在じゃないです!」
「……はあ。君は少し頭を冷やしなさい。連れていけ。」
的場がそう言うと、側に控えたいた式神たちが彩乃を連れていこうと纏わりついてきた。
「放して!触らないで!」
「……君は、一度妖で痛い目に合わないとわからないのでしょうか?」
「……っ!」
的場が抵抗する彩乃を見つめながら、そんなことをポツリと呟いていた。
しかし、彩乃がその言葉に答える前に、彩乃は再び座敷牢へと連れ戻されてしまったのである。