第21章「東方の森編」
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
斑は走っていた。
的場に捕らえられてしまった彩乃を助け出す為に、助けを呼びに向かっていたのだ。
自分一人でも助け出そうかとも思ったが、相手はあの男……的場である。
「――ちぃ、面倒な……!」
斑は悪態をつきたい気持ちを抑え、走り続けていた。
*******
「――ん……」
肌寒さにぶるりと体が震える。
うっすらと目を覚ますと、そこは見知らぬ場所だった。
ひんやりとした石造りの部屋に、長いこと掃除されていないのか、埃っぽい臭いもする。
小さな鉄格子の窓からうっすらと光が入っているのみで、とても暗い場所であった。
扉は木でできているとはいえ、柵のような作りになっていた。
無理もない。誰が見ても、そこは座敷牢であった。
彩乃は状況を把握して、一気に顔を青ざめさせた。
「――えっ!?ここって……まさか……捕まったの?」
「やっと起きたか寝坊助め。」
「!?」
自分以外の者の声が不意に聞こえ、彩乃は驚いて声のした方を振り返るが、そこには一つの小さな黒い壺が置かれているだけであった。
「……気のせい?」
「気のせいではないわ小娘!」
「!?」
壺が言葉を発したことに驚いたが、よく見るとその壺は、あの時的場が猿面の妖怪の一人を封印した壺によく似ていた。
(――ということは……)
「……お前、友人帳を狙ってきた妖ね。」
「……ふん!だったら何だ!」
「別に、何もしないけど……」
「ふん!どうだか。」
壺に封じられた猿面の妖怪は、彩乃をまるで信用していないのか、警戒を露にしている。
「……ちくしょうちくしょう。友人帳があれば……きっと……きっと……お頭樣が友人帳の力できっと森を元のように……お頭樣なら……」
「……はあ。」
ぶつぶつととても小さな声で一人言を呟く猿面の妖。詳しい事情は分からないが、どうやら彼等は自分たちの棲家である森をどうにかしたくて、友人帳を狙ってきたらしい。
彩乃は小さくため息を一つつくと、壺を手に取って妖に向かって諭すように声を掛けた。
「――友人帳はそんな魔法のような道具ではないよ。森をどうにかしたいのは分かるけど、友人帳を使って多くの妖を操らせるなんて。……そんなことをしてしまったら、そのお頭樣っていうのも、的場さんと同じようなものになってしまうよ。」
「……あっ。」
彩乃の言葉に何か思うところがあったのだろう。
猿面の妖は暫し黙り込んで、何かを考えているようだった。
その時、コツンと小さな足音が彩乃たちの耳に入り込んだ。
その足音はゆっくりとこちらに近付いてくる。
しかも足音は一つではなく複数だった。
コツコツと確実に足音は近づき、そしてそれは彩乃たちのいる座敷牢の前で止まった。
「――お久しぶりですね。」
「……的場さん……」
的場は彩乃ににっこりと微笑みかける。
けれどその笑顔は作り物めいていて、まったく安心などできない。
「まさかこんな所で会えるとは思っていませんでした。けれど丁度よかった。そろそろまたお話がしたいなと思っていたんですよ。
――あの猫は君を置いて逃げたようですね。」
「……」
(――落ち着け。落ち着け。ここで動揺を悟られたら、この人から逃げられなくなる……)
彩乃はドクンドクンと緊張で脈打つ鼓動を悟られないように、平静を装って的場を睨み付けた。
けれどそんなことは意味がなく、的場は涼しげな顔で微笑むだけであった。
的場に捕らえられてしまった彩乃を助け出す為に、助けを呼びに向かっていたのだ。
自分一人でも助け出そうかとも思ったが、相手はあの男……的場である。
「――ちぃ、面倒な……!」
斑は悪態をつきたい気持ちを抑え、走り続けていた。
*******
「――ん……」
肌寒さにぶるりと体が震える。
うっすらと目を覚ますと、そこは見知らぬ場所だった。
ひんやりとした石造りの部屋に、長いこと掃除されていないのか、埃っぽい臭いもする。
小さな鉄格子の窓からうっすらと光が入っているのみで、とても暗い場所であった。
扉は木でできているとはいえ、柵のような作りになっていた。
無理もない。誰が見ても、そこは座敷牢であった。
彩乃は状況を把握して、一気に顔を青ざめさせた。
「――えっ!?ここって……まさか……捕まったの?」
「やっと起きたか寝坊助め。」
「!?」
自分以外の者の声が不意に聞こえ、彩乃は驚いて声のした方を振り返るが、そこには一つの小さな黒い壺が置かれているだけであった。
「……気のせい?」
「気のせいではないわ小娘!」
「!?」
壺が言葉を発したことに驚いたが、よく見るとその壺は、あの時的場が猿面の妖怪の一人を封印した壺によく似ていた。
(――ということは……)
「……お前、友人帳を狙ってきた妖ね。」
「……ふん!だったら何だ!」
「別に、何もしないけど……」
「ふん!どうだか。」
壺に封じられた猿面の妖怪は、彩乃をまるで信用していないのか、警戒を露にしている。
「……ちくしょうちくしょう。友人帳があれば……きっと……きっと……お頭樣が友人帳の力できっと森を元のように……お頭樣なら……」
「……はあ。」
ぶつぶつととても小さな声で一人言を呟く猿面の妖。詳しい事情は分からないが、どうやら彼等は自分たちの棲家である森をどうにかしたくて、友人帳を狙ってきたらしい。
彩乃は小さくため息を一つつくと、壺を手に取って妖に向かって諭すように声を掛けた。
「――友人帳はそんな魔法のような道具ではないよ。森をどうにかしたいのは分かるけど、友人帳を使って多くの妖を操らせるなんて。……そんなことをしてしまったら、そのお頭樣っていうのも、的場さんと同じようなものになってしまうよ。」
「……あっ。」
彩乃の言葉に何か思うところがあったのだろう。
猿面の妖は暫し黙り込んで、何かを考えているようだった。
その時、コツンと小さな足音が彩乃たちの耳に入り込んだ。
その足音はゆっくりとこちらに近付いてくる。
しかも足音は一つではなく複数だった。
コツコツと確実に足音は近づき、そしてそれは彩乃たちのいる座敷牢の前で止まった。
「――お久しぶりですね。」
「……的場さん……」
的場は彩乃ににっこりと微笑みかける。
けれどその笑顔は作り物めいていて、まったく安心などできない。
「まさかこんな所で会えるとは思っていませんでした。けれど丁度よかった。そろそろまたお話がしたいなと思っていたんですよ。
――あの猫は君を置いて逃げたようですね。」
「……」
(――落ち着け。落ち着け。ここで動揺を悟られたら、この人から逃げられなくなる……)
彩乃はドクンドクンと緊張で脈打つ鼓動を悟られないように、平静を装って的場を睨み付けた。
けれどそんなことは意味がなく、的場は涼しげな顔で微笑むだけであった。